新保満 『人種的差別と偏見』

2019-06-16 23:46:00 | 宗教と社会

人種的な差別は、単なるプロパガンダによっておこるのであって、それは本人の心がけで治るものである、と単純に考えていましたが、そんなに奥の浅いものではないことが、この本を読んでわかりました。

確かにそういう部分もあることは否めません。

ランダムに白人と黒人をピックアップして知能指数を測るテストをしたところ、白人の方が優位であったことを大々的に報道したところ、差別主義者を大いに喜ばせた、ということですが、これは根拠の薄いプロパガンダであることは明らかでしょう。

白人の平均指数が100とすると、ナッシュビルに住む黒人の指数が57であったのは事実ですが、ロサンゼルスに住む黒人のそれは107であったことが明らかになりました。

社会的、経済的背景が一緒なら、逆に黒人の方が上、ということが明らかになったのでした。

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こういった黒人は劣った人種である、ということを信じ切ってしまうステレオタイプは、9歳くらいまでに形成されてしまうようですね、主に家庭で受ける情報がもとで。

ですからこういう事が起こらないようにこれから人の親になろうとする人には大切なことですね。

こういった大事なことを主体的に学んでいきましょう。

先のプロパガンダ的手法は、情報弱者を絡めとるのに有効ですね。

しかし何でも信じようとせず、必ず奥深く物事を見つめる人にはいまや有効ではないのは明らかでしょう。

これまでの科学的な情報の蓄積があるのですから、それを学んでいくことで、からめとることはできなくなるのですね。

情報弱者を絡めとる手法は今でも採られていますね。

ダイエットでも美容でも、あるいはメタボ解消のサプリやグッズを販売する会社が良くあります。

これらは、飲むだけで痩せれる、飲むだけで綺麗になれる、という錯覚を起こさせて、それを買わせるのですね。

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しかし、美容、ダイエットについて勉強を重ねた人には有効ではないですし、買うこともないでしょう。

飲むだけで解消できるものではなく、日々の行動の積み重ねで可能になることが明らかだからです。

人との、特にほかの人種とのかかわりについては、特にこういったプロパガンダ、ステレオタイプ化は避けなくてはなりません。

しかし、これまでの歴史から、人種的、民族的な関係が調和を欠く場合、一部成員を物理的に攻撃する場合が頻繁にあったのですね。

大農場の白人が、黒人、奴隷をリンチといった内容は枚挙にいとまがなく、アメリカでは4州以外を除いて、すべての州であったといいます。

また15世紀のポルトガルにおいて、キリスト教を受け入れると黒人も白人になれる、ということが流布され、それが可能になると奴隷として黒人を奴隷として使えなくなる。

ゆえに、奴隷制を合理化する神学を白人が生み出したといいます。

こういった教えは、キリスト教には反しますね。

しかし、奴隷制がないと困る白人によってその内容を変えなくてはならなかったようですね。

こういったこともまた、宗教が本来の教えから隔たってしまう理由なのでしょうね。

また、労働者階級が連帯してもらっては困る資本家は、それらを断ち切るために人種主義を用いたようですね。

真剣にキリスト教を信じていても、人種主義に基づいて行動している例は多くある、ということですね。

しかし、宗教に入る人は、その団体に対して無批判でいることが多いですから、それに反駁するパターンは少ないでしょう。

聖書やその宗教団体の刊行物に、その教えを書き、それをそのまま信じてしまう人が多く輩出してしまう。

そして、その誤った教えが継続してしまうのですね。

主に白人である資本家による黒人の虐殺、その土地の割譲といった事が何故平然と行われたか、疑問に思いますが、これはステレオタイプ化された人たちによってだけおこなわれたわけではないでしょう。

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サイコパスといって、人の心を重んじない、自分の過ちについて一切詫びないし罪悪感を持たない、人を細部にわたって操ろうとする人たちによって行われた、ということが言えるでしょう。

