★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇グルダのバッハ:イタリア協奏曲/モーツァルト:ピアノソナタ第15番/シューベルト:スケルツォ第1番、第2番/ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ

2023-02-02 09:51:29 | 器楽曲(ピアノ)


バッハ:イタリア協奏曲
モーツァルト:ピアノソナタ第15番
シューベルト:スケルツォ第1番/第2番
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ

ピアノ:フリードリヒ・グルダ

録音:1965年2月1日~4日、ウィーン

発売:1979年

LP:日本フォノグラム 13PC-10(AVRS19 029)

 このLPレコードは、オーストリア出身の名ピアニストであったフリードリヒ・グルダ(1930年―2000年)を偲ぶ1枚。息子のパウル・グルダは現在ウィーンを中心とするピアニストとして活躍し、時々来日していたのでお馴染みの方もおられよう。フリードリヒ・グルダの特徴は、何と言っても、その歯切れのいいピアノ演奏にある。まるでジャズ演奏を聴いているみたいというと、グルダを信奉してるリスナーからお叱りを受けるかもしれないが、このLPレコードをよく聴くと、あながち的外れでないことが分かってくるのではないであろうか。1950年代にはジャズに傾倒するあまり、1956年にアメリカに渡り、ニューヨークの名門ジャズクラブ「バードランド」にフィル・ウッズらセプテットを率いて出演、実況録音盤を発表した。また、ジャズのスタジオ録音盤も存在している。グルダのピアノ演奏の技巧は、全く素晴らしく、非の打ちどころがない。それでいて少しの無機質なところがないところにグルダの真の魅力があると思う。モーツァルトの第15番のピアノソナタを聴いてみると、装飾音の扱いに長けていて、あたかも精緻に作られた織物を見ているようで、何とも豊かな空間がリスナーの前にパーッと広がる。要するに繊細な感覚のピアノ演奏なのだが、聴く者に少しも緊張感を与えないところにグルダの真の偉大さがあると私は思う。グルダのピアノ演奏は、グレン・グールド(1932年―1982年)に似ていると言われる。しかし、グレン・グールドは、過去にはきっぱりと別れを告げた演奏法であるのに対し、グルダの演奏は新しい感覚の上に過去の遺産も引き継ぐという姿勢が鮮明だ。このLPレコードでも、バッハ、モーツァルト、シューベルト、ショパンを、グルダの一貫した感性で弾きこなしており、誠に鮮やかこの上ないものに仕上がっている。フリードリヒ・グルダは、オーストリア出身。ウィーン音楽院(現ウィーン国立音楽大学)で学ぶ。1946年「ジュネーブ国際音楽コンクール」で優勝を果たす。20世紀を代表する巨匠ピアニストの一人であり、1960年代は日本においてイェルク・デームス(1928年―2019年)、パウル・バドゥラ=スコダ(1927年―2019年)とともに“ウィーンの三羽烏”と呼ばれていた。1947年、初のレコーディングを行い、バッハ、ベートーヴェン、ショパン、プロコフィエフなどを録音。そして1967年~1968年には、3回目となるベートーヴェン「ピアノソナタ全集」を録音している。日本に対しては、妻が日本人だったこともあり、親近感を抱いていたことでも知られる。来日歴は1967年、1969年、1993年の3回。フリードリヒ・グルダは生前「最も敬愛するモーツァルトの誕生日に死にたい」と語っていたそうだが、実際にモーツァルトの誕生日(1月27日)に、自宅で心臓発作によって亡くなった。(LPC)


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