K.V.ウォルフレン 『日本の知識人へ』

2020-03-25 21:31:06 | 現代社会

 日本の官僚批判で目の覚める本を出して大きなセンセーションを引き起こしたウォルフレン氏の、今度は知識人に対する臨む姿勢を書いているのが本書ですね。

当然、再び官僚批判もしたためています。

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K.V.ウォルフレン

政治的関心をもつ日本のほとんどの学者は、単に政界の出来事を述べるにとどまっているということですね。 これが暗に公然と、権力保持者たちの行動や諸関係を正当化してしまっているということですね。

やはり物事は何でも末節的なことを処理していたのでは、解決にならないのは明白ですね。

やはり根本を改善しなくては。

その根本とはなにか?

ウォルフレン氏にいわせれば官僚制であり、日本という国に敷衍しているシステムである、ということですね。

その内容に関して知りたいという方は、この本や他の氏の本を熟読することをお勧めしたいですね。

この本は、日本の知識人への呼びかけが主軸ですが、日本の政治環境をその全側面にわたって自立的かつ誠実に監視している人がどれだけいるかという疑問を投げかけているのですね。

政治的な兆候に近視眼的に関心を集中しがちであるということですね。

日本の官僚は他の先進工業国の官僚よりも強大な権力を保持しており、その権力を保持する制度的規定面で日本ははるかに後れを取っているということです。

以下の分野においてであるとしています。

 

資源+資金の大規模投資に分配する予算編成権

補正予算を分配する権限

その他、超法規的権限

 

これらが、権力主義的計画に中心的役割を演じたということです。

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日本は官僚の権限が強いがゆえに、日本の市民が幸福になれないということで、そのの代表的な著書である『人間を幸福にしない日本というシステム』に書いてあるのです。

その詳細は、増補版である『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』を読んでいただきましょう。

それは明治から始まるもので、決められた権限を遂行していくことにしか頭にないということを批判しているのです。

その遂行のために取り組む姿勢や行動については非常に優秀であるとしているのです。

しかしその問題点については目をつむり、それを良き方向へ変えていくための代案制作といった面については全く無頓着であるというところを批判しているのです。

決して自分の意見と違うからという理由で批判しているわけではないことはお断りしておきましょう。

そんな単純な理由で批判している学者ジャーナリストであれば、私もを称賛してここまで文章を書かなかったことは明白です。

しかし、その自己目的推進のために、あの大戦時に官僚は国民大衆にうそをついたということです。

その嘘の内容については本書などをご覧いただきましょう。

そのことについては、軍部よりも官僚の方が罪は重いというのです。

その官僚のシステムは敗戦の45年以後と以前に制度的断絶はなかったということです。

日本に検閲はないが、知的摘発調査という独立した分野がないということも驚いたのです。

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これは、日本に対する異常な好奇心を持って研究していこうとする姿勢がなければ発見できなかったことでしょう。

それも、海外の複数の国の政治制度の研究をもって初めて可能であることは間違いないでしょう。

このウォルフレン氏が推し、そして氏の本のなかで紹介しているターガート.マーフィー氏のことが思い起されます。

こんなものすごく深い研究と分析がよくできたなと感心した次第です、そのマーフィー氏の本を読んだときには。

それと同じ衝撃を、この本を読みながら受けたのです私は。

経済機構を管理する官僚と官僚実業家が自分たちが蓄積した富を、そのために働いた人々と分かち合うことをしない。

経済的異常の責めをアメリカの財政、貿易赤字に負わせ続けている。

アメリカの保護主義を誘発しているのは、日本の保護主義である」と断定しているのです。

これは国家と国家の対面において大事な自己主張をすることの重要性と、自分が不作為でいることで生起す事象について厳しく発破をかけていると私には感じたのです。

日本は古来から争いを好まないという国民性であるということが日本の学者知識人たちから説明されることがしばしばあったことは確かです。

ことが悪い方向へ行っているにもかかわらずなにもしない、自分の意見を言わない。

しかし、それでは不作為によって、悪い方向へますます行ってしまうことは明白です。

等質性と調和を達成し、コンセンサスを通じて問題を解決したいとする天性の願望とによって決まると信じる学者たちを棚に上げているのです。

「習慣は一見尊く見える、現状維持に熱心な人にとっては。

一番批判に値するのは政治家であるとの評価を是認しがちで、政治家の中で中央省庁の役人に匹敵する影響力を保持するものがごくわずかであるということを忘れてしまっている。

