今回の米大統領選挙は、アウトサイダーの登場やカネの価値の変化など、際立った特徴を持っています。何が2012年の前回選挙と違うのだろうか。以下はその10の特徴です。
1. 希望を国民に売るのは難しい
共和党候補のジェブ・ブッシュ氏は、「幸せな戦士」になることを誓いました。その瞬間から、世論調査での支持率が落ち始めました。民主党候補のヒラリー・クリントン氏は、自らが進歩主義者であり、物事を着実に成し遂げようとすると述べています。これとは対照的に、バーニー・サンダース氏は大手銀行から健康保険制度に至るまでのあらゆるものをぶち壊すことを誓い、多数の聴衆を集めています。そして、ドナルド・トランプ氏は「米国はもう勝者ではない」と言った後、世論調査で上位を維持しています。
バラク・オバマ氏は8年前、希望のメッセージで大統領の座に登り詰めました。それは若者、マイノリティー(少数派)、無党派のほか、一部の共和党員の心にさえも響きました。現在の世論調査を見ると、有権者たちはワシントンと大手企業に怒りと不満を抱いており、これがトランプ氏やサンダース氏のようなアウトサイダーを後押ししています。彼らは有権者たちを窮地に追いやった連中にその痛みを負わせることを約束しています。
2. 本流を脅かすアウトサイダー
ミット・ロムニー氏は12年の前回大統領選において、いわゆるエスタブリッシュメント(主流派)のお気に入りの候補でした。他の候補者たちは、もっと保守的になって取って代わろうとしました。ただ初期の段階で、彼らが成功しないことは目に見えていました。
しかし、今回の共和党有権者たちは、さまざまな主流派候補をめぐって分裂しており、最有力候補であるトランプ氏に対する保守的な代替候補をまだ決めかねています。この代替ポストに最も近いのはテッド・クルーズ上院議員です。
民主党では、サンダース氏への支持は、一部の民主党員が本流に対して持つ不満の表れです。依然としてクリントン氏が指名を獲得する公算は大きいものの、サンダース氏はとりわけアイオワ州およびニューハンプシャー州で、クリントン氏に迫っています。
3. 歴史に残る女性候補の存在
クリントン氏が民主党の指名候補になれば、主要政党から指名を獲得した米国史上初の女性となります。この見通しは比較的高齢の女性など、一部の層を勇気づけています。それはまた、オバマ氏が08年にアフリカ系米国人として初めて主要政党の指名を獲得したときと同様に、米国全体の見解をも試しているのです。
クリントン氏は、オバマ氏と戦った08年当時よりも、自分が立候補する歴史的な意義を前面に出して選挙を戦っています。クリントン氏は今回、サンダース氏を支持する民主党員や、クリントン王朝に批判的な有権者たちから支持を取り付けるという難題にも直面します。
4. レガシー候補2人の存在
クリントン氏と同様にブッシュ氏も、自身の名字が指名獲得の足かせになることを心配しています。ブッシュ氏はある意味、より苦しい立場にあります。なぜなら、父と兄に次ぐブッシュ家で3人目の大統領になるからです。クリントン氏の夫であるビル・クリントン元大統領は今も民主党支持者の間で人気です。しかし、ジョージ・W・ブッシュ氏が弟ジェブ氏の人気をかさ上げする公算は小さい。たとえ共和党支持者の間であってもです。
5. 現職のオバマ氏が資産に
08年と12年の大統領選で、ジョージ・W・ブッシュ氏と顔を並べたがった共和党候補は1人もおりませんでした。イラク戦争への反対意見が強まり、ブッシュ氏の人気が落ち込んでいたからです。16年現在、オバマ氏に対する全体としての支持率は最近の外交政策に関する問題で低下しているものの、民主党支持者内での人気は安定的に推移しています。オバマ氏はアフリカ系米国人の支持を獲得する上でとりわけ有効であり得ます。ホワイトハウスとクリントン陣営との連携はほぼ常になされているのです。
6. 外交政策と国家安全保障が経済を凌駕
国家安全保障が再び最優先課題となりました。経済が支配的テーマだった2008年と2012年からのシフトです。これはパリとサンバーナディーノ(米カリフォルニア州)での銃乱射事件などを受けて、テロに対する恐怖が再燃したためです。
