文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:瞽女うた

2014-07-06 20:46:51 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
瞽女うた (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


 瞽女とは、目の不自由な女性芸能者のことである。医学が今のように発達していなかった時代は、疱瘡や麻疹で失明する人も多かった。それでなくとも女性の立場の弱い時代である。目の不自由な女性が生きにくかったことは、想像に難くない。瞽女稼業は、そんな女性たちの自立の手段でもあった。

 かっては、日本中に瞽女が存在したが、近代化の波の中で多くは衰退していった。それでも、新潟県などでは、昭和の後半にもまだ瞽女が存在しており、その歌が録音で残っている。しかし、瞽女文化のかなりの部分は失われてしまっており、それがどんなものだったのかは、限られた資料から読み取っていかざるを得ない。本書は、残された資料から、歴史、制度、生活、活動ぶりなどを読み説き、多彩な瞽女の世界を私たちに示してくれる。

 瞽女うたには、正調というものはないという。これは、目が不自由であったため、聞き覚えすることしかできなかったからということも理由のひとつだろうが、瞽女にとっては、うたは、商売であり、時と場合に応じて柔軟に対応する必要があったということもあるようである。この正調の欠如こそ、瞽女うたの大きな特徴の1つだという。

 科学技術の発達に伴い、私たちの暮らしはどんどん便利になるが、その一方では、多くの民俗文化が失われていく。それは、時代の流れとしていたしかたないことではあるが、こういった歴史、文化があったことは、せめて記録だけでも残しておく必要があると思う。しかし、放っておけば、古来の文化はどんどん消えうせてしまうばかりだ。そのような中で、こういった著書が発刊されたことには、大きな意義があるだろう。同じようなテイストの「琵琶法師ー”異界”を語るひとびと」と併せて読みたい。

琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


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