令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(25)船暫(しば)し貸せ

2011年01月18日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年3月4日】

奈呉なごの海に 船しばし貸せ
        おきに出でて 波立ちやと 見て帰り



家持は 心のおどりを 抑えかねていた
都から ぞうしゅつかさ三等官 田辺福麻呂たなべのさきまろが来る 
都の様子も  さることながら
左大臣橘諸兄たちばなのもろえ使者 
役目帯びての らいえつである
時に  天平二十年〔748〕三月二十三日

快活旧知きゅうち さき麻呂まろを前に 
家持 ひょうてみせる
さき麻呂まろ殿 ようこその遠路
 家持め  歌を用意の上 
 首を長うして  待ちおりました
 まずは ご披見ひけんあれ」
「これなるは さき麻呂まろ殿を 鶯に見立てての作」

うぐひすは 今は鳴かむと かたてば 霞たなびき 月はにつつ
《もうじきと 鶯鳴くん 待ってたが 霞ばっかり 日ィつばかり》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・四〇三〇〕

「次なるは ぞうしゅつかさのお役目に ことせて」 

中臣なかとみの ふと祝詞のりとごと 言ひはらへ あがふ命も 誰がためになれ
《酒そなえ 祝詞のりと唱えて おはらいし 無事祈るんは 福麻呂あんたのためや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・四〇三一〕

「これはまた 奇抜きばつなご挨拶
 我輩それがしも 負けませぬぞ
 わしが 逢いとうおもうたは 
 かみ殿どのでなく の海」

奈呉なごの海に 船しばし貸せ おきに出でて 波立ちやと 見て帰り
船貸してんか 奈呉なごの海出て おき波が 立って寄せるん 見てるよって》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三二〕

波立てば 奈呉なご浦廻うらまに 寄る貝の き恋にぞ 年はにける
奈呉なご浜に 波貝寄せる ぁ無しや 間なし逢いとて 年月としつきった》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三三〕

奈呉なごの海に しほの早ば あさりしに 出でむとたづは 今ぞ鳴くなる
奈呉なご浜で 潮が引いたら えさ捕ろと 待ってた鶴が 今鳴いとおる》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三四〕

霍公鳥ほととぎす いとふ時なし 菖蒲草あやめぐさ かづらにせむ日 こゆ鳴き渡れ
《ほととぎす な時ないが 菖蒲草あやめぐさ かずらする日は ここ来て鳴いて》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三五〕

かみ 家持の館のうたげ 談笑の輪が広がる


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