★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇シュナイダーハン&クリーンのシューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ集

2024-01-25 09:42:50 | 室内楽曲


シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番/第3番/第2番

ヴァイオリン:ヴォルフガング・シュナイダーハン

ピアノ:ワルター・クリーン

録音:1965年1月4日~6日、ウィーン、ムジークフェライン 大ホール

LP:ポリドール SE 8010

 このLPレコードに収められたシューベルトの3つのソナチネは、1816年、シューベルト19歳の時の作品である。そのころ行われていたシューベルトの家での家庭コンサートのために作曲されたものと考えられている。シューベルト自身は、この3つのソナチネを「ヴァイオリンの伴奏をともなえるピアノ・フォルテのソナタ」と名付けていた。基本的には古典的な曲ということができるが、各所に如何にもシューベルトらしさが顔を覗かせており、3曲とも実に愛すべき作品に仕上がっている。特に第2番と第3番ではヴァイオリンが重視され、進歩の跡が窺える。シューベルトは、若い頃、「自分自身をモノにしようと、私はひそかに望んでいた。しかし、ベートーヴェンの後、誰が自分自身をモノにすることができるのであろうか?」と述懐していたという。これら3曲は、何の苦労もなく完成したかのように思われるが、実態は違っていた。このようなウィーンにおける家庭的な曲では、演奏家の素質が演奏の内容をを大きく左右することになる。その点、このLPレコードで共演しているヴォルフガング・シュナイダーハンとワルター・クリーンは、この曲を演奏するには、これ以上の適役はいないと言っても過言でないほど。ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915年―2002年)は、ウィーンでヴァイオリンを学んだ典型的なウィーンっ子。5歳で演奏会を開いて神童と騒がれたという。1933年から1937年までウィーン交響楽団のコンサートマスターを務め、1937年からはウィーン・フィルのコンサートマスターを務めた。1956年には、ルドルフ・バウムガルトナーとともにルツェルン音楽祭弦楽合奏団を創設している。一方、ワルター・クリーン(1928年―1991年)は、オーストリア・グラーツ出身のピアニスト。ウィーン音楽アカデミーでアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリに師事。1951年と1952年のブゾーニ国際ピアノコンクールおよび1953年のロン=ティボー国際コンクールに入賞している。ウィーンの典型的ピアニストであり、ウィーンの伝統様式を新鮮な感覚で生かした演奏は、モーツァルトをはじめとして高い評価を得ている。このLPレコードにおける2人の演奏は、流麗で、しかも輝かしい光を放ち、ある時は憂いを帯びた陰影のある優美さに溢れている。一言で言えば、古きよき時代の名演奏とでも言ったらよいのであろうか。残念ながら、今ではもう、このような優美な演奏を聴くことはできなくなってしまった。(LPC)


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