類は友を呼ぶ。
この言葉はまったくもって真実であって、ブログを通して知り合った皆様とのご縁などもこれに当てはまるかと思うのですが、
また同時にずっと側に”友”がいたのに長らく気づいておらず、
自分がある種の”類”であることをカミング・アウトしたことがきっかけで、その事実が発覚する、というようなこともあります。
私のバレエの師匠M子さんとの関係はまさに後者。
同じ会社に勤めていた数年間、お互いにバレエ(M子師匠)とオペラ(私)が好きらしい、ということを知ってはいたものの、
職場で例えばこのブログと同じようなノリででオペラやバレエのことを語った日には頭がおかしい人だと思われるに違いない、という思いから、
二人ともお互いに”フツーのファン”を装い、特に一緒に公演を観に行くというようなこともなく、
それぞれにひっそりと、しかし深く、バレエ気違い、オペラ気違いの道をひた走っていたわけです。
しかし、ある時から、お互いにまったくもってフツーのファンどころの騒ぎではなく、
家計を傾かせるほどに(M子さんのところはびくともしていないかもしれないけれど、我が家は間違いなく、、。)、
M子師匠はABTに、この私はメトに、激しく注ぎ込みまくっている、つまりまさしく”類友”であることが発覚してしまいました。
しかも、今ではM子師匠はこのブログの存在をご存知なばかりか、なんと愛読までしてくださっており、
私がトーシロなりにバレエにも大きな興味と敬愛を持っていることをご存知になって、
毎シーズン、注目のダンサーや演目の情報を教えてくださり、機会があれば”この公演、ご一緒しない?”などと言って誘って下さいます。
ありがたや。
私はことバレエに関してはもしかするとオペラ以上に鑑賞運に恵まれているのではないか?と感じているところもあって、
フェリやニーナの引退公演など、本当なら、私のようなトーシロ・バレエ鑑賞者が見るより、
ずっとバレエ・ファンであり続けて来た方にこそ見て頂くのが筋ではないのか?と、
つい恐縮してしまうような、特別といってもよい種類の公演に接する機会に恵まれて来ました。
そのうえ、今年もまた、M子師匠が”ホセ(・カレーニョ)の引退公演(『白鳥の湖』)を一緒に観に行きましょう。”と誘って下さって、
しかも、M子師匠がいつもお座りになるかぶりつき席の隣に招待してくださったので、
”豚に真珠”な私のバレエ鑑賞ライフにまたもや新たな一ページが加わることとなったのです。
そのカレーニョの引退公演については、もちろん、単独の記事として、感想を後日アップする予定ですが、
カレーニョの引退公演の前に、もう一つ、M子師匠が誘ってくださった貴重なイベントが、今回記事にするABTのカンパニー・クラス。
正確な企画名はこの記事の名前にもある通り、”Company Class on Stage at the MET”。
つまり、メトのオペラハウスの舞台上で、ダンサーたちがバー・レッスンを含めた
日常のレッスンの様子を見せて下さるという、ABTのパトロンを対象としたイベントです。
私はオペラでも、リハーサルとか、ソリストやオケのウォーミング・アップ・練習、
テック・リハーサル(大道具の人たちが手順を確認するためのリハーサル)などを見せて頂くのが大、大、大好きです。
昨シーズンはメトでドレス・リハーサルを色々鑑賞させて頂きましたが、
ドレス・リハーサルというのは、すでにかなり本番に近い状態になっていて、実際演奏の中身も本公演とはそう変わらないケースがほとんどなんですが、
今日のこのカンパニー・クラスの企画は、オペラで言えばドレス・リハーサルよりもさらに手前の、
歌手の声楽のレッスンとかを見せて頂くのにも等しい、非常に貴重な機会であり、私はわくわくしながらM子さんとメトにやって参りました。
メトのオーディトリアムに到着すると、すでに舞台上には多くのダンサーが揃っていて、思い思いの方法でバー・レッスンに入る準備に余念がありません。
ダンサーにとって怪我ほど怖いものはありませんから、このウォーミング・アップもリラックスした空気が流れながらも真剣そのもの。
そう、オーディトリアムに一歩足を踏み入れた瞬間から、この緊張感あふれる静寂とでも形容したくなる空気が非常に心地よく、
喧騒溢れるNYの街を歩いた後にオーディトリアムに入った私達にはまるで別世界に紛れ込んだような感覚がありました。
天気に恵まれた土曜のお昼ということもあるかもしれませんが、そもそも招待されている人の数が少ないのでしょう。
座席は真ん中のブロックに座っている人が中心で、それもせいぜい前から1/4埋まっているかどうか、というところで、
こんな滅多に見ることの出来ないものを見れる機会を下さってありがとう!とおもむろにM子さんの手を握り締めそうになってしまいます。
しかも座席は前から二列目のど真ん中。
バーは舞台に垂直になる形で何本か設置されているのですが(なので客席にいる私達はダンサーと向かい合うような状態)、
舞台手前にいるダンサーはもちろん、奥にいるダンサーまで、よく見えること、よく見えること。
しかし、その中でも真っ先に目を惹いたダンサーがいます。
まだバー・レッスンも始まっていないのですから、これはもう本人のオーラというか、佇まいがなせるわざなのでしょう。
そこにいるのはもちろんのこと、我がダックス王子、マルセロ・ゴメスです!
