J.Sミルは19世紀を生きたイギリスの学者です。
そのミル氏は、人間の知性を活かし、それと社会制度の変革を通じて社会を建設していく姿勢を問うたのでした。
『経済学原理』や『自由論』の著者として知られています。
J.Sミル
経済学が彼の出発点でしたが、その理論の構築は、他の社会哲学と大いに絡んでいるとして、ロマン主義、サン.シモン主義、社会主義などの理論を取り入れてしたのでした。
彼は、社会の制度だけでなく、個人の内面の構築の重要性も説いたのでした。
1867年に、婦人参政権の法案を提起したのはほかならぬミルでした。
「女性の能力が男性に劣るものではない」というのが基本姿勢であったのですね。
権利と利益を得ることで、人は自らの手で社会を守ることができるということで、知性と徳性を政府に接触させることが大事であり、そのために議会が必要であるとしました。
それによって、国民の積極的、自主的性格を伸ばすことができるというのです。
自己の力を手段と考える民主主義は絶対的に彼には必要だったのですね。
そして彼は、社会主義の思想にも触れていて、その影響を感じないわけにはいきませんでした。
彼にとって、資本主義は、人間としての生き方を成立させにくくなるとして批判的でした。
しかし、彼は、社会は漸進的に変化していくものであり、一気に変えるものではないということで、社会を転覆して社会主義社会を構築することにはは批判的でした。
では最終的にはどうなるか、ということについて、労働者たち同士の共同組合になるだろうとしています。
このことについてどう評価するかですが、社会主義国が今は4か国にだけになっていることで、やはり何を言ってたんですか、といいたくなる人もいるでしょうが、共同組合は発生しましたし、今も活動を続けているということで、少しは評価していいでしょう。
誰も将来の正確な予見などできないのですからそこは譲歩しておきましょう。
そして、ミルは生産が発達した共産主義の第二段階で自己疎外が克服されるという予見を立てています。
またマルサスの理論にも触れています。
マルサスは、食料となる植物は一定でしか生産されないのに対し、人間は幾何級的に増えていく、ゆえに避妊をしなくてはいけないという立場でありましたが、ミルは人口増加と土地の売買を制限することが重要であるとしたのでした。
決してマルサスの理論への完全賛成ではなく、一部に賛成しながらも、その他は譲歩し自分の理論を建てたのでした。
避妊ではなく、農業の知識を勉強し、技術および発明の進歩のついて勉強したのでした。
これについては自身が、『経済学原理』において、1章を設けて解説しているのです。
先の社会主義の理論にしても、マルサスの理論にしてもやはり中立の立場になっていますがそれが通常でしょうか?
やはりどんな理論でも一部には心理を含んでいるもので、全面的に否定することも、賛成することもないのですね。
私はいろんな本を読んできましたが、やはりそのことはよくわかります。
このミルの理論は、明治期の日本において、『自由論』や『代議政治論』などが多くの知識人の間で読まれ、民権運動、議会仮設運動の思想的、理論的根拠を与えるものとして大いに称えられたようです。
ここを読んで、興味のわいたかたは、この本やミルに関する本を読むことをお勧めします。
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