★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルのブルックナー:交響曲第8番(ライブ録音盤)

2023-02-06 09:40:21 | 交響曲


ブルックナー:交響曲第8番(ハース版)

指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1949年3月15日、ベルリン、ティタニア・バラスト(ライヴ録音)

発売:1977年

LP:日本コロムビア OC‐7139~40‐RC

 ブルックナーは、生涯9つの交響曲を作曲したが、この第8番は、ブルックナー自ら「最も美しい作品」と自負していたように、聴きこ込めば聴き込むほど、内容が充実した傑作交響曲であることが聴き取れる。そして、管弦楽の編成の規模が大きいことでも特筆できる作品だ。すなわち、4本のワーグナー・テューバやブルックナーとしては初めて用いた3台のハープ、トライアングルや6個のティンパニー、それに3管編成という、限りなく大きな編成で演奏されるのであるから、聴いていてその壮大なスケールに酔いしれるのである。ブルックナーの交響曲第8番は、ブルックナー60歳の誕生日の1884年9月4日、フェクラブルックの町の妹のロザリエの嫁家で着手され、第1楽章のスケッチがその年の10月1日にでき、1885年8月に全曲のスケッチが完成。そしてオーケストラ用スコアが1887年9月4日に完成した。ブルックナーは、交響曲第7番を見事に指揮してくれたドイツの指揮者ヘルマン・レヴィ(1839年―1900年)に第8番の写しを送り、初演をを期待したが、結果は演奏を拒否されてしまった。つまり、ヘルマン・レヴィは、あまりにも巨大な第8番に恐れをなして指揮を辞退してしまったのだった。すっかり彼を信じ切っていただけにひどく落胆したブルックナーは、一時は自信を全く失い、自殺を考えたほどだったという。しかしその後、周囲の意見をを取り入れるなどして、ブルックナーは第8番の全面的な書き換えを行い、1年をかけて1890年3月10日に完成。初演は1892年12月18日、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルによって行われた。このLPレコードの録音は、フルトヴェングラー(1886年―1954年)とベルリン・フィルのライヴ録音盤という願ってもないものだ。しかし、音質は残念ながら1949年という年代を考慮しなければないもので、現在のレベルからするとおよそ良好とは言えず、何とか鑑賞に耐えられるといったところだ。後年、このライブ録音盤がCD化されたが、音質はLPレコードの方が数段良かったと報告されている通り、このLPレコードの存在価値は高い。演奏内容は、フルトヴェングラー独特の深い洞察力と地の底から湧きあがってくるような迫力に、ただただ圧倒される思いがする。ライヴ録音ならではの1回の演奏に全神経を集中させる緊迫感、テンポを自在に変化させ、音楽自体のスケールを限りなく大きく持っていくところなどは、“神様”フルトヴェングラー以外には到底真似できない、正に神業といっても過言でない。宇野功芳氏も著書で「1日前の放送用ライヴ録音よりもさらに壮絶な表現で、正に“ディオニソス的なブルックナー”である」(「フルトヴェングラーの全名演名盤」講談社+α文庫)と、この録音のことを取り上げ、この録音を高く評価しているのである。(LPC)


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