マックンのメモ日記

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トランプ氏、外交政策演説でも矛盾ばかり!

2016-05-01 14:05:50 | 政治(国内・海外)
26日に行われた東部5州の予備選で全勝し、米大統領選に向けた共和党候補の指名獲得に大きく近づいたドナルド・トランプ氏。彼は自身の政策論をかしこまった演説で説き始めています。また言動にも磨きをかけ、より威厳のある印象を醸し出そうとしています。トランプ氏は翌27日、外交政策に関する演説を行いましたが、この演説に対する「トランプ大学」の成績は課題未提出による「評価保留」でしょう。

 トランプ氏はワシントンで行った演説で、「アメリカファースト(米国優先)が私の政権の最大かつ最重要テーマになる」と述べました。同氏は「外交政策の新たな方向性」を打ち出しました。それは「でたらめな思いつきを目的で置き換え、イデオロギーを戦略で置き換え、混乱を平和で置き換えるものだ」と説明しました。この実業家は同じ原則が自身の演説集会や、いいかげんな選挙戦にも当てはまるのかどうかについては言及しませんでした。

 5000語に及ぶ演説は具体性に欠けていました。彼自身の尺度ではなく、通常の政治的な尺度に照らしてのことです。中核となるモチーフは(トランプ氏のあらゆる政治的な考えがそうだが)問題を解決する脳みそと強さを持ち合わせているのはこの実業家であって、他はすべて惨めな負け犬だというものです。よって、自分の直感と気性を信じろと説く。トランプ氏は「解決方法を知っている唯一の人間は私だ。信じてほしい、私はそれを分かっている」と言いました。

 トランプ氏の直感は確かに、時に建設的な方向に進むこともあります。米国の安全保障と国益に対する極めて重大な脅威として、世界で進む秩序の乱れを指摘したのは正しい。トランプ氏は、オバマ大統領が「われわれの友人を嫌い、敵に頭を下げている」と言ったが、これは大げさな表現ではあるものの現実を捉えています。

 オバマ氏の「背後から導く」哲学は同盟諸国を混乱させ、その多くは米国を当てにすることはできないと結論づけました。一方、中国やロシア、イランのような敵国はそれぞれの地域で覇権国家としての地位を強めようとし、オバマ氏の意志を試しています。

 同盟関係を再構築すれば、友好国からより多くが期待できるはずだという点でもトランプ氏は正しい。彼はまた欧州の安全を守るために米国が担っている負担は不均衡だとも指摘しました。たとえ米国の前方展開(としての欧州)が攻撃的な独裁主義者たちを阻止することで、米国の安全を守っているとしてもです。

 トランプ氏はオバマ氏が世界への関与を弱めたことによる結果を批判する一方で、より良い成果をもたらす可能性のある国際的な関与をも激しく攻撃しました。

 具体策は言わずに「われわれにはイスラム過激派の拡散を阻止するための長期的な計画が必要だ」と述べる一方、「イラク、リビア、シリアでのわれわれの行動はイスラム国(IS)の拡散を助長した」とも確かに言いました。

 米国はイラクに侵攻し、その後で必要以上に撤退しました。リビアでは政権交代を後押しし、その後は立ち去りました。シリアでは介入に失敗しました。イラク戦争に対するトランプ氏の後知恵批判は定番メニューになっています。しかし、シリアで戦争を始めなかったことでオバマ氏は過ちを犯したと思うことも時々あるようです。「キリスト教徒を助けるために、われわれは何もしてこなかった。何もだ」とトランプ氏は付け加えたのです。いったい、どっちだと言いたいのだろうか。

 あらかじめ準備された内容にしては、ついでにもっと言えば、夕食後の話題にするにしても、トランプ氏の演説はとりわけ矛盾に満ちています。外交政策の運営は「もっと予測不可能(でなければならない)。われわれは完全に予測可能だ。何もかも教えてしまう」と言ったかと思うと、外交政策の運営は「統制がとられ、慎重かつ一貫性」をもっていなければならないと説いています。

 トランプ氏は冷戦終結後の米国の対外方針を、民主・共和両党の大統領をまたいで「次から次へと続く外交政策の災禍」の一本線だと表現しました。これはどうやら、米国は諸外国に対し「経済の力」、つまりトランプ氏の言う「レバレッジ」を発揮してこなかったということが言いたいらしい。

 中国や日本、メキシコに貿易戦争を仕掛けるというトランプ氏の脅しは経済的ナショナリストを喜ばせるでしょうが、そうした瀬戸際政策は世界的なリセッション(景気後退)を誘発する可能性が高いのです。米国の国益は優先されなければならないが、そのために何を諦めるかというトレードオフは否応なく複雑なものになります。1930年代以降の両党の大統領たちは、貿易は経済に「純益」をもたらすと結論づけてきました。彼らはまた、旧ソ連崩壊後の「パックス・アメリカーナ(アメリカの覇権)」を維持してきました。これはトランプ、オバマ両氏が軽視しているものです。両氏のどちらも認めたくはないでしょうが、彼らの信念には連続性があります。

 トランプ氏は説明資料を注意深く読み込むことで知られているわけではありません(そういう資料が存在するとしての話だが)。それに、政策に関する深い知識が彼の政治的な魅力の源でないのは明らかです。しかし、米国人は通常、相手に対する攻撃的な言い方より、世界の大きな問題に精通している大統領を好むものであるし、ヒラリー・クリントン前国務長官はこの実業家が「最高司令官」にふさわしいかどうかについて果敢に「裁判にかける」つもりでしょう。

 トランプ氏は「将来の新たな闘いに勝つ。それは多いかもしれないし、複雑かもしれない。だが、私が大統領になれば、われわれは勝つ」と約束しました。有権者が核兵器を持ったトランプ氏を信頼しなければ、大統領どころか共和党の指名候補にもなれません。だから、矛盾に満ちていたとはいえ真剣な演説は、少なくとも一種の進歩でしょう。(ソースWSJ)