★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇若き日のアシュケナージのモーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」/第8番/ロンド

2022-02-07 10:28:47 | 協奏曲(ピアノ)


モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」
       ピアノ協奏曲第8番
       ロンドイ長調K.386

ピアノ:ウラディーミル・アシュケナージ

指揮:イシュトヴァン・ケルテス

管弦楽:ロンドン交響楽団

発売:1980年

LP:キングレコード SOL 9051

 このLPレコードは、2007年にNHK交響楽団の桂冠指揮者に就任した、日本でもお馴染みの指揮者のアシュケナージ(1937年生まれ)が、まだピアニストとして活躍していた頃の録音である。っモーツァルトの協奏曲の2曲、それにロンドの全てにわたって、爽やかな技巧が冴えるアシュケナージのピアノ演奏を堪能することができる。アシュケナージのピアノは、精緻で透明感を持った、しかも伸び伸びとした演奏が持ち味で、このLPレコードのモーツァルトの演奏には打って付けだ。アシュケナージはピアニストとして、1955年「ショパン国際ピアノコンクール」2位、1956年「エリザベート王妃国際音楽コンクール」優勝、1962年「チャイコフスキー国際コンクール」優勝という輝かしい経歴の持ち主。1970年頃からは指揮活動も開始し、これまでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団の音楽監督、首席指揮者などを歴任してきたということから指揮者としも一流であることが分る。ピアニストとして一流、指揮者としても一流という例はアシュケナージ以外、バレンボイムを除いてほとんど見当たらない。なお、このLPレコードでロンドン交響楽団を指揮しているハンガリー出身のイシュトヴァン・ケルテス(1929年―1973年)は、イスラエルの海岸で遊泳中に不慮の死を遂げた名指揮者(43歳没)。今残された録音を聴いても、当時如何に将来を嘱望されていた指揮者であったかを窺い知ることができる。ピアノ協奏曲第9番は、マンハイム=パリ旅行の前、1777年に作曲された。この曲は「ジュノム協奏曲」と呼ばれるのは、たまたまザルツブルクにやってきた当時フランスの名ピアニストであったジュノム嬢のために書かれたため。彼女は、モーツァルトの前で当時パリで新しく流行っているピアノ曲を弾き、モーツァルトはこれらの新鮮な感覚を吸収し、「ジュノム協奏曲」を書いたと言われている。つまり、モーツァルトはパリに行く前にフランススタイルの個性的なピアノ協奏曲を書きあげていたのである。ピアノ協奏曲第8番は、第9番の1年前に書かれた作品。この曲は、モーツァルトの父レオポルドの弟子のアントニア・フォン・リュッツォウ伯爵夫人のために作曲された。この1年前の1775年にモーツァルトは、ヴァイオリン協奏曲の第3番、第4番、第5番を書いたが、ピアノ協奏曲第8番は、これらのヴァイオリン協奏曲の持つギャラントな雰囲気を継承した雰囲気を漂わせている。(LPC)

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