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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂歌集編(10)妹は心に

2012年02月21日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月21日】

宇治川うぢがはの 瀬々せぜのしき波 しくしくに 妹は心に 乗りにけるかも



 に続いて その次川よ
 にこと寄せ 思いが寄せる
水の流れは 命のたと
仲をはばむは 早瀬のたぎ

宇治川うぢがはの 瀬々せぜのしき波 しくしくに 妹は心に 乗りにけるかも
《瀬に寄せる 波次々や この胸に あの児姿すがたが 押し寄せ来るよ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二七)
                                      (しき波→しくしく)
ちはや人 宇治うぢわたりの 瀬を早み 逢はずこそあれ のちも我が妻
《渡し場の 瀬流ながようて 渡られん 今逢われんが 離れはせんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二八)
                      (ちはや人=猛々しく勢いの激しい人→流れの激しい宇治川?)
しきやし 逢はぬ子ゆゑに いたづらに 宇治川の瀬に 裳裾もすそ濡らしつ
《逢うことも してもらえんに 未練にも 宇治瀬渡って 裾濡らしたで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二九)
宇治川の 水泡みなわ逆巻さかまき 行く水の 事かへらずぞ 思ひめてし
逆巻さかまいて 流れる水は 戻らへん 戻れん恋に 水没はまって仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三〇)
鴨川かもがはの のち静けく のちも逢はむ 妹には我れは 今ならずとも
後々あとあとに ゆっくりたら えこっちゃ そんなかんと あせらんとから》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三一)
                                         (後瀬→後も)
ことに出でて はばゆゆしみ 山川やまがはの たぎつ心を かへたりけり
《口出して たら不吉や 胸のうち たぎる心を 抑えてるんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三二)
水の上に かずくごとき 我が命 妹に逢はむと 祈誓うけひつるかも
はかのうて 取るに足らへん 命やが お前逢いとて 願掛がんかけとんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四三三)
明日香あすかがは 高川たかかはかし 越えしを まこと今夜こよひは 明けずも行かぬか
《明日香川 水嵩みずかさこて 遠回まわり来た そやから今夜 明けんでしな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五九)
つりがは 水底みなそこ絶えず 行く水の ぎてぞ恋ふる この年頃としころ
つりがわ 水の流れは 絶えへんで 絶えん焦がれが ここ何年なんねんも》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八六〇)


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人麻呂歌集編(09)徒歩(かち)より我が来し

2012年02月17日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月17日】

山科やましなの 木幡こはたの山を 馬はあれど 徒歩かちよりが来し を思ひかねて



 のこと寄せ 自然が続く
身近みぢか山川 生活くらしの馴染み
天地境に そびえる山よ
 故にあの児の 仲隔てるよ

天地あめつちと いふ名の絶えて あらばこそ いましれと 逢ふことやまめ
《天と地が もしもうなる 時来たら わしらの恋が 終わる時やで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一九)
月見れば 国はおなじぞ 山へなり うつくし妹は へなりたるかも
《月見たら おんなじ国や 山邪魔じゃまし わしとあの児を へだてとるけど》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二〇)
来る道は いは踏む山は 無くもがも が待つ君が 馬つまづくに
《あんた来る 岩ち山は 消えて欲し あんた乗る馬 つまづくさかい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二一)
岩根いはね踏む へなれる山は あらねども 逢はぬ日まねみ 恋ひわたるかも
へだてする 岩ごろごろの 山いが 逢えん日続く 恋してならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二二)
道のしり 深津ふかつ島山 しましくも 君が目見ねば 苦しかりけり
《深津島 ここしばらくは あの人に 逢えてないんで うち恋苦くるしいで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二三)
                          (道の後=吉備の道の後=備後))(島山→暫くも)
ひもかがみ の山も がゆゑか 君ませるに 紐かず寝む
ほどかんと 寝ろて言うんか 出来るかい あんた来てるに ひもかへんと》
                              (=なとか=な解か=解くな)
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二四)
山科やましなの 木幡こはたの山を 馬はあれど 徒歩かちよりが来し を思ひかねて
木幡こはた山 馬も乗らんと この足で 越えて来たんや 気ぃくさかい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二五)
遠山とほやまに 霞たなびき いやとほに いもが目見ねば れ恋ひにけり
い山は 霞懸って 余計よけ遠い 間遠まどう逢わん児 わし恋しいわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四二六)

