goo blog サービス終了のお知らせ 

令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂歌集編(25)安の渡りに

2012年05月01日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年5月1日】

天のかは やすわたりに 舟けて 秋立つ待つと いもげこそ


【天上】毎夜うかがう 川向こあた

白雲の 五百重いほへかくり とほくとも よひさらず見む いもがあたりは
《白雲が 隠し隠して 遠いけど 毎晩見るで お前とこ
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二六)
白玉しらたまの 五百いほつどひを きもみず 我れは寝かてぬ 逢はむ日待つ
《白玉の 多数ようけの飾り 付けたまま うち寝つけんわ 逢う日待ってて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一二)

【地上】星がらめく 川岸こて

彦星ひこぼしは 嘆かす妻に ことだにも 告げにぞつる 見れば苦しみ
《彦星は 妻嘆くんを 可哀想かわいそと 言葉掛けよと 岸出て来てる》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇六)

【天上】声よ届くか こ岸までも

天の川 いむかひ立ちて こひしらに ことだに告げむ 妻問ふまでは
 川に向き 立って見てても 恋しだけ 言葉交わそや せめて逢うまで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一一)
天のかは やすわたりに 舟けて 秋立つ待つと いもげこそ
《天の川 安の渡し場 舟浮かし 秋待ってるて 織姫あのこに言うて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇〇)
よしゑやし ただならずとも ぬえ鳥の うらりと 告げむ子もがも
《逢われんの 仕様しょうないのんで 恋しいて 嘆いとるて う子らんか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三一)
ぬばたまの 夜霧にこもり とほくとも いもが伝へは 早くげこそ
《夜霧出て 隠れとおうて 見えんけど 妻の言伝ことづて 早よ聞かしてや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇八)
秋されば 川霧立てる 天の川 川に向きて 恋ふるぞ多き
《秋来たら 霧立つ川に 向かいて 恋し思うて 過ごす夜いで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三〇)

【地上】ああ待ちがれ 星消えかかる

久方の 天の川原かはらに ぬえ鳥の うらげましつ すべなきまでに
《天の川 川原待つ人 織姫おりひめは 嘆きしおれて いたわしほどや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九七)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(24)神代し恨(うら)めし

2012年04月20日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年4月20日】

ひさかたの あましるしと し川 へだてて置きし 神代かみようらめし



舞台天上てんじょう 地上は桟敷さじき 待つは一年ひととせ 上演一夜ひとよ
七夕たなばた劇の 幕引き上がる 固唾かたず見守る 一幕ひとまく浪漫ろまん

【地上】七夕たなばた待って 夢せ仰ぐ

あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に ぎ隠る見ゆ
天海てんうみや 雲は波やで つきふねや ほしはやしやで ぐのん見える》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇六八)
赤らひく 色ぐはし子を しば見れば人妻ゆゑに れ恋ひぬべし
ほおこて 色っぽい織姫ひと 見てると 彦星だんなるのに 惚れて仕舞しまうで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一九九九)
夕星ゆふつつも かよ天道あまぢを 何時いつまでか あふぎて待たむ 月人つきひと壮士をとこ
明星みょうじょうも かよそらみち 仰ぎ見て どんだけ待つか 彦星ひこぼしさんよ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一〇)

【天上】悲し定めと あきらめおれど

天の川 やす川原かはらの 定まりて 心きほへは ぎて待たなく
《その昔 安の川原で 隔てられ 心逢いとて 辛抱しんぼうできん》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇三三)
ひさかたの あましるしと し川 へだてて置きし 神代かみようらめし
空中そらなかの 目印めじるし仕様しょうと 枯れ川を 造り隔てた 神代恨むわ》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇七)
八千桙やちほこの 神の御代みよより ともしづま 人知りにけり ぎてし思へば
《神代から 滅多めった逢われん 妻として 知れ渡っとる い恋や》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇二)
天地あめつちと 別れし時ゆ おのが妻 しかれてあり 秋待つ我れは
 あの子とは 天地別れた 昔から 離れとるんで 秋待っとんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇〇五)
万代よろづよに 照るべき月も 雲隠くもがくり 苦しきものぞ 逢はむと思へど
何時いつも照る 月に雲出て ままならん うちらもやで 逢いたいのんに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二五)

