マックンのメモ日記

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米リセッション入りリスク増大、市場混乱が引き金!

2016-02-24 10:18:31 | 経済・金融・投資
米国はリセッション(景気後退)に向かっているのでしょうか。市場はそう示唆しています。

 ダウ工業株30種平均は12日時点で2015年5月につけた過去最高値から12.7%安の水準にあります。安全逃避先としての需要が高い米国債の利回りが低下する一方、高リスク債券の利回りは上昇し続けています。そして、原油価格は約12年ぶりの安値を記録しました。とはいえ、経済指標からはリセッション入りの気配は見受けられません。1月の雇用の伸びは堅調で、雇用主は人員補充に苦労しています。

 こうした乖離(かいり)は、調査研究機関コーナーストーン・マクロが発表している二つの指標にはっきりと表れています。株式市場や社債利回りといった金融指標から算出される一つ目の指標によると、米国がリセッション入りする確率は現在50%。しかし、融資延滞率や実質賃金などのマクロ経済指標に基づくもう一つの指標では、この確率はわずか28%です。

 当然ながら、市場がリセッション入りを読み誤ることは多いです。しかし、市場の悪化が原因で経済がリセッションに陥る場合もあります。景気は金利や所得など量的要因だけでなく心理の変化によっても左右されるため、景気の転換点は予測できません。この心理に影響を及ぼすのが市場です。企業は市場からのシグナルを手掛かりに投資や雇用の是非を判断するからです。つまり、リセッションの懸念は自己成就的である可能性があるのです。

 投資家の心理を圧迫しているのは経済成長や原油価格への懸念だけではなく、政策への不安もあります。米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げを推し進めるのか。中国は再び人民元の切り下げを実施するのか。英国は欧州連合(EU)を脱退するのか。米国民は既存の経済秩序をひっくり返そうとする大衆主義の大統領を選ぶのか。政策の不確実性が「リスクプレミアム」を生み、それが株価や債券価格を押し下げているのです。

 経済に重圧がかかっていることは確かで、輸出低迷やエネルギー設備の受注急減を背景に製造業は明らかにリセッションの状況にあります。カーライル・グループのジェイソン・トーマ氏によると、国内総生産(GDP)に占める設備投資の割合は2008年時点でわずか6%だったのですが、09年にはGDPの減少幅の50%近くが設備投資の落ち込みによるものでした。これは景気循環に影響します。企業は機械設備などの購入を簡単に取り消したり延期したりするからです。一方、住宅や自動車の購入といった個人消費も自由裁量によるものですが、こちらは相対的に堅調さを維持しています。

 今のところ、景気全般に関しては腰折れには至っていません。1月の雇用統計では、非農業部門就業者数が前月から15万1000人増加し、平均的な労働者の労働時間が増えたことから全体の週平均労働時間は昨年7月以来の大きな伸びとなってしまいました。また、1月に増加傾向にあった新規失業保険申請件数は2月6日までの週に急減しました。

 もちろん、市場の混乱が家計資産の目減りや企業向け融資の減少を招き、経済成長を押し下げる可能性はあります。FRBが10日公表した半期に一度の金融政策報告を見る限り、企業が融資を受けられなくなるような危機が起きている証拠はなく、短期金融市場は正常に機能しています。そして大半の世帯にとって、株安による資産の目減りは昨年の住宅の値上がりほど重大なことではありません。それでも、エネルギー関連企業の社債などの利回りはデフォルト(債務不履行)の可能性だけでは説明がつかないほど大きく上昇しており、銀行は貸出基準を引き締め始めました。

 このような金融環境の変化は消費者や企業の動向を大きく変えることにもなり得るのです。スタンフォード大学のロバート・ホール経済学教授は2年前に発表した論文で、従業員を1人雇うことは機械設備を一つ買うようなものだと指摘した上で、将来見込まれる利益を現在価値に割り引く際に用いる「割引率」が、想定されるリスクの増加に伴い上昇すると、そうした投資の利益率は低下すると説明しています。つまり、株価の下落と失業率の上昇はどちらもリスク回避志向の拡大と割引率の上昇を反映しているため、同時に起きることが多いというのです。

