今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

『コングの復讐』~“モンスター”の此岸

2012年01月04日 | 特撮
【怪獣とは何か?】

▼前回の記事:『キングコング』(2005年)~神霊(かみ)を暴く物語



久しぶりの『怪獣』の記事という事で、趣旨に立ち返る意味で、初っ端に僕がネットで拾って壁紙とかに使っている画像を二つ貼ってみました。(↑)どちらも加工なしの、自然現象を撮った写真のはずです。僕らは、こういった風雲、雷雲が何故、このように“唸るのか”を既に知っているわけですが、それでも、それを目の当たりにした時、「大自然ヤバイ」というか、驚きと感動を受けずにはいられないと思います。
その仕組を知っている(知ったつもりになっている)人間でさえそうなんですから、訳も分からぬ古代人の心境は推して知るべしです。率直に言って「あ、これには勝てない」というか…勝つ勝たないというのも可笑しな話しですが(笑)よっぱど、気宇壮大な方じゃなければ、畏れ入り、ひれ伏すような、そういう気持ちにさせたんじゃないかと思います。
そうして、古代人はこの“恐ろしい相手”を畏れひれ伏すと同時に、何としても“話し合い”、付き合って行かなくてはならないと決意した。それが畏怖と託願の物語のはじまりと言えます。

洋画のモンスター・パニック映画と、日本の“怪獣映画”は何かが違う……そういう感覚的な気づきから、この話ははじまっているのですが、どうも行き着くところの大元は、“ここ”と言う気がしています。そのものと言うよりは、もう少し偶像(アイドル)化されたものというか、映画ならスターというか、そういうモノに化けた存在ですけど、しかし、大元は“これ”じゃないかと。
…というか、ぶっちゃけ、上の画像には『怪獣』を感じさせるに充分なものが在ると思うんですけど、どうでしょうか?これが怪獣の素材というか、人類に共通する元型(アーキタイプ)=竜/ドラゴンではありそうです。

…この話は、改めて、並行して、ぼちぼちと(?)…進めて行きたいと思いますが、そろそろ取り掛かってみたものの、どうもずっと足踏みしてしまっている(汗)『キングコング』の話に戻ろうと思います。

■『コングの復讐』(1933年)



『コングの復讐』は、初作『キングコング』のヒットを受けて、同年に、ほぼ同じスタッフで作られた続編のキングコングです。“コングの息子”…と言われる(真偽定かでないよなあ…(笑))ミニ・キングコングが登場するお話です。
今回は、かつてキングコングを見世物にしようとした張本人が、何の気まぐれかミニ・コングを助け、逆にミニ・コングにも助けられを繰り返す内に“仲良く”なって、最後にスカル島が沈む時、ミニ・コングは沈んで島と運命を共にするんだけど、男はミニ・コングの手に握られている事で助けられる…と、そんなストーリーです。

何だかんだ言ってミニ・コングは愛嬌があってなかなか可愛らしいです(笑)…で、ここからは『物語』としての『コングの復讐』の出来栄えや、評価の話ではなく、あくまで『怪獣映画』としての視点の話なので、そこは気をつけて読んで欲しいのですけど…。
キングコングの『怪獣』としての因子はここで断絶していると僕は観ています。それは、やはり「人間とミニ・コングが仲良くなり過ぎている所」にあります。辺境の地で出遭った獣と触れ合い、“友達”になり、そうして人間はその獣に生命を救われる…という、そういう動物と心通わすタイプの動物映画になっている。そこからは“畏怖と託願”が消失しています。

これまで、僕は怪獣映画の視点としての『キングコング』の完成度の高さを語って来たのですが、まあ当時、そういう受け止められ方は、ほとんど皆無であったろうワケで(そもそも作り手にさえそういう意図があったかどうか…)。多くは「かわいそうな動物の物語」として受け止められていたと思います。
その後のモンスター・パニック映画の系譜を観て行けば「異形のモンスターに人間が襲われて、人々は(観客含めて)恐怖し、その後、そのモンスターは退治されて、ああよかった」というプロットがほとんどな事を考えると、『キングコング』が秀逸さが分かるかと思いますが、じゃあ、その可哀想なキングコングをどうしようか?となった時、「友達にしよう!」となった。

わけも分からず都市に連れてこられてわけも分からずなぶり殺されたコングの物語は、人間側としてあまりに寝覚めが悪い……じゃあ、人間と心通わせて、人間の為になって死んでゆけばコングも幸せだろう…って、非っ常~に!人間本位な考え方ですが(汗)まあ、ここでは当時としては、それがさほど疑問に感じる必要もない「正しい事」だったんだろうねえ、と言うに留めておきます。…しかし、エンターテインメントとしての、そういう誘導が起こるのは、普通にわかりやすい事だと思います。