 【天上】相手気に掛け 思いは募る

がためと 織女たなばたつめの そのやどに 白栲しろたへは りてけむかも
《わしのため 織姫おりひめいえで る布は もう仕上がって 仕舞しもたやろうか》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二七)
いにしへゆ げてしはたも かへりみず 天の川津かはつに 年ぞにける
往古むかしから り続けた っぽって 岸辺たたずみ 一年った》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇一九)
君に逢はず 久しき時ゆ はたの 白栲しろたへごろも 垢付あかづくまでに
《逢わんまま 長い月日に 織った布 日ぃったんで あか付いて仕舞た》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二〇二八)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(23)苔生(む)しにたり

2012年04月13日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年4月13日】

敷栲しきたへの 枕は人に ことへや その枕には 苔しにたり



複数歌を 掛け合わせ 形を作る 問答歌もんどうか
ここに挙げたる 問答は 男女おとこおんなの 心機微きび

御殿ごてん仕えの 男と女
気心 知れた 仲かと見える

皇祖すめろきの 神の御門みかどを かしこみと 侍従さもらふ時に 逢へる君かも
天皇おおきみの 御殿ごてんつかえを してる時 何であんたは 口説くどくんやねん》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇八)
真澄まそかがみ 見とも言はめや 玉かぎる 石垣いはかきふちの こもりたる妻
なびいても 誰にも言わん えやんか かとわんと こっち来たどや》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇九)

恋に夢中の 男をさと
女待ちつつ その気をあお

赤駒が 足掻あがきはやけば 雲居にも かくり行かむぞ そで我妹わぎも
《わしの馬 あし速いんや すっ飛ばし すぐ着くよって 共寝支度ねじたくしとき》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一〇)
隠口こもりくの 豊泊瀬道とよはつせぢは 常滑とこなめの かしこき道ぞ 恋ふらくはゆめ
はつみち つるつるすべる こわい道 こいけしたら 怪我けがするんやで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一一)
うまさけの 三諸みもろの山に 立つ月の 見がし君が 馬のおとぞする
三諸山みむろやま 出るん待つ月 あんたはん 馬の脚音あしおと 聞こえてきたで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一二)

一緒りたい このままずっと
 よ降れ降れ うち味方して

雷神なるかみの 少しとよみて さし曇り 雨も降らぬか 君をとどめむ
《雷が 鳴って曇って 来たみたい あんたて欲し 雨降らんかな》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一三)
雷神なるかみの 少しとよみて 降らずとも とどまらむ いもとどめば
《雷が 鳴って雨なぞ 降らんでも わしまだるで お前がなら》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一四)

軽口かるくち交わす 二人の仲は
誰もはいれん お熱い限り

敷栲しきたへの 枕とよみて よるず 思ふ人には のち逢ふものと
《寝られんな 動き物う この枕 お前にあとで 逢えるうたで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一五)
敷栲しきたへの 枕は人に ことへや その枕には 苔しにたり
《その枕 人に物う 道理わけ無いで 見てみ枕に 苔えとるで》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五一六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(22)霜降り覆(おほ)ひ

2012年04月10日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年4月10日】

秋山に しもおほひ の葉散り 年は行くとも 我れ忘れめや


 の相問 採り上げるのは
黄葉もみじ尾花おばなに 散りゆく木の葉
りる露霜 立ち渡る霧
冬相 問は 雪こそ全て

秋山の したひがしたに 鳴く鳥の 声だに聞かば 何か嘆かむ
《逢えんけど せめてあんたの 声したら こんな嘆きは えへんやろに》
                               (「したひ」は 黄葉に赤く照る様)
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二二三九)
秋の野の 尾花をばなうれの なびき 心は妹に りにけるかも
《秋の野の すすきの穂ぉが 靡くに 心靡いて お前べったり》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二二四二)
秋山に しもおほひ の葉散り 年は行くとも 我れ忘れめや
《この年を うち忘れへん 霜降って ぁ散って 年変わっても》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二二四三)
かれと 我れをな問ひそ 九月ながつきの 露に濡れつつ 君待つ我れを
《誰やて 聞かんで欲しな 冷えてくる つゆ濡れながら あの人待つに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二二四〇)
秋のの 霧立ちわたり おほほしく いめにぞ見つる いもが姿を
 秋の夜に 立つ霧みたい ぼんやりと 夢に見たんや お前の姿》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二二四一)
降る雪の 空にぬべく 恋ふれども ふよしなしに 月ぞにける
《雪みたい 身ぃ消えるほど 焦がれても 逢う伝手つてうて 日ぃって仕舞た》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二三三三)
あわゆきは 千重ちへに降りしけ 恋ひしくの 長きれは 見つつしのはむ
《沫雪よ 降りに降れ降れ 恋しゅうて ご待つわしは 見て偲ぶから》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・二三三四)