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人麻呂歌集編(08)後(のち)も逢ふものを

2012年02月10日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月10日】

白玉の あひだけつつ ける
         くくり寄すれば のちも逢ふものを




寄物陳思きぶつちんしは 何のこと 物にこと寄せ 思い
景色や物に たくし付け 心思いを 歌にする

先ず のこと寄せ 神さん祈る
海の白玉 真珠玉しんじゅが欲しい
瑞垣みずがき古杉すぎに 宿れる神よ 
信じ祈るで 加護かごたまわれよ
真珠のたまは 珍し宝 
あの 児このわし 大事な宝

娘子をとめらを 袖布留山ふるやまの 瑞垣みづかきの 久しき時ゆ 思ひけり我れは
《布留山の 瑞垣みずがき遠い 昔から わしの思いも い昔から》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一五)
ちはやぶる 神の持たせる 命をば がためにかも 長くりせむ
《神さんが くれて持たせた この命 なごう祈るん 何方どなたの為や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一六)
石上いそのかみ 布留ふるかむすぎ かむさぶて 恋をもれは さらにするかも
石上いそかみの 布留の神杉 古めかし 古年ええとししてて まだ恋するか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一七)
如何いかならむ 名負なおふ神にし けせば が思ふいもを いめにだに見む
《どんな名の 神さん頼み おがんだら わしのあの児が 夢んや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一八)
やましろの 石田いはたもりに 心おそく 手向たむけしたれや いもに逢ひかた
石田神社いわたかみ ぞんざい祈り 仕舞たか 何でこの頃 あの児に逢えん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五六)
淡海あふみうみ しづく白玉 知らずして 恋ひせしよりは 今こそまさ
湖底うみそこの 真珠いとおし 思てたが 手にした今は なお更いとし》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四五)
                                        (白玉→知らず)
白玉しらたまを 巻きてぞ持てる 今よりは 我が玉にせむ 知れる時だに
しんじゅたま 今ここあるで この玉は 手にある限り わしのもんやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四六)
白玉を 手に巻きしより 忘れじと 思ひけらくは 何かをはらむ
《真珠玉 手に入れたんで 絶対に くすもんかい 死ぬまでずっと》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四七)
白玉の あひだけつつ けるも くくり寄すれば のちも逢ふものを
《真珠玉 あいだあっても 通す紐 ぎゅっと絞ると 玉うで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四四八)


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人麻呂歌集編(07)我(わ)にな恋ひそと

2012年02月07日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月7日】

のちも逢はむ にな恋ひそと いもは言へど
             恋ふるあひだに 年はにつつ




強面こわもて誇る 男でも
 恋のやまいに 勝てやせぬ

一途いちずに惚れた 恋なればこそ
なぜ に諦め 出来ようものか
あたら 男に 生まれたからに
他人ひとに言えんで ただただがる

健男ますらをの うつし心も 我れはなし 夜昼よるひるといはず 恋ひしわたれば
《男やと う値打ちなぞ わしないわ 夜昼よるひるなしに 焦がれ続けて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七六)
いはほすら 行きとほるべき 健男ますらをも こひといふことは のちいにけり
《岩かても くだいて通る 男やに 恋のことやと やみ続けや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八六)
いで何か ここだはなはだ ごころの するまで思ふ こひゆゑにこそ
《なんでまた こんなだらし なったんや 恋した所為せいや 正気しょうきやないで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇〇)
 世の中は 常かくのみと 思へども はたた忘れず なほ恋ひにけり
 恋なんか するん忘れよ 思うけど 忘れられんで また恋してる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八三)
よしゑやし まさぬ君を 何せむに いとはずれは 恋ひつつらむ
《アホみたい えへんあんた 恋続け 忘れられんで 待ってんやうち》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七八)
のちも逢はむ にな恋ひそと いもは言へど 恋ふるあひだに 年はにつつ
《そのうちネ そんな悩みな うけども 焦がれてる間に 年過ぎてくで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四七)
あらたまの 五年いつとせれど 我がこひの あとなき恋の まなくあや
《もう五年 経って仕舞しもたが わしの恋 実りもせんに まだ続いとる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八五)

