昨日に引き続き雨模様のニューヨーク。
朝から降ったり止んだりしていた雨がお昼以降本降りになった中での
『マクベス』第3ランの公演開始となりました。
第一ランは10~11月のルチーチ、グレギーナ、レリエー、ピッタスというキャスト、
第二ランは1月で、ルチーチに変わりアタネリがマクベス役を歌い、
グレギーナに変わってローレンスがマクベス夫人を歌った日もありました。
ただし、ライブ・イン・HDの日には、アタネリではなくルチーチがマクベス役に呼び戻されました。
第ニランでは一部のキャストが変更になっただけなのに変わり、
第三ランは、主要キャストが総とっかえで、
マクベス役に昨シーズン『リゴレット』のBキャストでタイトル・ロールを歌ったカルロス・アルヴァレス、
バンクォー役にルネ・パペ、そして、マクダフに同じ『リゴレット』で
マントヴァ公爵役でアルヴァレスと共演したジョセフ・カレイヤがキャスティングされました。
歌唱上の難役とされるマクベス夫人役には、昨シーズン『トゥーランドット』などで歌った
アンドレア・グルーバーが当初予定されていましたが、
いつの間にか今シーズン『ノルマ』を歌ったハスミク・パピアンに変更になっていたのは、
昨日のお知らせの通り。
さて、いつもはほとんど定刻にスタートする公演が8時を9分過ぎても始まりません。
やがて舞台上からアナウンスが、、。どよめく観客。
誰がキャンセル、、?!
しかし、キャストの変更のお知らせではなく、この雨のおかげで、
到着が遅れているスタッフがいるために開演が遅れているが、あと10分以内には開演します、
とのこと。観客の安堵の溜息が聞こえてきそうです。
しかし、到着していないせいで開演できなくさせる可能性のある人といえば、
オケの団員の誰か(それもパートによる)か、出演者の誰かか(ルネ?)、
はたまた、、、、もしやレヴァイン?
困りますぅ、指揮者が遅れちゃ!(←真相は闇ですが、この際レヴァインのせいってことで。)
だって、雨のせいといっても、観客が遅れたときには開演を待ってはくれないのに。
(注:後ほど明らかになったところでは、スタッフではなく、お客さんの中に怪我をされた方がいて、
それも公演を遅らせる原因になったそうです。)
さて、まず第一幕で気付くのが、合唱のさらなる進歩。
先シーズンの末に新しいコーラスマスターを迎えてからの合唱の素晴らしい変貌ぶりは
度々このブログでもふれてきた通り。
時々、第一および第二ランからシリウスで放送された『マクベス』の公演を
今でも通勤中にiPodなんかで聴いているのですが、
その時と比べてもさらに顕著な進歩が聴かれるのには本当に私もびっくりしました。
こうやって時間の開いた同演目の公演を聴くととてもわかりやすい。
まだ半年かそこらですが、声の響きや言葉の扱い方に、目覚しい変化が見られます。
まだまだ進行形で発展中の合唱、頼もしいかぎりです。
さて、もう一点気になったのは、オケについてで、
特に新レパートリー、新演出の作品というのは、第一ランの前にじっくりと
指揮者、オケ、合唱、キャストの全員でリハを重ねるようですが、
その勢いが、特に第二ランから時間が空いてしまったために、失われてしまったこと。
おそらくこの第三ランに関しては、キャストがオケと合わせる
リハーサルはなかったのではないかと思われ、
指揮者、オケ、キャストの間で、第一および第二ランには確かにあった、
がっちりとした呼吸の合い方が、今日、特に第一幕ではあまり見られず、
ややぎこちない個所も散見されました。
オケに関しては、ニ幕あたりからだいぶ勘が戻ってきたようで、尻上がりによくなっていたので、
回数を重ねるごとに良くはなっていくと思いますが、、。
(とはいえ、このキャストでの『マクベス』は、三回しか公演がない。。。)
カルロス・アルヴァレスのマクベスは、ルチーチよりも声がどしっとしていて、
先輩バリトンらしく(メト・デビューはアルヴァレスがルチーチの2006年よりも十年早い。)、
自信のある歌いぶり。特にニ幕で精神錯乱を起すシーンは歌を聴く限り、達者。
そして、もちろんルネ・パペの歌が素晴らしくないわけがない。
こんなニ幕以降消えてしまう役で彼が舞台に登場してくれるとは、
(とはいえ、バスにはそういう出番の少ない役が多いですが、、)贅沢です。
しかし、私は、残念ながら、ここ二、三年、彼の声を聞く機会がなく、
もっと深い声だったような印象があったのですが、こうやって聴いてみると、
少なくともこのシリウスの放送では、意外とスマートで、
思っていたよりも柔らかい声だったのに驚きました。
彼に比べると、レリエーの方がずっと深くて、低音が響く声です。
この二人はさすがにベテランだけあって、安心して聴けるし、
カレイヤも、この役は彼にはもはやオーバークオリファイにも思えるほどなだけあって、
きちんと手堅く歌っています。
普通、役に求められている声質やキャラクターから言って、申し分ない3人のはずで、
ゆえに私は、シーズン開幕前はこちらの第三ランのキャストの方が本命!くらいに思っていたほどで、
今日もものすごく楽しみにしていたのですが、
なんだか、聴いているうちに、なんだか、あの、第一~第二ランのキャストとケミストリーが、
すごく懐かしく思えてくるのは、これはいかに??!
