★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イタリアオペラの名指揮者トゥリオ・セラフィン指揮ローマ歌劇場管弦楽団のロッシーニ序曲集

2022-07-14 09:39:57 | オペラ


~ロッシーニ序曲集~

歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
歌劇「絹のはしご」序曲
歌劇「ウィリアム・テル」序曲
歌劇「セビリャの理髪師」序曲
歌劇「セビリャの理髪師」から「嵐の音楽」
歌劇「セミラーミデ」序曲

指揮:トゥリオ・セラフィン

管弦楽:ローマ歌劇場管弦楽団

録音:1963年10月4日~7日、ローマ、RCAスタジオ

LP:ポリドール SE 7810

 ロッシーニ(1792年―1868年)は、イタリアの作曲家であるが、ウィーンに滞在したときなどは、かのベートーヴェンを上回る人気を得ていたという。私はロッシーニの名を聞くと、もっと年代が後の作曲家というイメージがあり、ベートーヴェンの時代に活躍したと聞いてもどうもぴんとこない。その理由の一つは、今回のLPレコードでも聴ける、いかにもイタリア人らしく明るく陽気な人気歌劇を数多く作曲したことと無縁ではない。つまり、今日の日常生活の状況とあまり変わらない存在としてのロッシーニ像がそこにはあり、距離感がぐっと近く感じられるからである。生涯に40数曲のオペラを書いたというが、1830年以降、神経性の疾患を患い作曲活動から遠ざかることになり、晩年に「スターバト・マーテル」を書いたのみに留まった。ということは、今遺されているロッシーニの作品は、若い時代に作曲したものがほとんどで、ベートーヴェンみたいに中期から後期にかけての傑作の森みたいな作品群が存在しないのである。もし、ロッシーニが中期から後期にかけて作曲活動を活発に行っていたならば、作品から受ける印象は今とは大分違っていたであろう。このLPレコードで指揮をしているトゥリオ・セラフィン(1878年―1968年)は、スカラ座、ローマ国立歌劇場の音楽監督を務め、メトロポリタン歌劇場でも活躍したイタリア・オペラの名指揮者。このLPレコードでの何とも粋な指揮ぶりを聴くと、私などは、今でも“心踊り、血騒ぐ”といった塩梅で、自然と興奮状態になってしまう。かつての日本は、こんな陽気な曲がしょっちゅうラジオから流れていた、今考えると何ともいい時代だった。歌劇「どろぼうかささぎ」序曲は、長い序奏を持つソナタ形式で書かれた曲。歌劇「絹のはしご」序曲は、「ウィリアムテル」や「セビリャの理髪師」序曲ほど有名ではないが、各楽想の魅力と上品な味わいが一際際立つ。歌劇「ウィリアム・テル」は、スイスの独立運動を扱った物語で当時の人々の血を沸き立たせた。序曲は、「夜明け」「嵐」「牧歌」「スイス独立軍の行進」の4部構成の描写風音楽。歌劇「セビリャの理髪師」は、今日でもしばしば上演される。序曲は、「イギリス女王、エリザベッタ」という歌劇からの転用。歌劇「セビリャの理髪師」から「嵐の音楽」は、第2幕、第2場で奏される嵐の場面の音楽。歌劇「セミラーミデ」序曲は、ロッシーニの序曲中、最も長大で力強さが感じられる曲である。(LPC)

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