正述せいじゅつ心緒しんしょ 詠いし心
全て 恋歌 男と女
素直すなお心に ばち
これぞ 世の中 昔も今も


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人麻呂歌集編(06)間使(まづかひ)も来ず

2012年02月03日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年2月3日】

立ちてて たづきも知らず 思へども
             いもに告げねば 間使まづかひ




 来るか来んかと 気をもんで
        がれ待たされ 身は細る

惚れて待つ身は 心底しんそこつら
今日は来るかな 明日あしたはどかな
あんた 目の前 浮かんで消えん
なのに 姿を 見せんで久し

我が背子せこは さきくいますと 帰りと れに告げむ 人もぬかも
《うちの人 元気で居るで すぐ帰る うて知らせる 人んやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八四)
眉根まよねき はなひ紐け 待つらむか 何時いつかも見むと 思へる我れを
まゆ掻いて くしゃみ帯き 待つやろか 何時いつ行けるかと 苦悩くるしむわしを》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇八)
                          (眉が痒い・くしゃみが出る・紐が解ける=逢える前兆)
君が目を 見まくりして この二夜ふたよ 千年ちとせのごとも は恋ふるかも
《逢いとうて 顔を見とうて ここ二日ふつか 千年思て うち焦がれてる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八一)
高麗こまにしき ひも解きけて ゆうへだに 知らずある命 恋ひつつかあらむ
恋苦くるしいて 晩まで命 分らんに 帯いたまま 焦がれおるんや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇六)
よるず 安くもあらず 白栲しろたへの ころもかじ ただに逢ふまでに
《眠れんで 安らぎ心 出来でけんけど じかに逢うまで 下着ふく脱がへんぞ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四六)
立ちてて たづきも知らず 思へども いもに告げねば 間使まづかひ
《いらいらと 手立て出来でけんで 思てても 黙っとったら 使いも来んわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八八)
見わたせば 近き渡りを たもとほり 今か来ますと 恋ひつつぞ
 渡し場は すぐ見えてるに うろうろし 今に来るかと うちじりじりや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七九)
しきやし ふれかも 玉桙たまほこの 道見忘れて 君がまさぬ
《悔しいで 誰ぞ邪魔して るんかな 道忘れたか あんたんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八〇)


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人麻呂歌集編(05)恋ひぬ前(さき)にも

2012年01月31日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月31日】

何せむに 命ぎけむ
        我妹子わぎもこに 恋ひぬさきにも 死なましものを




かよわん この恋は
          消えてしまえよ  この世から

実り の恋が ある一方で
実らん 恋は 苦して辛い
届かん思い かかえて独り
何時いつまで続く むなしの日々よ

玉桙たまほこの 道行かずあらば ねもころの かかる恋には 逢はざらましを
《あの道を 歩かなんだら こんなにも くるし恋には 逢わんかったに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九三)
かくばかり  恋ひむものぞと 知らませば 遠くも見べく ありけるものを
《こんなにも 焦がれくるしん 知ってたら 知らん顔して っといたのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七二)
かくのみし 恋ひや渡らむ たまきはる 命も知らず 年はにつつ
《こんなにも 焦がれ続けて もう命 どうでもえと 思う日々やで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七四)
何せむに 命ぎけむ 我妹子わぎもこに 恋ひぬさきにも 死なましものを
 何でまた ここまで生きて 来たんやろ あの児知る前 死んだよかった》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七七)
恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 玉桙たまほこの 道行く人の ことも告げなく
《恋しいて 死ぬなら死ねて うんかい 道行く人は 知らん顔やで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七〇)
こひするに しにするものに あらませば が身は千度ちたび にかへらまし
《恋したら 苦しみ死ぬと うんなら うち千遍せんべんも 死んで仕舞しもてる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九〇)
恋ひ死なば 恋ひも死ねとか 我妹子わぎもこが 我家わぎへかどを 過ぎて行くらむ
《苦しいて 恋ぐるいして 死ねんか あの児この家 素通すどおりしてく》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇一)
我れゆのち まれむ人は 我が如く こひする道に ひこすなゆめ
《これからに まれる人 わしみたい くるこいみち 歩かんときや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七五)


