★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヘンリック・シェリングのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲/ロマンス第2番

2022-09-22 09:41:11 | 協奏曲(ヴァイオリン)


ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
        ロマンス第2番

ヴァイオリン:ヘンリック・シェリング

指揮:ハンス・シュミット=イッセルシュテット

管弦楽:ロンドン交響楽団

発売:1980年

LP:日本グラモフォン(フィリップスレコード) 13PC‐266(6570 303)

 ヘンリック・シェリング(1918年―1988年)はポーランド出身で、その後、メキシコに帰化した名ヴァイオリニスト。ベルリン、パリで学び、第2次世界大戦後にメキシコ市民権を得ている。その演奏スタイルは、正に正統派を絵で書いたようであり、実に堂々としていて、どのような曲でも真正面から取り組む真摯な演奏姿勢により、当時の多くの聴衆から圧倒的支持を得ていた。正統的演奏スタイルといっても、少しも堅苦しい所はなく、ヴァイオリンの持つ人間味溢れる音色を存分に表現することに長けていた演奏家でもあった。そんなシェリングが、これも正統派の指揮者ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900年―1973年)とのコンビで、十八番のベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲を録音したのがこのLPレコードである。演奏内容は、両者の特徴である正統派の真髄を随所にちりばめた録音となっており、同曲を代表する録音の一枚として、現在に至るまで、その存在意義を少しも失ってはいない。このLPレコードで宇野功芳氏は「シェリングの高雅な美音は言語に絶する。音色に色と香りがあり、繊細な感受性がにじみ出ている。その表現は懐かしさの限りであり、同様に極めて高貴な強弱のニュアンスの芸術的なことにも驚かされ、聴いていて心の底から慰められてしまう」とヘンリック・シェリングの演奏を絶賛している。ヘンリク・シェリングは、ベルリンに留学して、カール・フレッシュにヴァイオリンを師事した後、パリ音楽院に入学、ジャック・ティボーに師事し、1937年に同校を首席で卒業する。メキシコ時代は教育活動に専念するが、第2次世界大戦後の1954年に、ニューヨーク市におけるデビューが高い評価を得てから以後、世界を代表するヴァイオリニストとして世界各地で演奏活動を展開した。一方、このLPレコードで堂々たる指揮ぶりを見せているハンス・シュミット=イッセルシュテットは、ドイツの正統派を代表する名指揮者。第2次世界大戦後は、北ドイツ放送交響楽団をベースとして活動したが、シュミット=イッセルシュテットの統率の下、同管弦楽団は飛躍的な進歩を遂げた。こほかにも、ベルリン・フィルやウィーン・フィルを初めとする世界の100を超える主要なオーケストラも指揮した。ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団首席指揮者などを歴任。このLPレコードは、ヘンリック・シェリングとハンス・シュミット=イッセルシュテットの二人の正統派の演奏家による記念碑的録音と評価される。(LPC)


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