もしかするとレッスンをするゴメスにまとわりつくルアちゃんも舞台上に見れるのではないかと淡い希望を持っていましたが、
それはさすがに期待のし過ぎでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/f6/cda434bb24a42c19424c26bb9735b7fa.jpg)
(今シーズンの『ジゼル』よりディアナ・ヴィシニョーワとマルセロ・ゴメス)
ゴメスは全幕の舞台で見ても体格が大きいな、とは思いますが、こういう場で、衣裳とは違う普通の格好(最初はTシャツにスエットのパンツ)で、
他のダンサーと一緒にいると一層その大きさと逞しさが目立つというか、”こんなにでかかったんだ、、。”と思いました。
もしかすると、クラシック・バレエのダンサーとしてはごつ過ぎる位かもしれませんが、
彼の場合、しなやかで、細部にまで神経の行き届いた踊りが出来るせいで、舞台の上で不器用もしくは無骨に見えることがないのだと思います。
それにしても、足元のUGGのようなショート・ブーツがまたキュート!きゃん!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/bd/b04c12f44fdc961b6055647d7bd671dc.jpg)
バレエのレッスンでこういうシューズを履くのもありなのね。
ああ、それにしても、いい男は何をやっても素敵、、、不細工な男がスエットにUGGのブーツ履いてたら、張り倒したくなるだけだけど。
というようなことを考えつつ、ダックス王子と別の方向に目を向けると、これまた超美男子なダンサーと目が合いました。
今の職場で私の周りに座っている男性は、気は良いのだけれど、
このABTにいる男性たちとは違う種類の生き物なんじゃないかと思うような、
体を絞る・鍛えるというコンセプトとは無縁の、おなかに肉襦袢を巻きつけ放題の、いけてないエロじじい
(会社のPCで堂々とグラビアチェック、、、、。)ばっかりなので、
もうこの右を見ても左を見ても私の瞳に自ずと花や星が浮かんで来そうな美男子ばかり、の図に、
世の中にはこういう職場もあるのね、、、と、ABTの団員の女性達に羨望の眼差しを向けつつ、
人生とはなんと不公平なものなのか!と一人心で嘆くMadokakipなのでした。
それにしても、この美男子なダンサー、どこかで見たことがある人なんだけど、、、、誰だっけ、、、?と、考えること数秒。
あああああああっ!!!!!!ロ、ロベルト・ボッレじゃなくってっ!?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/2e/9aeb5329ec5993393e09affe8e4ef0d6.jpg)
(同じく今シーズンの『椿姫』よりジュリー・ケントとロベルト・ボッレ)
し、師匠!!!!師匠の一目ぼれのアイドルがあそこにいらっしゃいますです!と、M子さんの腕をつかんで激しく揺らしたい衝動にかられましたが、
舞台の上と同様、上品に静まり返っている客席(ここらがドレス・リハーサルが始まるまでぴーちくぱーちくと喋り続け、
口にガムテープを貼ってもまだ黙らなさそうなオペラファンとの違い、、、。)に、
このハードコアなパトロンが大集合!の場で、きゃーきゃー騒いでM子師匠を辱めることになってはいけない、、と柄にもなく、つい遠慮してしまいました。
それにしても、舞台で踊ったり、雑誌のグラビアなんかに登場している時のボッレはすっとした大人顔のイタリアの美青年!って感じですが、
こういう素の場では、ちょっと雰囲気が違うというか、どちらかというと茶目っ気のある可愛らしい少年のような感じがするのが意外でした。
だから一目で彼だ!とわかったゴメスと違い、ボッレの場合、認識するのに多少の時間がかかったのかもしれません。
でも、良く考えてみれば、それは、これまで私がボッレが良かったな、彼に雰囲気が合っているな、と感じた役は、
ロミオとかアルマンとか、幼さ、若さをどこかに感じさせる役であることと無関係ではないのかもしれません。
体格もゴメスよりずっと華奢な感じで、当たり前ですが、こうして二人が並んでいるのを見ると、その場で立っているだけでも全然個性が違うダンサーだな、と思います。
それにしても、しつこいようですが、ボッレの姿を見ると、思い出したくもないのに、どうしてもデフォルトでアラーニャを思い出してしまって困るんですけれど、
ボッレのこの少年のような佇まいを見ていると、アラーニャへの辛辣な一言が本当に彼の口から出たとは信じられないような気がして来ます。
いや、でも、少年・少女の無邪気ゆえの残酷さというのも、また良く聞く話、、、
と、とりとめのないことを考えているうちに、体に小さなマイクをつけて、今日のレッスンの先生役を務めると思しき方が出てきました。
世界的に活躍しているボッレやゴメスといったダンサーらをとりまとめてクラスを進行していくとは、なんと大変な仕事でしょう?
大体、彼らに物を申せる人物って一体何者?という感じです。
クラスに来る前に私が想像していた先生は、往年の名ダンサーであるよぼよぼなおじいさんか、
もしくは、そこまで歳が行かずとも、引退後の大御所ダンサーみたいな人で、
自分は踊らずに、フロアでダンサーに目を光らせながら、”そこ違う!”みたいな感じで口だけ挟むのかと思いきや、
それが、どっこい!この先生は、髪はなぜだか妙に寂しくなりつつありますが、まだまだ現役まっただ中の年代の男性で、
しかも、マイクをつけたまま、メンバーにメニューの手順を説明しつつ、ピアノの伴奏(ロシアの男性と思しきピアニストで演奏が上手!)に合わせて、
お手本を兼ねてみんなと一緒にレッスンのメニュー全部を自分自身で踊ってみせているのです。
クラスの前半のバー・レッスンは全員一緒に進行するのでともかく、後半に現れる色んなパやジャンプを組み合わせたパートでは、
とても全員が一緒に踊れるスペースはないので、同じシークエンスを3つとか4つのグループが連続して踊るのですが、
その3回、4回分のほとんどで一緒にお手本を見せていて、しかもそのお手本が、ことごとく、”やるな、先生、、、。”と唸らされる出来なのです。
しかもそれと同時に個々のダンサーにアドバイスを与えまでしているんですから、なんという技術!なんというスタミナ!
