文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

百鬼夜行とご縁組 ~あやかしホテルの契約夫婦~

2019-06-13 09:24:49 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
百鬼夜行とご縁組 ~あやかしホテルの契約夫婦~ (メディアワークス文庫)
マサト 真希
KADOKAWA

 この作品のヒロインは、花籠あやねというアラサー女性。東京のイベントプロデュースの会社に勤めていたが、パワハラ上司の失態を押し付けられる形でクビ同然に退職することになった。現在退職を前提の有給休暇消化期間中。

 大学時代の友人の勧めで仙台の高級ホテル・青葉グランドホテルでお茶を飲んでいるとき、そのホテルの総支配人の引退記念パーティで何かトラブルが。あやねは、つい見かねて手を貸すことに。

 ところが、そこに集まっていたのは人間ではない。妖怪たちなのだ。あやねは、この地の妖怪の時期統領でホテルの事業統括部長の高階太白から配偶者として雇いたいとの申し出を受ける。太白は、次々に持ち込まれる縁談を断る口実にしたかったようだ。これがものすごい好条件。

 しかし、縁は異なもの味なもの。二人で妖怪同士のお見合いに立ち会ったり、妖怪と人間の夫婦の観光案内をしたりするうちに次第に二人は魅かれあっていく。

 妖怪の世界も一つにまとまっている訳ではない。反対勢力にあやねが誘拐されたときに見せた、ひ弱と思われていた太白の意外な正体。そして雨降って地固まるの言葉のように、益々強くなる二人の絆。

 この物語は、一種の異類婚姻譚に分類されるのだろう。互いに相手を思いやる心さえあれば、人と妖怪とが、種族を超えることができる。二人で過ごす時間はかけがえのないもの。この作品にはそのようなメッセージが込められているように思える。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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かぐや様は告らせたい 2 ~天才たちの恋愛頭脳戦~

2019-06-11 10:02:38 | 書評:その他
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
赤坂アカ
集英社

 この作品は、秀知学園高等部生徒会長・白銀御行と副会長の四宮かぐやの繰り広げるラブコメである。白銀は知力だけで学園の生徒会長まで上り詰めた努力の人で家は普通。一方かぐやの方は大企業の令嬢。そして、万能の天才。二人は、お互いに意識しているのだが、いかんせんプライドが高すぎる。好きになった方が負けとばかりになんとか相手から告らせようとして空回りをしているのだが、これがなんとも面白いのだ。傍から見れば互いに好きなのは明確なので、好きになった方が負けなら、もう互いに負けてるんじゃないと思うのだが。

 例えば、これは間接キッスではないかとお互いにドキドキする話など、君たち中学生かと思わず突っ込んでしまう。

 そしてこれに面白さを加えるのが、トリックスターとも言える生徒会書紀の藤原千花。天然で、恋愛脳で、とにかく二人の間を引っ掻き回す。

 爆笑したのは、箱入り娘のかぐやが初体験の意味を、キッス(それも子供やペット相手にするやつ)と思い込んでいること。御行が妹とガンガンしているとかかぐやの相手は甥っ子だったとか、藤原書記は飼い犬としょっちゅうしているとの発言に、周りがあわてる場面がなんとも笑える。

 さてさて、二人の仲は今後どうなっていくのか。どちらが先に相手に告るのか、それとも・・・

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る

2019-06-09 10:28:33 | 書評:学術教養(科学・工学)
巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る (ブルーバックス)
本間 希樹
講談社

 イベント・ホライズン・テレスコープが、M87の中心に位置する巨大ブラックホールの撮影に成功したニュースが流れたことは記憶に新しい。

 ブラックホールとは、脱出速度が光速度を越えるもので、一度落ち込むと光さえ脱出できないことからこの名前がついている。

 太陽の30倍以上の重い星が寿命を終えてたどり着くものは、通常の恒星程度の質量を持っているので、恒星質量ブラックホールと呼ばれる。質量は太陽の数倍から10倍程度だという。

 一方、巨大ブラックホールというのは、銀河系の中心に一つあるもので、質量は、太陽の100万倍から100億倍程度もあるものだ。そして、我々の天の川銀河の中心には、太陽400万個分の質量を持ついて座Aスターという巨大なブラックホールがあることが知られている。この巨大ブラックホールの生成過程にはまだまだ謎が多いようだ。

