令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(二)(08)香(かく)の木(こ)の実を

2011年07月26日 | 家待・越中編(二)歌心湧出
【掲載日:平成23年5月20日】

・・・ほこ持ち し時
         時じくの かくの実を かしこくも のこし給へれ・・・



聖武ていの 詔書しょうしょを思うたび
家持 の胸は 熱くなる
天皇おおきみの御代 栄えのいしずえ
 橘諸兄もろえ様をいて無い
 我ら大伴 伴造とものみやつこの役目 果たす言えど
 かなめとなるは 「きつ
 いかな 権勢けんせいとはいえ 「とう」はかなわぬ〕

けまくも あやにかしこし 皇神祖すめるきの 神のおおに 田道間守たぢまもり 常世とこよに渡り 
ほこ持ち し時 時じくの かくの実を かしこくも のこし給へれ 

天皇おおきみの ご先祖さんの その昔 田道間守たじまもりさん 常世とこよ行き
 ほこささげて 戻りて かおえ実の たちばなを 持って帰られ 伝え来た》
国もに ひ立ち栄え 春されば 孫枝ひこえいつつ 
霍公鳥ほととぎす 鳴く五月さつきには 初花はつはなを 枝に手折たをりて 娘子をとめらに つとにもりみ
 
《今は国中くにじゅに 植えられて 春になったら 枝伸ばし
 ほととぎす鳴く 五月咲く 初花枝を 手に取って 乙女ら贈る 土産みやげにと》
白栲しろたへの 袖にも扱入こきれ かぐはしみ 置きて枯らしみ 
あゆる実は たまきつつ 手に巻きて 見れどもかず
 
《袖入れ香り 楽しんで 花散ったあと 落ちた実に
 糸とおしして 手に巻いて きもせんとに で遊ぶ》
秋づけば 時雨しぐれの雨降り あしひきの 山の木末こぬれは くれなゐに にほひ散れども 
たちばなの 成れるそのは ひた照りに いや見がしく

時雨しぐれの秋は 山の木々 紅葉あこうになって 散ってゆく
 けどたちばなの 成った実は つやと輝き 人目引く》
み雪降る 冬に至れば しも置けども その葉も枯れず 常磐ときはなす いやさかえに 
しも置く冬が 来たとても その葉枯れんと 常緑みどりまま》
しかれこそ 神の御代みよより よろしなへ このたちばなを 時じくの かくの実と 名けけらしも
《それやからこそ 神代かみよから このたちばなを いつまでも かおり続ける 木の実やと 言われるのんは もっともや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四一一一〕

たちばなは 花にもにも 見つれども いや時じくに なほし見が
たちばなは はなどきどき えけども どんな時でも また見となるで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四一一二〕
                                五月二十三日】

京にのぼれば 是非にも橘諸兄もろえ様にと 家持うた

見まくり 思ひしなへに かづらけ かぐはし君を 相見つるかも
《逢いたいと おもてた橘卿あんた かずらつけ 素敵な姿 見かけましたで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四一二〇〕
朝参まゐいりの 君が姿を 見ずひさに ひなにし住めば れ恋ひにけり
《朝廷の 橘卿あんたの姿 久しぶり 田舎いなかって 焦がれてました》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四一二一〕
                               五月二十八日】



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