★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ウラッハとウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のブラームス:クラリネット五重奏曲

2022-10-10 09:44:30 | 室内楽曲


ブラームス:クラリネット五重奏曲

クラッリネット:レオポルド・ウラッハ

弦楽四重奏:ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団

発売:1964年

LP:キングレコード(Westminster) MH5152

 ブラームス:クラリネット五重奏曲は、ブラームス晩年の室内楽の傑作である。クラリネットと弦楽四重奏が相互に語り掛けるように演奏を繰り広げていくのだが、その醸しだす雰囲気は、ブラームスがこれまで歩んできた人生について、いろいろと思いを馳せながら、静かに回顧するかのような様相を帯びたもので、実に奥深い内容に心の底から共感することができる。この曲の創作の切っ掛けとなったのは、当時、クラリネットの名手であったリヒャルト・ミュールフェルト(1856年―1907年)との出会いであったという。ブラームスは、ミュールフェルトのクラリネット演奏を聴き、たちまちその虜となり、その結果、このクラリネット五重奏曲を含む、全部で4曲のクラリネットの室内楽曲を書き上げることになったのだ。クラリネット五重奏曲は、1891年の夏に、ブラームスが好んで避暑にでかけたイシュルにおいて、着手から2週間程度で完成されたという。全部で4つの楽章からできているが、創作面では歳を感じさせない独創性に富んでおり、その内容は、悲愴味をもった諦観ともいえるブラームス晩年の心境を反映したものとなっている。このLPレコードでクラリネットを演奏しているのは、ミュールフェルトの生まれ変わりみたいなレオポルド・ウラッハである。そのクラリネットの音色は、丸みのある暖かみに満ちたもので、その陰影のある演奏スタイルは、一度聴くと、たちどころにその強烈な魅力から離れられなくなるほどだ。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、名手ウラッハと演奏するには、これ以上の相性は考えられない。そんな名手達がブラームスの深遠な室内楽を録音したこのLPレコードは、現在でもその存在価値は、いささかも色褪せていない。レオポルト・ウラッハ(1902年ー1956年)は、オーストリア、ウィーン出身のクラリネット奏者。1917年からウィーン音楽院で学び、1923年に優等で卒業。1928年からウィーン国立歌劇場およびウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団管楽器アンサンブルの主宰を務めた。一方、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、ウィーン・フィルの4人の弦の奏者で組織され、ウィーン・コンツェルトハウス協会の下に活躍。4人ともウィーンの音楽アカデミーの出身で、1934年にこの四重奏団を結成し、ウィーン的な情緒をたたえた品格の高い演奏をするのが特徴。1962年を最後として、ほぼ30年に及ぶ活動を終えることになる。(LPC)

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