本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

マンガからはいる法学入門  (矢野達雄)

2005-08-14 05:23:46 | その他
この本、実は現役の某大学法文学部教授が書いたもので実際に共通教育科目でこの本をテキストとして使っている。
その講義は学生たちに人気があって受講するには抽選で当たらねばならないぐらいらしい。
「マンガ」というのが受けるのか?・・・或いは単位を取るのが簡単というのがいいのか??・・・両方かな?
講義はまず、取り上げるマンガの説明をした後、法学の説明になるらしいが学生によってはマンガの説明が多すぎると不満だという輩もいるらしい。
私ならマンガの説明が多いのは大いに結構だと喜ぶところなのだが・・・。

で、漫画を使った理由として教授は
「法学というのは、独特の論理、特別の思考方法を要する。(中略)社会と密接な学問であるはずなのだが、法学の独特の世界にのめり込んで、社会とのつながりが見えなくなってくる。非常識な社会人を育てて送り出しては、申し訳ないから、全国の法学を教えている大学では、学生が法の働く社会の実態を知ること、いわば現場感覚を身につけさせるためにいろいろな方法を試みている。」
と語っている。
要するに、新聞記事や小説などを取り上げることによって学生が法学における「現場感覚」をつかむきっかけを作るという考えを一歩進めて、学生の好きな「マンガ」でやってみよう!と考えたようだ。

しかし、それにしてもこの大学教授、この本を読んでいると漫画を結構深く愛しているんじゃないのかな?と思えてくる。
漫画の内容に関して書いてる部分を読んでいると好きなんだなーって事が行間から感じられるのだ。
講義中に漫画の中のセリフを読む時も単なる棒読みではないらしいから、やっぱり結構好きなんだろう。(笑)

「本の中でたまに薀蓄を傾けることがあるかもしれないが、それは副次的なものと考えていただきたい。あくまでもマンガは素材で、「法を考える」というのが趣旨である。」
・・・と、わざわざ書いてるところがちょっと笑えるのだが・・・
どちらかと言うと、「たまに」というよりは「薀蓄を傾ける」箇所が、非常に多い本である。(笑)


ま、それはいいとして、ここに取り上げられている漫画は

手塚治虫「鉄腕アトム」「ブラック・ジャック」「ネオ・ファウスト」
青木雄二「ナニワ金融道」
毛利甚八作・魚戸おさむ画「家栽の人」
高田靖彦「ざこ検○潮(マルチョウ)」-検察官
中嶋博行作・カワニラサイ画「ホカベン」
周良貨作・能田茂画「監査役野崎修平」
関口夏央作・谷口ジロー画「『坊ちゃん』の時代」
かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」
山本おさむ「どんぐりの家」


なかなか「良い作品」を選んでると思うし、当初の目的である
「学生に『法学もけっこう面白いじゃないか』と興味をもってもらうこと」
にも成功しているように思える。

こういう講義を受ける事が出来るのなら学生の振りをしてこっそり講義室に入りたいと思っている私です。(笑)