文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

随筆銭形平次 13 平次身の上話

2022-08-08 09:00:00 | 書評:その他

 

 このエッセイは、銭形平次の作者による平次の設定と執筆の背景を綴ったものだ。

 ドラマや個々の作品を読んでも平次の歳は分からない(これまで読んだ範囲では出てこなかった)が、永遠の31歳のようである。おまけに31歳から歳をとらないらしい。なぜ平次は歳をとらないのかという読者からの小言もあったようだが、これは彼の<連続小説の主人公の年齢を読物の経過する年月と共に老い込ませていくのはおよそ愚劣なこと・・>という考え方によるようだ。

 このことは、故内田康夫氏の浅見光彦が永遠の33歳とよく似ている(「遺譜」という作品でとうとう34歳になったが)。もしかすると、内田さんも影響を受けているのかな。

 小説に出てくる架空の人物も有名になれば、碑や塚が建ったりする。浅草の花やしきには、半七塚があるそうだ。実際にこの目で見たいものであるが、昨今の情勢では難しいだろう。

 ところで野村氏が銭形平次を書くようになったきっかけは、菅忠雄という人から、新しく雑誌を始めるので、半七のようなものを書いてくれと頼まれたからのようである。昭和6年のことだ。

 野村氏はこうも書いている

<わが銭形平次は十中七八までは罪人を許し、あべこべに偽善者を罰したりする。近代法の精神は「行為を罰して動機を罰しない」が、銭形平次はその動機にまで立ち入って、偽善と不義を罰する。


このことは、ドラマからでは分かり難いが、小説を読んでいると良く分かる。このあたりは通常のミステリーと一線を画しており、これも銭形平次の魅力だろう。また無精で、貧乏だという設定もなかなか面白い。

 銭形平次の話は結構多いが、共通認識としてこれを読んでおけば一層楽しめるのではないかと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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