 妻に与える歌一首】
雪こそば 春日はるひゆらめ 心さへ 消えせたれや ことも通はぬ
《残り雪 春消えるけど 心まで 消えたうんか 音沙汰おとさたしに》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一七八二)
 妻が応える歌一首】
かへり しひてあれやは 三栗みつぐりの 中上なかのぼぬ 麻呂まろといふやっこ
ぼけけたんか 任期途中の 中帰なかがえり もせんとから あの阿保あほ麻呂が》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻九・一七八三)
                     (中上り=地方官が任期の途中で報告に上京すること)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(21)友鴬の

2012年04月06日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年4月6日】

春山の ともうぐひすの 泣き別れ 帰りますも 思ほせ我れを


互いにうが そうもんで 消息聞くが 元の意味
遣り取りわし 移り来て 恋歌こいうた同義どうぎ そうもん

 の相問 採り上げ題は
鳴く鶯に 咲き誇りばな
 立つ霞 芽吹きの柳
浮き立つ春は 恋相応ふさわしい

春山の ともうぐひすの 泣き別れ 帰りますも 思ほせ我れを
 泣く泣くに 別れて帰る 帰り道 道々思て このうちのこと》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九〇)
                                 (春山の友鶯の→鶯鳴く→泣き)
冬こもり 春咲く花を 手折たをり持ち 千度ちたびの限り 恋ひ渡るかも
《待っとって 咲いた春花はな摘み 抱きしめて あんたずうっと 思てんねんで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九一)
春山の 霧にまとへる うぐひすも 我れにまさりて 物おもはめやも
《春山の 霧にまようた 鶯も わし程悩み 苦しみせんで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九二)
でて見る むかひの岡にもとしげく 咲きたる花の 成らずはまじ
《家の前 向いの丘で 咲く花は きっとに成る うちの恋かて》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九三)
霞立つ 春の長日ながひを 恋ひ暮らし けゆくに いもも逢はぬかも
《霞立つ 春の一日いちにち 恋い続け よるけんのに 逢われへんのか》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九四)
春されば まづ三枝さきくさの さきくあらば のちにも逢はむ な恋ひそ我妹わぎも
《春に咲く 三枝さえぐさみたい 生きてたら 逢うこと出来る 悩みなお前》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九五)
春されば しだり柳の とををにも いもは心に 乗りにけるかも
《春来たら やなぎ枝垂しだれ しのてくる あの児わし胸 しないかかるで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八九六)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(20)守(まも)る人のありて

2012年04月03日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年4月3日】

この川ゆ 船は行くべく ありといへど 渡りごとに まもる人のありて


 木に寄せて】
あまくもの たなびく山の こもりたる が下心 木の葉知るらむ
《雲なびき 山隠れてて 見えんけど わしの奥心こころは の葉知ってる》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇四)
見れど飽かぬ ひと国山くにやまの 木の葉をし 我が心から なつかしみ思ふ
《気に入った ひと国山くにやまの の葉っぱ 心底しんそこわしは れしてる》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇五)
 の葉あの児や 可愛いあの児
繁る枝中えだなか あの葉やあの児

 花に寄せて】
この山の 黄葉もみぢが下の 花を我れ はつはつに見て なほ恋ひにけり
黄葉下もみじした 咲く花わしは ちらと見て そのまま恋に 落ちて仕舞しもたで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇六)
見掛け 一目で 惚れたんやがな
逢い に行こ行こ 今晩にでも

 川に寄せて】
この川ゆ 船は行くべく ありといへど 渡りごとに まもる人のありて
《この川を 通ると船は 行きいが どの渡場わたしばも 番人るで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇七)
訪ね来てみた 家外いえそと立って
うかがい見たら 警戒固い

 海に寄せて】
雲隠くもがくる 小島こしまの神の かしこけば 目こそばへだて 心隔てや
《隠れてる 小島の神が こわいんで 逢わんとるが 心はちゃうで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三一〇)
守る両親ふたおや こわぁてならん
けどわしあの児 あきらめ切れん