前近代的政治機構物が、日本の基本的組織原理として提示されなければ、こういう分析もそう悪くないだろう。

独裁政権があたかも徳を体現し自然の法則にしたがい、生まれながらにして慈悲心に富んでいるかのように見せかけている。」

という日本の批判をしているのです。

これは非常に目の覚める議題でしょう。

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やはり我慢して、自分の意見を言わずにいる。

それが大人の人間として望ましい理想像であるということを喧伝して、そのような人間を大量につくれば権力側にとってこれほどやりやすいことはないですね。

そうではなく、きちっと事態を分析したうえで、何が大事かを明確に表明することが大事であることは間違いないですね。

それこそが、悪しき事態を改善するための基本的かつ最重要なことですからね、そのことの重要性をこの本を読んで目が開けた気がします。

そのような深く広い分析をすることを日本の知識人にウォルフレン氏は望んでいるのですね。 こういった日本社会の内容をつぶさに見ていくと、やはり日本は他の先進国に後れを取っているということでしょうか。

それは諸外国との深く広い分析を持ったうえでの比較によって可能であることは間違いありません。

そういった面でいまだに近代国家ではないということでしょうか。

私が推奨する小室直樹氏『日本、いまだ近代国家にあらず』という本を出していますが、それはウォルフレン氏と軌を一にするものなのかどうか興味のあるところですがどうなのでしょうか?

最後にウォルフレン氏は、日本の権力保持者は真実の自由市場経済を達成するためには、あまりにも互いに反目しあっており、真に新しい最優先政策を導入できるだけの権力を保持しているものがいないという事です。

日本の経済が、真に日本国民のためになっていないということも、他の本で書かれていることですし興味の深い議題でもあります。

その吟味をしていくこともまた面白いことでしょう。

そういった内容に興味を持った人には読んでいただきたい本ではあります。

●この本は以下よりどうぞ!

  ↓

日本の知識人へ

 

参考図書 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム (角川ソフィア文庫)

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『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/404153213.html?1442740078

『日本に巣食う4つの怪物』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/411025348.html?1442739448

『アメリカからの独立が日本を幸福にする』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/416108583.html?1442739522

『偽りの戦後日本』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/419390846.html?1442739842

『アメリカとともに沈みゆく自由世界』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/403562125.html?1442740154

『この国はまだ大丈夫か』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/403116925.html?1442740217

『怒れ!日本の中流階級』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/474007969.html

『年収300万円時代 日本人のための幸福論』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/376743327.html?1442740414

『独立の思考』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/369324554.html?1442740685

 

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高橋がなり 『がなり説法』

2020-03-19 21:56:41 | ビジネス

 もう20年近く昔に放映されていた『マネーの虎』という番組に出演していた社長の1人である高橋がなり氏の本です。

『マネーの虎』とは、経営者になりたいと志願する人が、大物社長5人の前で、どのような店を開きたいか、どういう計画でいるのか、その開業にいくらほしいのか、という内容のプレゼンをして、その内容が社長たちの心に響き、投資希望額に社長たちが出した額に達したらその額を投資してもらえるという内容でした。

その社長の1人が高橋がなり氏だったのですね。

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  高橋がなり

私は、高橋がなり氏の真摯に内容に耳を傾けて、必死になっていろんな角度からその内容を吟味して、その希望者の額を投資しようという姿勢には感動してみていました。

希望者との対話の中にも、その話す内容において、いろんな経営をして、失敗して、そこから這い上がってきたその人にしかわからない努力の内容や抽出事項には、さすが大物経営者だなという思いがありました。

