この本で、知識人が中世において内面や外面でどのような変遷をしていったかを知ることができ、大変興味深く読みました。
この時代にいきたアラベールというキリスト教徒の人は『論理学入門』という本で「倫理よ、あるいは汝を知れ!」という言葉が有名だそうですが、内省に意義を求め理性と信仰の調和を目指したものはなかったようです。
しかし、12世紀のシャトルは、算術、幾何、音楽、天文学がより有効とする論を発したのでした。 自然を神聖視せずに、理性の有効性を論じたのでした。
キリスト教の跳梁跋扈した時代においては、予定調和説というものがあって、祈りをささげていれば、それは神がお導きになったのであって、凶とでようが吉と出ようが、祈りをしていれば、結果の良しあしは問わなかったようですね。
しかし私はこういう考えには絶対に与したくないものですね。
必ず物事には原因と結果があり、その内因を構造的に調べて調査して、その結果のもとを探し、そこで結果を論じ、それ以降はどうするかを決めるのが妥当というもので、祈ったから結果がどうなろうとしらない、という考えには私は勧めたくないものですし、そういう考えにはならないのですね。
こういう理性による良き社会を作ろうという考えをユマニスムというのですが、私はこのユマニスムに与したいものです。
ユマニスムは、理性によって自然を変えることができるという確信を持ったといいます。
ユマニスムの跋扈した時代には、<製作所としての世界>というストア派の隠喩もできたそうですね。
その跋扈によって論理学、自然学、倫理学、技芸、技能も新たに隆盛をみるのでした。
そして13世紀は大学の世紀といわれたそうです。
12世紀から始まる都市の発展に促された精神の職人と自治都市運動により開花したのだといいます。
13世紀当時の大学の教師は=聖職者だったのだそうです。
教皇は、大学に知的活動の重要さを認め、特権を授けたのでした。 中世に勃興したスコラ学は、キリスト教と古代思想を吸収してできたのだそうです。
そして知識の源泉は、聖書、教父、プラトン、アリストテレス、アラビア学術であったそうですね。
13世紀の教授は、教会と要職を独占したのだそうです。
それくらい、当時には理性の力が多くの大衆的な支持を得ていたのでしょうね。 しかし、14~15世紀になると、やはり変遷をまぬかれなかったようですね。
君主に仕え、管理され、臣下になることで富、権力、威勢を得るようになったのだといいます。
ですからこの本では、このころを「中世知識人の消滅」といっています。
封建的、領主制的、資本主義的体制の下で得られる収入で暮らすようになったのだといいます。
というのは、家屋、地所で利殖をはかるようになったのだといいます。
貴族に仲間入りするために、貴族風の暮らし、衣服をしていったのだそうです。
そして貴族風のお祭り、舞踏会、見世物、劇の上演、騎馬試合といったものも催していったのだといいます。
当時は、手による労働を極度に蔑視されたのだといいます。
こういった風潮が、大学と貴族の寡頭制の癒着を助長したのは言うまでもありません。
知識を得て、社会がよくなるようにそのための論文を書き、それを読んだ人の人生をよくするのが知識人としての役割のはずだったものが、このような堕落を生んでしまうのは、やはり古今東西変わらぬ事実のようですね。
いろんな宗教団体や大学でもこういった悪しき風潮が生まれてしまうのは、間違いがないようですね。
こうならないように自己を律するためにも、こういった本を読んでおくのは意義のあることでしょう。
そして、この後に、信仰問題から理性を引き離すことをしだした人がいたそうです。
それが、ドゥンス.ストコスだそうです。
この人の論じた内容については、この本の作者は、科学的記号体系の欠如、理論的な発見を活用しない技術面の停滞と評していますが、私はドゥンス.ストコスの書いた本をつまびらかに読んだわけではないので、その是非については論じません。
しかし、大学の当初の理念を忘れて、このような大学の知識人たちの生態の変遷が起きてしまうのは、普遍的な事象として興味深いものがあります。
そうならないように、自分を戒めていきたいと思いました。
私が、大学で学べたのも、このような本をたくさん読んで勉強できて、知的世界観を広げることができたのも、これまでの人類が重ねてきた叡智によるものです。
そのことに感謝の意は尽きません。
これからも勉強を続けて、いろんな精神的な糧を得ていきたいと思いました。
●この本は以下よりどうぞ!
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中世の知識人―アベラールからエラスムスへ (1977年) (岩波新書)
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