多分レッスンに参加していた全員を含め、誰よりもハードにエネルギーを消耗していたのは他ならぬこの先生でしょう。
前半のバー・レッスンは、ダンサー達が体をチューン・アップして行く様子を見せて頂くという点で非常に興味深い体験でした。
例えば若い、経験の浅いダンサーほど、決められたルーティンの動きをそのままこなしているように見受けましたが、
ゴメス位のクラスのダンサーになると、単にルーティンをなぞるだけでなく、あるムーブメントは飛ばしたり、
逆に他のダンサーがやっているのとは違う動きを差し入れたりしていて、自分の体との対話ということが徹底されているように思いました。
オペラの歌手の場合でも同じですが、舞台に立つ人というのは、
公演で出来る限り自分のベストに近いコンディションに持っていかなければなりません。
でも、体とか声の状態というのは日によって違う。
ということは、それをベストに持って行く道筋も毎日全く同じではなくて、
どういうルートを辿ればより確実にベストに近い状態にもっていけるのかということを、
他の誰でもない自分が一番良くわかっていなければならないということなのだと思います。
そして、それは、こういった日々の練習の中の、ウォーミング・アップのプロセスの中で、
真剣に自分の体や声に注意を向け、耳を傾けることでのみ体得していける、時間のかかるプロセスなのではないかと感じました。
さて、やがていよいよ体が温まって来たか、UGGを脱ぎ捨てるダックス王子ゴメス。
UGGから現れたおみ足には既にバレエ・シューズが着用済み!
うーむ、なるほど、、、、バレエ・シューズの上にUGGなのか、、、。素敵♪
私はある職業の人にしか出来ない着こなしみたいなものにとても弱く(=いちころになる)、
すぐに真似をしたくなる人なので、今日家に帰ったら、早速、普段会社に行く時に着用しているバレエ・シューズ風の靴をはいて、
その上に冬が終わって部屋に放りっぱなしになっていたマイUGGブーツを重ね履きして、
ゴメスになったつもりで部屋をウロウロしてみよう、と固く心に誓うのでした。
さて、もう一人の美青年ボッレからはどんなお洒落テクを盗んでやろう、、、?と企みつつ、そんなお洒落ゴメスから、目を移した途端、
私は目ん玉が飛び出すかと思うくらいびっくりしました。
さっきまでボッレがいた辺りに、いつの間にか、虹色のビーニー・ベイビーが紛れ込んでレッスンに励んでいるではありませんか!!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/a5/c3722f82186aed8b573e30082f5a75b3.jpg)
どうしていつの間にこんなところにビーニー・ベイビーがいるのよ?!と驚きつつ、よーく目をこらすと、
なんだ、ボッレじゃありませんか、ああ、びっくりした。
やはり体が温まったのでしょう、いつの間にか重ね履きしていたスエットパンツを脱ぎ捨て、
その結果、下に着用していた体にぴったりフィットのレインボー・カラーなバレエウェアが露出していたということなんですけれども、
このウェアのセンスはやばすぎでしょう。
特定職業の着こなしが大好きな私をもってしても、この虹色パンツだけは真似する気になれないというものです。
心なしかM子師匠も隣でお固まりになられているような、、、。
それにしてもボッレはフェラガモの広告にもモデルで参加したことがあるし、普段も非常におしゃれなイメージがあるんですが
(下の写真はスカラ座2008/9年シーズン・オープニングでの私服のボッレ。)、
もしや自宅ではビーニー・ベイビー、、?との疑惑が湧いて来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/18/88899f89317f4e14acddd516f5ae07d3.jpg)
パーソナリティの違いもあるのでしょうか、こういった基礎レッスンにもどこか非常にストイックな感じで取り組むゴメスに比べると、
ボッレは終始リラックスモードな、緩めの雰囲気があって、後半のメニューからさりげなく姿を消していたのも、私達は当然見逃すはずがありません。
むしろ、ゴメスと似て、終始非常にストイックな感じがしたもう一人のダンサーはデイヴィッド・ホールバーグです。
数年前まで彼を首男呼ばわりしていた私ですが(もともと彼は首のラインが長いせいもあると思うのですが、
踊る際にそれが非常に良く目立ち、一時それが気になって気になって仕方がなかったのです、、、。)、
昨年のキングス・オブ・ザ・ダンスを鑑賞した際、
気迫、きれ、洗練度が深まっていて、強い印象を受けました。
今回のクラスでは、あれから一年半、さらにその方向を突き詰めてきた感じがあり、どの動きも非常に繊細、丁寧で、
ゴメスと並んでクラスの中で強い存在感があったダンサーです。
実際、クラス終了後、M子先生も”こんなに上手かったっけ?と思うほど進境著しくて、驚いた!”とおっしゃっていました。
考えてみれば、今シーズンでカレーニョは引退、スティーフェルはロイヤル・ニュージーランド・バレエのディレクターに就任することもあり、
益々ABTとは疎遠になることが予想されるし、コレーラもABTで踊る機会がとても少なくなっているので、
今、男性ダンサーに関して言うとゴメスやボッレに猛烈な重責がかかっているわけですが、
この状況の中で自分も頑張らなければ!という思いがホールバーグの中で強くなっているのかもしれません。
長身でかつすらっとした恵まれた体型で、ラテン系のアスレティックさとは全く違う個性の、
やや冷やっとした手触りのあるエレガンスを持っているダンサーなので、
このまま精進を続けて行くならば、独自のポジションを築き上げることも可能ではないかなと思います。
クラス後半のメニューでの、ジャンプも高くて本当に綺麗でした。
体格を生かして迫力のあるジャンプを繰り広げるゴメスと、ラインが綺麗でほとんど楽々と飛んでいるような印象すら与えるホールバーグ、
この個性の違いが、これから彼らが同演目(特にクラシック演目)同役を踊り演じる場合、