この番組に出演していた社長であった小林敬氏堀之内九一郎氏安田久氏、川原ひろし氏といった人たちの本もこれまでに紹介してきましたが、やはりこれらの社長たちに共通するのは、

人を喜ばすためにどんなことをすればいいかをいつも考えている。

上手くいかなかったときにめげずに次善の策を考える。

その道のスペシャリストである、あるいはなるべく努力してきた。

ということでしょう。

また、今は芸能界から引退してしまった島田紳助氏も寿司屋や喫茶店のオーナーでしたが、そのような要素を持っていたのがきちんとうかがえました。

今回のこの高橋がなり氏の本では、それらの要素に加えて、いかに投資してくれた人に義理返しができるか、という思いで経営をしていった、というところに感動しました。

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世間一般では、商品を如何に安く仕入れて高く売るか、ということを考えているのが常のようですが、高橋氏に言わせると「そんな方法は今では通用しない」と断言しているのです。

そうではなく高橋氏はいかに高い金を出してお客さんを喜ばすか、ということを経営の指針にしていたようです。

しかし、こういった経営者の書いた本は、こういった常識に縛られないことの重要性を説くことはままあります。

しかし、考えるといっても、「う~ん!」とうなっていても、考えは浮かばないですね(笑)

知識が考えをつくる、というのは当然のことですね。

やはり、本を読み、セミナーを受けて、ネットで検索していく、そしてそれを即実行に移すということが大事でしょう。

そういうことが可能なのは中小企業の強みでしょう。

逆に、工夫をこらそうとしても、できないのが大企業の弱みでしょう。

こんな事したらいいなとおもって、例えばドリンクバーがないからといって大手のレストランチェーンで勝手にドリンクバーなどを設置したら、その店長は当然クビになるでしょう。

しかし、中小企業では、それが可能なのです。

高橋がなり氏の会社も中小企業から出発しました。

そういった発想転換が大事であるということも、『マネーの虎』に出てきた社長たちの本からまなんだものです。

やはり世間一般の常識にとらわれていてはだめということですね。

そういった思いが、漠然とした思いがあった私は、それに感動して、与してしまったがゆえに、これらの社長さんたちの本をどれも一気に短期間で読んでしまったものです。

高橋がなり氏の本も同様です。

しかし常識にとらわれてはいけないといっても、変えてはいけない常識というものはあるのです。

「おはようございます」「お疲れ様です」「ありがとうございました」「申し訳ありませんでした」といった礼儀の常識ですね。

これらは決して変えてはならない常識ですね。

変えてはいけない常識は変えずに、その他経営法や商品づくりには常識を疑いながら邁進していかなくてはならないのですね。

また、この本を読んで勉強になりました。

将来的に経営者を目指している私には感動ものでした。

20年近く昔にも関わらずこの本はいまだavailableですから驚きです(2020年3月付)。

そういう本ですが、これらのことに共感して、人生心豊かに生きたい人にはおすすめです。

●この本は以下よりどうぞ!

  ↓

がなり説法

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その他、『マネーの虎』に出演していた社長たちの本について紹介したページは以下です!

  ↓

堀之内九一郎 『一生食うに困らない金儲けの王道』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/359341489.html?1479487700

堀之内九一郎 『野良犬の成功法則』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/415669959.html?1479487968

安田久 『一攫千金』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/405012883.html?1479487831

小林敬 『外食.FC革命』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/403788303.html?1479487896

川原ひろし 『なんでんかんでんの作り方』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/411413810.html?1479488041

 

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コンラート.ローレンツ 『文明化した人間の8つの大罪』

2020-03-18 21:46:19 | 現代社会

この本では、文明化した人間の罪ということですが、その内容は精神性についての批判ですね。

まず、この本の著者であるローレンツ氏は、文明化した人間に隣人愛がないことへ批判をしているのです。

今の社会において、技術、化学、医学への進歩がすべての人間の不幸を減らすという思いや理念で追求し発展してきたわけですが、それがもたらされた結果、その通りだろうか?ということですね。