考えてみれば、おどおどと挙動不審気味で、いくらマクベス夫人に尻に敷かれてるからって、
そんなに気の弱そうなのはどうなの?と、思うルチーチのマクベスではありましたが、
彼の歌にはなんともいえないフレッシュさというか、新鮮味がありました。
そう、権力の交代の時には、こういうちょっと、今までと違う、新鮮な感じがあるものです。
それから、バンクォー。
このパペのように威厳のあるバンクォーもいいけど、あのレリエーの、
ヤンパパのような初々しいお父さんが懐かしいのはなぜだろう?
あの若いお父さんレリエーが、なんとなく自分の運命を感じ取って歌う
”なんと暗い夜の闇だ”のせつなかったこと。
パペの歌は、”パペという歌手”としては上手いのだけど、
バンクォーという役としては、私はレリエーの歌に軍配をあげたい。
それから、まだメトでは全く無名同然だったピッタスが歌った”ああ、父の手は”。
カレイヤと違って、軽い声だったけれど、彼が口を開いた途端、
客は全員引き込まれて、目と耳が離せなかった。
今、カレイヤがその”ああ、父の手は”を歌いました。
彼の歌も決して悪い出来ではありませんが、あの、ピッタスの
この役に全てを賭けているような真心のこもった歌が、客の心を掴んで離さなかったのと比べると、
やや生ぬるい感じが否めません。
今振り返ると、あの第一ラン(および第二ランのライブ・イン・HDの日の公演)は、
”若々しい”というのがキー・ワードだったような気がします。
それが、通常の『マクベス』の公演像とは逸脱していたかもしれませんが、
なんともいえないケミストリーを生み出し、独特のパワーを発揮していました。
あれは、キャスティングのあやが生み出した幸運な例だったんだなあ、と、
思わずにはいられません。
さて、問題は、パピアンのマクベス夫人。

(↑ 写真は昨年11月のメトの『ノルマ』の公演より)
そんな第一および第二ランの”若々しい”キャストの中で、
ひときわベテラン度が光っていたグレギーナですが、
まあ、それだけこの役は大変で、ぽっと出の歌手にはとても歌えるものではないということです。
パピアンについては、今までにこの役を全幕で歌ったことがあるのかどうかは知りませんが、
少なくとも今日の歌唱に関して言えるのは、やや準備不足という感があること。
夢遊の場のような個所の方は、歌が比較的練れているのですが、
第一幕は、ええ??という個所もいくつかありました。
夢遊の場の練れ方に比べると、全く適当というか、、。
グレギーナですら、公演の最初の方の日にちでは細かい部分が
適当に聴こえる箇所がたくさんありましたが、
噂ではライブ・イン・HDの前に、レヴァイン氏に細かいレッスンをつけてもらったという話があり、
そのHDの日には、見違えるほど歌の完成度があがっていました。
もし同じことがこのパピアンにも出来たなら、かなり結果が違っていたと思いますが、
ライブ・イン・HDはない、たった3回しか公演もない、という状況ですので、
彼女の場合は最後までこの適当な歌唱で行ってしまうかもしれません。
それから、やはり厳しいのがパピアンの声の軽さ。
これは、グレギーナが、この役に必要な声の重さをきちんと持っているのとは対照的。
思っていた以上にこの役には声が軽くて、残念ながら私の基準でいえば、
彼女は、観客のためにも、また何より、彼女自身のためにも、
この役は避けた方がいいと思うのですが、どうでしょう?