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人麻呂歌集編(04)紐解き開(あ)けし

2012年01月27日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月27日】

垣ほなす 人は言へども
        高麗こまにしき 紐けし 君ならなくに




二人うても 世の中は しがらみ多て 恋苦し

一緒 居たいが 逢われん日には
せめて 夢でと お互い思う
夢出てんと がれが募る
恋焦こが先途せんどで 寝付きも出来でき

うつつには ただには逢はずいめにだに 逢ふと見えこそ が恋ふらくに
じか逢えん せめて夢でも その顔を 見せて欲しんや がれとんので》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八五〇)
が心 すべもなし 新夜あらたよの 一夜ひとよもおちず いめに見えこそ
《この気持 どしたらほぐれ 出来るやろ 来る来る夜に 夢てや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四二)
我妹子わぎもこに 恋ひすべながり いめに見むと れは思へど ねらえなくに
《恋しいて たまらんよって 夢見よと 思て寝たけど られはせんが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一二)
ぬばたまの そのいめにをし 見え継ぐや 袖る日なく れは恋ふるを
《夢の中 うち出続けて おるやろか 袖乾かわく間無しに 焦がれてるんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四九)

内緒 の恋は その内知れる
隠し隠す が 噂は千里
やっかみ連れて 中傷うわさしき
世間五月蝿うるそて 逢瀬おうせがならん

垣ほなす 人は言へども 高麗こまにしき 紐けし 君ならなくに
仰山ぎょうさんに うわさされるが あの人と まだ帯いて うち共寝とらんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇五)
たまきはる までと定め たのみたる 君によりてし ことしげけく
《あんたをば 命限りに 頼り仕様しょと 決めたうちやに 五月蝿うるさいこっちゃ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九八)
しましくも 見ぬばこほしき 我妹子わぎもこを れば ことの繁けく
一寸間ちょっとまも 見んと恋しい 可愛い児に 毎日たら 五月蝿うるさいこっちゃ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九七)
ただに逢はず あるはうべなり いめにだに 何しか人の ことの繁けむ
五月蝿うるそうて じかに逢えんの 仕様しょうないが なんで夢まで 他人ひと五月蝿うるさいや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四八)


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人麻呂歌集編(03)その名は告(の)らじ

2012年01月24日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月24日】

百積ももさかの 船かくり入る 八占やうらさし
           母は問ふとも その名はらじ




結ばれ恋は 有頂天うちょうてん
          二人 の他は 見えやせん


実った 恋は 離してなるか
逢う たが最後 死ぬまで一緒
この 世は全て 二人のためよ
怖いものとて なんにもないぞ

百積ももさかの 船かくり入る 八占やうらさし 母は問ふとも その名はらじ
《八方で 占いしたり 詰問いたかて おかんに名前 うち言わへんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇七)
                          (百積の船隠り入る=百石積みの船が入る浦→占)
思ひ寄り 見ては寄りにし ものにあれば 一日ひとひほども 忘れて思へや
《見てれて うてまた惚れ したお前 一日いちにちたりと 忘れてへんで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇四)
玉かぎる 昨日きのふゆふへ 見しものを 今日けふあしたに 恋ふべきものか
昨日きのうばん うたとこやに 朝来たら なんでなんやろ またまた恋し》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九一)
なかなかに 見ずあらましを あひてゆ こほしき心 まして思ほゆ
《逢われんで 恋し思てた 時よりも 逢うたそのあと 余計よけ恋しがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九二)
ならべば 人知りぬべし 今日けふの日は 千年ちとせのごとも ありこせぬかも
《毎日は みなに知れるで 今日の日が 千年分も 続かんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八七)
ゆゑもなく 我が下紐したびもを けしめて 人にな知らせ ただに逢ふまでに
《うちの下紐ひも ほどかすなんて 悪い人 内緒ときや 逢えんなるで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一三)
                          (相手が思ってくれてる→下紐が解ける) 
ぬばたまの  この夜な明けそ 赤らひく 朝行く君を 待たば苦しも
《このよるは 明けて欲しない 明日あした朝 帰して仕舞たら 待つんつらいが》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八九)
我が背子せこが 朝明あさけの姿 よく見ずて 今日けふあひだを 恋ひ暮らすかも
《朝帰る あんたの姿 う見んと 一日いちにち焦がれ 暮らすんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四一)
あらたまの 年は果つれど 敷栲しきたへの 袖へし子を 忘れて思へや
《年暮れる けど忘れんで この年を 初めて共寝たん 今年やさかい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一〇)


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人麻呂歌集編(02)夕かたまけて

2012年01月20日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月20日】

何時いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども
            ゆふかたけて 恋ひはすべなし