 相場の下落、心理の悪化、景気低迷は相互に影響し合う可能性があります。そのような悪循環をきっかけにリセッション入りの恐れが生じれば、中央銀行が介入してサーキットブレーカーの役割を担います。しかし最近では、中銀が使える政策手段は限られてきています。

 米連邦準備制度理事会(FRB)がまだ非常ボタンを押していないのも無理はありません。米経済が完全雇用に近づく中、FRBは昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げ、2016年に合計1.0%の追加利上げを行う方針を示唆しました。投資家はFRBのイエレン議長が先週の議会証言でこの追加利上げの計画を否定することを期待していましたが、今更驚くことではないものの、そのような判断は「時期尚早」で利上げは「あらかじめ決められた」路線にのっとったものではない、というのが議長の発言だったのです。

 それでも、FRBの政策に関して心配なのは、利上げを見送るかということよりもむしろ、必要に応じて利下げに転じなおかつ十分な効果を生むことができるかどうかです。日本銀行は1月29日、欧州中央銀行(ECB)が2014年に実施したようにマイナス金利の導入を決定しました。理論的には、マイナス金利の導入は投資家心理を改善させるはずです。政策金利がゼロに達しても中銀にまだ他の政策手段があることを示しているからです。しかし、投資家は困惑しているようです。マイナス金利は実際に景気支援になるのだろうか。あるいは、単に銀行の利益を圧迫するだけなのだろうかと。

 政策をめぐる不透明感がもたらす悪影響は他にもあります。欧州銀行株が大きく売られているのは、一部の銀行を対象に規制当局が資本バッファー維持のために強制的に債券を株式に転換させるのではないか、という株式の希薄化に対する懸念が広がっているからでもあります。皮肉なことに、当局がこうした株式への転換を政策手段の一つに加えたのは、金融危機が起きたときに納税者が支援負担を強いられないようにすることが目的だったのです。しかしエバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は、政策効果は「景気循環を増幅させる」もの、つまり景気への負荷を緩和させるどころか増大させるものだと指摘します。株式市場で狙い撃ちされている銀行は融資に消極的になりやすいのです。

 その上、今年は政治的不透明感も薄れるどころか深まる見通しです。まず、英国が欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を実施する公算が大きいのです。英国がEU脱退を決めれば、スコットランドが住民投票で英国からの独立を図るかもしれません。米国では、大統領選の候補者氏名争いの第2戦となる9日のニューハンプシャー州予備選で、共和党は富豪の実業家ドナルド・トランプ氏が、民主党はバーニー・サンダース上院議員が勝利を収め、11月の本戦で革新的な経済改革を公約に掲げる大衆主義の大統領が選出される可能性があります。

 コーナーストーン・マクロの政治アナリスト、アンディ・ラペリエール氏は「(米大統領)選挙が極端な結果になれば株式市場にとって大きなリスクが生じるが、投資家はその可能性を排除できない」と言います。(ソースWSJ)

中国主導のインドネシア高速鉄道計画、欠陥だらけ?

2016-02-23 14:51:33 | 経済・金融・投資
インドネシア運輸省は3日、中国が資金を拠出する総額55億ドル(約6500億円)の高速鉄道計画について数多くの欠陥を指摘しました。これは、同計画に疑問を投げ掛けると同時に、外国投資誘致に積極的なジョコ大統領の巨大事業を実行する力の限界を浮き彫りにしています。

 同運輸省のヘルマント・ドウィアトモコ鉄道総局長は、鳴り物入りの高速鉄道計画について同省が認可をためらっていることを弁護しました。同総局長は、鉄道を主導する中国とインドネシアのコンソーシアムは、まだインドネシアの安全規制を設計に織り込んでおらず、提案されている全長140キロメートルの路線のうちわずか5キロの敷設計画を提出しただけであることを明らかにしました。