特に厳しかったのが、第一幕。
息が苦しくて水面でパクパクしている魚を思わせる歌唱で、聴いているこっちが辛かったです。
そんな状態では、コロラトゥーラの技術がどうのこうのという以前の話。
結局、この状態に引き摺られて、
一幕では、細かいアジリタの技術を披露することが出来ていませんでした。
アジリタがあやしいという面でほとんど変わらないのであれば、
私は、まだ声に重さがあるローレンスの方をとりたい気もします。
それでもどこか一箇所でも聴かせてくれる場面があれば、歌唱の印象が
変わったのかもしれませんが、一番痛かったのは、それがなかった点かもしれません。
ということで、特に男性陣が強力なキャストにもかかわらず、聴けば聴くほど、
第一ランのキャストが懐かしく思えるという不思議な公演でした。
ホストをつとめるマーガレット嬢まで、最後のカーテン・コールの場面で、
”そういえば、レリエーはこのアンコールのために一生懸命シャワーで血糊をとってから
舞台に上がっていましたよね。”と懐かしがる始末。
マーガレット嬢も私と同じ気持ちなのかもしれません。
そういえば、ライブ・イン・HDの映像がDVDで発売になるのは5月の予定だったはずでは?
”若々しいマクベス”を早くもう一度観たい!!!
Carlos Alvarez (Macbeth)
Hasmik Papian (Lady Macbeth)
Rene Pape (Banquo)
Joseph Calleja (Macduff)
Russell Thomas (Malcolm)
James Courtney (A doctor)
Elizabeth Blancke-Biggs (Lady-in-waiting to Lady Macbeth)
Conductor: James Levine
Production: Adrian Noble
ON
***ヴェルディ マクベス Verdi Macbeth***
朝から降ったり止んだりしていた雨がお昼以降本降りになった中での
『マクベス』第3ランの公演開始となりました。
第一ランは10~11月のルチーチ、グレギーナ、レリエー、ピッタスというキャスト、
第二ランは1月で、ルチーチに変わりアタネリがマクベス役を歌い、
グレギーナに変わってローレンスがマクベス夫人を歌った日もありました。
ただし、ライブ・イン・HDの日には、アタネリではなくルチーチがマクベス役に呼び戻されました。
第ニランでは一部のキャストが変更になっただけなのに変わり、
第三ランは、主要キャストが総とっかえで、
マクベス役に昨シーズン『リゴレット』のBキャストでタイトル・ロールを歌ったカルロス・アルヴァレス、
バンクォー役にルネ・パペ、そして、マクダフに同じ『リゴレット』で
マントヴァ公爵役でアルヴァレスと共演したジョセフ・カレイヤがキャスティングされました。
歌唱上の難役とされるマクベス夫人役には、昨シーズン『トゥーランドット』などで歌った
アンドレア・グルーバーが当初予定されていましたが、
いつの間にか今シーズン『ノルマ』を歌ったハスミク・パピアンに変更になっていたのは、
昨日のお知らせの通り。
さて、いつもはほとんど定刻にスタートする公演が8時を9分過ぎても始まりません。
やがて舞台上からアナウンスが、、。どよめく観客。
誰がキャンセル、、?!
しかし、キャストの変更のお知らせではなく、この雨のおかげで、
到着が遅れているスタッフがいるために開演が遅れているが、あと10分以内には開演します、
とのこと。観客の安堵の溜息が聞こえてきそうです。
しかし、到着していないせいで開演できなくさせる可能性のある人といえば、
オケの団員の誰か(それもパートによる)か、出演者の誰かか(ルネ?)、
はたまた、、、、もしやレヴァイン?
