
『パルシファル』の公演の全体像についてはこちら。
**第六日目**
今日もドレス・サークルの最前列。
ここから二回は指揮がアッシャー・フィッシュに交代。
しかし、この6日ははそれだけでなく、クンドリ役が病欠のダライマンに変わり、ミカエラ・マルテンスになった。
今シーズン『パルシファル』で歌手の交代があったのはこの一件のみ。
マルテンスというと、確か2007-8年とその翌シーズンのの『ランメルモールのルチア』でアリーサを歌っていたメゾではなかったか?と思ったらやはりそうだった。
ワーグナーの作品を歌えるメゾだったとは意外だが、おそらく彼女がクンドリ役のアンダースタディだったのだと思われる。
きちんと演出の意図は理解し、彼女なりに真摯に努力しているのは伝わってくるのだが、
やはり他人が歌い演技しているのを目で見て頭の中で理解するのと、実際に舞台の上の相手がいる場でそれを再現するのとでは大違いで、細かいところでぎこちなさが目立った。
一幕でグルネマンツとパルシファルが聖杯城に向かう(とはいえ、この演出では具体的な城はないので、そうリブレット上ではなっている)場面の前に、
クンドリは眠りに落ちながら草の茂みに隠れていく、ということになっている。
ダライマンは眠りに落ちる場所を出来るだけ舞台袖の近くにしておくことで、少し這えばすぐに姿を消せるようにしていたが、
マルテンスはそれよりずっと舞台の中央寄りで眠りについてしまったので、いくら這っても舞台袖に辿りつかず、そのままあきらめて舞台上でぐったりと静止してしまったので、
あの舞台転換の感動的な音楽の中をこのまま彼女はずっと舞台の上で寝て過ごすつもりなのだろうか?とびっくりしたが、
少し舞台が暗くなるのをきっかけにむっくりと立ち上がってすたすたと舞台袖に消えて行った。
うーん、それはあんまりだろう。
それからラストでは、マルテンスが聖杯をカウフマンの近くに掲げすぎたために、カウフマンが自分の持っている槍の先を聖杯に入れる動作に四苦八苦していた。
こういう作品の要の部分で気分がそがれるような事態になるのは残念だ。

ダライマンに比べると、彼女が歌いやすい範囲の声域においては、よりみずみずしくがっちりとした音色で悪くないのだが、高音域になるとその音色が失われてしまい、
本人もそれに自覚があるからか、薄氷を踏むような歌い方になってしまうのもいただけない。
クンドリはそのレベルの歌手が歌う役柄ではないし、今回のように周りを見渡せば男性陣は誰も彼もが優秀なキャスト、、という環境の中ではなおさらだ。
ダライマンだって声楽的に欠点がないわけでは決してないのだが、それなりにねじ伏せて一つのクンドリ像を作っているのに対し、マルテンスはどこか遠慮がちだ。
これだとやっぱり二人のどちらかを採れといわれればダライマンを選ぶことになってしまう。
ランの途中で指揮者が交代する場合、交代した最初の公演はまだ前の指揮者の演奏の雰囲気が残っている、というケースをこれまでにも何度か体験したことがあるが、
今回もまさにそのパターンで、いまひとつフィッシュがどういう演奏をしたいのか見えなかった。
一方でもちろんガッティの演奏を面白くしていた部分を徹底させることの出来る本人(ガッティ)はもういないわけで、これまでの演奏と同じレベルの細部への拘りや音のきらめきを維持出来ているわけではない。
指揮者のスケジュールとの兼ね合いもあるのは良くわかるが、こういうランの最後の数回だけ別の指揮者、、というのもやめてほしいな、と個人的には思う。
どんな優れた指揮者でも、『パルシファル』みたいな作品でリハーサルもなしにいきなり指揮台に立って思い通りの指揮が出来るわけがないし、こんなことは指揮者、オケ、オーディエンス、誰の得にもならないと思うのだ。
Jonas Kaufmann (Parsifal)
Michaela Martens replacing Katarina Dalayman (Kundry)
René Pape (Gurnemanz)
Peter Mattei (Amfortas)
Evgeny Nikitin (Klingsor)
Rúni Brattaberg (Titurel)
Maria Zifchak (A Voice)
Mark Schowalter / Ryan Speedo Green (First / Second Knight of the Grail)
Jennifer Forni / Lauren McNeese / Andrew Stenson / Mario Chang (First / Second /Third / Fourth Sentry)
Kiera Duffy / Lei Xu / Irene Roberts / Haeran Hong / Katherine Whyte / Heather Johnson (Flower Maidens)
Conductor: Asher Fisch
Production: François Girard
Set design: Michael Levine
Costume design: Thibault Vancraenenbroeck
Lighting design: David Finn
Video design: Peter Flaherty
Choreography: Carolyn Choa
Dramaturg: Serge Lamothe
Dr Circ A Odd
OFF (LoA)
*** ワーグナー パルシファル パルジファル Wagner Parsifal ***
**第六日目**
今日もドレス・サークルの最前列。
