299の3『自然と人間の歴史・世界篇』気象学(19世紀)
気象学の基礎が成立したのは、いつ頃のことだったのだろうか。
まずは、雲が出来て、それが雨や雪などを降らせる。これは、世界中で、昔から人々の重大関心事であったろう。
1784年、イギリスの地質学者ハットンは、上空で暖気(下から上へ昇ってきたもの)と寒気が出会い、混合して雨が降るという説を出した。
気象学の基礎が成立したのは、いつ頃のことだったのだろうか。
まずは、雲が出来て、それが雨や雪などを降らせる。これは、世界中で、昔から人々の重大関心事であったろう。
1784年、イギリスの地質学者ハットンは、上空で暖気(下から上へ昇ってきたもの)と寒気が出会い、混合して雨が降るという説を出した。
それが、19世紀中頃になると、この説が否定される。入れ替わるかのように1868年、フランスのベスランは、上昇気流中の水蒸気を含んだ空気の断熱変化を論じる。
ここに断熱とは、外部との熱のやりとりがない状況をいう。空気の塊が上昇していく場合に、表面を通して流れる熱量は、「塊の中の熱量にくらべて小さく、熱の出入がない場合に近い」(高橋浩一郎「雲を読む本ー空を見るのが楽しくなる」ブルーバックス、1982)と考えられる。
ここに断熱とは、外部との熱のやりとりがない状況をいう。空気の塊が上昇していく場合に、表面を通して流れる熱量は、「塊の中の熱量にくらべて小さく、熱の出入がない場合に近い」(高橋浩一郎「雲を読む本ー空を見るのが楽しくなる」ブルーバックス、1982)と考えられる。
言い換えると、そこでは、外部から熱の出入りがない、空気に断熱膨張が起こることで、周囲から押される力が弱くなるので空気の体積は膨張して大きくなる分、空気が持つ体積当たりの熱量が小さくなるため温度は下がる。
そして迎えた1874年には、オーストリアのハンが、降雨の成因、メカニズムを今日あるような形で説明するの成功する。
その場合、重要なのは上昇気流による断熱冷却であり、大気中で空気が冷えることで雲が発生する。かかるほかに熱伝導、暖気と冷気の混合もあるものの、ごく特殊な場合に限られるという。
1874年には、フランスの物理学者クーリエが、雲ができるには、凝結核が必要であることを発見する。1885年には、スコットランドの気象学者エイトケンが、これとは独立に発見する。
しかして、気象現象というのは、なにしろスケールが大きい。その様子は、節や場所その他の事情によって様々であろう。
まずは山があり、それに風が当たれば上昇気流ができ、雲が生じる。山を越えると、その逆になり、その雲が消える。
前線という線上のところでは、暖気団と寒気団とが衝突して、暖気団は寒気団の上に押し上げられて上昇気流が生じる。それというのも、低気圧は、周りから空気が集まってきて、その空気が上昇気流となって上空へのぼっていく性質をもっていて、ここにいう前線付近にとどまらず、いわゆる気圧の谷や台風も同じ性質を帯びている。
台風では、どうか。こちらは、低気圧に伴う上昇気流が生じ、雲ができる。その低気圧の中へまわりから反逆時計まわりの渦となって気流が集まり、合成されていくその中心には眼があり、下降気流を生じさせている。その眼のまわりに積乱雲の雲の壁が生じ、風とともに大雨を降らせることが多い。
さらには熱対流というのがあり、こちらは、日中、日射で地面が暖められると、空気の塊の温度が上昇する。それが浮力を得ると対流を生じ、やがて積雲ができていく。
このうち最も話題となるには、やはり冬場ての寒気の襲来であろう。例えば、冬の日本海側では、大雪が降りやすい。これは、ユーラシア大陸で発達した寒気団(シベリア気団など)が日本海に吹き込んでくると、相対的に暖かい海から熱と水蒸気を得て、両者の間に対流が生じるであろう。
そして、それが積雲を生じさせ、日本上空に近づく頃には厚い雲となって、雪を降らせる。
1874年には、フランスの物理学者クーリエが、雲ができるには、凝結核が必要であることを発見する。1885年には、スコットランドの気象学者エイトケンが、これとは独立に発見する。
しかして、気象現象というのは、なにしろスケールが大きい。その様子は、節や場所その他の事情によって様々であろう。
まずは山があり、それに風が当たれば上昇気流ができ、雲が生じる。山を越えると、その逆になり、その雲が消える。
前線という線上のところでは、暖気団と寒気団とが衝突して、暖気団は寒気団の上に押し上げられて上昇気流が生じる。それというのも、低気圧は、周りから空気が集まってきて、その空気が上昇気流となって上空へのぼっていく性質をもっていて、ここにいう前線付近にとどまらず、いわゆる気圧の谷や台風も同じ性質を帯びている。
台風では、どうか。こちらは、低気圧に伴う上昇気流が生じ、雲ができる。その低気圧の中へまわりから反逆時計まわりの渦となって気流が集まり、合成されていくその中心には眼があり、下降気流を生じさせている。その眼のまわりに積乱雲の雲の壁が生じ、風とともに大雨を降らせることが多い。
さらには熱対流というのがあり、こちらは、日中、日射で地面が暖められると、空気の塊の温度が上昇する。それが浮力を得ると対流を生じ、やがて積雲ができていく。
