【掲載日:平成23年5月24日】
さ百合花 後も逢はむと
下延ふる 心し無くは 今日も経めやも
帝を 思い
橘諸兄を 思い
都を思う家持に 自とに 大嬢の面影
大君の 遠の朝廷と 任き給ふ 官のまにま み雪降る 越に下り来
あらたまの 年の五年 敷栲の 手枕まかず 紐解かず 丸寝をすれば
《この国の 遠い政府に 任受けて 雪降る越に やって来て
五年になるが その間 柔らか手枕 為もせんと 紐も解かんと 着衣寝日々》
いぶせみと 心慰に なでしこを やどに蒔き生ほし 夏の野の さ百合引き植ゑて
《鬱陶し気持ち 晴らそうと 撫子花を 庭に植え 夏野の百合を 移し替え》
咲く花を 出で見るごとに なでしこが その花妻に さ百合花 後も逢はむと
《花見よ思て 庭出ると 撫子妻に 似てるがな 百合花見ると 逢いとなる》
慰むる 心し無くは 天離る 鄙に一日も あるべくもあれや
《心慰み 出けへんで 都の遠い この越で 一日たりと 暮らすん辛い》
―大伴家持―〔巻十八・四一一三〕
なでしこが 花見るごとに 娘子らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも
《撫子の 花見る度 可愛らしい お前の笑顔 思い出すがな》
―大伴家持―〔巻十八・四一一四〕
さ百合花 後も逢はむと 下延ふる 心し無くは 今日も経めやも
《百合を見て きっと逢えると 思わんと 今日一日を 過ごされへんわ》
―大伴家持―〔巻十八・四一一五〕
【五月二十六日】
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