【掲載日:平成24年2月21日】
宇治川の 瀬々のしき波 しくしくに 妹は心に 乗りにけるかも
山に続いて その次川よ
波にこと寄せ 思いが寄せる
水の流れは 命の譬え
仲を阻むは 早瀬の滾り
宇治川の 瀬々のしき波 しくしくに 妹は心に 乗りにけるかも
《瀬に寄せる 波次々や この胸に あの児姿が 押し寄せ来るよ》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四二七)
(しき波→しくしく)
ちはや人 宇治の渡りの 瀬を早み 逢はずこそあれ 後も我が妻
《渡し場の 瀬流れ速ようて 渡られん 今逢われんが 離れはせんで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四二八)
(ちはや人=猛々しく勢いの激しい人→流れの激しい宇治川?)
愛しきやし 逢はぬ子ゆゑに 徒に 宇治川の瀬に 裳裾濡らしつ
《逢うことも して貰えんに 未練にも 宇治瀬渡って 裾濡らしたで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四二九)
宇治川の 水泡逆巻き 行く水の 事反らずぞ 思ひ初めてし
《逆巻いて 流れる水は 戻らへん 戻れん恋に 水没って仕舞た》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三〇)
鴨川の 後瀬静けく 後も逢はむ 妹には我れは 今ならずとも
《後々に ゆっくり逢たら 良えこっちゃ そんな急かんと 焦らんとから》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三一)
(後瀬→後も)
言に出でて 言はばゆゆしみ 山川の 激つ心を 塞かへたりけり
《口出して 言たら不吉や 胸の内 滾る心を 抑えてるんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三二)
水の上に 数書くごとき 我が命 妹に逢はむと 祈誓ひつるかも
《儚うて 取るに足らへん 命やが お前逢いとて 願掛けとんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三三)
明日香川 高川避かし 越え来しを まこと今夜は 明けずも行かぬか
《明日香川 水嵩高こて 遠回り来た そやから今夜 明けんで欲しな》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八五九)
八釣川 水底絶えず 行く水の 継ぎてぞ恋ふる この年頃を
《八釣川 水の流れは 絶えへんで 絶えん焦がれが ここ何年も》
―柿本人麻呂歌集―(巻十二・二八六〇)
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