役の開拓・発展でどのような違いをもたらして行くか、それも興味深いところです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/3b/41410af3d20f2911fdc6deb1db00bd69.jpg)
(今シーズンの『シンデレラ』の公演でのホールバーグ)
かようにすっかり男性ダンサーの方ばかりに目が向いてしまって、全く女性ダンサーに注意が向いていないこと甚だしいですが、
それは一つに、女性ダンサー陣の方からはあまりビッグ・ネームの参加者がいなかった、ということが一つあげられるかもしれません。
ケント、マーフィー、ドヴォロヴェンコ、ヴィシニョーワといったプリンシパルのダンサー達は私が判断できた限り参加しておらず、
確認できたのはヘレーラだけでした。
(ただし、このクラスがあった日はABTのメト・シーズンの真っ只中で、公演のスケジュールによっては参加したくても出来なかったダンサーもいるかもしれません。)
でも、私の目を最も惹いた女性ダンサーはヘレーラではなく、別のダンサーXです。
それも身体能力がやたら高くて目を惹くヘレーラとは違う意味で。
その容貌から中国系ではないかと推測するこのダンサーX、
ABTはどうして彼女みたいな人を団員としてキープしているのかと本当に不思議に思います。
もっさりした首周りのラインにぼってりした下半身。
もうまずこれだけでビジュアル(顔ではなく体の、、)が資質の大きな一角をなしてしまうというシビアなバレエの世界にあって、
ダンサーとしては相当まずいことになっていると思うのですが、
その上にそのビジュアルの欠点を補うどころか、それをさらに助長するかのようなもたもたした動き、、、
それも単に動きが遅いだけではなくて、動きにいちいち締まりがないというか、
彼女には、私のような素人が観ても、はっきりと、クラシック・バレエを生業とする人が最低限身につけていなければならない
体のこなし、動きが身に付いていないと感じます。これは上手い、下手、以前の問題。
あまりにひどいので、無理やりABTに大金をつかませて一日体験入学中の一般人留学生か何かかと思ってしまいました。
こういう人が一人コール・ドに入っているだけで、他の全員がどんなに美しく揃った踊りを見せていたとしても台無しになってしまうし、
他のコール・ドのメンバーのモチベーションにも関わります。
カレーニョのフェアウェル公演でこの人がコール・ドで出て来るようなことがあったら、私は絶対憤死します。
あと、男性で一人、こちらは良い意味で非常に目をひいたダンサーがいました。
M子師匠も全く同じに感じられたようで、クラスが終わってはけるダンサーたちにまぎれる彼の姿を指しながら、
思わず”あのダンサー、誰だかわかる?”と私にお聞きになったほどです。
M子師匠ですら名前がわからないダンサーを、私がわかるわけがないところが実に悲しいところです。
ホールバーグのような長身痩身とも、ゴメスのような長身筋肉美とも、ボッレのような容姿端麗とも違い、
背もそれほど高くなく、必ずしも目立ってルックスに恵まれた人ではないのですが、
その折り目のきっちりした動き、正確に踊ろうとする姿勢など、M子師匠、私ともに大いに好感を持ちました。
M子師匠が何という名のダンサーか、調査を行ってくださるということで実に楽しみです。
クラスの後半は、バーを片付け、ステージ全体を用いて、ピアノのメロディーにのせ、
色々なパ、ジャンプ、ステップ、ポーズの組み合わせを段々難易度をあげて行っていくわけですが、
最後の何本かはもはや技術のブラッシュアップ用のメニューというよりも、ちょっとした短い小品に感じられるほどです。
実際、やはり力のあるダンサーというのは、このような場でも、音楽のカラーを感じ取り、それをきちんと技術にのせて
”表現”することをきちんと行っているのが印象的です。
声楽で言えば、スケールの練習用の旋律を用いてすら、きちんと音楽的に何かを表現してしまっている、そんな状況に似ているかもしれません。
先にも書いたように、ここでも先生が大活躍。
先生が頭の中で自分が構成した振り付けをなぞりながら、技の名前を羅列すると、
すぐにピアノに合わせて全員がそれを再現できるというのが、それがバレエにおける言語を使ってコミュニケートするということなのだとわかっていても、
やはり、すごい!と思う。
楽譜を見ながらオケが音を出す時には、紙に書かれたものが実際に音になるという独特の高揚感がありますが、
技の名前の羅列に過ぎなかったものが実際に肉体を使った形になるという点で、非常に近い感覚を持ちました。
先生はダンサーがぴりっとしまった踊りを見せると、それに対して身振りや顔の表情で賞賛を送り、
もうちょっとこうすればもっと良くなる!という場合には積極的に口頭でアドバイスを飛ばしますが、
今一つしまりのない踊りにはほとんど無反応。
先生が何の反応もしないような踊りは駄目なんだ、ということをダンサーの方できちんと自覚し、自主的な努力を怠ってはいけない。
誰も手取り足取り教えてなんてくれない、自力で上に上っていくのがプロの世界なのです。
ただ、ある男性ダンサーが、コリオグラフィーを間違って、全員が移動しているのとは逆の方向に移動してしまった時、
この時ばかりは先生がいつもの無反応ではなく、激怒していたのが印象的でした。
客席から見ていて明らかにミスだとわかるような内容の失敗をすることは許されないのはもちろん、
群舞でこういうミスをすると本人や周りが怪我しかねないということも、その理由かもしれません。
大車輪の先生の活躍に感銘を受けた私は、クラスが終わると早速M子師匠に”ところであの先生は一体何者ですか?”と尋ねました。
すると、”Madokakipさんがいつかのレポートで絶賛していたサルステインよ。”
ああ、そう言われてみれば、活き活きして、かつ隅々にまで神経が行き渡った先生のダンスは、まぎれもないあの『ロミ・ジュリ』のマキューシオではないですか!!
