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音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

TURANDOT (Sat Mtn, Apr 14, 2007)

2007-04-14 | メトロポリタン・オペラ
今年、ファウストなどを歌っているルース・アン・スウェンソンが、
ニューヨークタイムズによるインタビュー中、微妙にゲルプ支配人を非難した模様。
もともと支配人からのご寵愛がないところに、乳がん発覚という悲しい出来事があり、
それをきっかけ・口実に先のシーズンのキャストから降ろされつつある(少なくとも彼女がそう感じている)というのが趣旨のようです。
また、そのインタビューの中で、自分に似た境遇にあるソプラノとして、
ヘイ・キョン・ホンの名前も挙げてました。

確かに今年はパーク・コンサートの椿姫から、マイスタージンガーのエーファ、
トゥーランドットのリューと登場回数の多かったホンさんですが、
なぜか来年のレパートリーに名前が見当たらない。

ルース・アン・スウェンソンの発言がでっちあげではないとするとひどい話です。
確かにホンさんのヴィオレッタ、エーファはどうなのかな?というところもありましたが、
これは彼女をこれらの役柄にキャスティングしたメトにもいくらかは責任があるわけで、
リュー役での歌唱の良さを考えるとBキャストを含めてもまったく年間通しで出番がないというのは、どうなんでしょう?

そう思いながらもう一度来年のレパートリーとキャストを眺めてみると、
なんだか、確かにもともとメトにはその傾向があるとはいえ、
ビッグ・ネームの歌手への依存と、キャスティングの固定化(Bキャスト、Cキャストを組まず、同一演目はAキャストで通す)がさらに進行しているように思います。
今年はそれでも、新しい顔ぶれの中になかなか期待できそうな人たちがたくさんいたのに、
そんな人たちも来年はまったく戻ってこないし。
(マランビオとか、Siurinaとか、楽しみにしてたんですが。。)
ネトレプコ、ゲオルギュー、フレミングにドミンゴもいいんですが、
別に全部の演目、役柄を彼・彼女たちで聴きたいわけでもないし、
どんどん新しい歌手の人を連れてきたりとか、
同演目でキャスト違いにして聞き比べさせてくれる、とか、
そういう楽しみを提供してくれないと、
NYを訪れる観光客のみを今後ターゲットにしていくならともかく、
シーズンを通して見にいける地元のファンは物足りない。
ハリウッドばりの馬鹿ばかしいスター・システムがリンカーン・センターにまで波及しないことを祈るのみです。

おそらく、こんな背景があってか、
(それは、ルース・アン姉さんと同様、見てなさいよ!って気にもなるでしょう。。)
ホンさんの今日の歌唱は特に前半で、多少力みがあるように見受けられました。
特に第一幕の"Signore, ascolta"は、若干気分をこめすぎたのが、表面的かつわざとらしく聴こえてしまったのが残念。
3月30日に聞いたとつとつと訴えかけるような歌唱のほうが、
仕える身のゆえにずっと口にしたことのなかった王子への思慕が、
初めて機会を得てあふれ出てくる感じがして、よかったのですが。。。
これでは逆効果よ、ホンさん!!と、私もついこぶしに力が入る。

マージソンの声は、上階で聞いてもやはり同じ。
音程などはきちんとしているし、一生懸命歌っているのだけれど、
声の質として、この役を歌うに必要なボディと、広がりがないというか、
こじんまりとした平均的な歌唱という印象がぬぐいきれない。

グルーバーが今日は意外と健闘していたのが嬉しかった。
In questa Reggiaで途中音がすっぽぬけるミスがあったので、
大丈夫?!と一瞬ひやりとしましたが、
それ以外は前回よりも数段よかった。



第一幕では集中力とバランスを若干欠いたオケの演奏ですが、
第二幕から持ち直していきます。

転機となったのが、第三幕。
マージソンの”誰も寝てはならぬ”が(彼の声にしては)、
まずまずよい出来だったのもありますが、
今度もやはりホンさん。
ティムールとリューがトゥーランドットの前に引きずり出されて、
王子の名前を言え!と拷問にかけられる場面。
トゥーランドットが、リューを締め上げていた役人に、
Sia lasciata! 離してやりなさい! そして、
リューに向かって Parla! さあ、言いなさい!と詰め寄ったときに、
リューが言う一言、
”Piuttosto morro それくらいならいっそ死にます”
この一フレーズの素晴らしかったこと!
アリアをうまく歌う、というのもよいことですが、
こういう一言をきちんと気持ちを込めて歌える人というのは、ほんといいですね。
ここから一気にドラマが盛り上がり、
そこから最後まで、なかなかグルーバーとマージソンも健闘。
いつもは、リューのアリアが終わると、プッチーニが作曲した部分が終わってしまうこともあって、
一気にテンションがさがってしまうことが多い私なのですが、
それが今日は最後まで緊張感を持って聞くことができました。
プッチーニが最後まで書き上げてくれたら。。。という気持ちは変わらないのですが、
演奏の出来次第では、三幕後半も結構楽しめるという発見が今日はありましたので、大満足。



ところで、インターミッション中にオペラハウスをぶらぶらしていたら、
過去のトゥーランドットの公演で着用された衣装が展示されていました。
”何これ?”というひどいデザインのもありましたが(特に写真ではまあまあに見えても実物をそばで見るとひどい!という例が。。)、
1926年、トゥーランドットの北米プレミアの際に(場所は旧メト)、
トゥーランドット役のマリア・イェリッツァが着用したというドレスはそれはもう
まじかで見ても、写真に残されているものをみても、一級の芸術品!
その美しさにため息が出ました。
冒頭の写真はその衣装を着たイェリッツァ。


Andrea Gruber (Turandot)
Richard Margison (Calaf)
Hei-Kyung Hong (Liu)
Earle Patriarco (Ping)
Tony Stevenson (Pang)
Eduardo Valdes (Pong)
Conductor: Marco Armiliato
Production: Franco Zeffirelli
Dr Circ A Odd
ON
***プッチーニ トゥーランドット Puccini Turandot***

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