大海を さもらふ港 事しあらば 何方いづへゆ君は しのがむ
 荒れる海 港無理出て もしもなら このうちちゃんと 守るかあんた》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇八)
親の反対 押切りさそ
強引むり連れ出して 責任取りや

風吹きて 海はるれど 明日あすと言はば 久しくあるべし 君がまにまに
《風吹いて 海荒れるから めるてか うち待たれへん どうかせんかい》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇九)
連れて 来たのに 今更何で
躊躇ちゅうちょぐずぐず しっかりしいや



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(19)千度(ちたび)ぞ告(の)りし

2012年03月30日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月30日】

海神わたつみの 持てる白玉 見まくり 千度ちたびりし かづきする海人あま




物にたとえる 比喩歌ひゆうたは 人の姿態すがたや おこないや
感情こころを物に 置き換えて 寓意ぐうい含ませ うたう歌

その まま聞けば 何でもないが
 に隠した 謎掛け歌よ
裏隠れるは そうもんごころ
分かって 欲しい この胸の内

 衣に寄せて】
今作る まだらころも おもづきて 我れに思ほゆ いまだ着ねども
《作ってる まだらふく 見る限り わしに合いや まだ着てへんが》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九六)
お前可愛かわいで このわし似合い
まだ共寝とらんが 間違い無しに

くれなゐに ころもめまく しけども 着てにほはばか 人の知るべき
くれないに ふくめたいと 思うけど 目立ち過ぎたら 気付かれて仕舞う》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九七)
ほん に嬉しや うちかてそうや
こしたら 知られて仕舞うな

かにかくに 人は言ふとも がむ 我が機物はたものの 白き麻衣あさごろも
《あれこれと 他人ひとうたかて 続けろ 機織はたお途中とちゅの しろ麻衣あさごろも
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九八)
あの人アカン みなめときて
うけどうちは 付いてこ思う

 玉に寄せて】
あぢむらの とをよる海に 舟けて 白玉採ると 人に知らゆな
味鴨あじかもの 群がる海に 船浮かべ 真珠しんじゅろして 人に知られな》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一二九九)
遠近をちこちの 磯のなかなる 白玉を 人に知らえず 見むよしもがも
《あちこちの 磯の中ある しんじゅたま 人知られんと りたいんやが》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇〇)
あの児えけど 近づき出けん
一寸ちょっと何とか ならんやろうか

海神わたつみの 手に巻き持てる 玉ゆゑに 磯の浦廻うらみに かづきするかも
海神うみがみが 持つ玉やから 苦労して 岩い海で もぐってるんや》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇一)
海神わたつみの 持てる白玉 見まくり 千度ちたびりし かづきする海人あま
《海の神 持ってる玉を 採りとうて そのたび祈り もぐ海人わしやで》
                       ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇二)
かづきする 海人あまれども 海神わたつみの 心し得ねば 見ゆといはなくに
もぐたび 祈ってみても 海神うみがみが わへんと 採れる訳ない》
                      ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一三〇三)
 ないしてでも あの児が欲しい
 さん頼む 何とかしてや




