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国の本体工事着手が辺野古問題の核心

2015年08月02日 14時41分33秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                   

           「植草一秀の『知られざる真実』」

                             2015/07/31

 国の本体工事着手が辺野古問題の核心

           第1205号

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沖縄県の翁長雄志知事が菅義偉官房長官と首相官邸で会談し、仲井真弘多前知
事による辺野古埋め立て申請承認についての有識者委員会が

「法的な瑕疵がある」とする報告書をまとめたことについて、

「これをベースにしながら議論したい」

と伝えたと報道されている。

メディアは、翁長知事がこれを根拠に8月中にも承認を取り消す意向を示唆し
ていると伝えるが、この報道では問題の核心はまったく伝わらない。

「辺野古に基地を造らせない」

公約を実現するためには、

国による本体工事着工を阻止することが必要不可欠である。

辺野古問題の「核心」は、国が本体工事に着工することを、翁長知事が阻止で
きるかどうかにかかっていると言って過言でない。

その理由は、本体工事が進捗してしまうと、法廷闘争で辺野古基地建設阻止の
訴えが認められる確率が著しく低下するからである。

巨大な国費が投入されてしまい、建設が進捗してしまうと、建設を阻止する訴
えについて、

「訴えに利益なし」

との裁判所判断が示される確率が高まるのである。

したがって、

「辺野古に基地を造らせない」

と叫びながら、

「辺野古に基地を造る」

ことを黙認するためには、

埋め立て申請承認の撤回または取消を、国による本体工事着工のあとまでずれ
込ませることが必要になる。



国による本体工事が着手されてしまえば、その後に、

「埋め立て承認取消」

などの行動を県が示しても、

「辺野古に基地を造る」

ことは実現する可能性が著しく高くなる。

翁長知事の行動を見ると、この路線を狙っているように見える。

翁長知事が、今後、

「埋め立て承認の取消」

に進むとして、それが本当に

「辺野古に基地を造らせない」

ための行動になるかは、極めて疑わしい。

なぜなら、国が本体工事に着工する条件が整ったあとで

「埋め立て承認を取消」

しても、

「辺野古に基地を造らせない」

公約を実現することは極めて困難になるからである。



「辺野古に基地を造らせない」

の公約を実現するためには、国による本体工事着工を阻止することが絶対に必
要なのである。

本来は、ボーリング調査も阻止する必要があった。

それを実現できる唯一の方策は、

早期に「埋め立て承認の撤回および取消」を実行すること

であった。

知事がこの行動を取ってしまうと、基地建設を実行するためのプロセスが進捗
しないことになる。

本体工事で言えば、「事前協議」を行えないことになる。

翁長知事は7月29日、沖縄防衛局が沖縄県に提出した事前協議書について、

「今回提出のあった協議書の取り下げを求める」と、

受理した上で取り下げを要求すると発表した

と伝えられているが、質の悪いコメディとしか言いようがない。

「受理」したうえで「取り下げを求め」て、国が「取り下げ」に応じると考え
ているのか。

国が「取り下げない」ことを前提に、「受理した」というのが真相である。

沖縄県が「受理した」以上、沖縄県が協議に応じなくても、国は一定期間が経
過すれば、必ず本体工事に入るだろう。

翁長氏の行動は、本体工事着工を、しっかりと「アシスト」するものなのであ
る。

本体工事が着工されてしまえば、あとは、

「堂々と」基地建設反対の行動を取ることができる。

「埋め立て承認取消」

を実行する可能性も高い。

しかし、これは、

「辺野古に基地を造らせない」

ための行動にはならない。

「辺野古に基地を造らせない」という公約を守っているというアリバイを作る
ための行動

にしかならないだろう。

国に対しては実体として「辺野古米軍基地建設容認」の行動になるのである。

「正体」がばれなければ、国にとって「グッドジョブ」ということになるだろ
う。



7月5日付の日経新聞が、翁長雄志氏の後援会長をしている宮城篤実前沖縄県
嘉手納町長に対するインタビュー記事を掲載した。

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-8b4c.html

宮城篤実氏は記事のなかで、

「辺野古への移設を阻止できると思いますか」

の質問に対して、

「相手は国家権力だ。辺野古での工事が完了し、日米で使用を開始するとなっ
たときにそれを止める方法は県にはない。しかし、それで翁長知事が負けたこ
とにはなるとは思わない。知事は権限の範囲内で精いっぱいやればよい」

と答え、さらに、

「『この程度は何とかしてほしい。その負担に応えて支援をしましょう』とい
うことで、何らかの妥協点が示される」

と述べた。

まさに、現実そのままに見える発言を示したのだ。

那覇空港の第二滑走路、

西普天間地区に計画されている国際医療拠点

沖縄県本部町へのUSJ誘致。

辺野古米軍基地建設容認と引き換えに、これらの利益誘導策を求める勢力が確
実に存在する。



これらの勢力は、国と全面対決することは避け、沖縄県民を刺激しないよう
に、

「辺野古に基地を造らせない」

のポーズを取りながら、実際には、辺野古米軍基地建設を黙認し、その代わり
に、

大きな沖縄振興策を獲得する

ことが正しい政策運営姿勢であると判断しているのだろう。

しかし、このシナリオで現実が進むのであれば、

本当に

「辺野古に基地を造らせない」

ことを望み、体を張って行動してきている主権者は、完全な

「詐欺被害者」

になる。

新たな沖縄の悲劇である。



翁長雄志氏は、知事選の出馬表明の際に、

最後まで、「埋め立て承認の撤回・取消」の確約を拒んだ。

記者会見のなかで、翁長氏は逆ギレしている。

2014年10月9日付ブログ記事

「沖縄の主権者必見「翁長雄志氏出馬表明会見」」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-004e.html

「出馬会見動画映像」

https://www.youtube.com/watch?v=aZEIXJRXFiY#t=421

の4分45秒~6分45秒の部分

を再度確認いただきたい。



そして、実際、昨年12月に知事に就任した翁長雄志氏は、2015年8月の
現時点を迎えるまでの7ヵ月以上の間、

埋め立て承認の撤回・取消

を実行しないできた。

7月に有識者委員会が

「法的に瑕疵がある」

との報告書を知事に提出したのであるから、最悪でも、このタイミングで直ち


「埋め立て承認の取消」

に進むべきであった。

そうすれば、ぎりぎりのところで、

国による本体工事着工を阻止することができた

はずである。

シンガポールに主張している間に、沖縄防衛局に書類を提出させ、書類を受理
してしまったのも、国による本体工事着工への「アシスト」であると批判され
て、反論できないだろう。



一番の問題は、

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求める人々が、

翁長知事に対して「モノを言わない」ことだ。

「辺野古に基地を造らせない」

公約を実現することは容易ではない。

そうであるなら、少なくとも、

「最善を尽くす」

ことが必要不可欠だが、翁長知事のこれまでの行動は、

「最善を尽くす」

の真逆になっている。

実質的には

「完全なサボタージュ」

である。このことについて声を上げて発言する人の少なさに驚くばかりであ
る。



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