 高速鉄道について、インドネシアは隣接する軌道の中心線の間隔を5メートルとするよう要求していが、現在の鉄道計画では4.6メートルしかありません。

 先月、ジョコ大統領は政府当局に対し、この鉄道計画を速やかに認可するよう要請し、その後、起工式典を挙行しました。ヘルマント鉄道総局長は3日、記者団に対し、「(この認可プロセスを)われわれが複雑にしているのでないことを、どうか理解していただきたい」と述べています。同総局長は、コンソーシアムは最初の鉄道5キロについて2カ月以内に計画を修正できると述べましたが、残りの建設計画の認可が得られるか、得られるとすればいつかについては言及を避けました。

 同コンソーシアムは、中国と東南アジア最大の経済国であるインドネシアの国営企業との合同チームです。中国の建設・エンジニアリング会社・中国鉄建とインドネシアの建設会社ウィジャヤ・カルヤが中心になっていて、同コンソーシアムは昨年10月、鉄道建設契約を結び、2019年には運行を開始する予定です。

 起工式のあと、インドネシア当局者は、同コンソーシアムが今後、とりわけ環境への影響を見極める必要があるほか、線路を敷設するための土地を何百ヘクタールも取得する必要があると述べています。ヘルマント鉄道総局長は同日、建設会社は鉄道の運行保証期間を100年間とし、提案された60年間をさらに延長する必要があると述べ、地震の発生しやすい区間については補強しなければならないと語りましたが、同コンソーシアムのコメントは得られていません。同コンソーシアムは、4日に記者会見を予定しています。

 提案された高速鉄道計画は、この種のものとしては東南アジアで初めて。ジャワ島西部にある首都ジャカルタと大都市バンドンを結ぶ路線を運行します。日本企業は数年間にわたり高速鉄道プロジェクトを調査してきましたが、昨年の高速鉄道敷設計画入札でライバルの中国・インドネシア・コンソーシアムに敗れました。その際、同コンソーシアムはインドネシア政府から建設融資保証を受けず、国庫からの資金なしで建設することに同意しました。

 高速鉄道プロジェクトは以前から論議を呼んできました。同国の運輸交通問題の専門家の間では、既に道路や鉄道で結ばれている都市間に高速鉄道を運行させる必要があるか疑問視する向きが少なくありません。また、同プロジェクトは政府支援なしでは実現できないとする研究結果があると指摘する向きもあります。

 現行の高速鉄道計画に対する運輸当局の抵抗は、ジョコ大統領が大幅な遅れの目立つ各種プロジェクトを軌道に乗せようと努力している中で表面化しました。緩慢ではあるが若干の前進がみられる計画もあります。例えば同大統領は、1年以上を費やして日本が支援する総額40億ドルの発電所を建設にこぎ着けました。だが建設に必要な土地の取得はまったく手つかずの状態です。

 「高速鉄道計画は当初から混乱に見舞われてきた」と、シンガポールに本拠を置くオーバーシーズ・チャイニーズ・バンキング・コープ(OCBC)のエコノミスト、ウィリアン・ウィラント氏は言います。同氏は「今回の曲折も、(政権への)信頼醸成につながるものではない」と述べています。(ソースWSJ)

アベノミクス、行き詰まりへの道!

2016-02-22 10:43:05 | 経済・金融・投資
安倍晋三首相による経済再生計画の中核にあったのは、中央銀行の積極的な取り組みが数十年にわたる不況にあえぐ日本へのショック療法になり得る、という賭けでした。しかし、マイナス金利導入という最も斬新な措置を講じた後も、日本銀行は持続的な景気拡大をもたらすに至っておらず、「アベノミクス」の行き詰まりが示唆されています。

 経済の低迷を背景に、10日の日経平均株価は前日比2.31%下落し、日銀が2014年10月に追加緩和策を打ち出して以降の上昇分がほぼ帳消しとなりました。一方、円はここ1年余りの最高値付近で取引され、日銀の意図とは逆に安全逃避の動きが際立ちました。

 今回の日銀主導の取り組みは、程度の差はあれ、金融政策だけでなく社会全体のリスク志向を後押しするという意味でも中銀に依存している他の主要国への教訓となっています。それは、人々の心理を変えるのは金利を変更するほどたやすくはない、ということです。

 第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は、「アベノミクスはもう一度原点に立ち戻る必要がある」とし、「現在のマーケットの悪化を止めることはできない。ではセカンドベストとして何ができるのか」を考える時だとの見方を示しました。