12月のウォール・ストリート・ジャーナル/NBCニューズ共同世論調査では、国家安全保障とテロリズムを政府の最優先課題にすべきだとの回答が全体の約40%に達しました。同調査ではまた、この問題を優先課題のトップ2つに入るものだとの回答が61%に達し、昨年春の39%から急増しました。
7. これまでとは違うカネの価値
ブッシュ氏は、スーパーPAC(パック)と呼ばれる特別政治活動委員会の資金を最も多く調達しましたが、敗れつつあります。そしてトランプ氏は、スーパーPACに頼らず、それほどカネも支出していませんが、支持率でリードしています。これは、有権者が今や、カネでは買えない何かによって動くことを示唆しています。トランプ氏が最初にテレビ宣伝に乗り出したのは、新年が始まった直後だったし、それまでは自身の爆弾発言などを取り上げる報道に大きく依存していました。彼はまたツイッターも利用しています。
8. 小口の寄付者が登場
オバマ大統領の選挙対策本部は2008年と12年に小口の寄付をユニークな特徴にしました。サンダース氏は今回、記録的なペースで100万人の個人寄付を集め、現在は200万人以上になっています。共和党候補者で元神経外科医のベン・カーソン氏もまた、小口の寄付を通じて相当の金額を調達してきました。
9. 大きくなる有権者の怒り
有権者の怒り、主として経済をめぐる怒りは、前回2回の選挙で定番でした。16年には、有権者たちは一段と怒っています。エスクワイヤーとNBCニューズの調査によれば、1年前よりも怒りが増している米国人は半数に上っています。他の調査は、WSJとNBCニューズの調査を含め、怒りの理由が変化したことを示しています。それは経済をめぐる怒りだけではありません。政治システムへの不満と、共和党員にとっては、同性婚の合法化など最近の社会変化への怒りです。
10. 短い予備選と長くなる本選
16年の予備選はこれまでより短く、討論会の数もはるかに少ないのが特徴です。予備選の投票は1月初めではなく2月1日に始まります。そして終わりも早い。これに対し、候補者を指名する全国党大会は過去の選挙サイクルよりもほぼ1カ月早めで、その結果、本選のサイクルは長くなります。(ソースWSJ)
1. 希望を国民に売るのは難しい
共和党候補のジェブ・ブッシュ氏は、「幸せな戦士」になることを誓いました。その瞬間から、世論調査での支持率が落ち始めました。民主党候補のヒラリー・クリントン氏は、自らが進歩主義者であり、物事を着実に成し遂げようとすると述べています。これとは対照的に、バーニー・サンダース氏は大手銀行から健康保険制度に至るまでのあらゆるものをぶち壊すことを誓い、多数の聴衆を集めています。そして、ドナルド・トランプ氏は「米国はもう勝者ではない」と言った後、世論調査で上位を維持しています。
バラク・オバマ氏は8年前、希望のメッセージで大統領の座に登り詰めました。それは若者、マイノリティー(少数派)、無党派のほか、一部の共和党員の心にさえも響きました。現在の世論調査を見ると、有権者たちはワシントンと大手企業に怒りと不満を抱いており、これがトランプ氏やサンダース氏のようなアウトサイダーを後押ししています。彼らは有権者たちを窮地に追いやった連中にその痛みを負わせることを約束しています。
2. 本流を脅かすアウトサイダー
ミット・ロムニー氏は12年の前回大統領選において、いわゆるエスタブリッシュメント(主流派)のお気に入りの候補でした。他の候補者たちは、もっと保守的になって取って代わろうとしました。ただ初期の段階で、彼らが成功しないことは目に見えていました。
しかし、今回の共和党有権者たちは、さまざまな主流派候補をめぐって分裂しており、最有力候補であるトランプ氏に対する保守的な代替候補をまだ決めかねています。この代替ポストに最も近いのはテッド・クルーズ上院議員です。
民主党では、サンダース氏への支持は、一部の民主党員が本流に対して持つ不満の表れです。依然としてクリントン氏が指名を獲得する公算は大きいものの、サンダース氏はとりわけアイオワ州およびニューハンプシャー州で、クリントン氏に迫っています。
3. 歴史に残る女性候補の存在
