★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ブタペスト弦楽四重奏団のブラームス:弦楽四重奏曲全曲/ゼルキンとブタペスト弦楽四重奏団のシューマン:ピアノ五重奏曲

2023-05-25 09:51:25 | 室内楽曲


ブラームス:弦楽四重奏曲全曲(第1~3番)

シューマン:ピアノ五重奏曲

弦楽四重奏:ブタペスト弦楽四重奏団
    
          ヨーゼフ・ロイスマン(第1ヴァイオリン)
          アレキサンダー・シュナイダー(第2ヴァイオリン)
          ボリス・クロイト(ヴィオラ)
          ミッシャー・シュナイダー(チェロ)

ピアノ:ルドルフ・ゼルキン

録音:1963年11月(ブラームス)/1963年9月(シューマン)

LP:CBS/SONY SOCL 225~6

 このLPレコードは、在りし日の名クァルテットのブタペスト弦楽四重奏団(1917年―1967年)と、名ピアニストのルドルフ・ゼルキン(1903年―1991年)の名演に酔いしれる貴重な録音だ。潤いのある音であり、室内楽を聴く条件としては申し分ないものに仕上がっている。ブダペスト弦楽四重奏団は、1917年にブダペスト歌劇場管弦楽団のメンバーによって結成され、1938年からアメリカに定着し、1967年2月まで活動した20世紀を代表する弦楽四重奏団。世界的な名声を得たのはロシア人のヨーゼフ・ロイスマンが第1ヴァイオリンとなってからで、メンバー全員がロシア人に入れ替わり活動した。演奏スタイルは、それ以前の古典的あるいはサロン的演奏スタイルを一新させ、一音一音を明確に弾き分ける、いわゆる新即物主義によるもので、弦楽四重奏曲の演奏の現代化に大きく貢献した。一方、ボヘミヤ出身のピアニストのルドルフ・ゼルキンは、ウィーンで学び、その後1939年、ナチから逃れるため米国に移住し、主にドイツ音楽を得意とするピアニストとして活躍した。演奏スタイルは、あくまで正統的であり、力強さに溢れたものであった。このアルバムは、LPレコード2枚組で、1枚目と2枚目のA面にはブラームスの弦楽四重奏曲が収められている。ブラームスの3つの弦楽四重奏曲は、第1番が厳格さ、第2番がロマン性、第3番が牧歌的な性格とそれぞれ異なる性格を持っている。第1番はの完成は1873年の夏で、ミュンヘンに近いシュタルンベルク・ゼー湖畔のトゥッツィングという村で書かれた。第2番は、第1番と同じく1873年の夏、トゥッツィング滞在中に書き上げられた。第3番は、1875年の春から夏にかけて、ドイツの古都ハイデルベルクに近いツィーゲルハウゼンで書かれた。これらの3つの弦楽四重奏曲は、決して聴きやすい曲ではないが、聴き込むにつれ、ブラームス特有の渋いロマン溢れる世界へと誘われる。ブタペスト弦楽四重奏団の演奏は、一点の曖昧さもなく、しかも一音一音を丁寧に演奏しており、この結果、ブラームスの心の奥底の音楽を聴き取りやすいものにしている。一方、シューマン:ピアノ五重奏曲は、ゼルキンとブタペストの音楽的感性がピタリと合った演奏を繰り広げる。スケールが大きく、がっしりとしたシューマンに仕上がっているが、同時にロマン的な香りも感じられる名演奏となっている。(LPC)


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