 安倍首相が就任した12年12月、株式・不動産バブルの崩壊から20年以上が経過した日本は、精彩を欠きつつも安定期に入っていました。経済は低成長で高齢化が急速に進んでいましたが、少なくとも都市部では衰退の兆候などほとんど目につかず、社会は依然として安全だったのです。

 しかし、安倍首相はそれでは不十分だとの認識を示し、金融緩和と財政出動、構造改革の「3本の矢」で経済再生を図り、物価・賃金を再度押し上げると公約したのです。

 3本のうち即効性が期待できるのは第一の矢だけです。第二の矢である財政出動は財務省の圧力を受け間もなく減少しました。第三の矢に盛り込まれた女性の雇用推進などの構造改革は、短期的効果を意図したものではなく、また、首相は外国人労働者への門戸開放といったより積極的な措置を真剣に検討することもありませんでした。

 このため全ての期待は、首相自らが指名した日銀の黒田東彦総裁の肩にかかることとなったのです。黒田総裁は大量の資金供給によって円安を誘導し、企業収益の大幅拡大に貢献しました。今月の講演では「追加緩和の手段に限りはない」とし、2%の物価上昇目標を達成する意気込みを示しました。

 ただ、黒田総裁が企業に対し、収益を賃上げや新技術への投資に回すよう強いることなどできません。また、円安でアジアからの観光客は増えたのですが、総裁が国内の消費者を小売店に向かわせ、より多くの物を買わせることができるわけでもないのです。

 代わりに黒田総裁と安倍首相は、国民の心理を上向かせるべく自信あふれる発言を行いました。安倍首相は13年2月の訪米中、ワシントンで「日本は復活した」と宣言しました。首相は講演のたびに企業収益の回復や、過去最多に達した海外からの観光客、20年ぶり低水準の失業率といった数字を頻繁に口にしたのです。

 しかし15年終盤になっても、日本の「アニマル・スピリット」が眠ったままである兆候が多く見られました。その一因は政府の矛盾した政策です。安倍首相は14年4月、コスト増が著しい社会保障の財源確保という名目で消費税率引き上げを実施しました。しかし、これで個人消費が冷え込み、倹約ムードが広がったのです。

 物価上昇率はゼロ近辺にとどまっていますが、黒田総裁はこれを2%に到達させる時期のめどを何度となく先送りしました。企業は内部留保に走っています。こうした状況は、バブル後の負の遺産の中で日本が90年代に経験した「借金のトラウマの深刻さ」を示すものだと、野村総合研究所の主席研究員、リチャード・クー氏は指摘しています。

 そしてここ数週間は、中国経済の成長減速、欧州銀行をめぐる懸念に加え、資源に乏しい日本には利益となる一方で世界経済を不安定化させた原油相場の急落など、海外発の逆風が吹き荒れました。

 景気の勢いを維持するため、黒田総裁は1月29日、前週は検討すらしていないと言っていた最後の手段に出ました。日銀は、市中銀行が日銀に預け入れる資金の一部にマイナス金利を適用すると発表したのです。これは、利息を払う代わりに実質的な手数料を課すことになるものです。

 当初は目論見通り、株式が上昇し、円が下落しました。しかし両市場ともほどなく反転し、元の水準よりも日銀の目標から一層離れてしまう結果となってしまったのです。

 安倍首相と黒田総裁は、計画が根本的に軌道を外れたわけではないと考えています。黒田総裁は今月の講演で、国内経済が「緩やかな回復を続けて」いるとした一方、企業収益の水準が高く労働市場が引き締まっている割に、賃金や設備投資など支出面への波及が「やや弱い」ことを認めました。

 消費者物価指数(CPI)の総合指数の上昇率はゼロに近いのですが、黒田総裁は、食品とエネルギーを除いたCPIが約1%の上昇を見せているとしていて、さらに、デフレに逆戻りするリスクはなく、エネルギー価格さえ安定すれば所期の目標から数年遅れではあるがインフレ率は2%に到達すると主張しています。

