【掲載日:平成24年3月2日】
三日月の 清にも見えず 雲隠り 見まくぞ欲しき うたてこのころ
雲霧晴れて 出る月見れば
ここ照る月を あの児も見るか
思い映して 心は通う
霜 風 日にも 託して詠う
遠き妹が 振り放け見つつ 偲ふらむ この月の面に 雲なたなびき
《遠く居り わしを偲んで 仰いでる お前見る月 雲懸るなよ》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六〇)
山の端を 追ふ三日月の はつはつに 妹をぞ見つる 恋ほしきまでに
《山沈む 三日月みたい ちらと見た お前姿に 胸どきどきや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六一)
我妹子し 我れを思はば 真澄鏡 照り出づる月の 影に見え来ね
《お前ちゃん 思うてるなら 出ておいで 照る月みたい 顔見せてえな》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六二)
久方の 天照る月の 隠りなば 何になそへて 妹を偲はむ
《空で照る 月が隠れて 仕舞うたら お前偲ぶに 縁無うなる》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六三)
三日月の 清にも見えず 雲隠り 見まくぞ欲しき うたてこのころ
《雲隠れ 三日月見えん お前にも 逢いとてならん このごろ妙に》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四六四)
朝霜の 消なば消ぬべく 思ひつつ いかにこの夜を 明かしてむかも
《消えんなら 消えても良えで この命 焦がれるこの夜 どう明かすんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四五八)
我が背子が 浜行く風の いや早に 言を急みか いや逢はずあらむ
《浜風が 強吹くみたい 偉ろ早よに 噂広がり 余計逢われんが》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四五九)
妹に恋ひ 寝ねぬ朝に 吹く風は 妹にし触れば 我れさへに触れ
《恋しいて 寝られん朝に 吹く風よ あの児触れたら わしにも触れて》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五八)
菅の根の ねもころごろに 照る日にも 干めや我が袖 妹に逢はずして
《十分に 照る日差しでも 乾かへん お前逢えんで 濡らした袖は》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五七)
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