【掲載日:平成24年4月10日】
秋山に 霜降り覆ひ 木の葉散り 年は行くとも 我れ忘れめや
秋の相問 採り上げるのは
黄葉尾花に 散りゆく木の葉
降りる露霜 立ち渡る霧
冬相問は 雪こそ全て
秋山の したひが下に 鳴く鳥の 声だに聞かば 何か嘆かむ
《逢えんけど せめてあんたの 声したら こんな嘆きは 為えへんやろに》
(「したひ」は 黄葉に赤く照る様)
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二二三九)
秋の野の 尾花が末の 生ひ靡き 心は妹に 寄りにけるかも
《秋の野の 薄の穂ぉが 靡く様に 心靡いて お前べったり》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二二四二)
秋山に 霜降り覆ひ 木の葉散り 年は行くとも 我れ忘れめや
《この年を うち忘れへん 霜降って 木の葉ぁ散って 年変わっても》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二二四三)
誰そ彼と 我れをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つ我れを
《誰や言て 聞かんで欲しな 冷えてくる 露濡れながら あの人待つに》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二二四〇)
秋の夜の 霧立ちわたり おほほしく 夢にぞ見つる 妹が姿を
《秋の夜に 立つ霧みたい ぼんやりと 夢に見たんや お前の姿》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二二四一)
降る雪の 空に消ぬべく 恋ふれども 逢ふよしなしに 月ぞ経にける
《雪みたい 身ぃ消えるほど 焦がれても 逢う伝手無うて 日ぃ経って仕舞た》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二三三三)
沫雪は 千重に降りしけ 恋ひしくの 日長き我れは 見つつ偲はむ
《沫雪よ 降りに降れ降れ 恋しゅうて 長ご待つわしは 見て偲ぶから》
―柿本人麻呂歌集―(巻十・二三三四)
【妻に与える歌一首】
雪こそば 春日消ゆらめ 心さへ 消え失せたれや 言も通はぬ
《残り雪 春消えるけど 心まで 消えた云うんか 音沙汰無しに》
―柿本人麻呂歌集―(巻九・一七八二)
【妻が応える歌一首】
松反り しひてあれやは 三栗の 中上り来ぬ 麻呂といふ奴
《呆けたんか 任期途中の 中帰り 為もせんとから あの阿保麻呂が》
―柿本人麻呂歌集―(巻九・一七八三)
(中上り=地方官が任期の途中で報告に上京すること)
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