 15日発表される15年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は小幅なマイナス成長を示すと見込まれますが、安倍首相は国会で10日、黒田総裁への信任そして景気回復に対する確信を引き続き持っているとし、アベノミクスが終焉段階にあるとみるのは間違いだとの見解を示しました。

 安倍首相にとって発見の一つは、有権者は力強い成長を期待しているわけではなく、それを得るのに必要な混乱を伴う変化を恐れているため、公約を実現できない政治家に制裁を加えるようなことはしない、ということです。米国、ドイツ、フランスでは有権者の怒りに訴えかけ、さらにそれを煽る政治家が混乱を生んでいますが、日本の政治は数十年来で最も安定した時期にあります。

 最近の世論調査で安倍内閣の支持率は50%以上に持ち直しており、連立政権は今夏の参議院選挙で勝利を収める見込みです。安倍首相の支持率が低下したのは、安全保障関連法の成立を強行した際だけだったのです。

 国内企業のトップも市場の混乱を冷静に受け止めています。サッポロホールディングスの上條努社長は、アベノミクス以降の「日本経済が非常に順調な成長軌道になっているというのが一つの評価ではないかと思っている」とした上で、ここ数日の市場動向は「わけがわからない」と話しました。

 ソフトバンクの孫正義最高経営責任者(CEO)はマイナス金利の導入で景気がいずれ上向くと見ており、「(金利は)ソフトバンクにとっては良い話」だと話しました。また、市場の動向が業績にもたらす直接的な影響はあまりないとしています。

 アベノミクスが失敗に終わっても日本経済が崩壊するわけではなく、安倍政権発足前の状態への回帰という穏やかな挫折にとどまるでしょう。日本の政府債務残高はGDP比200%以上と膨大だが、金利低下のおかげでさほど差し迫った問題ではないように思えます。政府は目下、ほぼ無利息で借り入れができるばかりか、借金をしても投資家から収入を得ることすらできるのです。(ソースWSJ)

アップルCEO、ロック解除問題で危険な戦術!

2016-02-21 18:32:33 | ネット、ビジネス、IT
米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、瀬戸際戦術という危険な作戦で政府と戦っています。その過程で、私たちのモバイル機器全てのセキュリティーを脅かす政治・司法プロセスが形成される可能性があります。

 初めに言っておくと、私は裁判所の命令をはねつけたクック氏の公開書状の趣旨に賛成です。裁判所は、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡で起きた銃乱射事件の容疑者が使っていた「iPhone(アイフォーン)」のロックを連邦捜査局(FBI)が解除できるようにするため、アップルにアイフォーン用基本ソフト(OS)の新バージョンを作るよう命じていることです。

 クック氏は、アイフォーンのセキュリティーを克服する新たなソフトをアップルが作るよう求めたFBIの要請が前代未聞だとの当然の主張をしています。「米国企業が顧客をより大きな攻撃リスクにさらすように強いられた前例は見当たらない」といいます。

 やっかいなのは、FBIがアップルに作らせたいと言っているのは、サンバーナーディーノ事件容疑者のアイフォーンだけに使うソフトです。しかし、ソフトのコードが野に放たれれば――こうしたことはそうなりがちだが――あらゆるアイフォーンの暗号化が基本的に疑わしくなるでしょう。

 それでも、今回の問題のややこしさはクック氏の許容範囲を超えており、その詳細はアップルに有利とは限らないのです。アップルのクックCEOは、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡で起きた銃乱射事件の容疑者が使っていた携帯電話のロック解除を求める裁判所命令に異議を唱える意向を示しました。

 まず、状況の受け取られ方です。テクノロジーアナリストのベン・トンプソン氏の言うように、「今回のケースは、明確に悪人が絡んだ国内テロで、誰も反対できない令状があります。そしてアップルには要求に応じる能力がある」とみられています。次に、問題のアイフォーンが「5C」という比較的古い型である点です。新しい型とは違うことから、アップルがFBIによるセキュリティー迂回(うかい)用に作るソフトが新型のアイフォーンを危険にさらすことはないと、開発者でモバイル向け基本ソフト「iOS」のセキュリティー専門家のダン・グイド氏は指摘しています。