非常に慧眼な視点だと思いました。

動物に限らず人間も小さなところですし詰めにされると、他のものたちにたいして攻撃的になるのはこれまでの研究結果から明らかです。

狭い敷地内にアパートなりマンションなりを作って、そこに借り手を募集するとたちまちにしていっぱいになってしまう。

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そして、垣根越しに付き合うこともなくなり、付きあおうともしない。

そういう人情のなさを嘆いているのですね著者は。

そのような嘆きを書くところをみると、この著者は、心温かい人なんだなあということがわかります。

そのような同じ嘆きを、ユルゲン.ハーバマス 『公共性の構造転換』でも読みましたし、『サードプレイス』という本でも読んだことがあります。

都会に住み慣れて、ひとたび田舎に行ってそこの人たちと暮らしてみると非常に人情の通った人たちと出会うことができます。 それが普通の精神生活なのでしょう。

しかし、今のできあがった社会をすべて田舎のような社会に完全に戻すことは不可能でしょう。

私たちにできることは、都会と田舎、これらの両方を観察し、両方のいいところを抽出して、自分の今の生活において実践していくことが大事でしょう。

都会の人情の希薄な社会に幼児期から暮らして、それが当たり前という認識になったら、それが固定化された「文化」になってしまうのです。

そうなってしまわないように、その文化を見直し、それを良き方向に向かわせるための行動をしていくのが大事なのですね。

その固定化された文化の恐ろしさは、中国の裏社会を幾多の本によって知ることができました。 それが文化にならないようにするためには一人一人の行動にあるのです。

今はYouTubeが盛んで、誰も住まなくなった限界集落の模様が動画でアップされていますが、それはそれは寂しいことこの上ないものでした。

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かつてはそれなりの人たちが住んでいたのでしょうが、人が東京を中心とした関東に移住してしまい、そのせいでバスも電車も少なくなり、また店舗も少なくなったがゆえに、あまりに不便になってしまい、その集落から出ていってしまったがゆえに、そのようなことになってしまったのでしょう。

それをどうするか、またどのように思うかは人それぞれの自由ですが、私はあまりにもったいないし、寂しいと思いました。

戦争時の一極集中の残滓がまだ解決に向かっていない、いなそれどころかますます悪くなっているのです。

これまで勉強した内容で鮮明に覚えているのは、人間には2つのタイプがあって、1つは友人がいないと不安になってしまう人。

もう1つは、友人がいなくてもいいというモラルの人。 この2つがあるということですね。

私ははっきり前者のタイプですから、人間は誰もこのように考えているのだと思ってましたが、ある本を読んでこの事実を知り、はっきり認識することができました。

そうですよね、後者のタイプがあるから、その人たちは人をぞんざいに扱い、友人がいなくても平然とした態度でいるのですね。

私は、この著書で書かれている批判の内容を改善に向けていくには、前者の人に期待をしているのです。

だが私を含め、前者のタイプだからといって、それだけでいいということではなく、さらなる前進を常にしていかないと駄目であるということですね。

また、文明下においてはあまりにマスコミや教育において、負けることや貧困化や競争に対する不安を掻き立てていることも批判しているのですね。

その下においては、神経的で精神的な衝動に絶えず駆られているのです。 消費においてもですね。

また文明化した人間の批判として、快を求め不快を避けることばかしているという非難ですね。

それゆえにまた、人間としての温かみを得ることはできないでしょう。

こういうことが悪いということを観念的に知るだけでは、本当の温かみを知ることはできないということですね。

自分が実際に痛みを体感することで、具体的な優しさを得ることができるのは言うまでもないです。

この宗教に入っていれば実感できるなどというのも信用できません(笑)

そして、直ちに衝動で自分の心を満足させようとする性急な要求や個人のあらゆる責任の欠如、他人への感情に対するあらゆる配慮のなさが文明下の人間には多くみられるということですね。