いや「友達になろう」というのが、そのまま怪獣への感覚との乖離というつもりもないです。託願とは“共感”あるいは“親近感”を含むもので、それは最終的には「分かり合いたい」という気持ちが反映され、そのように描写される。
…しかし、それでも近づき過ぎというか…「自分らに危害を加える事はない、どころか身を呈して生命を救ってくれる。…そりゃ、普通に“仲間”だよね?」と言うか。そうではなく、自分らに危害を加えないとは限らない、気まぐれで潰されるかもしれない“おっかないモノ”に対して、それでも分かるはずのない彼らの真意を読み取ろうとしたり、あるいは、そういうモノにどうしようもない憬れを抱いたりする気持ちが載って、はじめてそこに『怪獣』が宿るのではないか?と考えています。
…まあ、最終的にほとんど“友達同然”の怪獣も数多くいるワケですが、しかし、そこに至るまでに相応の儀式を必要としていて、ミニ・コングはその交流の手順含めて「畏怖への接触」という意味合いは極めて少ないと言えると思います。

また、『コングの復讐』は、ミニ・コングが人間に危害を加えない事が確定している時点でモンスター・パニック映画とすら言えない物語であって、いわんや怪獣映画………ん?違いますね?(汗)スカル島の他のモンスターたちは相変わらず襲い来るワケですから、モンスター・パニック映画だとは言える。ただ、今回はコングが用心棒の役なんですね。
『ターミネーター』で、人間を襲っていたシュワルツネッガーが、『ターミネーター2』では人間の味方で、今度は人間を襲うT-1000から守ってくれる…みたいな展開かな?よくよく考えると沈み行くスカル島から手だけを出しているミニ・コングの図は、『T2』のラストと……ん。ま、考え過ぎ。(´・ω・`)
『ターミネーター』はその後も続くシリーズとなりましたが、『キングコング』のシリーズはここで終りです。怪獣映画のない(怪獣を見出しづらい)洋画の在り方として、『ターミネーター』と『キングコング』の差には、ちょっと意味があると思っています。

■『恐竜グワンジ』(1969年)



ここで、もう一つのキングコングとして『恐竜グワンジ』を上げておきたいと思います。元々、『キングコング』の西部劇版と言われているような作品ですね。“禁断の谷”と呼ばれる土地に入り込んで、そこに居ると言われる古代に絶滅した生物を生け捕りにして一攫千金を目論む男たちが、恐竜グワンジに出くわして、その生け捕りに成功する…しかし?という物語。

特撮担当がレイ・ハリーハウゼンなんですが、元々は、ハリーハウゼンの師匠であるウィリス・オブライエンが書いた台本で、1940年に企画がスタートしていて、途中で製作中止となったものを、ハリーハウゼンが甦らせたようです。つまり、けっこう古い出自で『キングコング』に近しい素材として観るに充分なものがあると思います。
観ればわかりますがプロット自体は、まあ、ほとんど『キングコング』です。しかし、それ故、キングコングとグワンジの狭間にある“境界線”がハッキリ観てとれると思っています。

キングコングには、怪獣の因子として“畏怖と共感”が大いに見て取れるのですが、グワンジにはおそらく“共感”はありません。こういうものは、受け手に拠る事ではあるんですが、それでも「『キングコング』はキングコングが可哀想に思ってもらうように作っているが、『恐竜グワンジ』のグワンジは可哀想に思ってもらうように作っていない」と言えば多くは納得してもらえると思います。
要するに『キングコング』から“怪獣の因子”を取れば『恐竜グワンジ』になるって事です。『怪獣とは何か?』という僕のテーマにとって、これは非常に興味深いサンプルと言えます。

そして、それ故『恐竜グワンジ』は、至極真っ当なモンスター・パニック映画であると言えます。本当に王道とも言えるストーリーになっていて、もし、企画時期通りに1940年代に公開されていれば、今とは一段違う地位を築けた作品かもしれません。
そして、洋画/ハリウッド映画は、このグワンジ的なるモンスター・パニック映画が継承され生み出されて行き、モンスター・パニック映画の偉大なる金字塔でありながら『キングコング』を『キングコング』たらしめている因子は、継承されなかった(継承されているとしても極小のものに変じていた)ようです。

まあ、人間の手でぶっ殺して「HA!HA!ヤッタ~!ザマミロ~!!ww」ってなれない映画は、その時ウケても、長続きは困難ですよね。(´・ω・`)
しかし、おそらくその因子は、とある日本の映画人に大きな影響を落とし、日本映画で再生される事になる。そして、なぜか日本にはそれを受け入れる土壌(土壌自体は東洋全体に広がるものと思いますが、映画産業とこの土壌が真っ先に邂逅する場所だった…かな)があった…という話に、いずれ繋げて行きます。

……ここまで書いたけど、もうちょっとキングコングの話がしたいかも…orz んんん、どうしようかな?とりあえず、今日はここまでです。


恐竜グワンジ 特別版 [DVD]
ジェイムズ・フランシスカス,ギラ・ゴラン,リチャード・カールソン,ウィリス・H.オブライエン,ウィリアム・バスト,レイ・ハリーハウゼン,チャールズ・H.シニア
ワーナー・ホーム・ビデオ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