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セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「勝手にふるえてろ」

2018-10-15 21:20:28 | 映画感想
 「勝手にふるえてろ」(2017年、日本)
   監督 大九明子
   原作 綿矢りさ 「勝手にふるえてろ」
   脚本 大九明子
   撮影 中村夏葉
   音楽 高野正樹
   主題歌 黒猫チェルシー
   主演 松岡茉優
       渡辺大知
       石橋杏奈
       北村匠海
          
 会社で経理の仕事をしてるヨシカは恋愛未経験だが10年来一途に思ってる一宮(イチ)が居る、そんな彼女に或る日、営業の霧島(二)からコクられるという生れて初めての事態が・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=4ewQtV9lGCg

 今年、3人目の取扱説明書必須の女。
 1人目 「心と体と」のアレクサンドラ・ボルベーイ
 2人目 「レディバード」のシアーシャ・ローナン 
 3人目の松岡茉優
 1人目は心の病気だけど、2人目と3人目は陽と陰、或いは躁と欝の違い。(笑)

 周りに壁を作って自分の世界に閉じこもり夢ばかり見てる、未だにそういう傾向が残る僕には、中々、イタい物語。
 そんなタイプのヒロインが自ら作った厚い壁をぶち壊す瞬間を捉えた作品、まぁ、その為に2時間たっぷりと状況を作っていく訳で、そこを耐えられるかという問題は有るけど(コメディチックだから見易いと思う)、似た傾向を持つ人にはそれなりに面白いんじゃないでしょうか。
 途中、突然、ミュージカルになったりする所も面白かったですね。
 難点を言えばヒロインの松岡茉優がチャーミング過ぎて、この娘なら中・高時代からモテまくりで一人孤独に浸ってるヒマは無かんべって所、イモト辺りが演れば説得力増すのだけど興行考えれば仕方ないのかな。
 松岡さん、無理して愛想のない顔してるけど地が可愛いから如何ともし難い。(笑)

 個人的な事ですが、普通に観てたのに中盤から終盤へ入るターニング・ポイントの台詞が「ペーパーチェイス」のオチの台詞と完全に被ったもんだから、そこから急に頭の中へ「ペーパーチェイス」が入り込んできて、若干、集中力が乱れました。
 シチュエーション、全然被らないのに(承認欲求だけが同じ)男と女の行動原理の違いとか、関係ない事が頭の中で行ったり来たり。(笑)

 絶賛と言う程でもないけど、それなりに面白い作品だと思います。
 でも、この話を本気で作品にするなら松岡茉優じゃないな、もっと個性的な顔の女優さんが適してる。(松岡茉優さん、頑張ってたし良いのは間違いないけど)

※確かに皆が言うように、今年公開されたハンガリー映画「心と体と」に似た所がありました。
 幻想的な要素と現実の血を同居させ、静かに心の動きを追った「心と体と」、イマドキの女優さんを使い若い人向けに作った「勝手にふるえてろ」、もう歳だから苦味のある「心と体と」の方を僕は好むけど、この辺は人それぞれでしょう。
 「心と体と」もヒロインのA・ボルベーイの魅力に負う所があって、彼女の魅力と演技力が作品を支えてるのだけど、その美貌が話をお伽話にしてしまってる所は有ると思う。

 H30.10.14
 DVD

 
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「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」 (ネタバレ)

2018-10-07 01:16:44 | 映画感想
 「バッド・ジー二アス 危険な天才たち」(「ฉลาดเกมส์โกง」、2017年、タイ)
   監督 ナタウット・プーンピリヤ
   脚本 ナタウット・プーンピリヤ
      タニーダ・ハンタウィーワッターナ
      ワスドーン・ビヤロンナ
   撮影 バクラオ・ジランクーンクム
   音楽 フアランポン・リディム  ウィチャヤー・ワタナサップ
   出演 チュティモン・ジョンジャルーンスックジン
      チャーノン・サンティナトーンクン
      イッサヤー・ホースワン
      ティーラドン・スパパンピンヨー

 オールA以外の成績を取った事のないリンがバンコクの名門高校へ転入した。
 初めて出来た友人グレースは成績が悪く、リンに助けを求めてくる、簡単な気持ちでカンニングの手助けをした事から、金持ちの子女からも助力を求められる・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=VgzjsmeIpY0

 タイ バンコクを舞台にした青春群像+「黄金の七人」or「オーシャンズ・シリーズ」といった感じ。
 かなりのビター風味、「七人の侍」に例えれば、侍の気質を持った百姓が力の有る狡賢い侍に同化していくのだけど、最後の最後に自分勝手な救世主感を持ち出して、何それ?と困惑してしまう話。(笑) 

 映画の宣伝文句としても、あの二人は決して天才じゃない、単に高校生レベルの問題がお茶の子才々な只の大秀才。天才というのは既存の見方、方式、公式に疑問を持ち、その並外れた頭脳で新しい真理、方法を見付けようと飽きずに努力する人達で、二人がしたのは時差、バーコードという既存のシステムを利用、応用しただけ。
 しかも、ヒロイン自身が言うように、この手法は単にバカロレア(大学受験資格~本作では、より高位のものだけど受験資格という意味は変わらない)の取得でしかなく本試験には通用しない。(笑)
 有り体に言えば、せいぜい二人はファンド・マネージャーで、その上客が金持ちの子女だったという構図。

 脚本、監督が意図して作ったのなら、相当な女性観の持ち主で(親近感を否定しません)、この物語の諸悪の根源はバンクが言うように全てリンにあり、バンクは顛末を含め、徹底的に哀れな巻き添え者に過ぎない。
 リンは誠実で実直な父に心から感化されていた訳だけど、その父が自分(リン)の有利な進学の為、敢えて不浄な行為(賄賂)をした事にショックを受ける。
 そこで自分の心に得た結論がラスコリニコフと似たものになってしまった。
 自分の才能を金持ちのバカ息子・娘とギブ&テイクをして何が悪いと。
 それが自分達の小さな世界だけで収まるウチは失敗しても傷は自業自得だったけど、外国の一流大学受験資格試験という一回り二回り大きくなると、リン一人の手に負えなくなり目を付けたのが境遇も才能も似た者同士なバンク。
 結果、全てを失ったバンク。ならば、その手のブローカーとなり苦労を重ねた親を助けようとした途端、今度は白い天使となり「全て新しく最初からやり直す、失敗した自分だからこそ危ない橋が見える」と勝手にバンクの救世主になろうと改心するリン。(黒澤映画だと、この後の彼女が昔の自分と対決する)
 僕も長年、多くの作品を観て来たけど、これ程、自分の思考を中心に世界を回してる女に出会ったのはマレ。(笑)
 そういう意味でも、金持ちの子供たちの狡賢い腐った根性にも辟易したけど、映画としてどうかと問われると「結構、面白い作品」と思ってしまう。
 音、スローモーション、もう飽きた並立行進等、演出的に古臭い感じが否めないけど、物語の芯は意外とシッカリしてる、それが、この作品の魅力。僕はそう感じました。