クリントン氏が民主党の指名候補になれば、主要政党から指名を獲得した米国史上初の女性となります。この見通しは比較的高齢の女性など、一部の層を勇気づけています。それはまた、オバマ氏が08年にアフリカ系米国人として初めて主要政党の指名を獲得したときと同様に、米国全体の見解をも試しているのです。
クリントン氏は、オバマ氏と戦った08年当時よりも、自分が立候補する歴史的な意義を前面に出して選挙を戦っています。クリントン氏は今回、サンダース氏を支持する民主党員や、クリントン王朝に批判的な有権者たちから支持を取り付けるという難題にも直面します。
4. レガシー候補2人の存在
クリントン氏と同様にブッシュ氏も、自身の名字が指名獲得の足かせになることを心配しています。ブッシュ氏はある意味、より苦しい立場にあります。なぜなら、父と兄に次ぐブッシュ家で3人目の大統領になるからです。クリントン氏の夫であるビル・クリントン元大統領は今も民主党支持者の間で人気です。しかし、ジョージ・W・ブッシュ氏が弟ジェブ氏の人気をかさ上げする公算は小さい。たとえ共和党支持者の間であってもです。
5. 現職のオバマ氏が資産に
08年と12年の大統領選で、ジョージ・W・ブッシュ氏と顔を並べたがった共和党候補は1人もおりませんでした。イラク戦争への反対意見が強まり、ブッシュ氏の人気が落ち込んでいたからです。16年現在、オバマ氏に対する全体としての支持率は最近の外交政策に関する問題で低下しているものの、民主党支持者内での人気は安定的に推移しています。オバマ氏はアフリカ系米国人の支持を獲得する上でとりわけ有効であり得ます。ホワイトハウスとクリントン陣営との連携はほぼ常になされているのです。
6. 外交政策と国家安全保障が経済を凌駕
国家安全保障が再び最優先課題となりました。経済が支配的テーマだった2008年と2012年からのシフトです。これはパリとサンバーナディーノ(米カリフォルニア州)での銃乱射事件などを受けて、テロに対する恐怖が再燃したためです。
12月のウォール・ストリート・ジャーナル/NBCニューズ共同世論調査では、国家安全保障とテロリズムを政府の最優先課題にすべきだとの回答が全体の約40%に達しました。同調査ではまた、この問題を優先課題のトップ2つに入るものだとの回答が61%に達し、昨年春の39%から急増しました。
7. これまでとは違うカネの価値
ブッシュ氏は、スーパーPAC(パック)と呼ばれる特別政治活動委員会の資金を最も多く調達しましたが、敗れつつあります。そしてトランプ氏は、スーパーPACに頼らず、それほどカネも支出していませんが、支持率でリードしています。これは、有権者が今や、カネでは買えない何かによって動くことを示唆しています。トランプ氏が最初にテレビ宣伝に乗り出したのは、新年が始まった直後だったし、それまでは自身の爆弾発言などを取り上げる報道に大きく依存していました。彼はまたツイッターも利用しています。
8. 小口の寄付者が登場
オバマ大統領の選挙対策本部は2008年と12年に小口の寄付をユニークな特徴にしました。サンダース氏は今回、記録的なペースで100万人の個人寄付を集め、現在は200万人以上になっています。共和党候補者で元神経外科医のベン・カーソン氏もまた、小口の寄付を通じて相当の金額を調達してきました。
9. 大きくなる有権者の怒り
有権者の怒り、主として経済をめぐる怒りは、前回2回の選挙で定番でした。16年には、有権者たちは一段と怒っています。エスクワイヤーとNBCニューズの調査によれば、1年前よりも怒りが増している米国人は半数に上っています。他の調査は、WSJとNBCニューズの調査を含め、怒りの理由が変化したことを示しています。それは経済をめぐる怒りだけではありません。政治システムへの不満と、共和党員にとっては、同性婚の合法化など最近の社会変化への怒りです。
10. 短い予備選と長くなる本選
16年の予備選はこれまでより短く、討論会の数もはるかに少ないのが特徴です。予備選の投票は1月初めではなく2月1日に始まります。そして終わりも早い。これに対し、候補者を指名する全国党大会は過去の選挙サイクルよりもほぼ1カ月早めで、その結果、本選のサイクルは長くなります。(ソースWSJ)