 ブラックホールとは、上に述べたように光さえ脱出できないことから、つい暗い天体を連想してしまうが、実は巨大ブラックホールは宇宙で一倍明るい天体なのである。ブラックホールの周りは、ガスが円盤を形成し、周りながら落ち込む(降着円盤)。光速度に近い速さまで加速されたガスが摩擦で発光しているので、とても明るく輝いている。そして、ブラックホールからは、ガスが高速に近い速さで、遠くまで飛び出している。これはジェットと呼ばれる。ジェットはブラックホール本体や降着円盤に比べて桁違いに大きいため観測しやすいという。このジェットの加速過程も仮説はあるもののまだ良く分かっていないらしい。

 ガスがブラックホールに落ち込ん時、静止質量の10~40%のエネルギーの解放が可能だという。これは原子力発電の静止質量比0.1%程度や核融合の0.7%程度と比べても、文字通り桁違いに高い数字である。もしブラックホールを利用した発電所ができればすばらしい発電所ができるのだが、周りの物をすべて飲み込むので危なく、実現はSFの世界だけだろうと著者は言っているが、なんとも夢のある話ではないか。

 ブラックホールはSFの世界ではおなじみのものだが、その実態が解明されているとは言い難い。しかし、宇宙にはこんなものがあると想像するだけでも、なんともロマンを感じるのではないか。宇宙論に興味がある人にはぜひ読んで欲しいと思う。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あまちんは自称♂(1)

2019-06-07 09:17:41 | 書評:その他
あまちんは自称♂(1) (少年マガジンエッジコミックス)
寺井赤音
講談社

 なかなか面白い漫画を見つけた。それがこれだ。ヒロイン?は甘澤こころ(愛称あまちん)という高校の新入生。ヒロインの後ろに”?マーク”をつけたのは、自分が男(♂)ということを自称しているからだ。そして一人称は「俺」。

 なにしろその恰好がヘンだ。桃色髪にツインテール。ちっちゃくて、ものすごく可愛らしいので、クラスの男子たちは一目であまちんの虜に。上半身は女子の制服なのだが、下半身はなぜかズボン。ここが普通の女装男子漫画と違うのだが、小学校のころは普通にスカートを履いていたようなので(中学のころはこの巻では上半身しか描かれてないのでよく分からない)、もういっそ完全女装させてしまえよと思ってしまう。

 そして、あまちんの幼馴染が上下タツミという少年。小さいころからあまちんと一緒にいすぎて、性別なんてどっちでもいいやと思っているのだが、あまちんはタツミにラブラブのようだ。このあまちんの決め台詞が「勃つわー!!」だ。ちなみに、これを言われると、クラスのみんなは引いてしまう。

 このあまちんに輪をかけたのが、母親の甘澤きらら。実業家で大きな会社の代表なのだが、まるで宝塚の男役のよう。タツミのことも「タツミンヌ」と呼んで気に入っている。女子のファッションブランドも展開しているのだが、あまちんに着させて、気に入るかどうかでデザインを採用するかどうかを決めてしまうのである。(あまちんが気に入るかどうかは、妄想の中でタツミがかわいいと言ってくれるかどうかが基準のようだ。)あまちんのことは「こころは理想の女子モデル」と言って憚らない。この親にしてこの子ありという感じだ。そして二人が叫ぶあの決め台詞。いやお母さん、あなたは無理でしょう(笑)。

 とにかく最初から最後まで笑いの連続。二人のドタバタラブコメは果たしてこれからどう展開していくのだろう。

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今いる仲間で「結果が出る会議」をつくる

2019-06-05 09:49:41 | 書評:ビジネス
今いる仲間で「結果が出る会議」をつくる
池本克之
実務教育出版

 正直に言うと、私は会議というやつが大嫌いである。なぜなら、会議とは名ばかりで、決まったことを伝達するだけのものや、毎月定例で惰性でやっているとしか思えないようなものが大半だったからだ。おまけに、主催者側の安全策だろうか。ほとんど関係がないような者まで呼ばれる。本当に時間の無駄遣いである。本書は、そんな会議から抜け出し、有意義で結果の出るものにしようとするものである。

 一番ダメな会議は、社長や上司の独演会になっているものだという。出席者の意見をろくに聞かず、一方通行で指示・命令を行う。著者もかってはそういった上司だったようだ。著者が変わったのは、海外の不動産を管理する子会社に出向したことによる。そこでは会議を必要最小限の時間しか行わず、会議が始まる前には、誰が言うともなくボードにアジェンダ(議題)が書き出され、ほぼ全員が発言する。この会議の進め方にショックを受けた著者は、その会議のやり方を真似するようになったという。

「会議」とは、意思決定を行う場です。必要な人と必要な情報があらかじめ集まっており、できるだけ短時間で、できるだけ全員参加の方がいい。 (p34)