※僕の大好きな「ひとりぼっちの青春」で使われたフラッシュ・フォワード(フラッシュ・バックの反対)という技法が出て来ました、「ひとりぼっちの~」と同じで被告人の供述というスタイル、只、多人数だった為、肝心の供述が他の供述に埋もれてしまった。(涙)
※リンの友達グレース以外、皆、中国系の顔立ち。タイを舞台にした映画は「バンコク・ナイツ」しか観てなくて解らないけど、華僑系の名門高校が舞台なのかな。
※エンディングのラストソングは「博士の異常な愛情~」程ではないけど、中々のブラックジョーク。

 H30.10.6
 新宿武蔵野館
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「白い肌の異常な夜」

2018-08-15 00:41:05 | 映画感想
 「白い肌の異常な夜」(「The Bequiled」、1971年、米)
   監督 ドン・シーゲル
   原作 トーマス・カリナン
   脚本 ジョン・B・シェリー   グライムス・グリス
   撮影 ブルース・サーティース
   音楽 ラロ・シフリン
   出演 クリント・イーストウッド
       ジェラルディン・ペイジ
       エリザベス・ハートマン
       ジョー・アン・ハリス  パメリン・ファーディン   

 南北戦争、南部の戦場で負傷したマクバーニー伍長(北軍)は危うい所で少女エミーに助けられる。
 彼女の暮らす寄宿制女学院で秘密裏に治療を受ける伍長だが、そこは抑圧された女だけの館・・・。

 男臭い映画を撮るというイメージのドン・シーゲルが女性に重点を置いた異色作。
 物語としても面白いし、女達の心理を上手に描いてると思います。
 でも、僕が男だからか、男視点の女性心理の範囲を越えていないと言うか、女心の奥の院には届いていない気がしました、隔靴掻痒という感じ。
 男から見て彼女たちの行動が全て想像を越えていかないんです。
 その辺をしてソフィア・コッポラにリメイク(「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」)させる気を起こしたのかも。(未見だけど女性心理の機微をより鮮明に描いた作品らしい)

 女だけの屋敷に滞在するなら行儀良くしてないとね。(笑)
 でも、伍長、最初のシーンで声を出させない為とはいえ10歳のエミーの唇をキスで塞ぐって、かなり、女に手慣れてる。(手を負傷してるとは言え)
 敵陣の中、介護されてる弱味で良く見せようなのか、言う事も相手が望むような事ばかり喋るけど女たらしの本性がチラチラしてます。
 自分のイケメン振りを利用した積りが女の館で三つ又掛ければどうなるか・・・、ちょっと、女性を甘く見ちゃいましたね。
 エドウィーナだって、あのまま二人で出て行ったら北軍のキャンプでポイされるか、足の事でネチネチ言われ彼女のヒモで甘い汁を吸われるか、どちらかでしょう。
 結局、一番油断していたエミーに復讐された訳で、エミーに始まりエミーで終わる物語。
 それにしても、最後の晩餐のエミーの台詞は子供らしい怨念が籠っていて素晴しかったです。

※院長とエドウィーナ、どちらにしようかをキャロルに見付かった時、大人しく自室へ戻ってればなんですが、あの娘だと何もなくても翌朝「夜中に無理矢理、暴行された」と言うんだろうな。(怖)
※もしかしたら、「肝試し」に使えるかもと思ったけど、そっち方向じゃなかった。(笑)

 H30.8.12
 DVD
 
 
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「レディ・バード」

2018-06-24 22:00:29 | 映画感想
 「レディ・バード」(「Lady Bird」、2017年、米)

 女優であり本作の監督・脚本を務めたグレタ・ガーウィグの自伝的作品。

 監督 グレタ・ガーウィグ
 脚本 グレタ・ガーウィグ
 撮影 サム・レヴィ
 音楽 ジョン・ブライオン
 出演 シアーシャ・ローナン
     ローリー・メトカーフ
     トレイシー・レッツ
     ビーニー・フェルドスタイン
     ルーカス・ヘッジズ  ティモシー・シャラメ   

 カリフォルニア州サクラメント。夢見がちで、やらかしてばかりの女子高生、自称レディ・バードが親の庇護から巣立ち本名であるクリスティーンに戻るまで。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=yBJdLBn8d5k

 ドラマティックな要素を排除し、普通(生活はやや苦し目)の女子高生の巣立ちを極めてリアリスティックに切り取った作品。
 痛い青春あるある感が満載で、誰しもこの内の多くを体験してきたんじゃないでしょうか。
 只、男子も似たような経験をしてくる訳だけど、やはり、作者が女性という事もあり、男子からは想像の世界でしかない女子高生の心理、行動を繊細に且つ機微に触れて描いています、なので、これは思いっきり女性向けの作品だと思います。
 filmarksを見ても女性の共感度が圧倒的。(笑)

 主演のシアーシャ・ローナン(「ブルックリン」を観て以来、僕の一番の注目株)目当てで観たのだけど、幾らかトウの立った女子高生(撮影時24歳?)とは言え、流石、立ち居振る舞いは女子高生そのものでした。(特に書類を床に投げ捨てる動作~あれが子供だよね)
 しかし、変わるねぇ、全然、「ブルックリン」の時の面影がない。(同じ田舎娘でも、NYでの感じがまるで違う~時代を加味しても)
 彼女の母親役を演じたローリー・メトカーフ、この作品の半分近くは娘と母親のよくある確執が占めていて、演技的にはヒロインのカウンター・パートナーに位置する人、このメカトーフの演技がローナンを喰うくらい上手い、台詞と表情、動きだけじゃないんですよね演技は、その人そのものの雰囲気が染み付いてる。
 出演者、皆上手く、非常にアンサンブルがとれている作品だけど、ローナンとメカトーフはちょっと抜けた感じがしました。

