『ひよわな花.日本』というセンセーショナルな題名で名を馳せたブレジンスキー氏の本です。
これは社会主義の試みが大いに失敗におわったということに鑑み、その負の遺産として人類が忘れてはならない、ということで言葉をまとめています。
そうですね。
また、いつの日かどこかの国が社会主義を採択してしまわないように、その遺産としてそういったたぐいの本はいつまでも遺しておかないといけないでしょう。
私有財産制が悪の根源として認識されたのは、資本主義の興隆によって、持てるものと持たざる者との資産の差が開き、そのために持たざる者は生活もしていけなくなるという状態が出現したからですね。
その考えに何百万人もの人の心をとらえたということですね。
豊かな階級に対する暴力の正当性まで与えたのですね。
こういった考えに、単純に生活している人も教養ある人達の両方を捉えたのですね。
こういった社会主義の空前の盛り上がりの中、そういう社会主義を採択した国は最盛期で地球の約半分をしめるまでになったのは事実です。
しかし、その思想とはうらはらに、実際に社会主義を採択した国の現状はどうだったのかといえば、それは歴史の本を読むことで明らかになるのですが、政治的には大量殺りくと検閲、経済的には滞貨と行列を生み出したのでした。
政治的には、政治権力を少数に、恐怖政治を頼みにしたようですね。
国家公認の暴力、新たな創造性を摘み取る警察国家、特権階級のヒエラルキーを生み出したのですね。
社会主義を採択した国では、多くの人が殺されたのです。
それは、政府の中枢の人物が権力を握らないことには指令が出せないからですね。 そのために権力を握って指令を出す人が不満分子を失脚させる、あるいは権力の部から去らせるために殺すなどという行為が平然となされたのですね。
その数、百万単位でなされたのです。
その例は、ソ連の中心国家であったロシアのみならず、ポーランドやハンガリー、中国といった国でも共通して観れる事象でした。
その詳細は、この本を読んでいただくとしましょう。
しかし、ソ連ではそんなおよそ民主主義を満たさない政治の状態であっても、経済的には当初は成長を続けていたのは事実で、はじめてから5年で15%の成長率を達成し、国民所得は4倍になったのでした。
しかし、それは物資の足りない状態であったからこそ可能な数字であったのは確かで、物資がほぼ間に合うようになれば、更に国民に買ってもらう必要があるのは確かです。
そうでなければ更なる発展などないのですから。
そのために、より良いものをより安くという技術革新をおこなわなければならないのですが、国の用意した施設や工場で働くだけでいいという社会主義であってはそれがなされず、どんどん資本主義に成長率で後れをとっていったのでした。
そこで、ソ連ロシアにはゴルバチョフ大統領が登場し、社会主義の国を立て直すために、グラスノスチ(情報公開)や官僚制や中央計画機関の解体などを積極的におこなっていったのは周知の事実ですが、時すでに遅しだったようです。
ゴルバチョフ
ソ連では91年にクーデターが発生し、ソ連は解体を余儀なくされたようですね。
こういった事実から明かになったのは、中央計画経済は効率的に作動しないということですね。
社会主義を採択した国は共産党一党独裁であることが必然化し、その国の長や、その周辺の人たちは、自分たちの思い通りの政治をおこないたい衝動にかられ、そして自分たちだけが贅沢な生活をしたいがゆえに利用手段になってしまうのですね政治が。
国民の生活を向上させることによって、そういった事が達成されるわけではないのですから、国民生活の細部の向上などや環境の改善など関心の外にあったようですね。
ソ連には給湯設備などなく、下水施設も不完全だったようです。
しかも、工業化による環境汚染に関しても、ほとんど手つかずだったようです。
「高い生産性と創造力に富む複数制の社会経済は一党独裁とは共存でいない」とはブレンジンスキーの言葉ですが、これは至言ですね。
そういった社会主義を採択した国の例を歴史的に明らかにしてあるので、その詳細を知るにはこの本を読むといいでしょう。
いまや世界2位の地位を手に入れた中国ですが、この国もまだ一党独裁であるがゆえに、党の利益にならないがゆえに、適宜な行政がなされず、国民のほとんどが貧困の中で暮らしているのは、前のページで書いたギ.ソルマンの『幻想の帝国』で明らかにした通りです。
やはり、人間の正義感を信じすぎて、政治の関心があって、ある程度の教育水準をあげれば、誰もがそういった社会主義が上手くいくようになるだろうと、理詰めで解決しようとしすぎたことろに失敗の根はあったようですね。
確かに国が社会主義を採択して、政治をおこない共産主義を目指せば出れもが至福になるという試みは失敗に終わりましたし、これからそういう試みはなす国はでないでしょう。
それでも社会主義の理念から学ぶことは多々あります。
例えば、累進課税や労働組合といったものに関しては、社会主義から学び、資本主義国が取りいれたものであり、そのことで絶対的な貧困は登場しなかった国も多々あったことは間違いない事実です。
その1つがこの日本です。
こういった事を部分的に適宜、採択して調整していくことは大切なことではありましょう。
ですから社会主義が失敗に終わったからとて、全否定する必要はないということです。
でも、失敗の遺産として人類が忘れてはならないことでしょう社会主義の試みは!
その忘れてはならない面を誰もが学んでいかなくてはならない本として、この本はお勧めします。
非常に読みやすく、366ページの長きにわたり簡潔丁寧に書いてある本ですからねこれは。
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