★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇スーク・トリオのベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番/ブラームス:ピアノ三重奏曲第3番

2023-06-15 09:42:33 | 室内楽曲


ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第3番
ブラームス:ピアノ三重奏曲第3番

ピアノ三重奏:スーク・トリオ

        ヴァイオリン:ヨセフ・スーク
        チェロ:ヨセフ・フッフロ
        ピアノ:ヤン・パネンカ

発売:1987年6月

LP:日本コロムビア(スープラフォン) OC‐7182‐S

 このLPレコードは、往年の名トリオのスーク・トリオ(ヨセフ・スーク:ヴァイオリン/ヨセフ・フッフロ:チェロ/ヤン・パネンカ:ピアノ)の名演を偲ぶ一枚である。録音状態も良く、若きベートーヴェンの意欲作と円熟期に入ったブラームスの作品の2曲のピアノ三重奏曲を聴くのには、これ以上の演奏条件で聴くことはなかなか難しい。この2つの曲は、名作が多いベートーヴェンとブラームスの作品群の中では、そう目立つ存在ではないが、ともに内容が充実した作品であり、聴き応えは十分である。チェコ出身のヨセフ・スーク(1929年―2011年)は、亡くなるまで、その美しいヴァイオリンの音色で聴衆を魅了してきたボヘミア・ヴァイオリン楽派を代表するヴァイオリニスト。チェロのヨセフ・フッフロ(1931年生まれ)は、1959年のカザルス国際チェロ・コンクールの優勝者であり、抜群の安定感のある演奏には定評がある。ヤン・パネンカ(1922年―1999年)は、チェコ出身のピアニストで、溌剌とした演奏振りはスーク・トリオに躍動感を与え、このLPレコードでの活き活きとした演奏が特に印象的。ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第3番は、作品1の3曲のピアノ三重奏曲の3番目に書かれた作品。ハイドンが列席してリヒノフスキー公の前でこれらの3曲が演奏され、ハイドンはベートーヴェンの素質を高く評価したと言われるが、ハイドンはこの第3番だけは、評価しなかったという。これは当時あまりに革新的な曲でハイドンには馴染めなかったためと言われている。ベートーヴェン自身は3曲のうちでは一番の自信作であった曲。ハイドンやモーツァルトなどの先輩たち影響を受けているものの、既に後のベートーヴェンの作風を想わせるものを多く持つ作品である。一方、ブラームスは、ピアノ、ヴァイオリン、チェロという編成の三重奏曲を4曲残している。そのうちの3曲は作品番号のついた曲(第1番op.8、第2番op.87、第3番op.101)で、あと1曲は、1924年に発見されたイ長調の曲である。ピアノ三重奏曲第3番は、ブラームス53歳の時の作品で、スイスの雄大な風景に囲まれたトウンの町で書いた。ブラームス特有の晦渋さに覆われているものの、円熟の境地にあった作品だけに、雄大で内容の濃い作品に仕上がっている。スーク・トリオは、この2曲のピアノ三重奏曲を、一本筋の入った強靭さに加え、優雅な美しさも加味した名演を披露している。(LPC)

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