マックンのメモ日記

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中国、仲裁判決無視なら前例は「米国」!

2016-07-10 15:29:11 | 政治(国内・海外)
南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが起こした国際仲裁手続きで、来週下される仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決を中国が無視する意向を示しているのは異例のことですが、前代未聞の話ではありません。過去にも注目すべき係争で国際的な裁判の判決を無視した国があります。それは米国です。

 国際司法裁判所(ICJ)は1986年に、米国がニカラグアの反政府武装組織を支援したとして同国政府が訴えた裁判で、米国に3億7000万ドルの賠償を命じる判決を下しました。しかし米国は、ICJには管轄権がないと主張し、審理の大半をボイコットしたうえ、判決に従わなかったのです。ニカラグアは国連安保理に訴えたが、米国は拒否権を発動して判決順守の決議案を否決。国連総会が採択した同様の決議も無視したのです。

 今回の中国の係争も小国が大国を訴えたもので、中国も仲裁裁には管轄権がないとして審理をボイコットしています。判決が予想通り中国に不利なものとなれば、中国は30年前の米国と同様に無視するとみられています。

「判決無視」では終わらない

 しかし「それで話は終わらない」と話すのは、フィリピン側の主任弁護人でニカラグアの係争でも主任弁護人を務めたポール・ライクラー氏です。同氏は、ニカラグアの問題で「米国は道徳的な立場を弱め、法に基づく国際秩序の推進者としてのイメージも傷付けた」と指摘。中国も同じように評判を落とし、周辺国からさらなる訴訟を起こされると予想します。

 国際法がらみの多くの係争と同じく、今回の裁判も法的拘束力はあるものの、国際的な圧力を通じてしか当事国に判決を順守させることはできません。米国やその同盟国は中国に対し、判決を受け入れるよう圧力を掛け続けるのは間違いありませんが、中国はそれに対抗して、ここ数週間もっぱら中小の途上国に対し中国支持の立場を打ち出すよう働き掛けています。安保理に提訴された場合には、米国と同様に拒否権を発動できるのです。

 中国は、米国はニカラグア問題での対応に加え、仲裁裁の判決が準拠する国連海洋法条約(UNCLOS)を批准していないことで、同国の立場が損なわれていると見ています。

 これに対し米政府当局者は、米国はUNCLOSの条文を順守しており、今回の件をニカラグアの係争と比較するのも適当でないと主張しています。同当局者は、ニカラグアの裁判では米国は当初審理に参加していたことや、最終的には1991年にニカラグアとの間で紛争を決着させたことを指摘しています。当時のニカラグア新政権は、米国からの援助の見返りに訴訟を取り下げたのです。

 それでも関係者によれば中国当局は、仲裁裁の管轄権に当事国が異議を唱え、国際的な影響に対応した前例として、ニカラグア係争を研究しています。中国政府の法律専門家は、国際的な仲裁判決を受け入れなかった他国の事例も研究しているといいます。例えば、2013年に環境保護団体グリーンピースの船を拿捕(だほ)したことをめぐり、オランダがロシアを訴えた件です。

問題棚上げへフィリピンと交渉か

 外交アナリストや外交官らは、中国が米国のやり方に倣い、この問題を棚上げするためにフィリピンのドゥテルテ新大統領と交渉を試みる可能性があると指摘します。フィリピンに対する援助や投資が交換条件になりかねないということです。

 ただ、中国は判決を無視することで別の面で困難に直面する可能性もあります。同国の海洋への野望を抑え込もうとする国々からの圧力を招くことになりかねないためです。

 米国とその同盟国は、「航行の自由」作戦を通じて中国の主張に異議を唱える取り組みを強化する可能性があります。米中双方とも今週、通常の訓練だとして南シナ海に艦船を移動させましたが、緊張が高まっているしるしと見る向きは多いのです。

 中国は、他国からのさらなる訴訟にさらされる恐れもあります。とりわけベトナムは中国の立場に異議を唱え、仲裁を支持しています。

 もう1つのリスクは、何十年にもわたって中小国や途上国の代表であるかのように振る舞ってきた中国が、今や超大国のように行動し、自らは国際法の対象外だと見なしていると受け取られることです。

 香港の弁護士で、仲裁裁判所には管轄権がないと主張する同裁判所宛て文書を共同執筆したダニエル・ファン氏は、判決を無視することはもろ刃の剣だと述べています。中国は、国際的な圧力や批判に抵抗し、1986年当時の米国のように普通の超大国として行動できることを誇示する一方、同じ理由から否定的に見られる可能性もあるというのです。

 フィリピン側のライクラー主任弁護人は、最終的には中国政府は判決を反映した内容で周辺国と合意に達すると予想しています。そうしないと自らが無法国家に見えてしまいかねないからです。ライクラー氏は「6カ月かかるかもしれないし、1年か2年、それ以上かかるかもしれないが、中国はそうせざるを得ないと思う」と話しています。(ソースWSJ