これは幼児期の精神性ですね。

それがいつまでも続くということですね。

この本は1973年に出されたものですが、今も共通する点がいっぱいあると思います。

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言葉には明確に表せなかった漠然としたものが、このように明瞭に書きあらわされると非常に納得できてしまうのですね。

この本のみならず、幾多の本でそれは経験してきました。

やはり誰しも疑問に思うことはあるものです。

それが文明化した人間の精神的な内容についても同様でしょう。

それを認識し、それを良き方向へ向かわせる人、それが市民というものでしょう。

そんな市民が多く出てくれることを、こういった学術的な本は希望しているのです。

確かに、この本に書かれていることだけではありません、問題点は。

それを見つけることが出来たら即座に、よき方向に変えるための行動をするようにしましょう。

そんなことを私も期待しているのです。

それに賛同してくれる人ならば、この本は大いに役立つでしょう。

●この本は以下よりどうぞ!

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文明化した人間の八つの大罪

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カレル.ヴァン.ウォルフレン 『怒れ!日本の中流階級』

2020-03-12 20:38:25 | 政治学

毎回読むたびに、このウォルフレン氏の本には目を見張るものを感じさせられます。

目を覚まさせられる気分になったのは、一番有名になった『人間を幸福にしない日本というシステム』を読んでからですが、この本とも共通するのは分析力の明晰さですね。

西洋に暮らしてきた氏が、日本に来て西洋と比較すると、日本の異様さが浮かび上がってきたのでしょう。

しかし、それは西洋と日本が違うからという単純な理由ではなく、日本というシステムが「市民」を育成することになっていないということだからですね。

市民とは、自らの思想や行動で自分の住む社会を良き方向に向かわせるように考え行動する人民という感じでとらえればいいかなと思います。

それがなければ、やはり市民ではない、ゆえに人を幸福にしないということですね。

氏が嘆いたのは、そもそもそういう市民の観念の教育がなされていない。

不必要な橋を護岸をつくり美しい自然の景観を損なっている。

国民の意見をくみ取るパイプが政治家と出来ていない。

政治活動をするようなシステムが損なわれている。

こういった事が氏が嘆くことなのですね。

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K.V.ウォルフレン

 

決して西洋と比較して、日本が違っているからといって批判しているわけではないのですね。

そういった内容についてもまた批判があり議論の余地はあるとは思いますが、それはまず置いておきましょう。

氏に言わせれば、「日本は先進国の中で唯一中流階級が政治に影響力を持たない国」といっているのです。

これには驚きました。

都市部のサラリーマンや主婦の代表がほとんど全く存在しない、ということです。

戦前の官が公の皮をかぶってそのまま残ったということです!

非常に明晰ですね!

また、時間をかけて官僚や政治家や実業界とのパイプを作っていったということです。 これが族システムということです。

これがまさに先に挙げた不要な公共建設の最たるものですね。

これにより全国にある50万の建設マフィアを生み出していったということですね。

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非常に明晰ではありませんか?

また、日本のシステムでは政治エリートに大衆からの強い要望を伝えられず、アイディアや希望や分析や警告がフィードバックされない。

ゆえに失政がいくらでもまかり通るということですね。

氏から言わせれば、健全に機能する公的な領域とは、社会の様々な場に生きる人々が互いに話あえる場であるとしています。

しかし、ここが国民には利用されていないということです。

そのことで、権力エリートに圧力をかけることであるというのです。 そのことで国民の関心事をわからせることだ、ということですね。

かねてから氏は、小沢一郎氏を称賛しているのです。

自身とモラルが一致しているからです。

ここで小沢氏の本を引き合いに出しています。

「日本が普通の国になるためには政治家が政治のプロセスを支配しなければならない」という箇所を引き合いに出して称賛しています。

 

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  小沢一郎

 