――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(18)諸刃(もろは)の利(と)きに

2012年03月20日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月20日】

つるぎ大刀たち 諸刃もろはきに 足みて 死なば死なむよ 君にりては



日毎ひごと生活くらしに 欠かせぬ道具
 太刀持つは 男の役目
 に櫛は 女の命
ころもひも 男女の契り

あずさゆみ 引きて許さず あらませば かかる恋には 逢はざらましを
《しっかりと 心引き締め しとったら こんな苦しい 恋なんだに》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇五)
つるぎ大刀たち 諸刃もろはきに 足みて 死なば死なむよ 君にりては
太刀たちの刃を 足で踏み貫き 死ぬんなら 死んでもえで あんたためなら》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九八)
我妹子わぎもこに 恋ひし渡れば つるぎ大刀たち 名のしけくも 思ひかねつも
《お前ちゃん 恋し続けて れるなら 名前評判 なんにもらん》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九九)
                             (剣大刀→刃を「ナ」と言った→名)
里遠み 恋ひうらぶれぬ 真澄まそかがみ とこ去らず いめに見えこそ
《離れ住み 恋えてるで このとこに 何時いつも現れ 夢出て来てや》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇一)
真澄まそかがみ 手に取り持ちて あさな 見れども君は くこともなし
《毎朝に 澄んだ鏡を 見るみたい あんた素敵や なんぼ見てても》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇二)
あさ月の 日向ひむか黄柳つげくし りぬれど 何しか君が 見れどかざらむ
黄柳つげの櫛 ふるうなったが あんたはん どうしてどして え男やで》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇〇)
ゆふされば とこ去らぬ 黄柳つげまくら いつしかれは ぬし待ちがてに
とこ取れば いつもそばある 黄柳つげまくら お前もあるじ 焦がれ待つんか》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇三)
人の見る うへは結びて 人の見ぬ 下紐したびもけて 恋ふる日ぞおほ
《目に触れる 上着の紐は 結ぶけど 下紐ほどき 待つ日がいで》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五一)
ひとごとの しげき時には 我妹子わぎもこし ころもなりせば したに着ましを
他人ひとうわさ やかまし時は お前ちゃん ふくやと良えな 下隠かくして着るに》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五二)
真玉またまつく をちをし兼ねて 思へこそ 一重ひとへころも 一人着て
《そのうちに 二人のえ日 来る思て 今辛抱しんぼして 独り寝てるで》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五三)
                    (真玉つく=玉に付ける→を)
白栲しろたへの 我が紐の緒の 絶えぬに 恋結びせむ 逢はむ日までに
《下着ひも 切れて仕舞う前 逢えるに まじない結び してその日と》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五四)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(17)母が養(か)ふ蚕(こ)の

2012年03月16日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月16日】

垂乳根たらちねの 母がの 繭隠まよこもり こもれる妹を 見むよしもがも


 の行い 題材豊か
かいこ飼うまゆ 髪結う木綿もめん
隼人はやと叫びに 占い言葉
かじ 砂 道と 歌続き行く

垂乳根たらちねの 母がの 繭隠まよこもり こもれる妹を 見むよしもがも
《母がう かいこまゆに こもりする 籠りする児に どしたら逢える》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九五)
肥人こまひとの ぬかがみへる しめ木綿ゆふの みにし心 我れ忘れめや
肥人こまひとの 前髪すぶ そめ木綿もめん あんたにみた 心忘れん》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九六)
隼人はやひとの 名に夜声よごゑ いちしろく 我が名はりつ 妻とたのませ
隼人はやひとが 出す声みたい はっきりと うち名うたで 奥さんしてや》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九七)
言霊ことたまの 八十やそちまたに 夕占ゆふけひ うらまさる いもは相寄らむ
《夕暮れに ちまたの道で うらのたら ちゃんと出たんや あの児なびくて》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇六)
玉桙たまほこの 道行きうらに 占なへば 妹に逢はむと 我れにりつも
《道筋の 占い使こて うらのたら あの児逢えるて 聞いたでわしは》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇七)
大船おほふねに かぢしじき 漕ぐほとも ここだ恋ふるを 年にあらば如何いか
《大船の かじ漕ぐぁも 恋しのに 一年逢わん そんなん無茶や》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九四)
とききぬの 恋ひ乱れつつ 浮き真砂まなご 生きても我れは あり渡るかも
《恋まどい 心乱れて 浮き砂の ふわふわとうち 日ィ過ごしてる》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二五〇四)
新墾にひばりの 今作る道 さやかにも 聞きてけるかも いもうへのことを
新開しんかいの あたらし道や はっきりと 聞いた聞いたで あの児の評判うわさ
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五五)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(16)成らむや君と