 最後に、今回のケースがどうなろうと、アップルは法廷でさらに大きな戦いに負けるリスクを負います。その影響で、アップルのほかグーグル、マイクロソフトなど他社も、一般の機器に強力な暗号化技術を投入するプロジェクトを後退させる恐れがあるのです。

 筆者は弁護士ではなく、本稿で法律の分析しているわけでもありません。しかし、一部の人たちは、令状に基づいた捜索から機器を守ろうとするアップルの戦いは、過去の判例からみれば不利であることを示唆しています。

 アップルはデータ保護をめぐりFBIとおおっぴらに争っていますが、同社が求められるのはせいぜい、旧型アイフォーンのセキュリティーを危険にさらすことです。アップルがこの件で原則を譲らない理由について論理的説明を思いつくとすれば、同社(そして消費者)にとって最悪の事態につながりうる命令の前例を作りたくないということでしょう。

 最悪の事態とは、アップルが全てのアイフォーンにセキュリティーの「裏口」を設けるよう強制される状況であり、その結果はアイフォーンから暗号化機能をなくすことに等しいのです。アイフォーンを保有する人全ての財産、健康、個人データをサイバー犯罪者、ハッカー、国家の手先に利用させたい場合は別として、われわれは文化として暗号化機能に裏口を作りたいとは思いません。

 しかし今回FBIは暗号化機能の裏口を、少なくとも明示的には求めていません。要求は特定のケースに対するものです。そして私は、アップルがこれほど大々的に協力を拒むことによって、ある状況を醸成しつつあると懸念しています。その状況の下で裁判所や議会はいつか、同社が今回降伏した場合よりもさらに大きな打撃を私たちの最も個人的な機器のセキュリティーに及ぼすことをアップルに命じるでしょう。(ソースWSJ)

習主席の下、中国で復活する「自己批判」!

2016-02-20 17:56:37 | 政治(国内・海外)
テレビで放映される「自白」のために、看守がピーター・ハンフリー氏を迎えに来たとき、彼は前夜に起こしたパニック発作の鎮静剤を飲んでいたといいます。 

 中国で調査会社を経営していた英国人のハンフリー氏は2013年に、顧客の英製薬大手グラクソ・スミスクラインの贈賄疑惑を調査していたかどで、米国籍の妻ユー・インゼン氏とともに中国当局に拘束されました。上海第一拘置所の警察はハンフリー氏にジャーナリストたちと会えると伝えました。ある警察官は「うまくやれば、寛大に扱ってもらえる」ことをほのめかしました。その意味は明らかだった。罪を認め、謝罪せよということです。

 薬のせいで足元がふらついていたハンフリー氏は、鉄の檻の中で手錠をかけられた姿で座っていました。ジャーナリストたちは彼の悔恨の言葉を記録しようと、檻のバー越しにカメラのレンズを向けました。こうした辱めは「自己批判」として良く知られています。

 その起源は旧ソ連のスターリン時代に遡ります。最高指導者だったヨシフ・スターリンは民衆を抑圧下においた恐怖政治のもと、敵対勢力だと考える人物にこのテクニックを使ったのです。そして中国の毛沢東は自身の敵対者を苦しめるため、この手法を借りたのです。

 現在の中国の最高指導者である習近平国家主席は、共産党内部や財界、非政府組織などの幅広い浄化を進めており、汚職や反対勢力に狙いを定める中でこの手法を復活させました。習主席は旧来の社会主義的な価値観と儒教の倫理観を混ぜ合わせて中国社会の浄化に取り組んでいますが、スターリン時代の手法が同時に実行されているのです。外国人もこの野心的な取り組みから免れる特権があるわけではありません。それどころか、彼らの「自己批判の時間」はこの手法の衝撃度を増幅させています。

 数百万人ものテレビ視聴者は現在、習主席の汚職撲滅キャンペーンの犠牲者たちが夜のニュース番組で、強制的に魂の重荷を下ろす姿を定期的に見ています。ハンフリー氏は多国籍企業の不正行為に関する取り締まりの中で拘束されました。グラクソ・スミスクラインは後に贈賄で有罪判決を受け、罰金が科されました。習主席が厳しい監視の目を光らせている中国の人権弁護士や社会活動家、ジャーナリストなども同様にニュース番組で自白しています。