ここから二回は指揮がアッシャー・フィッシュに交代。
しかし、この6日ははそれだけでなく、クンドリ役が病欠のダライマンに変わり、ミカエラ・マルテンスになった。
今シーズン『パルシファル』で歌手の交代があったのはこの一件のみ。
マルテンスというと、確か2007-8年とその翌シーズンのの『ランメルモールのルチア』でアリーサを歌っていたメゾではなかったか?と思ったらやはりそうだった。
ワーグナーの作品を歌えるメゾだったとは意外だが、おそらく彼女がクンドリ役のアンダースタディだったのだと思われる。
きちんと演出の意図は理解し、彼女なりに真摯に努力しているのは伝わってくるのだが、
やはり他人が歌い演技しているのを目で見て頭の中で理解するのと、実際に舞台の上の相手がいる場でそれを再現するのとでは大違いで、細かいところでぎこちなさが目立った。
一幕でグルネマンツとパルシファルが聖杯城に向かう(とはいえ、この演出では具体的な城はないので、そうリブレット上ではなっている)場面の前に、
クンドリは眠りに落ちながら草の茂みに隠れていく、ということになっている。
ダライマンは眠りに落ちる場所を出来るだけ舞台袖の近くにしておくことで、少し這えばすぐに姿を消せるようにしていたが、
マルテンスはそれよりずっと舞台の中央寄りで眠りについてしまったので、いくら這っても舞台袖に辿りつかず、そのままあきらめて舞台上でぐったりと静止してしまったので、
あの舞台転換の感動的な音楽の中をこのまま彼女はずっと舞台の上で寝て過ごすつもりなのだろうか?とびっくりしたが、
少し舞台が暗くなるのをきっかけにむっくりと立ち上がってすたすたと舞台袖に消えて行った。
うーん、それはあんまりだろう。
それからラストでは、マルテンスが聖杯をカウフマンの近くに掲げすぎたために、カウフマンが自分の持っている槍の先を聖杯に入れる動作に四苦八苦していた。
こういう作品の要の部分で気分がそがれるような事態になるのは残念だ。

ダライマンに比べると、彼女が歌いやすい範囲の声域においては、よりみずみずしくがっちりとした音色で悪くないのだが、高音域になるとその音色が失われてしまい、
本人もそれに自覚があるからか、薄氷を踏むような歌い方になってしまうのもいただけない。
クンドリはそのレベルの歌手が歌う役柄ではないし、今回のように周りを見渡せば男性陣は誰も彼もが優秀なキャスト、、という環境の中ではなおさらだ。
ダライマンだって声楽的に欠点がないわけでは決してないのだが、それなりにねじ伏せて一つのクンドリ像を作っているのに対し、マルテンスはどこか遠慮がちだ。
これだとやっぱり二人のどちらかを採れといわれればダライマンを選ぶことになってしまう。
ランの途中で指揮者が交代する場合、交代した最初の公演はまだ前の指揮者の演奏の雰囲気が残っている、というケースをこれまでにも何度か体験したことがあるが、
今回もまさにそのパターンで、いまひとつフィッシュがどういう演奏をしたいのか見えなかった。
一方でもちろんガッティの演奏を面白くしていた部分を徹底させることの出来る本人(ガッティ)はもういないわけで、これまでの演奏と同じレベルの細部への拘りや音のきらめきを維持出来ているわけではない。
指揮者のスケジュールとの兼ね合いもあるのは良くわかるが、こういうランの最後の数回だけ別の指揮者、、というのもやめてほしいな、と個人的には思う。
どんな優れた指揮者でも、『パルシファル』みたいな作品でリハーサルもなしにいきなり指揮台に立って思い通りの指揮が出来るわけがないし、こんなことは指揮者、オケ、オーディエンス、誰の得にもならないと思うのだ。
Jonas Kaufmann (Parsifal)
Michaela Martens replacing Katarina Dalayman (Kundry)
René Pape (Gurnemanz)
Peter Mattei (Amfortas)
Evgeny Nikitin (Klingsor)
Rúni Brattaberg (Titurel)
Maria Zifchak (A Voice)
Mark Schowalter / Ryan Speedo Green (First / Second Knight of the Grail)
Jennifer Forni / Lauren McNeese / Andrew Stenson / Mario Chang (First / Second /Third / Fourth Sentry)
Kiera Duffy / Lei Xu / Irene Roberts / Haeran Hong / Katherine Whyte / Heather Johnson (Flower Maidens)
Conductor: Asher Fisch
Production: François Girard
Set design: Michael Levine
Costume design: Thibault Vancraenenbroeck
Lighting design: David Finn
Video design: Peter Flaherty
Choreography: Carolyn Choa
Dramaturg: Serge Lamothe
Dr Circ A Odd
OFF (LoA)
*** ワーグナー パルシファル パルジファル Wagner Parsifal ***
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