令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

憶良編(10)京師(みやこ)を見むと

2009年09月19日 | 憶良編
【掲載日:平成21年9月25日】

うち日さす 宮へのぼると たらちしや 母が手はなれ 
つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 
何時いつしかも 京師みやこを見むと・・・



肥後国ひごのくに益城郡ましきのこおりの国司の使い 
筑前国府への突然のおとな
相撲使すもうづかいとして 都のぼりの途上 
若い従者 大伴君熊凝おおとものきみくまこり急死
親元への 急ぎ使いに 馬をとの要請 
一部始終を聞き 熊凝くまこりの心を 思いやる 憶良

うち日さす 宮へのぼると たらちしや 母が手はなれ 
つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 
何時いつしかも 京師みやこを見むと 思ひつつ 語らひれど
 
《都へ行くと 故郷くにあとに 知らぬ他国の 奥山やま越えて
 早く都を 見たいなと 噂しながら 来たけども》 
おのが身し いたはしければ 玉桙たまほこの 道の隈廻くまみに 
手折たをり 柴取り敷きて とこじもの うちして 
思ひつつ 嘆きせらく
 
《思いも掛けず 病気なり  道のほとりに 草や柴
 敷いて作った 仮床かりどこに 身を横たえて 思うには》
国に在らば 父とり見まし 家に在らば 母とり見まし  
世間よのなかは かくのみならし いぬじもの 道にしてや いのちぎなむ

故郷くににおったら おっあん 家におったら おっさん
 枕そば来て 看取みとるのに ままにならんと 道のはた 犬が死ぬよに くたばるよ》
                         ―山上憶良―〔巻五・八八六〕 

たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方いづち向きてか が別るらむ
かあちゃんに 会わんとくか 鬱々うつうつと 何処どこをどうして 行ったらんや》
常知らぬ 道の長手ながてを くれくれと 如何いかにか行かむ かりては無しに
《行ったこと ない道続く あの世旅 弁当べんと持たんと どないに行くか》
家に在りて 母がとりば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも 
《家って おかあが看取り するんなら 例え死んでも くやめへんのに》
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母らはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな  おとうとおかあ
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母を 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくのか ひとりあの世へ》
                    ―山上憶良―〔巻五・八八七~八九一〕 

子煩悩こぼんのう憶良に 他人ひとの身とも思えぬ 痛みが走る


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