(トップの写真は今シーズンのABTキューバ遠征公演で『ファンシー・フリー』に出演中のサルステイン先生。)
それにしても、これはなんと面白いシステムでしょう。
ソロイストという、プリンシパルの手前にいるダンサーが、プリンシパルのダンサーも含めたメンバーのために練習メニューを練る。
オペラで準主役や脇役を歌っている歌手が、主役級をつとめる歌手のために練習メニューを作ったり、練習に使用するメロディーを作曲したりなんて、まずありえません。
もちろん、誰がやっても務まるものでは全くなく、サルステイン先生のような実力とメンバーをまとめていくパーソナリティが備わっていてこその
コーディネーター役なんだろうな、と思います。
舞台芸術とはスターだけが支えているものではないということをここでも感じさせられました。
American Ballet Theatre Company Class on stage at the Met
ORCH B Even
*** American Ballet Theatre (ABT) Company Class on stage at the Met アメリカン・バレエ・シアター(ABT) カンパニー・クラス ***
この言葉はまったくもって真実であって、ブログを通して知り合った皆様とのご縁などもこれに当てはまるかと思うのですが、
また同時にずっと側に”友”がいたのに長らく気づいておらず、
自分がある種の”類”であることをカミング・アウトしたことがきっかけで、その事実が発覚する、というようなこともあります。
私のバレエの師匠M子さんとの関係はまさに後者。
同じ会社に勤めていた数年間、お互いにバレエ(M子師匠)とオペラ(私)が好きらしい、ということを知ってはいたものの、
職場で例えばこのブログと同じようなノリででオペラやバレエのことを語った日には頭がおかしい人だと思われるに違いない、という思いから、
二人ともお互いに”フツーのファン”を装い、特に一緒に公演を観に行くというようなこともなく、
それぞれにひっそりと、しかし深く、バレエ気違い、オペラ気違いの道をひた走っていたわけです。
しかし、ある時から、お互いにまったくもってフツーのファンどころの騒ぎではなく、
家計を傾かせるほどに(M子さんのところはびくともしていないかもしれないけれど、我が家は間違いなく、、。)、
M子師匠はABTに、この私はメトに、激しく注ぎ込みまくっている、つまりまさしく”類友”であることが発覚してしまいました。
しかも、今ではM子師匠はこのブログの存在をご存知なばかりか、なんと愛読までしてくださっており、
私がトーシロなりにバレエにも大きな興味と敬愛を持っていることをご存知になって、
毎シーズン、注目のダンサーや演目の情報を教えてくださり、機会があれば”この公演、ご一緒しない?”などと言って誘って下さいます。
ありがたや。
私はことバレエに関してはもしかするとオペラ以上に鑑賞運に恵まれているのではないか?と感じているところもあって、
フェリやニーナの引退公演など、本当なら、私のようなトーシロ・バレエ鑑賞者が見るより、
ずっとバレエ・ファンであり続けて来た方にこそ見て頂くのが筋ではないのか?と、
つい恐縮してしまうような、特別といってもよい種類の公演に接する機会に恵まれて来ました。
そのうえ、今年もまた、M子師匠が”ホセ(・カレーニョ)の引退公演(『白鳥の湖』)を一緒に観に行きましょう。”と誘って下さって、
しかも、M子師匠がいつもお座りになるかぶりつき席の隣に招待してくださったので、
”豚に真珠”な私のバレエ鑑賞ライフにまたもや新たな一ページが加わることとなったのです。
そのカレーニョの引退公演については、もちろん、単独の記事として、感想を後日アップする予定ですが、
カレーニョの引退公演の前に、もう一つ、M子師匠が誘ってくださった貴重なイベントが、今回記事にするABTのカンパニー・クラス。
正確な企画名はこの記事の名前にもある通り、”Company Class on Stage at the MET”。
つまり、メトのオペラハウスの舞台上で、ダンサーたちがバー・レッスンを含めた
日常のレッスンの様子を見せて下さるという、ABTのパトロンを対象としたイベントです。
私はオペラでも、リハーサルとか、ソリストやオケのウォーミング・アップ・練習、
テック・リハーサル(大道具の人たちが手順を確認するためのリハーサル)などを見せて頂くのが大、大、大好きです。
昨シーズンはメトでドレス・リハーサルを色々鑑賞させて頂きましたが、
ドレス・リハーサルというのは、すでにかなり本番に近い状態になっていて、実際演奏の中身も本公演とはそう変わらないケースがほとんどなんですが、
今日のこのカンパニー・クラスの企画は、オペラで言えばドレス・リハーサルよりもさらに手前の、
歌手の声楽のレッスンとかを見せて頂くのにも等しい、非常に貴重な機会であり、私はわくわくしながらM子さんとメトにやって参りました。
メトのオーディトリアムに到着すると、すでに舞台上には多くのダンサーが揃っていて、思い思いの方法でバー・レッスンに入る準備に余念がありません。
ダンサーにとって怪我ほど怖いものはありませんから、このウォーミング・アップもリラックスした空気が流れながらも真剣そのもの。
そう、オーディトリアムに一歩足を踏み入れた瞬間から、この緊張感あふれる静寂とでも形容したくなる空気が非常に心地よく、
喧騒溢れるNYの街を歩いた後にオーディトリアムに入った私達にはまるで別世界に紛れ込んだような感覚がありました。
天気に恵まれた土曜のお昼ということもあるかもしれませんが、そもそも招待されている人の数が少ないのでしょう。
座席は真ん中のブロックに座っている人が中心で、それもせいぜい前から1/4埋まっているかどうか、というところで、
こんな滅多に見ることの出来ないものを見れる機会を下さってありがとう!とおもむろにM子さんの手を握り締めそうになってしまいます。
しかも座席は前から二列目のど真ん中。
バーは舞台に垂直になる形で何本か設置されているのですが(なので客席にいる私達はダンサーと向かい合うような状態)、
舞台手前にいるダンサーはもちろん、奥にいるダンサーまで、よく見えること、よく見えること。
しかし、その中でも真っ先に目を惹いたダンサーがいます。
まだバー・レッスンも始まっていないのですから、これはもう本人のオーラというか、佇まいがなせるわざなのでしょう。
そこにいるのはもちろんのこと、我がダックス王子、マルセロ・ゴメスです!