このうち最も話題となるには、やはり冬場ての寒気の襲来であろう。例えば、冬の日本海側では、大雪が降りやすい。これは、ユーラシア大陸で発達した寒気団(シベリア気団など)が日本海に吹き込んでくると、相対的に暖かい海から熱と水蒸気を得て、両者の間に対流が生じるであろう。
そして、それが積雲を生じさせ、日本上空に近づく頃には厚い雲となって、雪を降らせる。
なお、2021年になってからの日本海側で大雪が継続的に降っているのに対し、なぜ寒気が次々と流れ込むのかを巡って、偏西風が日本付近で南に蛇行し、大陸からの寒気が日本上空に入りやすい、さらには、日本海の海水温が比較的高く、水蒸気の供給が多く、雪雲が発達しやすい等々、識者からの見方が入り雑じっているように見受けられる。
それから、次に問題となるのは、そのようにして雲粒にまではなったものが雨粒になることの説明がほしいのだが、1911年には、ドイツの科学者アルフレッド・ウェーゲナーが2つの説を発表する。
その一つは、水は融点(0℃)以下でも液体のままである(過冷却という)。もう一つは、氷の粒(氷晶)が空気中にあると、その氷の粒は水蒸気を引き寄せる。それは氷の粒の周りの水蒸気圧が水滴の周りの水蒸気圧よりも低いからだと。
ウェーゲナーはこれらから、もし氷晶と水滴が同時に存在したら、水滴は蒸発し氷晶が成長すると考えた。
その後の1935年、スウェーデンの気象学者ベルシェロンは、ウェーゲナーの説と自身の観察(0℃以下だと霧が林の小道に入らないが、0℃以上だと霧が入ってくる)に基づいて、「過冷却をした雲粒からできている雲の中に、たとえばその上にある氷の結晶となっている氷晶核が入ってくると、氷の飽和蒸気圧は水より低いので、水晶核に水蒸気が昇華して大きくなる」(高橋、前掲書)との説明を行う。
いってみれば、過冷却をした水滴からできている雲の中に、氷晶核が接触する、いいかえるとそこに氷晶核をまけば雨が降ることになろうという訳だ。
そうはいっても、熱帯ではどうなるのかがまだ説明されていない。なぜなら、気温の高い熱帯では、かなりの上空まで気温が0℃を上回っているのが多く、氷晶核があるとは考えられないのに、実際には雨が降る場合があろう(筆者は、以前ジャカルタの蒸し暑い中を歩いていたら、あれよあれよの間にというか、突然に空が雲り、どしゃ降りになったのを見たことがある)。
その一つは、水は融点(0℃)以下でも液体のままである(過冷却という)。もう一つは、氷の粒(氷晶)が空気中にあると、その氷の粒は水蒸気を引き寄せる。それは氷の粒の周りの水蒸気圧が水滴の周りの水蒸気圧よりも低いからだと。
ウェーゲナーはこれらから、もし氷晶と水滴が同時に存在したら、水滴は蒸発し氷晶が成長すると考えた。
その後の1935年、スウェーデンの気象学者ベルシェロンは、ウェーゲナーの説と自身の観察(0℃以下だと霧が林の小道に入らないが、0℃以上だと霧が入ってくる)に基づいて、「過冷却をした雲粒からできている雲の中に、たとえばその上にある氷の結晶となっている氷晶核が入ってくると、氷の飽和蒸気圧は水より低いので、水晶核に水蒸気が昇華して大きくなる」(高橋、前掲書)との説明を行う。
いってみれば、過冷却をした水滴からできている雲の中に、氷晶核が接触する、いいかえるとそこに氷晶核をまけば雨が降ることになろうという訳だ。
そうはいっても、熱帯ではどうなるのかがまだ説明されていない。なぜなら、気温の高い熱帯では、かなりの上空まで気温が0℃を上回っているのが多く、氷晶核があるとは考えられないのに、実際には雨が降る場合があろう(筆者は、以前ジャカルタの蒸し暑い中を歩いていたら、あれよあれよの間にというか、突然に空が雲り、どしゃ降りになったのを見たことがある)。
そこで、「現在では、雲粒が雨粒に変わる機構にはこの二つの場合が、あり、またこれが混合して雨となる場合があると考えはれている」(高橋、前掲書)と説明されている。
それから、雷については、積乱雲によって生じ、その雲の中で正と負の電荷にそれぞれ別れて存在するうちに、その間に大きな電位差ができ、ある程度以上になると放電をすることがわかっている。
観測からも、フランクリンの凧上げにもあるように、雷雲の中では、正負の電荷が分離して、正は上部に、負は下部に分布しているという、それはわかったとしても、だがしかし、どのようにしてこのような電荷の分離が行われるのだろうか。
1930年代、イギリスのシンブソンは氷の粒の衝突を、アメリカのワークマンとレイノルズは、水や薄い溶液が凍る時にも、正と負の電気が別れるとするなど、多くの学説が出され現在にいたるも、いまだに確定した説がないという。
観測からも、フランクリンの凧上げにもあるように、雷雲の中では、正負の電荷が分離して、正は上部に、負は下部に分布しているという、それはわかったとしても、だがしかし、どのようにしてこのような電荷の分離が行われるのだろうか。
1930年代、イギリスのシンブソンは氷の粒の衝突を、アメリカのワークマンとレイノルズは、水や薄い溶液が凍る時にも、正と負の電気が別れるとするなど、多くの学説が出され現在にいたるも、いまだに確定した説がないという。
(続く)
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