バッハ:管弦楽組曲第2番/第3番
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フルート:カール=ハインツ・ツェラー
LP:ポリドール SE 7910
バッハの管弦楽組曲全4曲の作曲年代は全て不明である。これは、自筆譜が全て失われているためだ。しかし、いくつかのパート譜が残されているため、演奏年代は推測できる。第1番と第2番は、おおよそ1721年、第3番と第4番は1727年~36年の作品ではないかと考えられている。つまり、第1番と第2番はケーテン時代、第3番と第4番はライプツィヒ時代ということになる。バロック時代の音楽の先進国はイタリアとフランスの2国であった。このため18世紀のドイツにおいては、イタリアとフランスの音楽を採り入れながら、ドイツ的要素を加えることによって曲の様式を整える風潮が強かった。当時、フランス風の管弦楽組曲の冒頭には、緩・急の対照的な部分からなる序曲が置かれ、この様式が次第にドイツにも波及することになる。このためバッハの管弦楽組曲の冒頭には、長大なフランス式序曲が4曲のすべてに置かれている。曲のその後の展開は、それぞれの曲で異なる。通常は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグの4つの舞曲が基本となるが、バッハの管弦楽組曲の場合は、クーラント、サラバンド、ジーグ、ブーレ、ガヴォット、メヌエットなどの舞曲が4~6曲づつ続く。第2番は、ヴァイオリン2部、ヴィオラおよび通奏低音のほかに、フルート独奏の編成となっている。全曲はロ短調で統一されており、フルート協奏曲のようにフルートがソロとして強調されて用いられている。第3番は、1729年~31年に写筆されたパート譜が現存しており、ライプツィヒのコレギウム・ムジクムの演奏会用につくられたと考えられている。全体は、序曲の後、エア、ガヴォット、ブーレ、ジーグと舞曲が続く。このエアはウィルヘルミがヴァイオリン独奏曲「G線上のアリア」に編曲し、1871年に出版し有名になった曲。カラヤン指揮ベルリン・フィルは、真正面から曲に取り組み、繊細でありながら、全体に躍動感のある生き生きした表情を見せる演奏内容が見事だ。カラヤン指揮ベルリン・フィルのコンビは、ヘンデルの合奏協奏曲作品6でも名録音を残しているが、バッハ:管弦楽組曲の演奏でも、これに負けないほどのレベルの高い演奏を披露する。これらの演奏を聴くと、一般に思われているカラヤンの印象とはまた違った、音楽の核心に迫るカラヤンの真実の姿がくっきりと浮かび上がる。全体がバランス良く見事に整えられていると同時に、信仰心のような、あるいは安らぎのような雰囲気が醸し出され、リスナーは自然とその演奏に惹きつけられる。現代感覚に溢れた名録音と言っていいだろう。(LPC)