もしかするとレッスンをするゴメスにまとわりつくルアちゃんも舞台上に見れるのではないかと淡い希望を持っていましたが、
それはさすがに期待のし過ぎでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/f6/cda434bb24a42c19424c26bb9735b7fa.jpg)
(今シーズンの『ジゼル』よりディアナ・ヴィシニョーワとマルセロ・ゴメス)
ゴメスは全幕の舞台で見ても体格が大きいな、とは思いますが、こういう場で、衣裳とは違う普通の格好(最初はTシャツにスエットのパンツ)で、
他のダンサーと一緒にいると一層その大きさと逞しさが目立つというか、”こんなにでかかったんだ、、。”と思いました。
もしかすると、クラシック・バレエのダンサーとしてはごつ過ぎる位かもしれませんが、
彼の場合、しなやかで、細部にまで神経の行き届いた踊りが出来るせいで、舞台の上で不器用もしくは無骨に見えることがないのだと思います。
それにしても、足元のUGGのようなショート・ブーツがまたキュート!きゃん!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/bd/b04c12f44fdc961b6055647d7bd671dc.jpg)
バレエのレッスンでこういうシューズを履くのもありなのね。
ああ、それにしても、いい男は何をやっても素敵、、、不細工な男がスエットにUGGのブーツ履いてたら、張り倒したくなるだけだけど。
というようなことを考えつつ、ダックス王子と別の方向に目を向けると、これまた超美男子なダンサーと目が合いました。
今の職場で私の周りに座っている男性は、気は良いのだけれど、
このABTにいる男性たちとは違う種類の生き物なんじゃないかと思うような、
体を絞る・鍛えるというコンセプトとは無縁の、おなかに肉襦袢を巻きつけ放題の、いけてないエロじじい
(会社のPCで堂々とグラビアチェック、、、、。)ばっかりなので、
もうこの右を見ても左を見ても私の瞳に自ずと花や星が浮かんで来そうな美男子ばかり、の図に、
世の中にはこういう職場もあるのね、、、と、ABTの団員の女性達に羨望の眼差しを向けつつ、
人生とはなんと不公平なものなのか!と一人心で嘆くMadokakipなのでした。
それにしても、この美男子なダンサー、どこかで見たことがある人なんだけど、、、、誰だっけ、、、?と、考えること数秒。
あああああああっ!!!!!!ロ、ロベルト・ボッレじゃなくってっ!?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/2e/9aeb5329ec5993393e09affe8e4ef0d6.jpg)
(同じく今シーズンの『椿姫』よりジュリー・ケントとロベルト・ボッレ)
し、師匠!!!!師匠の一目ぼれのアイドルがあそこにいらっしゃいますです!と、M子さんの腕をつかんで激しく揺らしたい衝動にかられましたが、
舞台の上と同様、上品に静まり返っている客席(ここらがドレス・リハーサルが始まるまでぴーちくぱーちくと喋り続け、
口にガムテープを貼ってもまだ黙らなさそうなオペラファンとの違い、、、。)に、
このハードコアなパトロンが大集合!の場で、きゃーきゃー騒いでM子師匠を辱めることになってはいけない、、と柄にもなく、つい遠慮してしまいました。
それにしても、舞台で踊ったり、雑誌のグラビアなんかに登場している時のボッレはすっとした大人顔のイタリアの美青年!って感じですが、
こういう素の場では、ちょっと雰囲気が違うというか、どちらかというと茶目っ気のある可愛らしい少年のような感じがするのが意外でした。
だから一目で彼だ!とわかったゴメスと違い、ボッレの場合、認識するのに多少の時間がかかったのかもしれません。
でも、良く考えてみれば、それは、これまで私がボッレが良かったな、彼に雰囲気が合っているな、と感じた役は、
ロミオとかアルマンとか、幼さ、若さをどこかに感じさせる役であることと無関係ではないのかもしれません。
体格もゴメスよりずっと華奢な感じで、当たり前ですが、こうして二人が並んでいるのを見ると、その場で立っているだけでも全然個性が違うダンサーだな、と思います。
それにしても、しつこいようですが、ボッレの姿を見ると、思い出したくもないのに、どうしてもデフォルトでアラーニャを思い出してしまって困るんですけれど、
ボッレのこの少年のような佇まいを見ていると、アラーニャへの辛辣な一言が本当に彼の口から出たとは信じられないような気がして来ます。
いや、でも、少年・少女の無邪気ゆえの残酷さというのも、また良く聞く話、、、
と、とりとめのないことを考えているうちに、体に小さなマイクをつけて、今日のレッスンの先生役を務めると思しき方が出てきました。
世界的に活躍しているボッレやゴメスといったダンサーらをとりまとめてクラスを進行していくとは、なんと大変な仕事でしょう?
大体、彼らに物を申せる人物って一体何者?という感じです。
クラスに来る前に私が想像していた先生は、往年の名ダンサーであるよぼよぼなおじいさんか、
もしくは、そこまで歳が行かずとも、引退後の大御所ダンサーみたいな人で、
自分は踊らずに、フロアでダンサーに目を光らせながら、”そこ違う!”みたいな感じで口だけ挟むのかと思いきや、
それが、どっこい!この先生は、髪はなぜだか妙に寂しくなりつつありますが、まだまだ現役まっただ中の年代の男性で、
しかも、マイクをつけたまま、メンバーにメニューの手順を説明しつつ、ピアノの伴奏(ロシアの男性と思しきピアニストで演奏が上手!)に合わせて、
お手本を兼ねてみんなと一緒にレッスンのメニュー全部を自分自身で踊ってみせているのです。
クラスの前半のバー・レッスンは全員一緒に進行するのでともかく、後半に現れる色んなパやジャンプを組み合わせたパートでは、
とても全員が一緒に踊れるスペースはないので、同じシークエンスを3つとか4つのグループが連続して踊るのですが、
その3回、4回分のほとんどで一緒にお手本を見せていて、しかもそのお手本が、ことごとく、”やるな、先生、、、。”と唸らされる出来なのです。
しかもそれと同時に個々のダンサーにアドバイスを与えまでしているんですから、なんという技術!なんというスタミナ!