 上映前の予告編で、またシアーシャ・ローナンの映画が・・・、今度は6時間で終わった結婚話らしい。(どうすんべ(笑))。

 H30.6.24
 日比谷シャンテ

 
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「ウォーム・ボディーズ」

2018-04-17 23:00:03 | 映画感想
 「ウォーム・ボディーズ」(「Warm Bodies」、2013年、米)
   監督 ジョナサン・レヴィン
   原作 アイザック・マリオン 「ウォーム・ボディーズ ゾンビRの物語」
   脚本 ジョナサン・レヴィン
   撮影 ハビエル・アギーレサロベ
   音楽 マーティン・ホイスト
   出演 ニコラス・ホルト
       テリーサ・パーマー
       ロブ・コードリー  

 人間、ゾンビ(生きる屍体〜僅かに記憶あり)、ガイコツ(自分の屍肉まで食べたゾンビの末期形〜記憶なし)。

 或る日、空腹に耐えかねたゾンビの一団が餌を求めて廃墟に出掛けた、防壁の中の人間達も不足する物資調達の為、志願した若者達を廃墟に向かわせる。
 ゾンビの中にRが、調達隊にはジュリーが居た・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=NPe3r80z5js

 
 純愛系ゾンビものと云う事だけは知ってたのに、R(自分の名前がRで始まるのだけは記憶に残ってる)とジュリーが主役なのに、気付くのに40分掛った、鈍いなぁ。(汗)
 まぁ、バルコニーより前に気付いたのがせめてもの慰め。
 純愛、R&Jなら、即、ロミオとジュリエットだよね。(笑)

 という訳で、ゾンビ映画で「ロミオとジュリエット」のバリエーションをやってみました、という作品。
 ゾンビの側がモンタギューで人間側がキャピュレット、当然ながら敵対関係、立場的に全然被らないけどガイコツが大公家一族の見立てなのでしょう。
 本作ではゾンビのうちは記憶が薄っすら残ってて単語のやり取りが出来るのがミソ、もう一つ、相手の脳を食すとその記憶も一緒に取り込まれると云うのも特徴。(時折、フラッシュ・バックする)
 ゾンビ達が人間狩りをした時、Rがジュリーの恋人(ほぼ終了してた)の脳ミソ食べちゃって、急にジュリーの事が気に掛かりだし他のゾンビから守っちゃう、笑っていいのか何なのか非常にシュールな出会いから物語は展開していきます。

 「ゾンビは孤独だ、他のゾンビと何の繋がりもなく、只、一日中ノロノロうろつくだけだ」
 中盤まではRのモノローグで進行していくのですが、ある事をすることで(Hじゃないよ)人としての温もりが蘇りだし、他人との繋がりも恋しくなってゾンビ達に連帯感が生まれてくる。
 知能が無い筈のガイコツ達がR&Jの存在にゾンビ界の崩壊を感じ取り襲って来るやら、危難の時、ゾンビが走り出すとか、ご都合主義の塊みたいな所もあるけど、「ロミオとジュリエット」のパロディーと考えれば整合性を問うのは野暮でしよう。

 若い二人の死によって両家が和解するというのが本家ですが、「ウェスト・サイド物語」だって片方しか死なないんだから、別に死ななきゃいけないって訳じゃない。(笑)
 この作品のゾンビは「ゾンビ病」に掛ったっていう設定なのかな、病気なら治療法が見つかればOKでしょう。
 ま、そういう事にしといてくれって感じの映画。
 個人的には面白く観終える事が出来ました。

※最後はジュリーがゾンビ化してRと幸せに暮らしましたとさ、って話なのかと思ったのですが見事にハズレました。(笑)

 H30.4.15
 DVD 
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「シェイプ・オブ・ウォーター」

2018-03-21 16:41:56 | 映画感想
 「シェイプ・オブ・ウォーター」(「The Shape of Water」、2017年、米)
   監督 ギレルモ・デル・トロ
   原案 ギレルモ・デル・トロ
   脚本 ギレルモ・デル・トロ  ヴァネッサ・テイラー
   撮影 ダン・ローストセン
   音楽 アレクサンドル・デスプラ
   出演 サリー・ホーキンス
       マイケル・シャノン
       リチャード・ジェンキンス
       オクタヴィア・スペンサー
       マイケル・スツールバーグ   ダグ・ジョーンズ (謎の生物)

 ‘60年代初期、南米で捕獲された謎の生物が航空宇宙センターへ運び込まれた。
 研究員達はその生物を宇宙ロケットにモルモット代わりとして乗せようとするが、軍から送り込まれたストリックランドは殺処分を主張する。
 清掃員で発声障がいのあるイライザは、事故処理の途中その生物と出会い、やがて互いの孤独が共鳴するようになる・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=M-C9y3Vhd0M

 愛は水のように定形はない。

 これがアカデミー作品賞でいいのかな。(笑)
 大人の為のちょいと生々しい‘60年代風味のファンタジー・メルヘン。
 監督の怪獣好きというのは前評判で聞いていたけど、まぁ、その辺は何となく解ります。
 「キングコング」や「フランケンシュタイン」、半魚人のイメージはそのまま借用したのだろうけど、音楽を二人?で聞くというのは円谷プロ製作「ウルトラQ」の海底原人ラゴンを思い出すし、ほんの少し「人魚姫」も入ってるような気がしました。
 ラゴンを除けば他の話は全て悲劇的結末を迎えるけど、それを引っくり返せばこうなるのでしょう。
 根元は「フランケンシュタイン」だと僕は思います。
 「フランケンシュタイン」とは神に代わって人間が人間を作り出す、或いは改造するという話で、その意味でヒギンズ教授が花売り娘イライザを貴婦人に改造する「マイ・フェア・レディ」も同類と言われています。
 では、怪物が人間を自分と同化させたらどうなるか(ゾンビ的意味でなく)、それが、この作品だと思います、そこがユニーク。(マイノリティの反抗という時事性があるのだろうけど)
 この物語が「フランケンシュタイン」や「マイ・フェア・レディ」の同類であるという示唆は、隣人(同居してるのかと思った)の絵描きジャイルズの部屋にある絵が「麗しのサブリナ」の頃のA・ヘプバーンであり、ヒロインの名前がイライザという事で説明できるんじゃないでしょうか。
 そこに、キングコングとヒロインが愛し合ってたら?人魚姫の恋が成就されてたら?という要素を注入してみたような気がします。
 難癖のような事を書き連ねましたが、寂寥感の果てに見つけた優しさって感じがして、僕はこの作品好きです。

 ヒロインのサリー・ホーキンスは「幸せの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」で見たばかりだけど、本作でも好演、美人系でない代わりにこういう癖のある役には、もってこいの女優さんだと思います。
 友人役のオクタヴィア・スペンサー、同じような所で働いてるけど今度は掃除婦、しかし、演技は「ドリーム」とほぼ同じでした、上手いけど。