2012年03月13日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月13日】

たちばなの もとを立て 下枝しづえ取り 成らむや君と 問ひし子らはも



 に登れば 松の木生える
磯を辿たどれば 小松が靡く
ずえ 枝 根に 思いをたく
飛ぶ鳥 ししに 思いを乗せて

ずは 形見にせむと 我がふたり 植ゑし松の木 君を待ちでむ
ん時の 呼び寄せに仕様しょと 二人して 植えたこの松木や 待ったら来るで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八四)
そでらば 見ゆべき限り 我れはあれど その松がに かくらひにけり
《袖振るん 見えてる限り 見てたけど 松枝えだにとうとう 隠れて仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八五)
茅渟ちぬの海の 浜辺の小松 根深めて れ恋ひわたる 人の子ゆゑに
浜辺はまべ松 深い根のに こに わし焦がれてる 他人ひとの児やのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八六)
奈良山の 小松がうれの うれむぞは いもに 逢はずみなむ
小松まつさき 先にこのわし れた児に なんで逢わんで 終われるもんか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八七)
磯の上に 立てるむろの木 ねもころに 何しか深め 思ひめけむ
《むろの木の 根ぇは深いが なんでまた こんなこうに れたんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八八)
たちばなの もとを立て 下枝しづえ取り 成らむや君と 問ひし子らはも
《あの児わし 橘木した立たせ 「実るかな うちらの恋は」 うてたのんに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八九)
磯の上に ふる小松の 名をしみ 人に知らえず 恋ひ渡るかも
小松こまつ根の 浮き名立つのん けとうて 人知られんと 恋続けとる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八六一)
                              (小松→小松の根(ネ)→(ナ)名を)
あまくもに はね打ちつけて 飛ぶたづの たづたづしかも 君しまさねば
《飛ぶ鶴は 羽根くも打って ゆたゆたや 心細いで あんたらんと》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九〇)
                                       (たづ→たづたづ)
いもに恋ひ ねぬ朝明あさけに 鴛鴦をしどりの こゆかく渡る 妹が使か
《恋慕い 寝られん朝に 鴛鴦とり飛んだ あれはお前の 使いやろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九一)
思ひにし 余りにしかば にほどりの なづさひしを 人見けむかも
《恋しいて 辛抱しんぼ出来できんで 無我夢中むがむちゅう もがく来たん 見られたちゃうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九二)
高山の 嶺行く鹿ししの 友を多み 袖振らずぬ 忘ると思ふな
《連れおおて 袖も振らんで 通過たけども お前忘れた 訳ちゃうからな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四九三)
                          (鹿は群れで移動する→友を多み)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(15)ねもころ我れは

2012年03月09日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月9日】

見渡しの 三室みむろの山の いはほすげ ねもころれは 片思かたもひぞする



根深小菅こすげは 隠した思い
静か深うに えてる心
野原 出たなら 根を張る草を
しばしめう むすばれ願ごて

港に さ根小菅こすげ ぬすまはず 君に恋ひつつ ありかてぬかも
下根したねう 小菅こすげみたいに しのべんで 焦がれ恋して じっと出来できんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七〇)
やましろの いづみ小菅こすげ なみなみに いもが心を 我がはなくに
《吹く風に 泉の小菅こすげ なびき寄る 並々ちゃうで お前おもうん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七一)
見渡しの 三室みむろの山の いはほすげ ねもころれは 片思かたもひぞする
いわすげの 根ぇしっかりや うち思い しっかりやけど 片恋なんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七二)
                                   (菅→菅の根→ねもころ)
すがの根の ねもころ君が むすびてし 我が紐のを く人はあらじ
《心込め あんた結んだ このひもを よもやく人 るもんかいな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七三)
やますげの 乱れ恋のみ しめつつ 逢はぬ妹かも 年はにつつ
《恋心 乱れらして その挙句あげく うてくれんで もう何年や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七四)
あしひきの 名負なおやますげ 押し伏せて 君しむすばば 逢はずあらめやも
《山菅を 押し伏せる様に しっかりと 誓いするなら うてもえで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七七)
山川やまがはの かげふる やますげの まずもいもは 思ほゆるかも
《山川の みずかげえる やますげの むことないで お前思うん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八六二)
あさに 立ちかむさぶる すがの根の ねもころがゆゑ が恋ひなくに
あさの 古びた菅根すがね 胸こう あんたちごたら うち恋せんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八六三)
さねかづら のちも逢はむと いめのみに 祈誓うけひわたりて 年はにつつ
《そのうちに 逢いたいもんと 夢中ゆめなかで 祈り続けて もう何年や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七九)
あさはら 小野をのしめふ 空言むなことを いかなりと言ひて 君をし待たむ
《荒れた野に しめうそを ひょっとして 思てこのうち 待ってんのんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六六)
                        (小野=荒れ野=大切でない→標を結う事がない→嘘)
大野おほのらに たどきも知らず しめひて ありかつましじ が恋ふらくは
闇雲やみくもに 誰かまわんと 共寝た児やに 恋し恋しで どう仕様しょもないで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八一)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(14)恋忘れ草

