【掲載日:平成23年12月16日】
奥山の 樒が花の 名のごとや
しくしく君に 恋ひわたりなむ
安宿奈杼麻呂 奈良邸宴の後
半月ばかり
池主宅での飲宴
招待客 大原今城の歌に 涙する池主
初雪は 千重に降りしけ 恋ひしくの 多かる我れは 見つつ偲はむ
《初雪よ 積りに積もれ 逢いとうて 堪らんわしは 見て偲ぶから》
―大原今城―(巻二十・四四七五)
(今日も雪じゃが
何故の 初雪? 初雪は新年の雪
初雪見て 偲ぼうと言うか
年明けては 最早逢えぬとか・・・)
奥山の 樒が花の 名のごとや しくしく君に 恋ひわたりなむ
《奥山の 樒の花の 名前通り 頻りにあんた 逢いとなるんか》
―大原今城―(巻二十・四四七六)
【十一月二十三日】
(『しくしく 恋わたりなむ』
まして 仏前供えの『樒』
まるで 死別れ歌じゃ
おおう そうかそうか
これは 正しく 輔殿託しの 別離歌
おおぉ 輔殿・・・ 輔殿・・・)
夕霧に 千鳥の鳴きし 佐保路をば 荒しやしてむ 見るよしを無み
《夕霧に 千鳥鳴いてた 佐保の道 通い出けんで 荒れて仕舞うんか》
―圓方女王―(巻二十・四四七七)
佐保川に 凍り渡れる 薄氷の 薄き心を 我が思はなくに
《佐保川に 敷き詰め張った 薄氷 わしの思いは 薄うはないで》
―大原櫻井―(巻二十・四四七八)
朝夕に 哭のみし泣けば 焼大刀の 利心も我れは 思ひかねつも
《朝に晩 泣きに泣いたら 萎えて仕舞て しっかり心 失くして仕舞た》
―藤原氷上夫人―(巻二十・四四七九)
畏きや 天の御門を 懸けつれば 哭のみし泣かゆ 朝夕にして
《朝廷の 今の様子を 思うたら 泣けに泣けるで 朝昼なしに》
―作者未詳―(巻二十・四四八〇)
(大原今城殿
『これは 手に入れし 古い歌じゃが』
と 残せし歌
皆々 挽歌もしくは 挽歌擬
それに 佐保路 佐保川・・・
全てこれ 輔殿が 慮り・・・)
池主に 今更ながらの 奈良麻呂同調悔やみ
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