※敵役の男と奥さんのパコパコシーン要らんだろ、その前の奥さんの挑発と合わせて単なる男へのサービスシーンでしかない。監督が‘60年代流行のブロンドヘアがアレしてるの撮りたかっただけ?
※途中まで、どういうジャンルの作品なのか掴めなくて焦った。(汗)

 H30.3,21
 日比谷シャンテ

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 この世をば わが世とぞ思う 人間は
  欠けたるものの 多さ思わず

                 (長道)
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「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」

2018-03-18 23:50:14 | 映画感想
 何とか結石の破砕も上手くいったようで(まだ別のがあるけど、それは様子見)、早速、溜まってるリストを消化しに新宿へ、今日は2本消化、その内の1本。
 (外部からの衝撃破砕って強烈なストレート一発で破砕かと思ったら、神経に触るようなジャブを2秒毎に50分喰らい続けるというキツイものでした、座薬入れたけど辛そうにしてたら15分くらいして痛み止め入れてくれて、ようやく少し楽になった)

 「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(「MAUDIE」、2016年、カナダ・アイルランド)
   監督 アシュリング・ウォルシュ
   脚本 シェリー・ホワイト
   撮影 ガイ・ゴッドフリー
   美術 ジョン・ハンド
   音楽 マイケル・ティミンズ
   出演 サリー・ホーキンス
       イーサン・ホーク
       カリ・マチェット

 カナダで愛された画家(専門教育を受けず完全な我流)モード・ルイスと、その夫エヴェレットの半生を描く物語。

 若年性リュウマチを患い障がい者となり保護者である伯母とも上手くいかず家を出たルイス。
 粗野なエヴェレットが貼っていった「家政婦求む」の求人票を頼りに彼の小さな小屋へ向かう・・・。

 予告編
 https://www.youtube.com/watch?v=DUMbFosbkyI

 今年2回目のデジャヴ、最初はフェリーニの「道」に似た展開、粗野で無教養、支配者であることに固執する男と健常者でない女の生活、どうしても「道」を思い出してしまいました。
 でも、ルイスの才能が認められていくにつれ二人の立場は微妙に逆転していきます、が、どこか似た者同士の二人は究極の「割れ鍋に綴じ蓋」、お互い無くてはならない存在となり生涯を共にします。
 行き場所のないルイスだけど「無償の愛」に似た行為が、やはり強がってみても一人ぼっちなエヴェットの底にあった優しさを共振させていく、何だかんだあってもこの二人は「二人で一人」って感じがしました。
 格別、泣かせに来てはいないのだけど、後半、自然に涙がでてくるような作品。
 エンドロールに挟まれるルイスの絵がいいんですよ、素朴で邪気がなく見てるだけで優しくなれるような感覚、絵画専門家の評価は高くなくても人々に愛される絵だというのがよく解ります。

 ルイスを演じたサリー・ホーキンスが実に素晴しい演技で彼女の人となりを表現しています、写真で見るモード・ルイスそのものって感じ。
 エヴェレットのイーサン・ホークも存在価値の揺らぎに戸惑う孤独な男を好演、主役二人の演技がこの作品を支えてたと思います。
 中々の佳作。

※ルイスの作品は日本の山下清画伯に通じるものがありますね、綺麗な心のままに描いた絵でした。
※僕は若年性ではないけど、同じ病を持つ身として、あのロクな鎮痛剤のない時代(経済的に買えないだろうし)、あれだけ歩いて働いて絵を描いて、その痛みを考えただけで恐ろしいです。
※WIKを見ると、ルイスが亡くなった後、感化されたようにエヴェレットも絵を描いたとか、それも泣けます。

 H30.3.18
 新宿ピカデリー
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「グレイテスト・ショーマン」

2018-02-27 22:39:53 | 映画感想
 「グレイテスト・ショーマン」(「THE GREATEST SHOWMAN」、2017年、米)
   監督 マイケル・グレイシー
   脚本 ジェニー・ビックス  ビル・コンドン
   撮影 シェイマス・マクガーヴェイ
   楽曲 ベンジ・パセック  ジャスティン・ポール
   音楽 ジョン・デブニー  ジョセフ・トラパニーズ
   衣装デザイン エレン・マイロニック
   プロダクションデザイナー  ネイサン・クロウリー
   出演 ヒュー・ジャックマン
       ザック・エフロン
       ミシェル・ウィリアムズ
       キアラ・セトル
       レベッカ・ファーガソン
       ゼンデイヤ

 アメリカショービズの概念を作り上げたP・T・バーナムの成功譚をミュージカル化した作品。

 仕立て屋の息子が上流階級の家で下賤の身としてぞんざいに扱われながらも、その娘と結婚。
 やがて、持ち前のアイディアとバイタリティでのし上がる。
 しかし、、真の名誉は得られないままだった・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=wqGOKoXB3UA

 昔のMGMミュージカルを現代仕様にブラッシュアップしたような作品。
 話の内容は薄いけど圧倒的ミュージカル・シーンで魅せていきます。
 肉体的には異形でも心は人皆同じ、差別される側の哀しみをエネルギーに変える幾つもの群舞シーンは圧巻でした。
 トランプ時代のアメリカ、ヘイト、ジェンダー、区別と言い包める様々な差別、白人至上主義、それらに対するアンチ・テーゼのような作品だけど、決して堅苦しくなくエンタティーメント全開の映画です。
 只、台詞部分のドラマ進行が、ムソルグスキーの「展覧会の絵」のプロムナードのように次のナンバーへの繋ぎに近く、OPからEDまでの6割以上が歌と踊りという感じでミュージカルが苦手な人にはちょっとキツイかもしれません。

 出演陣
 H・ジャックマン 「用心棒」の三船敏郎のような彼の為のワンマンショー、周りが異形だらけというのも似てる、「レ・ミゼラブル」より適役かも、好演。
 Z・エフロン ちょっと影が薄いかな。一流演出家である彼が加わった事で「ここが、明確に変わった」というものが無い、物語の構成上必要だっただけな気が。
 M・ウィリアムズ しどころのない役で、別に演技派の彼女じゃなくても。ザックと同じで物語上必要なだけ。
 K・セトル 髭女。役的にヒューと共に最も輝いていた、圧巻の歌声。体格が実にオアフ島出身でした。
 R・ファーガソン/歌 ローレン・オルレッド
         中盤、キーとなる歌手ジェニー・リンド、レベッカの気品とローレンの圧倒する歌声が見事に融合、この物語の良いアクセントになってました。声アテと言っても、昔は「ウエスト・サイド物語」は2名以外全員、「マイ・フェア・レディ」のオードリーも歌は別人だったから特に気になりません。

 キアラ・セトルが歌う「This is me」
  https://www.youtube.com/watch?v=zgyoKX5oW3E

 ミュージカルが好きな方はハズせない作品だと思います。
 但し、差別に敏感な方はどうだろう、綺麗事になってますが異形をエンタティーメントで隠し、結局は見せ物として実利を稼いでる、と見てしまうと醒めるしかないかもしれません。
 (でも居場所の無かった彼、彼女らが仲間を得て居場所を見付けたのは事実かと)

※色調、街並みが同じだから、何時ロンドンに行って何時帰って来たのか・・・、ここは何処って感じがずっと付き纏いました。
※石炭時代の夜空、あの燻んだようなダークグレーの色調は'64年「メリー・ポピンズ」へのオマージュ?
 その背景でヒューとミシェルが屋上で踊るシーンは記憶が定かでないのですが、「チム・チム・チェリー」だったか何か、「メリー・ポピンズ」にあったような憶えが。(「ウエスト・サイド物語」('61)の「アメリカ」も少し)

 H30.2.25
 TOHOシネマズ六本木ヒルズ TCX/ドルビーアトモス
 
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「高慢と偏見とゾンビ」

2018-02-12 18:10:00 | 映画感想
 「高慢と偏見とゾンビ」(「Pride and Prejudice and Zombies」、2016年、米・英)
   監督 バー・スティアーズ
   原作 セス・グレアム=スミス
   原案 ジェーン・オースティン
   脚本 バー・スティアーズ
   撮影 レミ・アデファラシン
   音楽 フェルナンド・ベラスケス
   出演 リリー・ジェームス
       サム・ライリー
       ジャック・ヒューストン
       べラ・ヒースコート
       ダグラス・ブース

 パッケージの惹句は「不朽の名作 感染」。(笑)
 という訳で、J・オースティンの最高傑作と云われる「高慢と偏見」を感染させたらこうなりました。
 物語は、ほぼそのままなので映画版「プライドと偏見」で検索してみて下さい。
 違うのは5人姉妹がアマゾネス化というか、「キル・ビル」風になってます。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=p7COEYiV5LM

 只、この作品、知らずに観ても、それなりに面白いかもしれませんが、やはり「プライドと偏見」をご覧になってから観るべき作品でしょう。

 この作品の良い所は、パロディに寄りかかってオースティンの品を落としていない所。
 どうしてもパロディ作品は遊び心が入るから、エロ、下品に陥り易いし、そこが面白くもあるのだけど、この作品はゾンビのグロさは入れていても決してオースティンの気品は落していません、そこに「物足りなさ」を感じる人は居るかもしれませんが、僕はパロディとして最上級の仕事だったと思います。(本家に比べれば予算3~4割カットくらいかな、でも、ちゃんと格は保ってる)
 「シンデレラ」(2015年・米)で出世したリリー・ジェームスがエリザベス役で、キーラ・ナイトレイの先例に倣ってるとは云え充分にタメ張ってると思います。只、他の4姉妹は時間の制限も有ってか本家に比べ見劣りが若干しまいた。(長女は「ダーク・シャドウ」(2012年、米)で見染めたB・ヒースコートなんだど)
 
 「プライドと偏見」のゾンビ版という事でブラックな展開を予想してたけど、そこは○○設計でした。
 ゾンビと「プライドと偏見」が好きな方にはお薦め!(責任は持てません(汗))

※グロいの苦手だけど、これくらいと言うか余りリアルじゃないから充分観られました。
※しかし、リリー・ジェイムスとケイト・ウィンスレットって区別がつかん。(汗)

 H30.2.12
 DVD
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「わたしは、ダニエル・ブレイク」

2018-02-04 22:58:04 | 映画感想
 「わたしは、ダニエル・ブレイク」(「I, DANIEL BLAKE」、2016年、英・仏・ベルギー)
   監督 ケン・ローチ
   脚本 ポール・ラヴァティ
   撮影 ロビー・ライアン
   音楽 ジョージ・フェントン
   出演 デイヴ・ジョーンズ
       ヘイリー・スクワイアーズ
       ディラン・フィリップ・マキアナン
       ブリアナ・シャン

 心臓発作で倒れ職を失ったダニエル、彼の前に立ち塞がる役所の厚
い壁・・・。

 去年観た「幸せなひとりぼっち」と似た感じ。
 「幸せなひとりぼっち」は老境をどう生きるかが主題だったと思うけど、
こちらは、もっと社会派作品。(ダニエルは初老の入り口辺りで、老人と
いう訳でないけど病後静養中)
 作品は、弱者の為のシステムがマニュアルでしか動かず、人間性を失
い、それによって弱者がより一層疎外され転落していくイギリスの現状を
告発しています。
 似た結末でも、ハッピーエンド感のある「幸せな~」と違い、僅かな救い
はあっても何一つ変わらぬ状況が続く本作は暗澹たる気持ちにさせられ
ます。
 家持ち年金生活者のオーべとホームレス手前のダニエルという経済
格差が根本にあると言ってしまえば、身も蓋もないのですが。
 頑なで排他的なオーべより、正直で他人に親身になれるダニエルの
方が救われないのは、映画の中とはいえチト辛いかな。

 景気が悪く失業者も多いから、生活保護局もフルイの目を粗くして落
せる者は容赦なく落すのだろうけど、やがて、日本も同じになるんだろ
うな。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=NE9QXcEWQaE

※イギリスでは医師の診断書に信用がないの?

 H30.1.28
 DVD
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「回転」(1961年)と「妖精たちの森」(1971年)

2017-12-27 00:33:48 | 映画感想
 ヘンリー・ジェイムスの怪談「ねじの回転」を映画化したものと、その前日譚。

 「回転」(「The Innocents」、1961年、米)
   監督 ジャック・クレイトン
   原作 ヘンリー・ジェームス 「ねじの回転」
   脚本 ウィリアム・アーチボルド   トルーマン・カポーティ
   撮影 フレディ・フランシス
   美術 ウィルフレッド・シングルトン
   音楽 ジョルジュ・オーリック
   出演 デボラ・カー
       マーティン・スティーブンス
       パメラ・フランクリン
       メグス・ジェンキンズ

 20世紀初頭、ロンドン郊外にある大邸宅に新任の家庭教師ミス・ギデン
スが赴任してくる。
 広い屋敷には僅かな家政婦と両親を亡くしたフローラが居るだけだった、
やがて、学校を放校させられた兄マイルスが戻りギデンスは熱心に二人に
愛情をかたむける。
 が、屋敷内外で知らない男女を見るようになる、家政婦のグロース夫人に
問いただすと、庭師のクィントと前任の家庭教師が居たが、少し前に二人と
も亡くなって、そんな筈はないと。
 やがて、子供たちの中に彼女の知らなかった性格が見えてくる・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=aOsF0S65RR0
    (円谷プロ、20世紀FOXに訴えられなくてよかったね)

 果たして彼女を追い詰めているものは幽霊なのか、幽霊に憑依された子
供たちなのか、それとも彼女の妄想が子供たちを追い詰めているのか。
 この物語は中年手前のミス・ギデンスの視点で語られていきます。
 厳格な家庭で育ち、婚期を逃した子供好きな女性ギデンス、男女の愛も想
像でしかなく実体験がない。
 この仕事を引き受けたのも、子供好きがあるにせよ、後見人・依頼人であ
るマイルス、フローラの叔父にボ~とときめいてしまったから、普通の女性な
ら彼の冷酷さに席を立つだろうに免疫のない彼女は承諾してしまいます。
 その抑圧された性欲が死んだ前任者と庭師の爛れた関係を知り、妄想に
陥る。
 死んだ二人が子供たちに乗り移り愛を語らい嬌声を上げているいると。
 悲劇的な結末があるにせよ、この物語に正解は描かれていません、いず
れの理由もあいまいなまま。
 ちょっと白黒を付けたがる人には不向きかもしれない作品、でも、僕は面
白いと思うし、ゴシックホラーの古典名作との評判に間違いはないと思いま
した。
 只、僕は前日譚である「妖精たちの森」を憶えていたから、初見の人のよう
な想像力を持てなかった、そこが残念。
 ※彼女、子供のマイルスとのキスシーンが二つあって、どちらも頬ではなく
  唇なんですよね、特に最初のキス、おやすみのキスだった気がするけど、
  普通なら咎めるだろうに、されるがまま。

 H29.12.24
 DVD

 「妖精たちの森」(「The Nightcomers」、1971年、英)
   監督 マイケル・ウィナー
   脚本 マイケル・ヘイスティングス
   原作 ヘンリー・ジェームス 「ねじの回転」
   撮影 ロバート・ペインター
   音楽 ジェリー・フィールディング
   出演 マーロン・ブランド
       ステファニー・ビーチャム
       ベロナ・ハーベイ
       クリストファー・エリス
       ソーラ・ハード

 如何にしてマイルスとフローラは、あのように育ってしまったのか。
 庭師クィントと前任の家庭教師の爛れた関係とは。
 「回転」では意図的に曖昧にされていたものを、創作によってネタばらしして
いくという身も蓋もない作品。(笑~兄妹が姉弟に、年齢も「回転」とは違い思
春期直前という感じに変更されてます)
 怪談の前日譚ですから後味がいいとは思えません、この作品自体はホラー
ではありませんが不気味ではあります。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=GKS4Zn8BWgU

 面白い話や遊びを教えて子供たちに絶対の信頼を寄せられてるクィント、疑
うことを知らない子供たちはクィントの残虐性にも感化されていきます。
 そして覗き見で知る、クィントと家庭教師ジェスルの異様な絡み合い。
 無教養で野卑なクィントが夜中に忍び込み無理矢理手篭めにしたのが始ま
りですが、そのサディスティックな行為に抑圧されていたジェスルの身体が反
応するようになり、マゾとして開放されてしまう。
 それは、やがて真似する(ごっこ遊び)子供たちを見た家政婦長グロース夫
人の知るところとなり二人は屋敷から追放される事に・・・。

 確かによく出来た前日譚で、スペイン映画「ザ・チャイルド」(1976年)と同
じ純粋な子供の怖さ、不気味さを上手に描いてると思います。
 でも、この作品の印象を一言でいえばキッパリ「エロ」でしょう。(汗)
 野卑で無教養だけど野生のオスの臭いが滲み出てるクィントが清楚で教養
ある家庭教師を調教してしまう。
 しかも、ジェスルを演じたS・ビーチャムがね、顔は清楚なのに脱ぐと(脱が
されると)、肉付きが良くて仄かにだらしない感じで実にケシカラン身体なん
です。
 記事を書くにあたってyoutubeで確認したら、短いヌードシーン2回、ベット
シーン1回だけで記憶だともっと有った感じなのに、たったこれだけで40年
以上強く記憶に残ってた(笑)、これのお陰で物語もハッキリ憶えてたという
本末転倒ぶり。(これと似た感じの記憶の残り方をしたのが、もう一つ、サム・
ペキンパーの「わらの犬」(1971年))
 これはクィントを演じたM・ブラントとS・ビーチャムの組み合わせがピッタリ
だったのでしょう、物語的にも子役たちの好演(「回転」に及ばないとしても)
でアンサンブルが上手く効いていたと思います。

 僕は変わりモノだからか、深層心理劇のような「回転」より、直截的な「妖精
たちの森」の方が好きですね、変わりモノというより変態なのでしょう。(汗)

※原題の「The Nightcomers」って「夜這い」なんでしょうか。(確かにクィントの
 アレは夜這いなんだけど)
 怪奇小説の名作と言われる「ねじの回転」の前日譚が「夜這い」というのは、
 幾らなんでも酷過ぎじゃない。(汗)
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「トゥルー・グリット」

2017-12-18 00:02:37 | 映画感想
 「トゥール・グリット」(「TRUE GRIT」、2010年、米)
   監督 ジョエル・コーエン   イーサン・コーエン
   脚本 ジョエル・コーエン   イーサン・コーエン
   原作 チャールズ・ポーティス
   撮影 ロジャー・ディーキンス
   音楽 カーター・バーウェル
   出演 ジェフ・ブリッジス
       ヘイリー・スタインフェルド
       マット・デイモン

 14歳の少女マティ・ロスは使用人トム・チェイニーに殺された父の復讐の
為、酒好きの老保安官ルースター・コグバーンを雇いインディアン居留区へ
向かう。

 1969年1月19日夕方、13歳目前の僕はTVで安田講堂攻防戦の実況を
つけながら炬燵に入って買ってきた「サイボーグ009」第8巻を読みふけって
いた。(ジョーとフランソワーズが初めて公式にキスした巻(笑))

 その1969年、J・ウェインの「勇気ある追跡」のリメイク。
 J・ウェインは西部劇を「イリュージョン」だと認識していた、それは多分、手
品と言うよりお伽噺に近い意味だと僕は思っています。
 彼が「真昼の決闘」(1952年)、「ワイルドバンチ」(1969年)を非難するの
は、お伽噺を壊すリアリティとバイオレンスを西部劇に持ち込んだからでしょう。
 その意味で言えば本作は2010年のお伽噺であり、「勇気ある追跡」は19
69年のお伽噺、どちらも良く出来てると思います。
 本当に、どちらも甲乙付けがたい、となると好みの問題。
 今は完全に忘れ去られてるけど僕達の前の世代、全共闘世代にとってキム・
ダービーという女優は「いちご白書」のヒロインで時代のアイテムだったんです
よ、それは僕の世代にも多少引き継がれていた。
 だから、昔、これを観た時、彼女が凄く印象に残った。

 このヒロイン、マティ・ロスは14歳の設定。
 そして、作品の面白さは14歳の賢い小娘が悪ズレした賞金稼ぎのような老
保安官の鼻ずらを引っ張り廻す所にあるんです。
 人様のレビューを見るとK・ダービーのマティはウザ過ぎるという人が多いみ
たいだけど、14歳&年寄りの構図は童顔のキムとウェインの方がしっくりして
ると僕は思います。
 本作のヘイリー・スタインフェルドは見た目16、17に感じるから子供が大人
を振り回す可笑しさという点では「勇気ある追跡」に劣る気がします。
 後、J・ウェインとJ・ブリッジスの違い。
 僕はJ・ブリッジスという役者の昔からのファンで、本作の彼もこれ以上無い
程の好演だと思ってます、だけど、やはりJ・ウェインのカリスマ性の前では上
手な役者になってしまう。
 日本だって三船敏郎より上手い役者は沢山居るけど、その印象やカリスマ
性において三船さんに対抗出来る人は勝新太郎くらいしか思い浮かびません、
世界で見ればJ・ウェインのカリスマ性に対抗出来るのは三船さんだけとも思
っています。
 
 再度になりますが、これは2010年の正統派西部劇。
 本作をJ・ウェインのいうイリュージョンと観るならば、「勇気ある追跡」は196
9年製作のイリュージョンな分、多分に「紙芝居」的なもので、「トゥルー・グリッ
ト」は2010年から見た保安官ルースター・コグバーンへのレクイエムだと思い
ます。
 僕は初見の印象が強い分、6:4で「勇気ある追跡」の方が好きですが、ドリー
ムとフィクションの違いだけだから、多分、その日の気分次第でしょう。(笑)

※J・ブリッジス、ハリソン・フォードをもう一つ個性的にした感じ。
 顔は個性的だけど照れたような笑みに愛敬があり、そこは三船敏郎に似てる。
 三船さんの魅力は男臭い強面の裏にある何とも言えない男の愛敬。

 H29.12.17
 DVD

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 逝きしひと 寄り添う時は 短くも
  忘れることなき 旅の道づれ
コメント (2)
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「ドリーム」

2017-10-08 12:45:00 | 映画感想
 「ドリーム」(「Hidden Figures」、2016年、米)
   監督 セオドア・メルフィ
   脚本 アリソン・シュローダー   セオドア・メルフィ
   原作 マーゴット・リー・シェッタリー  「Hidden Figures」
   撮影 マンディ・ウォーカー
   音楽 ベンジャミン・ウォールフィッシュ  ファレル・ウィリアムス  
       ハンス・ジマー
   出演 タラジ・P・ヘンソン
       オクタヴィア・スペンサー
       ジャネール・モネイ
       ケヴィン・コスナー

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=cOw2BMDcFag       

 「事実に基づく映画」みたいな表示が冒頭に出るけど、「事実にインスピレー
ションを得た映画」と言うくらい脚色されてます。
 原題の「Hidden Figures」は「隠された人影たち」とでも訳すのかな、NASAの
マーキュリー、アポロ計画には天才と呼べる多くの黒人スタッフが核心部分に
寄与していた、その事実に光を当てた作品。
 邦題はマーチン・ルーサー・キング牧師の有名な演説「I Have a Dream」に重
ね合わせたものだと思います。(ニュースフィルムの形で作品内にキング牧師
も出て来るし)

 公民権運動が始まるも、まだ黒人をジム・クロウ法によって合法的に差別し
ていた1961年、NASAの計算部(本格的コンピューターが導入される前~人
間が計算をしていた頃)、技術部に天才的な三人の黒人女性が居た。
 その三人、キャサリン(数学の天才で本部に異動した初の黒人)、ドロシー
(やはり数学の天才で西計算部(黒人だけの計算部)で初の黒人統括責任者
(映画では臨時で嘱託))、メアリー(後にNASA初の黒人エンジニアとなる)が、
様々な差別に遭いながらも自らの才能と努力、更にソ連のスプートニク・ショッ
クの追い風もあって認められていく物語。男たちはK・コスナー以外、殆ど刺身
のツマだから、かなり女性映画の風味あり。

 ソツなく作られた如何にもハリウッドな作品、時々挟まれる、キャサリンと黒
人将校ジムのロマンスシーンに少し停滞感を感じたけど、これが無いと作品に
タメが出来ないし潤いに欠けるかもしれない。ま、お陰でプロポーズのシーン
で感動できるからいいんだけど。(笑)
 それと、冒頭の物語に引き込む掴みのシーン、何て事ないけど良かったで
すね。
 厭味な奴は居るけど、基本、善人ばかりの話でサクセスものだから観ていて
気持ちいいのは保証出来ます。(汗)
 深みに欠けるかというと、黒人差別という暗黒の闇が背景にあるし、それを
観客は知ってるから殊更掘り下げなくても塩梅としてはいいんじゃないでしょう
か、エンタティーメント作品なのですから。

 役者陣では主役キャサリンを演じたタラジ・P・ヘンソンより、ドロシー役のオ
クタヴィア・スペンサーの方が印象に残りました。
 あとメアリー役のジャネール・モネイがH・ヒューストンにソックリな感じで、直
接、絡むシーンが無かったからいいけどケヴィン・コスナーと同じシーンに居た
ら別の映画を思い出してしまいそう。(笑)

 個人的には、佳作と秀作の間くらいの作品でした。

※記憶だから間違いかもしれませんが、シドニー・ポワチエが主役を張った作
 品は有ったけど、ハリウッドが黒人層をターゲットに映画を作りだしたのは遅く
 て「110番街交差点」(1972年~但し主役はA・クイン)辺りからだったと思
 います。
 評論家が、都市部の白人:黒人の人口比率接近により、最早、白人相手の
 作品だけでは先細り確定で黒人の財布をアテにした、とか言ってた憶えがあ
 る。
※「私は差別主義者じゃないのよ」
 「御自分がそう信じてることは理解しています」
 結構、皆に当て嵌まる秀逸な台詞(ジョーク)。(汗)

 H29.10.7
 TOHOシネマズ日本橋
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「娼婦ベロニカ」

2017-08-29 00:32:30 | 映画感想
 「娼婦べロニカ」(「Dangerous Beauty」/「A Destiny of Her Own」、1998年、米)
   監督 マーシャル・ハースコヴィッツ
   脚本 ジェニーン・ドミニー
   原作 マーガレット・ローゼンタール 「The Honest Courtesan」(正直な娼婦)
   撮影 ボジョン・バッゼリ
   美術 ノーマン・ガーウッド
   衣装 ガブリエラ・ペスクッチ
   音楽 ジョージ・フェントン
   出演 キャサリン・マッコーマック
       ルーファス・シーウェル
       ジャクリーン・ビセット
       オリヴァー・プラット

 16世紀のヴェネチア、女は男の所有物、家の存続と繁栄を図る為の「産む
道具」でしかなく、読書すら許されない性だった。
 美しきベロニカ・フランコ(実在の女性)、読書好きで、当時、女に無用と思わ
れていた教養・詩才も有ったが家柄、資産が充分でなく相思相愛の貴族マル
コとは結婚出来ない運命。
 そんなベロニカを見た母親は彼女に「修道院へ行くか、高級娼婦(コーティザ
ン)となり自由に生きるか」の選択を迫る。
 (娼婦なら、不義密通の罪に問われず合法的に関係が持てると言うかタラシこ
める)
 修道院の生活を見たベロニカは高級娼婦となる事を決意、その美貌と知性
で忽ちヴェネチア社交界の華となり、フランス国王アンリ3世を籠絡、オスマン
帝国の襲来にフランスの援助を引き出し救国の華にもなる。
 しかし、オスマン帝国との戦いによる疲弊とペストの流行でヴェネチアの栄
華は急速に衰えていく・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=xYu37jF0d3c

 コーティザン、日本で言えば「松に入山形」(最高級)の花魁かな。このクラス
の花魁ともなれば芸事ばかりでなく相当の教養もなければ務まらない、只、花
魁は籠の鳥だけどコーティザンは何処へでも行けるし何時でも辞める自由が
ある(辞めても女が働く場所は当時ないけど)、イメージとしては「椿姫」が近
いかも。
 当時のヴェネチアでは娼婦の数が異常に多く、石を投げれば娼婦に当たる
と言えば言い過ぎだけど女性10人に1人は、って書いてあるのもありました。
(江戸の男女比は地方の二男、三男の流入、喰いつめ浪人、参勤の地方武士
達、男ばかりで圧倒的に女性が少なく、それが原因で岡場所が発展したし、江
戸に関しては女尊男卑と言ってもいいくらい女が強かった(離縁状を書く権利
だけは男~でも、脅迫されて書かされる(涙))、町人の男に生まれて結婚出来
たらオンの字)

 「恋におちたシェークスピア」のプロデューサーが「柳の下~」を狙った作品。
 「才気活撥で美しい女性が中世の因習に凝り固まった男社会に立ち向かう」
というプロットは全く同じだし、ヒロインのキャサリン・マッコーマックも、何となく
「恋におちた~」のグウィネス・パルトローに似てる気がする。
 話は男から見れば面白いけど、それでも二番煎じの感は拭えない。
 それに・・・。
 この物語、或る意味、べロニカと貴族マルコとの純愛がテーマになっていて
(「恋におちた~」のヴァイオラとシェークスピアと同じ)、終盤、べロニカの苦
境にマルコが身を捨ててべロニカを弁護するのですが、衆人環視の公の場で、
あれほど愛人/娼婦に愛と肩入れをされたら妻の面子も誇りもズタズタで堪っ
たもんじゃない。
 強者に権力、弱者には名誉と誇り。中世の支配層に於いて洋の東西を問わ
ず、このバランスは基本中の基本で冒すべからざるもの。
 映画の世界から推測したら、結局、この二人は「一将功成り万骨枯る」で、な
いがしろにされた上流婦人達は結束して法王庁へ働き掛け、べロニカのような
娼婦への風当たりは一層強烈なものになると思うんですよね。

 悪くはないけど、ナンダカナの作品でした。

※冒頭のシーン、中世ヴェネチアの「花魁道中」?

 H29.8.27
 DVD
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「バーレスク」

2017-06-20 00:34:15 | 映画感想
 「バーレスク」(「Burlesque」、2010年、米)
   監督 スティーヴン・アンティン
   脚本 スティーヴン・アンティン
   撮影 ボジョン・バッゼリ
   美術 ジョン・ゲイリー・スティール
   音楽 クリストフ・ベック
   衣装 マイケル・カプラン
   出演 クリスティーナ・アギレラ
       シェール
       キャム・ギガンデット
       クリスティン・ベル   スタンリー・トゥッチ

 自分の夢を実現しようと田舎町からロスへやって来たアリ(アギレラ)。
 オーディションをハネられ続け、ふと目に留まったキャバレー「バーレスク」
の世界に魅了される。
 強引にウェイトレスとして居着くも、ショーを仕切るテス(シェール)に見向き
もされない・・・。

 キャバレーの世界を舞台にした昔風少女マンガって感じでした。
 シェールが出て来ると、よく知らないのに月影先生を連想するし・・・。(汗)
 同じショービズ、歌入り物語のカテゴリーで言えば陰の「シカゴ」、陽の「バー
レスク」。
 ライザ・ミネリの「キャバレー」とスタイルは被るけど、僕の中で比較対象作
品は「シカゴ」ですね。

 見所はシェールとクリスティーナ・アギレラ、両人のエンタティナー振り。
 この二人の歌唱力(アギレラ、ガナリ過ぎの気もする)、歌の表現力を堪能
出来れば木戸銭は安い。
 逆に、ここに興味が持てなければドラマが安易なだけに辛いかも。
 僕は超一流のエンタティナーが存分に「芸」を魅せてくれるのだから、全然、
OK。面白かったです。
 男が女にとって都合よすぎるかもしれないけど、そこでゴチャゴチャすると、
この作品の魅力は多分、2、3割引きになってしまうんじゃないかな。

※歌はシェールの「You Haven't Seen The Last Of Me」、アギレラの「Bound
 To You」が印象に残りました。
 歳喰ってハイ・テンポの曲よりスロー・バラードのほうが馴染むというか・・・。(笑)
※シェールが月影先生を、と書きましたが、もう一人、ダダ星人にも見えた。
 (大汗)

 H29.6.18
 DVD

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 この刹那 一夜かぎりの 幻も
   醒めてまた見る 夢のまた夢
 
コメント (6)
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