スビクニュー.ブレジンスキー 『大いなる失敗』

2019-07-20 22:40:49 | 社会主義論

『ひよわな花.日本』というセンセーショナルな題名で名を馳せたブレジンスキー氏の本です。

これは社会主義の試みが大いに失敗におわったということに鑑み、その負の遺産として人類が忘れてはならない、ということで言葉をまとめています。

そうですね。

また、いつの日かどこかの国が社会主義を採択してしまわないように、その遺産としてそういったたぐいの本はいつまでも遺しておかないといけないでしょう。

私有財産制が悪の根源として認識されたのは、資本主義の興隆によって、持てるものと持たざる者との資産の差が開き、そのために持たざる者は生活もしていけなくなるという状態が出現したからですね。

その考えに何百万人もの人の心をとらえたということですね。

豊かな階級に対する暴力の正当性まで与えたのですね。

こういった考えに、単純に生活している人も教養ある人達の両方を捉えたのですね。

こういった社会主義の空前の盛り上がりの中、そういう社会主義を採択した国は最盛期で地球の約半分をしめるまでになったのは事実です。

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しかし、その思想とはうらはらに、実際に社会主義を採択した国の現状はどうだったのかといえば、それは歴史の本を読むことで明らかになるのですが、政治的には大量殺りくと検閲、経済的には滞貨と行列を生み出したのでした。

政治的には、政治権力を少数に、恐怖政治を頼みにしたようですね。

国家公認の暴力、新たな創造性を摘み取る警察国家、特権階級のヒエラルキーを生み出したのですね。

社会主義を採択した国では、多くの人が殺されたのです。

それは、政府の中枢の人物が権力を握らないことには指令が出せないからですね。 そのために権力を握って指令を出す人が不満分子を失脚させる、あるいは権力の部から去らせるために殺すなどという行為が平然となされたのですね。

その数、百万単位でなされたのです。

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その例は、ソ連の中心国家であったロシアのみならず、ポーランドハンガリー、中国といった国でも共通して観れる事象でした。

その詳細は、この本を読んでいただくとしましょう。

しかし、ソ連ではそんなおよそ民主主義を満たさない政治の状態であっても、経済的には当初は成長を続けていたのは事実で、はじめてから5年で15%の成長率を達成し、国民所得は4倍になったのでした。

しかし、それは物資の足りない状態であったからこそ可能な数字であったのは確かで、物資がほぼ間に合うようになれば、更に国民に買ってもらう必要があるのは確かです。

そうでなければ更なる発展などないのですから。

そのために、より良いものをより安くという技術革新をおこなわなければならないのですが、国の用意した施設や工場で働くだけでいいという社会主義であってはそれがなされず、どんどん資本主義に成長率で後れをとっていったのでした。

そこで、ソ連ロシアにはゴルバチョフ大統領が登場し、社会主義の国を立て直すために、グラスノスチ(情報公開)や官僚制や中央計画機関の解体などを積極的におこなっていったのは周知の事実ですが、時すでに遅しだったようです。

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ゴルバチョフ

ソ連では91年にクーデターが発生し、ソ連は解体を余儀なくされたようですね。

こういった事実から明かになったのは、中央計画経済は効率的に作動しないということですね。

社会主義を採択した国は共産党一党独裁であることが必然化し、その国の長や、その周辺の人たちは、自分たちの思い通りの政治をおこないたい衝動にかられ、そして自分たちだけが贅沢な生活をしたいがゆえに利用手段になってしまうのですね政治が。

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国民の生活を向上させることによって、そういった事が達成されるわけではないのですから、国民生活の細部の向上などや環境の改善など関心の外にあったようですね。

ソ連には給湯設備などなく、下水施設も不完全だったようです。

しかも、工業化による環境汚染に関しても、ほとんど手つかずだったようです。

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「高い生産性と創造力に富む複数制の社会経済は一党独裁とは共存でいない」とはブレンジンスキーの言葉ですが、これは至言ですね。

