【掲載日:平成23年12月6日】
水泡なす 仮れる身ぞとは 知れれども
なほし願ひつ 千歳の命を
「池主殿 それは ならぬぞ
仲麻呂殿の 為されよう 如何に無道と云え
天皇 皇太后様 巻き込む所業は ならぬ
皇室守護任ずる 大伴
伴造役目
守り来る ご先祖に 仇為すもの
ならぬ ならぬ」
「輔殿の申し条
分かればこその 進言でござる
大伴一族 すでに 一家を立てしは 多く
纏まっての団結 望むべく無く
古慈斐殿 古麻呂殿 奈良麻呂殿と結盟
我輩も 参ずる所存 固めし処
元より 成算薄きは 承知の上
然ればこその 願い事
大伴家存続
輔殿が手に 委ねられております
佐保大納言家一族への 諭しの公言
これ無くしての
生き延び手段 御座いませぬ
古慈斐殿 讒言は
まさに 仲麻呂が宣戦布告
今を措いて
『族諭し公言』の好機 御座いませぬ」
(思えば 何と云う時代に 巡り合わせたことか
一族が 散り散りになる事態
進むも地獄 残るも地獄
池主殿 申して居った
『以後の行き来 適わぬゆえ
お目もじは これが最後
最早 お会いせぬが 一族が為』
万端 已む無しの 『族諭し公言』
発すれど 蜂起止める術なし
皇室守護が 大伴役目
佐保大納言家 いや 家持一人なりとも
果たさで なるものか・・・)
身の病に 沈鬱心の病
家持は 思わずに 仏を祈る
うつせみは 数無き身なり 山川の 清けき見つつ 道を尋ねな
《人の世は 儚いもんや 山川の 清さ見つめて 修行に励も》
―大伴家持―(巻二十・四四六八)
渡る日の 影に競ひて 尋ねてな 清きその道 またも遇はむため
《毎日を 日数重ねて 尋ね行こ 悟りの道を 来世の為に》
―大伴家持―(巻二十・四四六九)
水泡なす 仮れる身ぞとは 知れれども なほし願ひつ 千歳の命を
《水に浮く 泡みたいな 身やけども 願うてみるで 千年命》
―大伴家持―(巻二十・四四七〇)
【六月十七日】
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