 もちろん意思決定をするのは、それなりの権限を持っている人だ。しかし、意思決定を行う前に関係者と議論をしておくのは無駄にはならないだろう。そして会議に参加するのは、本当に「必要な人」だけでいい。あまり関係のない人の時間を奪うということはやってはならないのだ。そして、発言もせず、会議に参加していないような人がいれば、その人は本当に必要な人ではないということになる。

本書は、会議の進め方、発言の増やし方など、マンネリ化した会議をどうにかしたいと考えている人には大いに参考になることだろう。

(余談)
 著者の経営している会社の社員に必ず読んでもらっているという「必読書リスト」が入れられている(pp.158-159)が、すまん、一冊も読んでない。orz

 読んだ本を他の人にシェアする方法として、紹介文のフォーマットが付いている(p160)が、ブログ書評を続けていて、ビジネス書もそのレンジに入れている者として一言言いたい。よくビジネス書専門の書評ブログというのがあり、いかにも定型的に本の紹介をしているのだが、私は面白くないのでほとんど読まない。

 書評というのは一種の文芸であり、定型的なものを読んでも面白くないのは当然だろう。世の中には「守破離」という言葉がある。最初はこういったフォーマットを利用しても仕方がないのだが、慣れてきたらぜひ色々と面白く読めるように工夫して欲しいと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「本が好き!」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生

2019-06-03 09:10:34 | 書評:ビジネス
2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生 (集英社ビジネス書)
高城剛
集英社

 本書の内容を一言で言えば、未来予測の書である。著者は日本がEUに加盟することを、予測している。日本がEUに加盟したら、最大の人口を有する国となり、EU大統領を出すことも夢ではないというのだ。日本が加盟したらEU(European Union)じゃないやんというツッコミがまず頭に浮かぶ。著者は、これに対してGU(Grobal Union)という概念を提示しているのだが、EをEropeでなくEurasiaととらえれば、EUでもいいのか。

 著者はインドの潜在能力に注目しているが、私も賛成だ。インドは対日感情も良いと聞く。人口も多い大国だ。我が国が置かれている現状を考えると、インドとの関係を重視するのは理にかなっているだろう。ただ、インドは巨大なカオスなので、派遣国の座につくことにはならないと著者は見ている。

 一つ気になることがある。本書にはAmazonGOの話が出てくる。AmazonGOとは無人コンビニのことである。入場時に、ゲートにスマホをかざしさえすれば、会計の必要もなく、代金が自動的に口座から引き落とされる。客もレジで待たずに済み、店もコストを減らせる。一見すれば、バラ色の未来だが、実は、ものすごい危険性を含んでいるのだ。本書ではその危険性に対して、次のように警告している。

「今後、無人化の象徴になるだろうAmazonGOが、米国内陸部で焼き討ちに遭うかもしれない。同じ未来でも、人によってはバラ色に見えるとは限らないのだ。」(p55)

 これは、コンビニのお客は誰かを考えると、分かるのではないか。お客は、働いて得る給料を買い物の原資としている。もし、無人の店舗が増えると、人が買い物のための原資を得る場所がなくなる。つまり、無人コンビニを展開するというのは、自分で自分の首を絞めるのに等しいだろう。

 ただHUMAN3.0というのはどうなんだろう。これは、身体や脳をカスタム化し、パーツを入れ替えて寿命を延ばして、ホモ・サピエンスの能力を拡張したものだが、身体はともかく脳はどうかなと思う。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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果実

2019-06-01 09:04:35 | 書評:その他
果実
細川 亜衣
リトル・モア

 この本のタイトルから、果物を利用したスィーツのレシピ集を連想していた。確かに説明文には、<「果実」と「ナッツ」の料理63皿>と書かれているのだが、この「果実」というタイトルからナッツ類まで連想する人は少ないと思う。連想するのはフルーツを使ったスィーツとかデザートとかではないかと思う。しかし本書で紹介されているものは、スィーツではなく、果実やナッツを利用した、ふつうに主食やおかずとして食べられるものがほとんどだ。
 
 例えば、「えごまのおにぎり」や「さばと青柚子のしゃぶしゃぶ」と言った料理も入っているのだが、このタイトルからこれらの料理を連想する人は少ないだろう。たしかにおにぎりにはえごまがまぶされているし、しゃぶしゃぶでは柚子は薬味として利用されたり汁をしぼって利用されている。だから、ぎりぎりレンジ内かなという気もする。

 しかし、紹介されている料理はどれもおいしそうである。思わずよだれが出そうになるような写真とともに、この料理のレシピもついている。写真とレシピが見開きでワンセットという構成なのだ。

 見た感じ、それほど特殊な材料はないと思うので、気になったものは実際に作ってみるといいだろう。もっとも、その食材が旬の時期ならいっそう美味しくたべられるのではないだろうか。 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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