その是非については、各自が自身で考えて持論を練り上げる必要があるでしょう。

ウォルフレン氏は政治家への要望を以下に要約しています。

政策作りにどのように力をふるうつもりがあるかについて話してもらう。

政治家が官僚の力を制御できる体制づくりを目ざす政治プログラムを壊そうとする動きがあったら大いに怒ること(雪崩のように組織的に)。

この2点のようです。

これはの本を読んで感動し、日本が官僚の支配の強い国であるということに賛同できた人ならば、これらを実行するべきであると思います。

私は、の本をいくつも読んでそう感じてきたうちの1人です。

また、この本でも、先の『人間を幸福にしない日本というシステム』にも言及しているように、系列システムについて批判していますが、そこには大手の会社でなければ銀行からお金を借りれない、ということですね。

しかし、今はネットビジネス、あるいは株トレード、外資トレードなどの手法が開発されて、決して大手の会社でなくても信用が構築されてお金を借りることもできますから、必ずしも氏の批判が今もすべて妥当性を持つかどうかは保証の限りではないですが、しかし、今も通底して批判の内容に妥当性があると感じるものはいくらでもあります。

その内容については、個人でこれらの氏の本を読み、そして感銘を受けた箇所については実際の生活上で行動していくというスタンスが大事でしょう。

それもまた「市民」という性質の1つであることに間違いはないでしょう。

氏が中流階級に呼び掛けていのは、中流階級でなければ金銭的な、そして時間的な余裕がなければ政治的な活動に携われないからですね。

私がこのウォルフレン氏の新刊本が出ると聞いて、数年以上前にネット本ショップに予約したのですが、それが急に取りやめになってしまったのです。

そして、それが再発されることなく、今にいたります。

やはり日本の中枢にとって氏の日本のトップシークレットに触れる本は邪魔になってしまうから圧力をかけたのでしょうか、そんな気がしてならないのですね。

しかし、そこで弱音を吐いていては市民たるものとして失格ですね。

そうならないように努力する人が出てくることを期待して、この本をお勧めします。

●この本は以下よりどうぞ!

怒れ!日本の中流階級

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川端基夫 『外食国際化のダイナミズム』

2020-03-12 20:14:05 | 国際関係

 この人の著作は、99年発表の『アジア市場幻想論』を読んですっかりファンになってしまったのです。

その筆致のわかりやすさ、盛り込む情報の中身が、読み手に好奇心を起こさせるに充分で、ついつい読み進めてしまったのです。

この本では、日本の外食企業が海外に進出していった最初の経緯から知ることができるのですが、やはり当時(1800年代)の外食の経営者は、職人気質の人が多かったということですね。

それは非常にいいことではありますが、それが海外に進出する場合は良い点も悪い点もあるということですね。

その内容については、この本を読んでいただくほかないです。

日本の企業が、海外に進出するに際して、どのような文化の障壁を乗り越えて、またどのように自社製品を売っていくかについて、当地の文化や慣習や法律とすり合わせていくかが大事になっていくのは言うまでもないことです。

そういった企業努力の内容を知るということだけでも非常に好奇心をそそられるものですし、これから海外に行く人、あるいは行く途上の飛行機内で読むことで、脳内が非常に展望の開けた状態になることは必至でしょう。

それは私が保証します。

そういった企業に勤めない人でも、海外に行く、あるいは日本国内で海外の人と一緒に国内で触れる機会があるわけですから、こういった事を学んでいくことは大事でしょう。

あまたある著作家の中で、何百冊も読んできた私としては、評価や好みがある程度固まってしまっていますから、毎回この人の本が出たら買う、と決めている著作家は限られています。

やはりそういう人は10指に満たないのが誰しも共通のことではないでしょうか?