初恋うぶこい過ぎて 目覚めざめたら 一緒る児が 欲しゅうなる

 に目覚めて 焦がれる時は
何をてても あの児が浮かぶ
人目忍んで かようてみるが
思案 思案で 逢えずに帰る

このころの らえぬは 敷栲しきたへの 手枕たまくらまきて 寝まくりこそ
《このところ う寝られんの 夜来ると お前と共寝たい 思てるからや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四四)
何時いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども ゆふかたけて 恋ひはすべなし
何時いつ言うて 焦がれむ時 いけども 特に夕暮れ 恋してならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七三)
忘るやと 物語ものがたりして 心り ぐせど過ぎず なほ恋ひにけり
《忘れと おしゃべりごとで まぎらし してもし切れん 余計よけ恋しなる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四五)
人のる 味寝うまいずて しきやし 君が目すらを りし嘆かむ
《皆してる 共寝ともねもせんで 可愛い児に せめて一目と せつい恋や》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六九)
恋ふること 慰めかねて でて行けば 山を川をも 知らずにけり
恋苦くるしいの 抑え出けんで 出てきたが 無我の夢中むちゅうで ここ来て仕舞しもた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一四)
行き行きて 逢はぬいもゆゑ ひさかたの あめつゆしもに 濡れにけるかも
夜通よどおしに あの児逢いとて 歩きめ 夜明けの露に 濡れて仕舞しもたで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九五)
君に恋ひ うらぶれれば くやしくも 我が下紐したびもの ふ手いたづらに
《恋しいて しょぼくれてるに ええいもう 下紐結むすぶこの手が もつれてならん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇九)
うつくしと いもを 人皆の 行くごと見めや 手に巻かずして
《可愛いなと 思うお前に 知らん顔 して行けるかい 共寝ともねもせんと》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十二・二八四三)
赤らひく 肌も触れずて ぬれども 心をには 我が思はなくに
《気かいで まだ肌合わし 共寝とらんが ろてる訳と ちゃうんやからな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九九)


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人麻呂歌集編(01)我が思(も)ふ君は

2012年01月17日 | 人麻呂歌集編
【掲載日:平成24年1月17日】

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど
             ふ君は ただ一人のみ




巻の七から 十二まで まれし巻の そこここに
人麻呂歌集 数多あまたある 歌の習いに よとてか
いにしえ歌の お手本を 先に並べた 編み姿
そぞろ歩きに 巻々まきまきで 拾い探して 集めみた

人麻呂歌集 歌かたち 短歌多くて 三百余 
 に旋頭歌 三十五 長歌も少し 含まれる
歌の題材 豊かにて 正述せいじゅつ心緒しんしょ 比喩ひゆの歌
寄物陳思きぶつちんしに 相門歌そうもんか 七夕たなばた多て 三十九
問答うたに りょの歌 はるあきふゆの ぞうの歌

正述せいじゅつ心緒しんしょ 何物ぞ ただ心緒おもいを 述べるとは
心思いを 直接に 物に寄せずに うたう歌


ただの心の 代表は 言わずもがなの 恋の歌

先ずの手始め うぶうた集め
心思うが 口にはせん
垣間見た だけ 心は弾む
清ら な思い あの児に届け

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど ふ君は ただ一人のみ
《大通り 人仰山ぎょうさんに 通るけど うち思うは 一人だけやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三八二)
垂乳根たらちねの 母が手はなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに
かあちゃんの 手元離れて うちこんな ない気ぃ もう初めてや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三六八)
白栲しろたへの 袖をはつはつ 見しからに かかるこひをも れはするかも
《白い袖 ほんのちょっぴり 見ただけで こんな切無せつない 恋するなんて》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四一一)
朝影に が身はなりぬ 玉かきる ほのかに見えて にし子ゆゑに
恋苦くるしいて こんなせたで ちらと見て かして仕舞しもた あの児の所為せいで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九四)
心には 千重ちへに思へど 人に言はぬ が恋妻を 見むよしもがも
 心秘め 胸いっぱいに 思うてる わしのあの児に どしたら逢える》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三七一)
妹があたり 遠く見ゆれば あやしくも れは恋ふるか 逢ふよしなしに
《あの児いえ 遠く見えてる それだけで 胸ときめいた 逢えもせんのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇二)
たまさかに 我が見し人を 如何いかならむ よしをもちてか また一目ひとめ見む
偶々たまたまに 見掛けたあの児 今度また 見る切っ掛けが いもんやろか》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二三九六)
玉くせの 清き川原かはらに みそぎして いはふ命は 妹がためこそ
 清らかな 川原に出かけ 身ぃ清め 命祈るん あの児のためや》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十一・二四〇三)


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