多分レッスンに参加していた全員を含め、誰よりもハードにエネルギーを消耗していたのは他ならぬこの先生でしょう。
前半のバー・レッスンは、ダンサー達が体をチューン・アップして行く様子を見せて頂くという点で非常に興味深い体験でした。
例えば若い、経験の浅いダンサーほど、決められたルーティンの動きをそのままこなしているように見受けましたが、
ゴメス位のクラスのダンサーになると、単にルーティンをなぞるだけでなく、あるムーブメントは飛ばしたり、
逆に他のダンサーがやっているのとは違う動きを差し入れたりしていて、自分の体との対話ということが徹底されているように思いました。
オペラの歌手の場合でも同じですが、舞台に立つ人というのは、
公演で出来る限り自分のベストに近いコンディションに持っていかなければなりません。
でも、体とか声の状態というのは日によって違う。
ということは、それをベストに持って行く道筋も毎日全く同じではなくて、
どういうルートを辿ればより確実にベストに近い状態にもっていけるのかということを、
他の誰でもない自分が一番良くわかっていなければならないということなのだと思います。
そして、それは、こういった日々の練習の中の、ウォーミング・アップのプロセスの中で、
真剣に自分の体や声に注意を向け、耳を傾けることでのみ体得していける、時間のかかるプロセスなのではないかと感じました。
さて、やがていよいよ体が温まって来たか、UGGを脱ぎ捨てるダックス王子ゴメス。
UGGから現れたおみ足には既にバレエ・シューズが着用済み!
うーむ、なるほど、、、、バレエ・シューズの上にUGGなのか、、、。素敵♪
私はある職業の人にしか出来ない着こなしみたいなものにとても弱く(=いちころになる)、
すぐに真似をしたくなる人なので、今日家に帰ったら、早速、普段会社に行く時に着用しているバレエ・シューズ風の靴をはいて、
その上に冬が終わって部屋に放りっぱなしになっていたマイUGGブーツを重ね履きして、
ゴメスになったつもりで部屋をウロウロしてみよう、と固く心に誓うのでした。
さて、もう一人の美青年ボッレからはどんなお洒落テクを盗んでやろう、、、?と企みつつ、そんなお洒落ゴメスから、目を移した途端、
私は目ん玉が飛び出すかと思うくらいびっくりしました。
さっきまでボッレがいた辺りに、いつの間にか、虹色のビーニー・ベイビーが紛れ込んでレッスンに励んでいるではありませんか!!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/a5/c3722f82186aed8b573e30082f5a75b3.jpg)
どうしていつの間にこんなところにビーニー・ベイビーがいるのよ?!と驚きつつ、よーく目をこらすと、
なんだ、ボッレじゃありませんか、ああ、びっくりした。
やはり体が温まったのでしょう、いつの間にか重ね履きしていたスエットパンツを脱ぎ捨て、
その結果、下に着用していた体にぴったりフィットのレインボー・カラーなバレエウェアが露出していたということなんですけれども、
このウェアのセンスはやばすぎでしょう。
特定職業の着こなしが大好きな私をもってしても、この虹色パンツだけは真似する気になれないというものです。
心なしかM子師匠も隣でお固まりになられているような、、、。
それにしてもボッレはフェラガモの広告にもモデルで参加したことがあるし、普段も非常におしゃれなイメージがあるんですが
(下の写真はスカラ座2008/9年シーズン・オープニングでの私服のボッレ。)、
もしや自宅ではビーニー・ベイビー、、?との疑惑が湧いて来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/18/88899f89317f4e14acddd516f5ae07d3.jpg)
パーソナリティの違いもあるのでしょうか、こういった基礎レッスンにもどこか非常にストイックな感じで取り組むゴメスに比べると、
ボッレは終始リラックスモードな、緩めの雰囲気があって、後半のメニューからさりげなく姿を消していたのも、私達は当然見逃すはずがありません。
むしろ、ゴメスと似て、終始非常にストイックな感じがしたもう一人のダンサーはデイヴィッド・ホールバーグです。
数年前まで彼を首男呼ばわりしていた私ですが(もともと彼は首のラインが長いせいもあると思うのですが、
踊る際にそれが非常に良く目立ち、一時それが気になって気になって仕方がなかったのです、、、。)、
昨年のキングス・オブ・ザ・ダンスを鑑賞した際、
気迫、きれ、洗練度が深まっていて、強い印象を受けました。
今回のクラスでは、あれから一年半、さらにその方向を突き詰めてきた感じがあり、どの動きも非常に繊細、丁寧で、
ゴメスと並んでクラスの中で強い存在感があったダンサーです。
実際、クラス終了後、M子先生も”こんなに上手かったっけ?と思うほど進境著しくて、驚いた!”とおっしゃっていました。
考えてみれば、今シーズンでカレーニョは引退、スティーフェルはロイヤル・ニュージーランド・バレエのディレクターに就任することもあり、
益々ABTとは疎遠になることが予想されるし、コレーラもABTで踊る機会がとても少なくなっているので、
今、男性ダンサーに関して言うとゴメスやボッレに猛烈な重責がかかっているわけですが、
この状況の中で自分も頑張らなければ!という思いがホールバーグの中で強くなっているのかもしれません。
長身でかつすらっとした恵まれた体型で、ラテン系のアスレティックさとは全く違う個性の、
やや冷やっとした手触りのあるエレガンスを持っているダンサーなので、
このまま精進を続けて行くならば、独自のポジションを築き上げることも可能ではないかなと思います。
クラス後半のメニューでの、ジャンプも高くて本当に綺麗でした。
体格を生かして迫力のあるジャンプを繰り広げるゴメスと、ラインが綺麗でほとんど楽々と飛んでいるような印象すら与えるホールバーグ、
この個性の違いが、これから彼らが同演目(特にクラシック演目)同役を踊り演じる場合、
役の開拓・発展でどのような違いをもたらして行くか、それも興味深いところです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/3b/41410af3d20f2911fdc6deb1db00bd69.jpg)
(今シーズンの『シンデレラ』の公演でのホールバーグ)
かようにすっかり男性ダンサーの方ばかりに目が向いてしまって、全く女性ダンサーに注意が向いていないこと甚だしいですが、
