★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇名ソプラノ エリザベート・シュワルツコップのR.シュトラウス:四つの最後の歌 ほか

2022-02-24 09:45:29 | 歌曲(女声)


R.シュトラウス:四つの最後の歌(春/九月/眠りにつこうとして/夕映えの中で)

モーツァルト:夕べの想い/魔法使い
シューマン:くるみの木/ことづて
ヴォルフ:夏の子守歌(「女声のための六つの歌」より)/鼠とりのおまじない
R.シュトラウス:父がいいました(「子供の不思議な角笛」より)/あらしの日

ソプラノ:エリザベート・シュワルツコップ

指揮:オットー・アッカーマン

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団(四つの最後の歌)

ピアノ:ジェラルド・ムーア

録音:1953年9月25日~26日<四つの最後の歌>
   1952年/1954年

LP:東芝EMI EAC‐40119

 「四つの最後の歌」は、R.シュトラウス(1864年―1949年)が死の前年の84歳で作曲した管弦楽伴奏とソプラノのための歌曲集。完成した作品では、R.シュトラウスの最後の曲となったものである。詩は、ヘルマン・ヘッセが3曲、アイヒェンドルフが1曲となっているが、いずれも84歳の作曲家が作曲した曲とも思えぬほど、みづみづしさに溢れているのに驚かされる。その湧き出るような響きを聴くと、まだまだ作曲ができるのではないかという感慨に捉われる。恐ろしいほどの創作意欲ではある。第1曲を除き、残りの3曲は死に拘る詩の内容となっている。ただ、決してただ暗いだけの内容ではなく、何か人生の最後に辿りついた静かな安寧な心境が淡々と綴られているようでもある。このR.シュトラウスの「四つの最後の歌」は、数あるドイツ・リートの中でも最高の作品の一つに位置づけられている。このLPレコードは、そんな曲を名ソプラノ歌手のエリザベート・シュワルツコップ(1915年―2006年)が、全身全霊で歌い上げている様子が痛いくらい分る録音だ。シュヴァルツコップは、ドイツ出身のソプラノ歌手で、オペラと歌曲の優れた歌唱で世界にその名を知られた。ベルリン音楽大学で学び、1938年ベルリン・ドイツ・オペラで「パルジファル」の花の乙女を歌い、デビュー。1943年に当時ウィーン国立歌劇場の総監督だったカール・ベームに認められ、同歌劇場と契約し、コロラトゥーラ・ソプラノとして活躍。1947年イギリスのコヴェント・ガーデン王立歌劇場に、1948年ミラノ・スカラ座に、そして1964年ニューヨークのメトロポリタン歌劇場に、次々とデビューを果たした。1992年、イギリス女王エリザベス2世からDBE(女性に与えられる勲章でナイト爵に相当する)の称号が授与された。「四つの最後の歌」では、管弦楽伴奏も充実している。ケルン歌劇場やチューリヒ歌劇場の音楽監督として活躍したオットー・アッカーマン(1909年―1960年)の指揮するフィルハーモニア管弦楽団が、実に素晴らしい演奏を繰り広げている。名唱にして名伴奏ここにありといった伴奏をこのLPレコードで堪能することが出来る。B面に収められた小品についても、シュワルツコップは一曲一曲を丁寧に噛み締めるように歌い上げる。例えばB面の最初の曲であるモーツァルト:夕べの想いは、父レオポルドの死が影響していると言われる作品であるが、シュワルツコップは、伸びやかな美しい歌声で、この曲の持つ深遠さを存分に引き出している。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする