★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バリリ四重奏団のベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

2022-07-25 09:42:31 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)


ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

弦楽四重奏:バリリ四重奏団

          ワルター・バリリ(第1ヴァイオリン)
          オットー・シュトラッサー(第2ヴァイオリン)
          ルドルフ・シュトレンク(ヴィオラ)
          エマヌエル・ブラベッツ(チェロ)

発売:1965年

LP:キングレコード MR 5096

 バリリ四重奏団は、1954年に結成された名高い弦楽四重奏団である。このLPレコードが録音された当時のメンバーは、第1ヴァイオリンがウィーン・フィルのコンサートマスターのワルター・バリリ、第2ヴァイオリンがウィーン・フィルの第2ヴァイオリン首席奏者のオットー・シュトラッサー、ヴィオラがウィーン・フィルのヴィオラ首席奏者のルドルフ・シュトレンク、そしてチェロのエマヌエル・ブラベッツであった。バリリ四重奏団の演奏の特徴は、何といってもウィーン風のスタイルにある。一度その優雅な響きを聴くともう忘れられなくなるような魅力に富んだ深みのある音色なのだ。決してリスナーに対して押し付けがましいところがなく、その表現は奥ゆかしさに包まれている。そして単に優雅であるだけでなく、芯の強さが隠されているところが、その演奏に厚みと奥行きを与えている。このLPレコードのライナーノートに、バリリ四重奏団が「現在レコードで聴かれる数多くの弦楽四重奏団の中でも最も愛好家達に親しまれているグループである」と書かれている通り、当時の人気は絶大なものがあった。そのバリリ四重奏団も既にに解散(1969年)してしまったが、彼らが遺した録音は、現在でも一部のリスナー達からは熱烈に愛され続けている。特にベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲の録音は、未だにこれを越えるものは見当たらないと言っていいほどの高みに立った演奏内容となっている。4人の息がピタリと合い、その深みのある演奏内容は、何と言ってもベートーヴェンの弦楽四重奏曲に一番よく似合うのである。このLPレコードに収められたベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番は、全部で7つの楽章からなる、ベートーヴェンが死の前年の1826年に完成した後期の傑作中の傑作の弦楽四重奏曲だ。出版されたのは、ベートーヴェンが亡くなった後で、生前には一度も演奏されることはなかったという。7つの楽章という他に例をみない形態となっているが、実際には第3曲と第6曲がそれぞれ次の楽章の序奏の意味合いをもっていることから、実質的には全部で5つの楽章からなる曲と解釈できる。全曲は、間断をを入れずに連続して演奏される。このためこの弦楽四重奏曲第14番は、単楽章からなる曲のようにも感じられる。いずれにせよ、ベートーヴェンが晩年に到達した深い精神性に基づいて書かれた曲だけに、バリリ四重奏団が持つ深みのある表現力が一層冴えわたる演奏内容となっているのだ。(LPC)

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