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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(14)鼻びしびしに

2009年09月15日 | 憶良編
【掲載日:平成21年10月1日】

・・・堅塩かたしほを りつづしろひ 糟湯酒かすゆざけ うちすすろひて 
しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ ひげかき撫でて・・・


貧者に代わりて 世相を申し上げる〔山上憶良〕 

まじり 雨降るの 雨まじり 雪降るは すべもなく 寒くしあれば 
《雨風吹いて 雪までじり 我慢もできん 寒さの夜は》
堅塩かたしほを りつづしろひ 糟湯酒かすゆざけ うちすすろひて 
しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ ひげかき撫でて
 
《塩をつまんで うす酒すすり せきして鼻たれ 無いひげでて》
あれきて 人は在らじと ほころへど 
《ワシは偉いと 言うてはみても》 
寒くしあれば 麻衾あさぶすま 引きかがふり 
ぬのかたぎぬ 有りのことごと 服きそへども 寒き夜すらを

《寒いよってに 安布団ふとんかぶり 有るもん全部 重ねて着ても
 それでもさむて たまらん晩を》
われよりも 貧しき人の 父母は さむからむ 妻子めこどもは ふ泣くらむ 
この時は 如何いかにしつつか が世は渡る

《もっと貧乏びんぼな お前の家は 父母おやは飢えてて 妻や子泣いて  毎日どないに 過ごしてるんや》 
天地あめつちは 広しといへど が為ためは 狭くやなりぬる 
日月ひつきは 明あかしといへど 吾ためは 照りや給はぬ
 
世間せけんひろても わしには狭い 明るい日や月 わしには照らん》  
人皆か のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並ひとなみに あれれるを 
みんなそやろか ワシだけやろか ワシも人間ひとやで 人並みやのに》
綿も無き 布肩衣ぬのかたぎぬの 海松みるごと わわけさがれる 襤褸かかふのみ 肩にうち懸け 
《綿なし服は 海藻かいそうみたい 肩に掛けたら びらびら垂れる》
伏廬ふせいほの 曲廬まげいほの内に 直土ひたつちに わら解き敷きて 
父母は まくらかたに 妻子めこどもは あとかたに かくて うれさまよ
 
《傾く家の 土間どまわら敷いて 父母おやは枕に 妻子つまこは足に 固まりうて うれいて嘆く》
かまどには 火気ほけふき立てず こしきには 蜘蛛くもの巣きて 
いひかしく 事も忘れて ぬえどりの 呻吟のどよるに
 
《釜に蜘蛛くも 火のないかまど めしき忘れて うめいてばかり》
いとのきて 短き物を はしると へるが如く しもと取る 里長さとをさが声は 
寝屋戸ねやどまで 立ちばひぬ かくばかり すべ無きものか 世間よのなかの道

むち持つ役人 手加減なしに 寝てるとこ来て がなって叫ぶ
 世の中これで えんか ほんま》
                         ―山上憶良―〔巻五・八九二〕 
世間よのなかを しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば 
《世の中は つろうてうっとし 思うけど 逃げ出されへん 鳥ちゃうよって》
                         ―山上憶良―〔巻五・八九三〕 



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