この川端基夫さんは間違いなく、その10指に入っています。

先に書いたように、この人の著書の魅力は読んでいて、思いもよらぬ事実の発見もさることながら、新しい視点やヒントを得れることにあるのです。

この方のみならず、本を読んでいてそういうものがなければ読む気概にならないのです。

私が高校時代にも、いろんなアジアの海外に行くと、そこには日本の企業があるということを聞いて驚いたものですが、それは日本が経済的に豊かであった、あるいはそのノウハウが日本の企業に蓄積していたが、海外の国ではそういうものがまだ蓄積されていなかった、ということなどが理由として挙げれたでしょう。

それゆえに、他のアジアの国々を置いて、日本が先端を行くことができたわけですが、今はもうそんな悠長なことは言ってられない時代になったのが、今更ながらわかりました。

韓国、台湾、香港、シンガポール、フィリピンといった国々の外食企業が海外に進出しているということがわかりました。

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これには驚きました。

特に、韓国はサウジアラビア、トルコ、イラン、エジプト、ウルグアイ、パキスタンといった国々へも進出を視野に入れているということを知って驚きました。

そういった国が、日本に倣うというよりも、日本の企業が学ばなくてはならないほどの先端的なノウハウを持っているがゆえに、海外でも大きく進出できたということがわかって驚きました。

日本80年代に大幅な貿易黒字をあげたことは、やはり消費者の立場に立って製品を作り出してきた、ということはわかりましたし、その先人たちの偉業については非常に誇りに思っていますが、それに甘んじているだけではいけない、ということがわかりました。

やはりこういったアジアの外食産業に真摯に学ぶという姿勢が大事なのは、あまりに並みな議論でもうし分けないですが(笑)、そういうことを自分のモラルとして心に留めおくことで、これからの経済運営や経営運営の道が決定するわけですから、こういった本を読むメリットは大いにあるのです。

こういった巨大になったアジアの外食産業の企業と、日本はどのように経営を営んでいるかが気になるところですが、意外なことに協調という形式を採っているを知り、非常に朗らかな気分になりました。

自分の属するお店ではない店が出来たら、そことどうするかを考えるに際して、相手を倒すなどという考えが浮かぶ場合もありますが、私は聖人君子を気取るわけではないですが(笑)、そういう考えには全然与すことができないでいるのでした。

やはり、他の店とも共栄していくことが大事なのではないか、そんな気がしていたのですね。

それこそが真善美ということでしょう。

共栄して相手も自分も金銭的にも精神的にも豊かな生活を送るというような。

何も考えずに、ただ自社の売り上げだけを上げる事だけに専心するというのは好きになれない考えですね私は。

それが、最善の理念ではないのか、そんな思いでいたのですが、やはりそうではないかという気がしていたのですが、昨今の日本企業の採択した道は「協調」であるということを知り、ほんわかとした気分になりました。

香港生まれの中華系ファーストフードのチェーン店である「大家楽集団(カフェドコラル)」は香港に330店舗を持ち、大陸には120点を展開しているのだそうです。

日本の「グルメ杵屋」の傘下である、サンマルクも鎌倉パスタを大家楽集団と提携し、香港、マカオ、大陸に事業展開しているのだといいます。

また香港最大の外食産業である「美心集団(マキシム)」とは、自社とスタバで共同で展開し、2005年には元気すしが提携した模様です。

また台湾の企業である「85度C」はケーキとコーヒーの店から出発したようですが、パン生地を工場で一括清算し、冷凍し、各店舗に配送するシステムを作り上げたようです。

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店頭でのノウハウ依存度を如何に小さくして店舗ごとのばらつきを小さくし、商品やサービスの標準化を図るかを考えた結果なのですね。

価格がリーズナブル、品質の安定性、品揃えの充実、この3点が大事なのですね。

これはよくわかります。

昨今のいろんな日本国内のベーカリーのチェーン店をみると、非常に目を見張るものがあります。

ものすごく美味しくて、しかもリーズナブルな値段で、しかも店ごとに味のばらつきがないのですから。

そういったチェーン店のノウハウとこういったアジアの国のノウハウには共通するものがありますね。

以前でしたら、チェーン店のベーカリーは旨くないという相場だったのですが(私の認識では)、今は非常においしく、しかもリーズナブルゆえに何回もリピートしてしまうのが非常に多いですから。

昨今は、やたらとタピオカミルクティが流行っていますが、それがなぜ流行っているかを、この本が垣間見せてくれているのです。

その発祥はやはり韓国などのアジアからの会社のようですね。

チャタイム、シンアティ、カムパイ、COCO都可、ゴンチャといった会社のようですね。

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これらの企業戦略をみると、タピオカミルクティにミルクを入れるか入れないかをお客さんが決めれる、ゆえにベジタリアンの人でもオーダーするということですね。