それは一つに、女性ダンサー陣の方からはあまりビッグ・ネームの参加者がいなかった、ということが一つあげられるかもしれません。
ケント、マーフィー、ドヴォロヴェンコ、ヴィシニョーワといったプリンシパルのダンサー達は私が判断できた限り参加しておらず、
確認できたのはヘレーラだけでした。
(ただし、このクラスがあった日はABTのメト・シーズンの真っ只中で、公演のスケジュールによっては参加したくても出来なかったダンサーもいるかもしれません。)
でも、私の目を最も惹いた女性ダンサーはヘレーラではなく、別のダンサーXです。
それも身体能力がやたら高くて目を惹くヘレーラとは違う意味で。
その容貌から中国系ではないかと推測するこのダンサーX、
ABTはどうして彼女みたいな人を団員としてキープしているのかと本当に不思議に思います。
もっさりした首周りのラインにぼってりした下半身。
もうまずこれだけでビジュアル(顔ではなく体の、、)が資質の大きな一角をなしてしまうというシビアなバレエの世界にあって、
ダンサーとしては相当まずいことになっていると思うのですが、
その上にそのビジュアルの欠点を補うどころか、それをさらに助長するかのようなもたもたした動き、、、
それも単に動きが遅いだけではなくて、動きにいちいち締まりがないというか、
彼女には、私のような素人が観ても、はっきりと、クラシック・バレエを生業とする人が最低限身につけていなければならない
体のこなし、動きが身に付いていないと感じます。これは上手い、下手、以前の問題。
あまりにひどいので、無理やりABTに大金をつかませて一日体験入学中の一般人留学生か何かかと思ってしまいました。
こういう人が一人コール・ドに入っているだけで、他の全員がどんなに美しく揃った踊りを見せていたとしても台無しになってしまうし、
他のコール・ドのメンバーのモチベーションにも関わります。
カレーニョのフェアウェル公演でこの人がコール・ドで出て来るようなことがあったら、私は絶対憤死します。
あと、男性で一人、こちらは良い意味で非常に目をひいたダンサーがいました。
M子師匠も全く同じに感じられたようで、クラスが終わってはけるダンサーたちにまぎれる彼の姿を指しながら、
思わず”あのダンサー、誰だかわかる?”と私にお聞きになったほどです。
M子師匠ですら名前がわからないダンサーを、私がわかるわけがないところが実に悲しいところです。
ホールバーグのような長身痩身とも、ゴメスのような長身筋肉美とも、ボッレのような容姿端麗とも違い、
背もそれほど高くなく、必ずしも目立ってルックスに恵まれた人ではないのですが、
その折り目のきっちりした動き、正確に踊ろうとする姿勢など、M子師匠、私ともに大いに好感を持ちました。
M子師匠が何という名のダンサーか、調査を行ってくださるということで実に楽しみです。
クラスの後半は、バーを片付け、ステージ全体を用いて、ピアノのメロディーにのせ、
色々なパ、ジャンプ、ステップ、ポーズの組み合わせを段々難易度をあげて行っていくわけですが、
最後の何本かはもはや技術のブラッシュアップ用のメニューというよりも、ちょっとした短い小品に感じられるほどです。
実際、やはり力のあるダンサーというのは、このような場でも、音楽のカラーを感じ取り、それをきちんと技術にのせて
”表現”することをきちんと行っているのが印象的です。
声楽で言えば、スケールの練習用の旋律を用いてすら、きちんと音楽的に何かを表現してしまっている、そんな状況に似ているかもしれません。
先にも書いたように、ここでも先生が大活躍。
先生が頭の中で自分が構成した振り付けをなぞりながら、技の名前を羅列すると、
すぐにピアノに合わせて全員がそれを再現できるというのが、それがバレエにおける言語を使ってコミュニケートするということなのだとわかっていても、
やはり、すごい!と思う。
楽譜を見ながらオケが音を出す時には、紙に書かれたものが実際に音になるという独特の高揚感がありますが、
技の名前の羅列に過ぎなかったものが実際に肉体を使った形になるという点で、非常に近い感覚を持ちました。
先生はダンサーがぴりっとしまった踊りを見せると、それに対して身振りや顔の表情で賞賛を送り、
もうちょっとこうすればもっと良くなる!という場合には積極的に口頭でアドバイスを飛ばしますが、
今一つしまりのない踊りにはほとんど無反応。
先生が何の反応もしないような踊りは駄目なんだ、ということをダンサーの方できちんと自覚し、自主的な努力を怠ってはいけない。
誰も手取り足取り教えてなんてくれない、自力で上に上っていくのがプロの世界なのです。
ただ、ある男性ダンサーが、コリオグラフィーを間違って、全員が移動しているのとは逆の方向に移動してしまった時、
この時ばかりは先生がいつもの無反応ではなく、激怒していたのが印象的でした。
客席から見ていて明らかにミスだとわかるような内容の失敗をすることは許されないのはもちろん、
群舞でこういうミスをすると本人や周りが怪我しかねないということも、その理由かもしれません。
大車輪の先生の活躍に感銘を受けた私は、クラスが終わると早速M子師匠に”ところであの先生は一体何者ですか?”と尋ねました。
すると、”Madokakipさんがいつかのレポートで絶賛していたサルステインよ。”
ああ、そう言われてみれば、活き活きして、かつ隅々にまで神経が行き渡った先生のダンスは、まぎれもないあの『ロミ・ジュリ』のマキューシオではないですか!!
(トップの写真は今シーズンのABTキューバ遠征公演で『ファンシー・フリー』に出演中のサルステイン先生。)
それにしても、これはなんと面白いシステムでしょう。
ソロイストという、プリンシパルの手前にいるダンサーが、プリンシパルのダンサーも含めたメンバーのために練習メニューを練る。
オペラで準主役や脇役を歌っている歌手が、主役級をつとめる歌手のために練習メニューを作ったり、練習に使用するメロディーを作曲したりなんて、まずありえません。
もちろん、誰がやっても務まるものでは全くなく、サルステイン先生のような実力とメンバーをまとめていくパーソナリティが備わっていてこその
コーディネーター役なんだろうな、と思います。
舞台芸術とはスターだけが支えているものではないということをここでも感じさせられました。
American Ballet Theatre Company Class on stage at the Met
ORCH B Even
*** American Ballet Theatre (ABT) Company Class on stage at the Met アメリカン・バレエ・シアター(ABT) カンパニー・クラス ***