それ以外の心優しい人たちには出来た話ではありません。

付け加えるならば、そのサイコパスたちは、いくら教育を施しても、その心が治るわけではないのです。

しかし宗教人は、先にも書いたように、その教団のいうことは無批判ですから、注意が必要です。

90年代の半ばのオウム事件を振り返れば明らかでしょう。

教団内あるいは教団外でも、教団が平然と悪事を重ねても、一握りの人を除いて無批判でいたのですから。

それ以外にも、宗教団体による反社会的な行動について無批判であった、という例は歴史上からも明かでしょう。 そういった意味でも、宗教は注意が必要です。

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社会的な上位者という意味でのマジョリティは経済的に自分の都合のいいように人種的差別をしてきた、ということですね。

これは本人に根差している人種差別的な心だけに起因するものではなかったのですね。

これ以外にもカナダ、ロシア、中国、日本といった国々の例を挙げて、人種差別の歴史を明らかにしていますし、そういった事を奥深く学べるのは、とてもいいことですね。

私が大学生のころには、外国人は珍しいことでしたが、それから幾年か経ってみると、周りにはアジア、ヨーロッパからいろんな国の人たちを目にすることができるようになりました。

そういった人たちとどのように関わりあうべきか、その教えの一環をこの本で学べる気がしますね。

先に書いたように、サイコパスは教育を施しても人種差別的言動を改めることはありません。

ですから、組織の長には絶対にサイコパスを据えてはいけないのです。

人種差別も平然と行うでしょうから。

そういった知と知を連鎖させて、自分の住む社会においてどのように生かすか、という問いに答えて行動するには、このような本を含めて多岐にわたって学んでいかなくてはならないのです。

そのことに共感できた人には読んでもらいたい本ですね。

●この本は以下からどうぞ。

  ↓

人種的差別と偏見―理論的考察とカナダの事件 (1972年) (岩波新書)

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岩崎武雄 『哲学のすすめ』

2019-06-09 13:55:30 | 哲学、思想

 以前に『カント』という本で紹介しました岩崎武雄氏の本の紹介になります。

哲学のすすめ、ということですが、哲学といいますと、何か後世に何百年以上も影響を与えた偉大なる思想家の教えを学ぶ、というように思われがちですが、それだけではないのですね。

一般人と無縁の事ではないのですね。

我々がもっている哲学は、過去の哲学者たちの思索の結晶なのです。

勿論、一般人のも含んでいますね。

ですから、そこは卑下せずに、その道の中でいろんな行動、思索した挙句にできた考えは、自信をもって人に語り、上手くいかない人には、胸を張ってアドバイスするのがいいでしょう。

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ただ、後世に何百年以上も影響を与えた偉大なる思想家の思想は、やがて多くの人々の思想に認識にしみこんでいき、次の時代の常識になっていったのですね。

ですから、そういうことを本を通して学び、謙虚に人生に活かすのがいいでしょう。

人類が髪を発明し、それに書きとどめることを考えついてから、社会現象、心理現象をそこに著し、自然科学、社会科学が生まれました。

その当時には、哲学から、これら科学は独立していましたが、価値判断、何をどうすべきかといった事については、共に科学的な判断が必要になってきます。

それはなぜか、何故そうあるべきかということは、いろんな角度からものを見つめないことには、判断をすることができないからですね。

その多面的にもの事をみる、観察する、ということがすなわち哲学ということでしょう。

価値判断の学、それが哲学ということでしょうが、やはりそれでも価値観だけでそれをするのは間違いでしょう。 それはやはりいろんな知識、情報の蓄積によって可能になるのです。

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この本の中で印象に残ったのは、歴史学についてですが、これも一見関係ないように見えて、やはり哲学を極めるうえで大切なことだなあと思いました。