 テレビで放映される「自己批判ショー」は基本的に中国国営中央テレビ(CCTV)と治安警察との共同制作です。ハンフリー夫妻の顔はデジタル処理を施してあったとはいえ、2人は公然と名誉を傷つけられた最初の人たちに含まれます。ここ数週間では、スウェーデンの人権活動家ともう一人の同国市民が、カメラの前に引きずり出されました。このスウェーデン市民は香港で書籍を販売しているのですが、専門に扱っているのは中国指導者たちに関するいかがわしい本だといいます。

 ハンフリー氏によると、彼の試練は檻に向かう廊下で始まった。テレビのレポーターたちの姿が目に飛び込んできたのです。見せ場を作るように、護衛官はオレンジ色の新しい囚人スモックを彼に渡しました。CCTVが放送した映像の中で、ハンフリー氏は違法に入手した中国人の個人情報から利益を得たことを深く悔いていると話し、中国政府に謝罪しました。「あれは完全にやらせだった」。ロイター通信の特派員だったこともあるハンフリー氏は昨年、健康上の理由で早期釈放された後、ロンドン近くの自宅でそう話しました。

 ハンフリー氏は自身の経験と、文化大革命時に三角帽子を被せられ、首に自分の罪を告白したプラカードをぶら下げて通りを歩かされた犠牲者たちの間に違いはないと話します。「これは退行だ」。ハンフリー氏と妻は当時、裁判にかけられませんでしたが、後に有罪判決を受けました。ただし、夫妻は無実を主張しています。

 悪い時には悪いことが重なるものです。ハンフリー氏によると、拘束されて間もなく医師らが彼の前立腺に異常があると診断しました。それはがん検査が必要な種類のものでした。ハンフリー氏が検査の実施を求めると、看守は自供書に彼が署名していないことを持ち出してきたといいます。健康を引き換えにした事実上の自白の強要だとハンフリー氏は言っています。最終的に中国当局は検査に応じて腫瘍が見つかり、ハンフリー氏は現在、放射線治療を受けています。

 「自己批判」の文化は、中国の社会主義国家としての過去の遺物とともに戻ってきました。例えば、プロバガンダの象徴だった雷鋒(らいほう)です。雷鋒は靴下を繕い、肥料を運んだ人民解放軍の模範兵ですが、最後は倒れてきた電柱で死亡しました。

 自己批判は共産党内部の会議では定番の議題です。ビジネス関係者も悲しい内省を助長しています。スキャンダルの煙が立つと外国企業は、公の場で謝ることに義務感を覚えます――たとえ、後で後悔することになったとしてもです。中国のテレビが2014年に、米食肉大手OSIが期限切れの肉をファストフードチェーンに販売していたことを報じた際、OSIの最高経営責任者(CEO)はただちに責任を認め、「大変間違ったことをした」と述べました。しかし今、破産に直面しているOSIは言い分を変えました。今週、上海の裁判所が「劣悪な製品」を販売した罪でOSIに罰金を科し、関係者10人を刑務所送りにした後、OSIは同社が言うところの「中傷キャンペーン」を攻撃し、テレビの報道はやらせだったと述べたのです。

 テレビ放映される自己批判は習主席が公に宣言している法の支配とはほとんど何も関係がありません。しかし、それは重要ではないのです。共産党は自らと社会の不届き者を幅広く浄化しており、従って模範となる社会的行動を判断する最高権威者として自らの正当性を磨き上げているという物語を示すことができればいいのです。

 香港大学のメディア研究機関「中国メディアプロジェクト」の研究員、デービッド・バンダースキ氏は「自己批判」を暗い文脈の中でとらえ、「服従を命令し、従順さを強要するための、権力の心理的な道具だ」と指摘しています。

 この戦略が成功しているかどうかはまったく不透明です。中国人のテレビ視聴者の間では広く、「自己批判ショー」は文字通りのものではなく、政治的な見世物として理解されています。しかし、公のスポットライトの中に引きずり出される者にとっては、このドラマは紛れもない現実なのです。(ソースWSJ)