★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イングリット・ヘブラーらによるモーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番/第2番

2024-01-04 08:37:59 | 室内楽曲


モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番/第2番

ピアノ:イングリット・ヘブラー

ヴァイオリン:ミヒェル・シュヴァルべ
ヴィオラ:ジュスト・カッポーネ
チェロ:オトマール・ボルヴィッキー

録音:1970年4月1日~4日、ベルリン、ヨハネ教会

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) X‐5628(6500 098)

 モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番は、オペラ「フィガロの結婚」の合間をぬって作曲された曲で、ト短調の緊張感の漂う室内楽。一方、第2番は、「フィガロの結婚」上演後に作曲され、この曲は第1番とはがらりと印象の異なる変ホ長調の叙情的で明るい曲。この間、モーツァルトは、ハイドンに6曲の弦楽四重奏曲を献呈するなど、最も充実した作曲家としての時間を過ごしていた。ピアノ四重奏曲は、当時まだ一般的な楽器編成とは言えず、しかも第1番はアマチュアが演奏するには難しすぎたため、出版社がアマチュア音楽家目当てに出版した当初の目論見がはずれ、このために第2番は出版社を代えて出版せざるを得なかったほど。しかも、モーツァルトは、この2曲以外にピアノ四重奏曲の作曲を断念している。そんな決して順調な楽譜の発行に恵まれなかった、この2曲を今聴いてみると、なかなか内容の充実した室内楽に仕上がっていることが実感できる。モーツァルトのほかの曲のように華やかさもなく、有名な曲ではないが、本当の室内楽好きには実に聴き応えのある曲だ。ピアノ四重奏曲第1番は、1785年10月に作曲され、同年の12月にウィーンのホフマイスターから出版された。アマチュアが家庭で演奏する音楽を狙いにホフマイスターが依頼したもの。ピアノ四重奏曲第2番は、1786年6月に完成した。完成して間もなく、第1番の楽譜が売れなかったためか、ホフマイスターは第2番の出版を中止し、翌1787年に第2番はアルタリアから出版された。 このLPレコードで演奏しているイングリット・ヘブラー(1926年―2023年)はオーストリア出身の女性ピアニスト。1954年「ミュンヘン国際音楽コンクール」で優勝した。特にモーツァルトの演奏では、その気品のある演奏に定評があり、録音を通して日本にも多くのファンがいた。また、3人の弦楽器奏者は、いずれも当時ベルリン・フィルの首席奏者を務めていた腕利きのプレイヤーである。特に、ヴァイオリンのミヒェル・シュヴァルベ(1919年―2012年)は、1957年、カラヤンに招かれ、ベルリン・フィルの第1コンサートマスターに就任した、当時のスタープレイヤーであった。このLPレコードでの演奏内容は、3人の弦楽器奏者がピアノのイングリット・ヘブラーに合わせるかのように優雅なスタイルに徹しており、その効果は特に第2番で発揮されている。(LPC)


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