ラヴェル:ヴァイオリンソナタ
フォーレの名による子守唄
ドヴュッシー:ヴァイオリンソナタ
ラヴェル:ツィガーヌ
ヴァイオリン:ジャン=ジャック・カントロフ
ピアノ:ジャック・ルヴィエ
発売:1977年
LP:RVC(仏コスタラ出版社) ERX‐2317
このLPレコードには、フランスの大作曲家のドヴュッシーとラヴェルのヴァイオリンとピアノのために書かれた全ての作品が収められている。意外に少ないと感じられるかもしれないが、2人ともロマン派の作曲家が得意としたヴァイオリンとピアノのための作品を、晩年に至るまで、あまり快くは思ってなかったようである。ところがこのLPレコードに収められた4曲の作品はいずれも優れたもので、特にドヴュッシー:ヴァイオリンソナタは、このLPレコードのライナーノートに「ドヴュッシーが彼の才能の頂点に立っていることを示している。彼の霊感がこれほど灼熱のほとばしりをみせ、これほど豊かな幻想と多様性をみせたことがかつてあったろうか」(ハリー・ハルブレイチ氏)と書かれているとおり、内容の充実した作品に仕上がっている。作曲は第一次世界大戦中の1916年から1917年にかけて行われ、重病をおして最後の力を振り絞り、2年前にスケッチしてあった作品を完成させたものだという。このヴァイオリンソナタは、ドビュッシーの全作品の最期となった作品。ドビュッシーは晩年になり、チェロソナタ、フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ、それにこのヴァイオリンソナタの3曲を作曲した。一方、ラヴェル:ヴァイオリンソナタは、1927年のはじめ、4年前の完成に至らなかったヴァイオリン協奏曲を基にして完成させた作品。初演は1927年に、伝説のヴァイオリニストのジョルジュ・エネスコとラヴェル自身のピアノによって行われた。これは、丁度、ドヴュッシー:ヴァイオリンソナタの10年後に当る。第2楽章のブルースで、ラヴェルは後の2つの協奏曲と同様にジャズの要素を取り入れている。この曲は、ラヴェルの室内楽曲の最後の作品となった。このLPレコードでは、フランス出身のヴァイオリニストで、後に指揮者に転向したジャン=ジャック・カントロフ(1945年生まれ)が演奏している。ピアノはフランス出身のジャック・ルヴィエ(1947年生まれ)で、1970年にジャン=ジャック・カントロフとフィリップ・ミュレとともにピアノ三重奏団を結成している。このLPレコードでの演奏内容は、フランス音楽の精緻さを強く感じさせるもので、まるで宝石箱から溢れ出る光のように、きらびやかであると同時に、どこまでも広がる透明感が何ともいえない優雅な雰囲気を、辺り一面に醸し出す。フランスの室内楽の醍醐味を存分に味わえるLPレコードだ。(LPC)