困りますぅ、指揮者が遅れちゃ!(←真相は闇ですが、この際レヴァインのせいってことで。)
だって、雨のせいといっても、観客が遅れたときには開演を待ってはくれないのに。
(注:後ほど明らかになったところでは、スタッフではなく、お客さんの中に怪我をされた方がいて、
それも公演を遅らせる原因になったそうです。)
さて、まず第一幕で気付くのが、合唱のさらなる進歩。
先シーズンの末に新しいコーラスマスターを迎えてからの合唱の素晴らしい変貌ぶりは
度々このブログでもふれてきた通り。
時々、第一および第二ランからシリウスで放送された『マクベス』の公演を
今でも通勤中にiPodなんかで聴いているのですが、
その時と比べてもさらに顕著な進歩が聴かれるのには本当に私もびっくりしました。
こうやって時間の開いた同演目の公演を聴くととてもわかりやすい。
まだ半年かそこらですが、声の響きや言葉の扱い方に、目覚しい変化が見られます。
まだまだ進行形で発展中の合唱、頼もしいかぎりです。
さて、もう一点気になったのは、オケについてで、
特に新レパートリー、新演出の作品というのは、第一ランの前にじっくりと
指揮者、オケ、合唱、キャストの全員でリハを重ねるようですが、
その勢いが、特に第二ランから時間が空いてしまったために、失われてしまったこと。
おそらくこの第三ランに関しては、キャストがオケと合わせる
リハーサルはなかったのではないかと思われ、
指揮者、オケ、キャストの間で、第一および第二ランには確かにあった、
がっちりとした呼吸の合い方が、今日、特に第一幕ではあまり見られず、
ややぎこちない個所も散見されました。
オケに関しては、ニ幕あたりからだいぶ勘が戻ってきたようで、尻上がりによくなっていたので、
回数を重ねるごとに良くはなっていくと思いますが、、。
(とはいえ、このキャストでの『マクベス』は、三回しか公演がない。。。)
カルロス・アルヴァレスのマクベスは、ルチーチよりも声がどしっとしていて、
先輩バリトンらしく(メト・デビューはアルヴァレスがルチーチの2006年よりも十年早い。)、
自信のある歌いぶり。特にニ幕で精神錯乱を起すシーンは歌を聴く限り、達者。
そして、もちろんルネ・パペの歌が素晴らしくないわけがない。
こんなニ幕以降消えてしまう役で彼が舞台に登場してくれるとは、
(とはいえ、バスにはそういう出番の少ない役が多いですが、、)贅沢です。
しかし、私は、残念ながら、ここ二、三年、彼の声を聞く機会がなく、
もっと深い声だったような印象があったのですが、こうやって聴いてみると、
少なくともこのシリウスの放送では、意外とスマートで、
思っていたよりも柔らかい声だったのに驚きました。
彼に比べると、レリエーの方がずっと深くて、低音が響く声です。
この二人はさすがにベテランだけあって、安心して聴けるし、
カレイヤも、この役は彼にはもはやオーバークオリファイにも思えるほどなだけあって、
きちんと手堅く歌っています。
普通、役に求められている声質やキャラクターから言って、申し分ない3人のはずで、
ゆえに私は、シーズン開幕前はこちらの第三ランのキャストの方が本命!くらいに思っていたほどで、
今日もものすごく楽しみにしていたのですが、
なんだか、聴いているうちに、なんだか、あの、第一~第二ランのキャストとケミストリーが、
すごく懐かしく思えてくるのは、これはいかに??!
考えてみれば、おどおどと挙動不審気味で、いくらマクベス夫人に尻に敷かれてるからって、
そんなに気の弱そうなのはどうなの?と、思うルチーチのマクベスではありましたが、
彼の歌にはなんともいえないフレッシュさというか、新鮮味がありました。
そう、権力の交代の時には、こういうちょっと、今までと違う、新鮮な感じがあるものです。
それから、バンクォー。
このパペのように威厳のあるバンクォーもいいけど、あのレリエーの、
ヤンパパのような初々しいお父さんが懐かしいのはなぜだろう?