砂糖を入れるか入れないかも決めれるので、お客さんのオーダーで決めれるので、お客さんの色を出すことができるということですね。

しかも機械が、すべてやってくれるので、狭いスペースでもでき、またバイトでも出きるということですね。

日本のように就職を終身雇用で生きるという観念が強いところでは、なかなか理解できないことですが、海外はアジアであろうと西欧であろうと、そういう考えは浸透していないということですね。

その是非はここで論じているいとまはないですが(笑)、店長をはじめとした上役の育成には日本の企業が困難を極めているのは、こういう事情による所が大きいのですね。

しかし、今は1つの企業で永遠に働き続けるという時代でもないですし、ましてや海外ではまさにそうなのですから、そこはフレックスに考えるべきでしょう。

その是非は今は問いませんし、その考えが誤りかどうかは、幾重にも重ねた議論をした末に結論付けたいと思います。

私が、そのアジア発のタピオカミルクティのチェーン店の詳細をみたときに、妥当と思われたのは、狭いスペースでもできるということですね。

いや狭いスペースだからこそ、廉価で質の高いモノを提供できるということですね。 日本の「丼丸」をみてみましょう。

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これは日本にある海鮮丼のテイクアウトのお店ですが、非常に安く、しかも本格的な質の高い海鮮丼を食べれるお店として注目していました。

一番オーソドックスな盛りの丼が540円でテイクアウトで食べれるのですから参りました。

しかも丼のバリエーションが多く、30種類以上あるのです。

しかも本格的な寿司屋さんで食べれるような高級な丼を出すのですから更に参りました。

私の住む東京のいろんな繁華街で、カウンター式の海鮮丼の店で食べたことがありますが、どれも並の味でそんなにおいしいと思いませんでした。

ゆえに、リピートもしようとは思わなかったです。

しかし事、丼丸さんに至っては、非常に質の高い海鮮丼を500円代で食べれるゆえに、何度もリピートしてきています。

そう思う人は私だけでなく、私が買いに行くと必ず先客がいたり、もしくは後客が来たりしているのが通常です。

お客が私だけ、ということは1度もなかったです。

この店は全国にチェーン展開していますが、やはり味と値段が無数の人に受け入れられているからでしょう。

この「丼丸」がこういったアジアのチェーン店を模倣して、あるいはヒントを得てこういう業態にしたのかどうかはわかりません。

しかしいずれにしろ、その業態は非常に参考になることは間違いないですね。

狭いスペースでできる。 質の高いものを提供できる。

こういうところは目を見張るものがありますね。

個人でもしようとすればできるのです。

しかしやみくもに事業展開しているだけで経営を勉強しなければダメなのは言うまでもないですが(笑)。

特に味に関しては、確固たる修行や研修やオペレーションがなくてはいけないのは言うまでもないです。

この本を読んで、韓国の企業である「デリマンジョー」は、1口大のたい焼きを出すことで有名ですが、その大きさゆえに、日本のたい焼きのように大きくないがゆえに多くの人が試そうという気になる、また日本のたい焼きよりも安く買える、ということで日本のたい焼きの売り上げを大きく引き伸ばしたということのようです。

これはネパールで生まれた仏教が日本に渡り、そして創価学会という変形したかたちで、ネパールにその支部ができたというような例と共通するようで、おかしくなってしましました(笑)。

日本のお菓子であるたい焼きが、海外の変遷した方の方が受けてしまったということですね。

やはりこういった先進企業に学ぶところは率先して学んでいかないといけない、ということですね。

こういった海外における日本企業の展開をみていくと、非常に海外企業に学ぶ点が多いのです。

その内容について更に詳しく、しかも実感して読みたい人にこの本をお勧めします。

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外食国際化のダイナミズム: 新しい「越境のかたち」

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