Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

とりあえず、2010年のタッカー・ガラ

2010-08-07 | お知らせ・その他
もう毎年、当初予定されていた出演者からの変更が著しいので、記事にするのもちょっぴり空しい感じもあるのですが、
そうはいえ、半分以上の歌手は予定通り登場するわけで、
今年もタッカー・ガラの招待状が来ましたので、8/6現在、予定されている出演者をご紹介します。
会場はいつもと同じくエイヴリー・フィッシャー・ホール、11月14日(日)の午後6:30の開演です。
この予定通りに行けば、なかなか豪華な出演者ですので、
お目当ての歌手が結局出演しないという事態に伴うリスクを犯す勇気のある方は今からチケットをゲットいたしましょう。
主催者であるタッカー・ファンデーションのサイトはこちら。すでに電話でもオーダーを受けてくださいます。

まず、インビテーションの出演者のトップの座に、
”わしより先に行こうと思うなよ。”とばかりにどどーん!と鎮座ましますのは、フェルッチョ・フルラネット(↓)。
確かにキャリアの長さと業績から言って、他に彼より先に名前を挙げるべき歌手は、今回の出演者の中にはいないでしょう。
スカラのHDの『シモン・ボッカネグラ』でのフィエスコはおよそ彼らしくない残念な歌唱でしたので、
タッカー・ガラと、その直後にメトで公演が始まる『ドン・カルロ』のフィリッポ役では、
それを引っくり返して、いつもの素晴らしい歌唱を聴かせてくれるのを期待しております。



昨年のタッカー・ガラに出演が予定されていながら、ゲオルギューの策略により、
その実現を阻まれたエリーナ・ガランチャ(↓)が、今年、リベンジをかけてくれます!
メトの『カルメン』の出演と重ねて、ということですので、今回はよほどのことがなければ大丈夫でしょう。
それにしても、『カルメン』に加えて、OONYの『ナヴァラの娘』に、このタッカー・ガラに、と、相変わらず人気者は忙しいよ、のガランチャです。



そして、なぜかNYで行われるオペラ・ガラのあちこちで姿を見かける気がするマルチェッロ・ジョルダーニ(↓)。
なにげに、お祭り好き?
彼は何があっても、キャンセルしない気がします。
メトの新シーズンでは、12/6に初日を迎える『西部の娘』に登場しますので、
ちょうどリハーサル時期にひっかかる日程なのかな、、、いや、ひっかかってなくても、現れるのです。お祭り好きだから。



2007年のタッカー賞受賞者で、当時はまだ初々しい感じだったブランダン・ジョヴァノヴィッチ(↓)が、3年振りにガラに登場。
タッカー賞はこれから活躍が期待される若手歌手に授与され、ガラではトップ・バッターを務めるのが慣わしなんですが、
不幸にも、そのようにタッカー賞受賞者としてガラ・デビューを果たしながら、
その後、二度とガラに登場出来ない可能性もあるわけで、
それを考えると、決して大ブレークはせずとも、地道にアメリカの歌劇場を中心に活躍し、
メトでも先シーズンに続き、新シーズンも『カルメン』のホセにキャスティングされているのですから、
この3年間、立派に頑張って来たといえます。
2007年のガラでは、あまり強い印象を残せなかったので、3年間の経験と努力を、
思い切り、今年のガラの歌唱にぶつけて頂きたい。期待してます。
(写真はシカゴ・リリック・オペラの『カーチャ・カバノヴァ』の舞台より。)



フルラネットに続き、メトの『ドン・カルロ』組からもう一人、同演目でロドリーゴを歌うサイモン・キーンリーサイド(↓)。
彼とタッカー・ガラといえば、2007年にポレンザーニと歌った『真珠とり』からの二重唱の美しさ
こちらの記事で音源を紹介したことがあります)が懐かしく思い出されますが、今年は何を歌ってくれるでしょうか?
(写真は先2009-10年シーズン、メトの『ハムレット』より。)



そして、現在発表されているキャストの中では最も”キャンセルをかましそう”度が高そうなのがこの男、マリウス・クウィーチェン(↓)。
言っておきますが、私は彼、結構好きですので登場してほしいのはやまやまなのです。
しかし、考えてみるに、彼がガラにキャスティングされたのは、
おそらく、ガランチャと同様に新シーズンの『カルメン』への出演にひっかけたものだったと思われます。
けれども、シーズン予定が発表になってから、彼はエスカミーリョ役を辞退することを発表。
(代わりは南太平洋的鼻男のパウロ・ショットが歌うそうです。)
彼は先(2009-10年)シーズンの『カルメン』のエスカミーリョも何公演かキャンセルしてしまったので、
今の彼の声と役が合わないと判断したのではないか、というのが最も可能性の高い理由ですが、
もし、そうだとすると、この時期に別の劇場の公演に出演することも可能なわけで、
それがNYから離れたところであったり、日程によっては、ガラの方がキャンセルされる可能性は大いにあります。
もちろん、何も他に予定がなかったり(それもまた寂しい話ではありますが、、)、
意外にも(?)律儀な性格だった場合、登場してくれる可能性はあります。

後注:コメントにもあります通り、書き終えた後に、彼は同時期に『カルメン』だけでなく、
『ドン・パスクワーレ』にもキャスティングされていたことを思い出しました。
現在のところ、『ドン・パスクワーレ』から降板する予定はなさそうですので、ガラに登場してくれる可能性は、思ったよりも高そうです。失礼しました。