あの若いお父さんレリエーが、なんとなく自分の運命を感じ取って歌う
”なんと暗い夜の闇だ”のせつなかったこと。
パペの歌は、”パペという歌手”としては上手いのだけど、
バンクォーという役としては、私はレリエーの歌に軍配をあげたい。
それから、まだメトでは全く無名同然だったピッタスが歌った”ああ、父の手は”。
カレイヤと違って、軽い声だったけれど、彼が口を開いた途端、
客は全員引き込まれて、目と耳が離せなかった。
今、カレイヤがその”ああ、父の手は”を歌いました。
彼の歌も決して悪い出来ではありませんが、あの、ピッタスの
この役に全てを賭けているような真心のこもった歌が、客の心を掴んで離さなかったのと比べると、
やや生ぬるい感じが否めません。
今振り返ると、あの第一ラン(および第二ランのライブ・イン・HDの日の公演)は、
”若々しい”というのがキー・ワードだったような気がします。
それが、通常の『マクベス』の公演像とは逸脱していたかもしれませんが、
なんともいえないケミストリーを生み出し、独特のパワーを発揮していました。
あれは、キャスティングのあやが生み出した幸運な例だったんだなあ、と、
思わずにはいられません。
さて、問題は、パピアンのマクベス夫人。

(↑ 写真は昨年11月のメトの『ノルマ』の公演より)
そんな第一および第二ランの”若々しい”キャストの中で、
ひときわベテラン度が光っていたグレギーナですが、
まあ、それだけこの役は大変で、ぽっと出の歌手にはとても歌えるものではないということです。
パピアンについては、今までにこの役を全幕で歌ったことがあるのかどうかは知りませんが、
少なくとも今日の歌唱に関して言えるのは、やや準備不足という感があること。
夢遊の場のような個所の方は、歌が比較的練れているのですが、
第一幕は、ええ??という個所もいくつかありました。
夢遊の場の練れ方に比べると、全く適当というか、、。
グレギーナですら、公演の最初の方の日にちでは細かい部分が
適当に聴こえる箇所がたくさんありましたが、
噂ではライブ・イン・HDの前に、レヴァイン氏に細かいレッスンをつけてもらったという話があり、
そのHDの日には、見違えるほど歌の完成度があがっていました。
もし同じことがこのパピアンにも出来たなら、かなり結果が違っていたと思いますが、
ライブ・イン・HDはない、たった3回しか公演もない、という状況ですので、
彼女の場合は最後までこの適当な歌唱で行ってしまうかもしれません。
それから、やはり厳しいのがパピアンの声の軽さ。
これは、グレギーナが、この役に必要な声の重さをきちんと持っているのとは対照的。
思っていた以上にこの役には声が軽くて、残念ながら私の基準でいえば、
彼女は、観客のためにも、また何より、彼女自身のためにも、
この役は避けた方がいいと思うのですが、どうでしょう?
特に厳しかったのが、第一幕。
息が苦しくて水面でパクパクしている魚を思わせる歌唱で、聴いているこっちが辛かったです。
そんな状態では、コロラトゥーラの技術がどうのこうのという以前の話。
結局、この状態に引き摺られて、
一幕では、細かいアジリタの技術を披露することが出来ていませんでした。
アジリタがあやしいという面でほとんど変わらないのであれば、
私は、まだ声に重さがあるローレンスの方をとりたい気もします。
それでもどこか一箇所でも聴かせてくれる場面があれば、歌唱の印象が
変わったのかもしれませんが、一番痛かったのは、それがなかった点かもしれません。
ということで、特に男性陣が強力なキャストにもかかわらず、聴けば聴くほど、
第一ランのキャストが懐かしく思えるという不思議な公演でした。
ホストをつとめるマーガレット嬢まで、最後のカーテン・コールの場面で、
”そういえば、レリエーはこのアンコールのために一生懸命シャワーで血糊をとってから
舞台に上がっていましたよね。”と懐かしがる始末。
マーガレット嬢も私と同じ気持ちなのかもしれません。
そういえば、ライブ・イン・HDの映像がDVDで発売になるのは5月の予定だったはずでは?
”若々しいマクベス”を早くもう一度観たい!!!
Carlos Alvarez (Macbeth)
Hasmik Papian (Lady Macbeth)
Rene Pape (Banquo)
Joseph Calleja (Macduff)
Russell Thomas (Malcolm)
James Courtney (A doctor)
Elizabeth Blancke-Biggs (Lady-in-waiting to Lady Macbeth)
Conductor: James Levine
Production: Adrian Noble
ON
***ヴェルディ マクベス Verdi Macbeth***