歴史的出来事の間の因果的な連関を歴史家はすべきである、ということですね。

何が本質的に重要な意義を持っているかを説明しなくてはならない、ということですね。

そういった仕事において、その歴史家が書いた本を読んで、いにしえの思想家たちの評価は変わってくるのですね。

ですから歴史家の仕事は重要だなと思いました。

物事の因果連関を詳らかにする、この仕事は非常に簡単に見えて逆なのですね。

その仕事のためには、いろんな情報を集めないといけないですから。

自分1人あるいはそれで足りなければ複数の人たちとしなければならないのは言うまでもないことです。

それでも完璧にはできないです。 人の得る情報は1人でするにしろ、複数でするにしろ限りがありますから。

でもいつまでも情報集めの仕事ばかりしていては先に進めないですから、そこは割り切って先にすすまなくてはならないのです。

このように完璧を目指しながら完璧を期することはできないのですね。

真理を目指しながら真理を得ることができない。

それがわかり、そんな姿勢を目指したくなるということがこの本1冊で分かりました。

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ただ、哲学にしろ他の学問にしろ、その本1冊だけ読めば、あとは本を読まなくてもいいということではなく、更に何十冊、いやそれ以上読まなくてはならない性質のものであるということをしなくてはならないのは言うまでもないことです。

しかし、人は人との付き合いや遊び、仕事その他で忙しいこともあり、そういった事をするのが可能な人は限られていることは言うまでもないですから、それを強制することはできないですし、不可能でしょう。

しかし、先にも書いたように、完璧を目指しても完ぺきにはならないのが、哲学および他の事柄の性質なのです。 勿論、大学教授といった人たちですらもそれは不可能でしょう。

1年に100冊以上本を読むツワモノの教授であっても、世界の全部をみたわけではないのですから。

完璧を目指しても目ざしても完璧にはなれない、そういう性質なのです。

しかし、なら完璧になれないのならば、成長を止めてもいいではないか、と反論されそうですが、それも違うのです。

人は多面的に物事をみることで、成長するのですし、そういう成長を止めない人間こそが魅力的に見えるのであって、だれもがそういう人間像を目ざすべきでしょう。

成長を止めた人間に魅力的と映った例は私は知りません。

知らないからこそ、そういう人間を目指したいと思うのですし、今も勉強しつづけます。

そんな人生を生きるヒントをこの本から得ていただけたら嬉しいと思います。

●この本は以下よりどうぞ!

哲学のすすめ (講談社現代新書)

 

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プリス.ロランほか 『エコロジストの実験と夢』

2019-06-03 22:07:30 | 高福祉、エコロジー

この本は、エコロジストたち4人による対談という形式になっています。

非常にどの対談者からも学べる一家言があって勉強になります。

この本のみならず、人間社会の経済的成長の意味についていろんな問いかけが学問に携わる人たちの手によって書かれているのを読んで、私は考えさせられましたし、その考えをいかに生活の中に活かすか、そして行動するかが大事であり、そういう事を考え行動する人が多ければ多いほどいいという学生時代からの考えに変わりはありません。

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変わりないどころか、更にこの本を読み、その思いを強くした気がします。

経済成長こそが人間社会の至高の手段である、と考えている人にとっては、いろんなものを人が消費していけばいいのであり、それ以外にはほとんど目もくれていないのが現状でしょう。

例えば、今日パンを買い、食べきれなかったら次の日に持ち越すのではなく、食べきれなかったら捨てて、また新たなパンを買うという思考様式の方が経済成長には望ましいことなのですね。 ことは食べ物だけでなく、いろんな消費財についても同じですね。

使いきれなくなるまで使うのではなく、すぐに捨てて新しい物に買い替える方がいいのです。

事実、日本にはそういう人が多いからこそ、短期間で成長が可能になり、列強の仲間入りができたのですね。

逆に、いつまでもものを大切に使い、使いきれなくなるまで使い続けるのが当たり前のフランスイギリスは、列強の仲間入りするまでに何百年もかかったのは、そういう事情もあるのですね。

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使って捨てる…それで問題が生じないのならば文句は言いますまい。

電化製品を捨てることによって、それを工場や倉庫に運んで分解してリサイクルする。 それでも、全部リサイクルできない部分もでてくるのです。

それらに関しては燃やすのですが、それによって大気が汚染されるし、それを吸った人は何らかの具合の変化、もちろん悪いことが起きるのです。

リサイクルしないで、その物をそのまま全部燃やすことも当然なされていることです。

それではなおのこと悪いのは言うまでもありません。

食べ物でも同様です。

食べ残して捨てることで、普通の家庭ではごみ収集車によって清掃工場にもっていかれて、燃やすわけですが、それによって燃料もかかりますし、二酸化炭素の発生につながり、大気汚染にもつながるのです。

