【掲載日:平成21年9月23日】
懸けまくは あやに畏し 足日女 神の命 韓国を 向け平げて 御心を 鎮め給ふと い取らして 斎ひ給ひし 真珠なす 二つの石を・・・
【深江子負原八幡・鳥居前の石は安政年間建立の万葉歌碑】
かねがね 訪れたいとの思い
やっと叶って
今 憶良は 怡土郡深江村にいる
玄界灘の向こう
はるかに 壱岐・対馬
韓国は かすみの向こうか
深江の浜を望む 小高い丘に それは あった
大小 径一尺を越す 二つの長丸石
往来の者 すべからく 拝すという
那珂郡蓑島の 建部牛麿の言葉 そのままに
石守りの古老の話に 憶良は 筆を執る
懸けまくは あやに畏し 足日女 神の命 韓国を 向け平げて
御心を 鎮め給ふと い取らして 斎ひ給ひし 真珠なす 二つの石を
世の人に 示し給ひて 万代に 言ひ継ぐがねと
《神功の 皇后はんが 韓国の 征伐行く時 持ってった 心鎮めの 祈り石
二つを見せて 世の人に 後々までも 言い継げと》
海の底 沖つ深江の 海上の 子負の原に み手づから 置かし給ひて
神ながら 神さび坐す 奇魂 今の現に 尊きろかむ
《海を望める 子負の丘 自ら祀る 神の石
年月経って 今見ても なんと尊い この石よ》
―山上憶良―〔巻五・八一三〕
天地の 共に久しく 言ひ継げと 此の奇魂 敷かしけらしも
《この話 ずうっとずっと 伝えよと お置きになった 神宿り石》
―山上憶良―〔巻五・八一四〕
一衣帯水
韓国との海峡は
交易につけ 軍事につけ 船の行き交った海
その昔 若い憶良を 唐へと運んだ海
憶良の はるか 昔
伝説が 伝える 鎮懐石の置かれた小丘
憶良の老いの眼が 海の向こうを見ている
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