最近、全幕ではぱっとしない感があるジェリコ・ルチーチ(↓)も、
なぜか、毎年、タッカー・ガラでは突然フィーバーする意外なお祭り系。
新シーズンは『リゴレット』のタイトル・ロールと、
『トロヴァトーレ』のAキャストのルーナにキャスティングされており、
今回のタッカー・ガラは後者にひっかけたもののようです。
(ちなみに『トロヴァトーレ』のHDはCキャストで、同役はホロストフスキーが歌います。
ホロストフスキー相手じゃ人気で全く勝ち目のないルチーチなのでした、、。)



そして!私が今年のラインアップで最も嬉しい悲鳴をあげたのは彼女。
もう想像がおつきになっている方もいらっしゃるでしょう。
アンジェラ・ミード(↓)です!!!!!
私が”彼・彼女が登場する舞台なら何でも聴きに行きたい。”と思う歌手はそうたくさんはいませんが、彼女は現在、間違いなくその一人。
つい最近キャラモアで聴いた『ノルマ』については、すでに感想をあげた通りです。
それにしても、彼女こそ若手なので、タッカー賞受賞者として、ガラのトップ・バッターを飾るかと思いきや、
受賞者としてではなく、普通に他の一線の歌手に混じってキャスティングされているのも異例です。まるで、”飛び級”、、。
私がなぜ、彼女の登場する舞台は何でも聴きに行きたい、と思うか、
ガラを鑑賞される予定で、まだ彼女の生声を未体験の方には、ぜひ体感して頂きたく思います!
(記事の冒頭の写真は、メト2007-8年シーズンにラドヴァノフスキーの代役で立った『エルナーニ』の舞台での彼女。
下はキャラモア音楽祭の『ノルマ』の公演から。)



さて、アレックス・ロス氏のブログ、The Rest is Noiseによると、
メトの2011-12年シーズンの『アンナ・ボレーナ』は、そのミードと、アンナ・ネトレプコ(↓)のダブル・キャストなんだそうです。
もちろん、一応、ネトレプコが表のキャストなんですが、歌の内容ではミードの方が表になること、間違いなし。
ロス氏も、ネトレプコ勇気あるわあ、、と言っていますが、
2011-12年まで待たずとも、それがどういうことであるか、このタッカー・ガラで確認できます。
もし、ネトレプコが恐れをなしてガラをキャンセルしなければ。
再び言うと、私はネトレプコのこと、嫌いではないのですが、
(優れた資質を持っているのに、それを完全に開花する努力を怠っている!!と、何度もこのブログで吠えて来た通り。)、
それ位、ミードの力がすごい、ということです。
ネトレプコは、このガラと同時期にメトの『ドン・パスクワーレ』に出演しているというのが皮肉ですが、
彼女はこのガラ、ベル・カント・レップは歌わないのが身のためだと思います、本当に。



さて、今年はトリノとROHの二つの日本公演で、日本のオペラ・ファンの方にもエクスポージャーが極めて高い
マシュー・ポレンザーニ(↓)も、ガラに登場します。
彼も良く考えてみれば、タッカー・ガラへの登場頻度が非常に高い、、。
もしや、キーンリーサイドも登場するから、”また、あれ(真珠とり)で行く?”なんて、安易な選曲を考えているんじゃ!?
ポレンザーニは新シーズン、大晦日に初日を迎える新演出の『椿姫』
(ネトレプコ&ヴィラゾンのコンビで映像にもなっているザルツブルクと同じデッカーのプロダクション)で
アルフレードにキャスティングされています。



少なくともここ数年はタッカー・ガラには登場しておらず、
ちょっと珍しい顔ぶれなのがデボラ・ヴォイト(↓)。
ジョルダーニ、ポレンザーニ、ルチーチのローテーションもいいですが、
こういうフレッシュな出演者は大歓迎です!
彼女もジョルダーニと同じく、メトの新シーズンは『西部の娘』に登場します。



さて、今年のタッカー賞の受賞者がミードでないことは先に書いた通り。
では、彼女をさしおいて、受賞した歌手は相当な実力のある歌手に違いない、、と、
出演者リストの末席(ここがタッカー賞受賞者の名前)を見て、腰が砕けるかと思いました。
不必要なまでに長身な男、ジェームズ・ヴァレンティ(↓)が今年の受賞者だそうです。
ヴァレンティと言えば、スコアを知らない指揮者と自己主張の強いソプラノのはさみうちにあった
先シーズンの『椿姫』
を思い出して、つい目頭が熱くなりますが、彼がタッカー賞の受賞者、、、、
タッカー賞の選考がもう少し遅かったなら、もしくはキャラモアの公演がもう少し早かったなら、、、
今頃、ファンデーションの方が、”アンジェラ(・ミード)を受賞者にしておくんだった、、”と後悔してなければいいのですが、、。



ここまでご紹介した出演者のために、今年のガラでメト・オケを指揮するのは、
歌手のお守りならお任せ!のマルコ・アルミリアート(↓)。
とはいえ、今年は割と協調性のある出演者がそろっていそうなので、お守りスキルは不要かもしれませんが、、。
マルコといえば、映画『The Audition』が撮影された年のナショナル・カウンシルの指揮も担当しており、
ミードとはそれ以来の顔合わせのはずで、ちょっぴり感慨深いものがあります。



冒頭にも書きました通り、これらの出演予定者は8/6現在のものであり、
ガラ当日まで、変更があれば、出来る範囲で当ブログで紹介する予定ですが、
チケットを購入される際、ファンデーションのサイトでご自身で最新の情報を確認されることをおすすめします。
また、お目当ての歌手が降板になりましても、当ブログは責任を負いかねますので、ご理解お願いいたします。