ですから食べなかったものに関しては、捨てずに次の日に持ち越せばいいのですが、それでは経済成長にとっては都合が悪いのですね。

ですから経済成長にとって望ましいのは、どんどん物を買って、それを短期間でどんどん捨てて、新しいものに買い替えるのがいいのです。

しかしそれでは地球環境にとって良くないですし、自分たちの住環境も悪化させていくことにつながるのですね。

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それを心しておかないといけませんね。

私が、大学時代の某講義で、「生ごみは水気を含んで燃えにくいから燃料がかかる。

そして燃焼することで二酸化炭素が発生するから、生ごみは家庭の庭にある土に埋めるのがいい。

そのことで、土の中のバクテリアが生ごみを分解してくれていい土になる。」

ということを教わって、私は今もそれを実践しています。

この本では、経済成長にとらわれた私たちを批判して、

「私たちは、思い出を消費するのではなく、忘却を消費するように義務づけられている。

傷んだリンゴで砂糖煮を作ったり、古くなったパンで菓子を作ったり、前日の焼肉の残りで肉団子の料理を作ったりはしない。

この社会の構造そのものが成長を続けてゆくことを不可能にしている以上、これらの構造を変えればよい。」

といっているのです。

人間社会の歴史を垣間見れば、経済成長などなくても、人間社会は存続してこれたのであり、それなくして人間社会は成り立たないという議論には説得がありませんね。

しかし、それが可能なのは、江戸時代のような生活に甘んじなくてはならないということなのか、という反論が出そうですが、いろんな試行錯誤を繰り返した挙句、それしか方法がないのならば、そんな生活に甘んじるほかないのでしょうし、私もそういう生活を覚悟しなくてはならないのでしょう。

しかし人間の叡智は素晴らしいものであり、いろんなこれまでの科学の積み重ねと試行錯誤によって、いろんなものを創造してきたのですから、江戸時代のような生活でなくても、それは可能であると思えてならないのですね。

それは科学に携わる人だけでなく、一般市民の人たちも想像し、創造していかないけないでしょうね。

この本の対談者の1人は、「さまざまな価値の全体、人間の知識の関係全体が変わらなければ科学は変わりえない。」といっているのですが、まさにその通りですね。

理論を並べるだけ、あるいはそれらを読むだけでは何の意味もないのですね。 行動に移さなくては。

人間が生きていくことそのものが環境破壊につながっているのですね。

ですからそれを軽減するためには出産制限(Birth Cotrol)の必要性は、いろんな反成長主義の学者によって説かれてきました。

『人口が爆発する!』という本でもそういう事が書かれていたのを思い出しました。

「出生を意識的なあるいは無意識的に制限することは、どんな社会にもどんな種にも存在した。 逆に無制限の人口こそ人工的で自然に反するものだ。」 という興味深い箇所をこの本で見つけることができました。

地球環境のために、Birth Cotrolというのは一般には考えることは難しいですが、それでもいろいろ本を読むことで、それも可能になると信じています。

利潤追求は世界規模で浪費招くのですね。

第三世界の農業品の輸出は、一部の特権階級の人たちが、西洋の製品を買えるだけである、という興味深いことが書かれていました。

やはり、成長主義には、やはり無批判でいていいのではないのですね。

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良き社会のために、どうすればいいかを考え行動していくことをいつまでも継続していくことが大事なのですね。

それは、何度もこういった本を読み続けることによって可能になるのですね。

宣伝と同じで1回みたただけでは買う気にはなれない。

何度も何度も見ることでようやく買う気になるのです。

それと同様に、良き社会のために行動するのは、やはり何度も幾冊もこういった本を読むことで初めて可能になるのですね。 そういうものです。

ですから良き社会を目指したいと思う人には、こういったたぐいの本を多数読むことをお勧めしているのです。

この本も、そういう効用のある本として非常にお勧めしたいです。

しかし、かかれた内容はすぐに忘れてしまうので、このように私のように書きとどめておくか、いつまでの大事に保管して何度も読み返すことが重要でしょう。

●このページを読んで、読みたい衝動に駆られた人は、以下よりどうぞ

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エコロジストの実験と夢 (1982年)

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