2012年03月06日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月6日】

我がやどの のきのしだ草 ひたれど こひわすぐさ 見れどいまだ生ひず



生える 草花 身近の仲間
たくす心は 普段着ままよ
 の玉藻に あの児を重ね
黒髪 偲び 独り寝思う

我が背子に が恋ひれば 我がやどの 草さへ思ひ うらぶれにけり
《恋焦がれ うちがしょんぼり してたなら 草もしおれて しょんぼりしてる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六五)
道のの 草深くさふか百合ゆりの ゆりもと言ふ 妹が命を 我れ知らめやも
百合ゆりはなの あとあとでと うお前 お前の寿命じゅみょう わし分らんが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六七)
                                        (百合→ゆりも)
みなとあしに じれる草の しりくさの 人皆知りぬ 下思したもひは
あしじり えるしりくさ 知られたで まわみんなに 心おもいを》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六八)
                                        (知草→知りぬ)
我がやどの のきのしだ草 ひたれど こひわすぐさ 見れどいまだ生ひず
《うちのいえ 軒のしだ草 えとるが 恋忘れ草 えとらんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七五)
つ田には ひえ数多あまたに ありといへどえらえし我れぞ を一人
田圃たんぼには ひえ仰山ぎょうさん えとるが 間引まびかれたわし るん独りや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七六)
あきかしは 潤和うるわ川辺かはへの 小竹しのの芽の 他人ひとには忍び 君にへなくに
《うちの恋 他人ひとに知れん 出来るけど あんたを見たら もうたまらんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四七八)
                                         (小竹→忍び)
道のの いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 恋妻こひづま
《恋しとて わし隠してた あの児やに はっきり皆に 知られて仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八〇)
                                     (いちし→いちしろく)
山ぢさの 白露重み うらぶれて心も深く が恋まず
《山ぢさが 露がおもうて しおれてる わしもしおれて 焦がれがまん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六九)
水底みなそこに ふる玉藻の うちなびき 心は寄りて 恋ふるこのころ
玉藻なびく みたいあんたに 心寄り 恋し思うで この頃うちは》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八二)
敷栲しきたへの 衣手ころもでれて玉藻なす 靡きからむ を待ちかてに
《袖わし 出けんで黒髪かみを なびかせて 独り寝てるか わし待ち兼ねて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四八三)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(13)うたてこのころ

2012年03月02日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年3月2日】

三日月みかづきの さやにも見えず 雲隠くもかくり 見まくぞしき うたてこのころ




 霧晴れて 出る月見れば
ここ 照る月を あの児も見るか
思いうつして 心は通う
  風 日にも 託して詠う

とほいもが け見つつ しのふらむ この月のおもに 雲なたなびき
《遠くり わしを偲んで 仰いでる お前見る月 雲かかるなよ》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六〇)
山のを 追ふ三日月みかづきの はつはつに 妹をぞ見つる 恋ほしきまで
 山沈む 三日月みたい ちらと見た お前姿に 胸どきどきや》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六一)
我妹子わぎもこし 我れを思はば 真澄まそかがみ 照りづる月の 影に見え
 お前ちゃん 思うてるなら 出ておいで 照る月みたい 顔見せてえな》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六二)
久方の あま照る月の かくりなば 何になそへて いもしのはむ
《空で照る 月が隠れて 仕舞しもうたら お前偲ぶに よすがうなる》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六三)
三日月みかづきの さやにも見えず 雲隠くもかくり 見まくぞしき うたてこのころ
《雲かくれ 三日月見えん お前にも 逢いとてならん このごろみょうに》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四六四)
しもの なばぬべく 思ひつつ いかにこの夜を かしてむか
《消えんなら 消えてもえで この命 焦がれるこの どう明かすんや》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五八)
我が背子せこが 浜行く風の いや早に ことはやみか いや逢はずあらむ
《浜風が つよ吹くみたい ろ早よに うわさ広がり 余計よけ逢われんが》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五九)
妹に恋ひ ねぬあしたに 吹く風は 妹にしれば 我れさへに触れ
《恋しいて 寝られん朝に 吹く風よ あの児れたら わしにも触れて》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五八)
すがの根の ねもころごろに 照る日にも めや我が袖 妹に逢はずし
《十分に 照る日差ひざしでも かわかへん お前逢えんで 濡らした袖は》
                    ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五七)


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(12)立ちても居ても

2012年02月28日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月28日】

はるやなぎ 葛城山かづらきやまに 立つ雲の 立ちてもても 妹をしぞ思ふ




自然 現象 こと寄せ宝庫
雲 霧 雨と 空見てうた
雲は湧き立つ 思いの象徴しるし
雲よ隠すな あの児のあた

やまに 雲居くもゐたなびき おほほしく 相見し子らを のち恋ひむかも
《ぼんやりと その気も無しに 共寝たあの児 そのうち好きに なるんやろうか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四九)
 雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも
《何とう 一寸ちょっとその気で 共寝たあの児 また逢う手立て 無いもんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五〇)
あまくもの ひ遠み 逢はずとも あた手枕たまくら 我れ巻かめやも
《天と地が 付くほど遠て 逢えんでも 他女ほかの手枕 わしするもんか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五一)
雲だにも しるくし立たば なぐさめて 見つつもらむ ただに逢ふまでに
《雲さえも はっきり出たら 気ぃまぎれ 見てて偲べる じか逢う日まで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五二)
はるやなぎ 葛城山かづらきやまに 立つ雲の 立ちてもても 妹をしぞ思ふ
葛城山かつらぎに 雲立ってるよ 立座たちすわり 何をてても お前が浮かぶ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五三)
春日山かすがやま 雲居かくりて とほけども 家は思はず 君をしぞ思ふ
《春日山 雲に隠れる とおに来て 家よりあんた しきりりと思う》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五四)
我がゆゑに はれし妹は 高山の 嶺の朝霧あさきり 過ぎにけむかも
《わしのため 中傷うわさ立てられ あの児ちゃん 朝霧みたい はかのなったで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五五)
ぬばたまの 黒髪山の 山すげに 小雨こさめ降りしき しくしく思ほゆ
黒髪山くろかみの 山菅すげに小雨が 降りしきる しきりにお前 恋してならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五六)
大野らに 小雨降りしく もとに 時とね が思ふ人
《野の原に 小雨しきりや ねえあんた 雨宿りやと 一寸寄りいや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四五七)



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ



人麻呂歌集編(11)海ゆまさりて

2012年02月24日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月24日】

ひとごとは しましぞ我妹わぎも 綱手つなで引く 海ゆまさりて 深くしぞ思ふ




 の流れは 海へと注ぐ
 の白波 川より激し
深い海底うみそこ 思いの深さ
  土 岩と こと寄せ続く

荒磯ありそし ほか行く波の ほかごころ れは思はじ 恋ひて死ぬとも
《磯越して 離れ行くな うすごころ わし持たへんで 恋死こいじにしても》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三四)
                                        外行く→外心)
淡海あふみうみ 沖つ白波 知らずとも 妹がりといはば 七日越え
《住むとこを 知らんかっても お前なら どんなかかろと 探して行くで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三五)
                                        (白波→知らず)
大船の 香取かとりの海に いかり下ろし 如何いかなる人か 物思はずあらむ
《この世には いろんな人が るけども どんな人かて 物いするで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三六)
                                        (碇→如何なる)
沖つ藻を かくさふ波の 五百重いほへ波 千重ちへしくしくに 恋ひわたるかも
《恋の波 次から次と 寄せてくる 沖の隠す 寄せ波みたい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三七)
                                        (五百重→千重)
ひとごとは しましぞ我妹わぎも 綱手つなで引く 海ゆまさりて 深くしぞ思ふ
《頑張りや 中傷うわさすぐむ このわしは 海より深こう 思てるよって》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三八)
淡海あふみうみ おきつ島山 おくまけて いもが ことしげけく
《気になるな 心奥底おくそこ したわしいと 思てるあの児 恋噂うわさいんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三九)
                                          (沖つ→奥)
近江あふみの海 沖漕ぐ船の いかり下ろし 忍びて君が こと待つ我れぞ
いかりして 船じっとする うちかって じっとしのんで 声掛こえ待ってんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四〇)
こもの 下ゆ恋ふれば すべをみ 妹が名りつ むべきものを
心底こころそこ 焦がれたまらん お前を たらアカンに 口して仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四一)
大地おほつちは つくすとも 世の中の 尽し得ぬものは こひにしありけり
《地の土は 掘り尽くせるに 恋心 なんぼんでも 湧き止まらんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四二)
隠処こもりどの さはいづみなる 岩根いはねをも とほして思ふ が恋ふらくは
《わしの恋 やまおく沢の 大岩を 突きくだくほど 激しいんやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四三)
しら真弓まゆみ いその山の 常磐ときはなる 命なれやも 恋ひつつ居らむ
いそ山 永久とこしえ岩の 命なら 恋焦がれても 死にはせんのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四四)


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