そういった社会主義を採択した国の例を歴史的に明らかにしてあるので、その詳細を知るにはこの本を読むといいでしょう。

いまや世界2位の地位を手に入れた中国ですが、この国もまだ一党独裁であるがゆえに、の利益にならないがゆえに、適宜な行政がなされず、国民のほとんどが貧困の中で暮らしているのは、前のページで書いたギ.ソルマン『幻想の帝国』で明らかにした通りです。

やはり、人間の正義感を信じすぎて、政治の関心があって、ある程度の教育水準をあげれば、誰もがそういった社会主義が上手くいくようになるだろうと、理詰めで解決しようとしすぎたことろに失敗の根はあったようですね。

確かに国が社会主義を採択して、政治をおこない共産主義を目指せば出れもが至福になるという試みは失敗に終わりましたし、これからそういう試みはなす国はでないでしょう。

それでも社会主義の理念から学ぶことは多々あります。

例えば、累進課税労働組合といったものに関しては、社会主義から学び、資本主義国が取りいれたものであり、そのことで絶対的な貧困は登場しなかった国も多々あったことは間違いない事実です。

その1つがこの日本です。

こういった事を部分的に適宜、採択して調整していくことは大切なことではありましょう。

ですから社会主義が失敗に終わったからとて、全否定する必要はないということです。

でも、失敗の遺産として人類が忘れてはならないことでしょう社会主義の試みは!

その忘れてはならない面を誰もが学んでいかなくてはならない本として、この本はお勧めします。

非常に読みやすく、366ページの長きにわたり簡潔丁寧に書いてある本ですからねこれは。

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大いなる失敗―20世紀における共産主義の誕生と終焉

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ギ.ソルマン 『幻想の帝国』

2019-07-15 01:01:52 | アジア経済

以前に莫邦富氏の本『アジア覇権の行方』を読んで、非常に感銘を受けました。

朱鎔基が国のイニシアティブを摂ることで、大きく発展に寄与し、それが起点となって中国経済の現在の地位を築くことになったということを読んで、嬉しい気になりました。

そして今や中国世界2位を誇る経済大国になったのでした。 こういうことをもって、いくら共産主義の国だったからといって、市場経済化したのだから、いずれ政治の民主化も叶うだろうと楽観視していたのですが、やはりそれはそれほど甘くなかったようですね。

この『幻想の帝国』はフランス人ジャーナリストであるギ.ソルマン氏が、実際に中国にいって、そこで語りあった科学者、作家、宗教家などと話し、それを元に中国社会を詳らかに論じたものです。

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しかし、断っておかないといけないのは、その話をした内容を拡大解釈をしたものではなく、きちんと他の多くの本や資料を読んで得た情報を展開しながら、論じたものですから、単なる学者以上の詳らかさ、奥深さの感じれる本であるということですね。

しかし、この本を読むと中国社会の惨さがわかる気がしますね。

たとえ世界2位の経済大国の地位を手に入れたからといっても、それがそのままその社会を向上させるかといえばそんなことはないということがわかりました。

それはやはり人間社会ですから、その人間の心理的性質ゆえに、そういう結果になってしまう、ということですね。

その原因の最たるものは、中国共産党一党独裁ということにつきますね。

それゆえに、権力を握る者が、その恩恵を逃さないために、相応の結果を招いてしまう、ということですね。 確かに中国は大国になりました。

それはしかし13億の人口のうち2億の人間を、中産階級の生活を謳歌させているだけで、残りの人間は、最低限のサービスをうけることなく貧しい生活をしている、ということですね。 これには驚きました。 農村の中で4分の3の人たちは、最も貧しい生活をしているそうです。

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最も貧しいのは河南省で、農民のほとんどは生涯医者にかかることなく終わるのだそうです。

そこでは、収入を得るために血を売っていた、ということです。

その採血の際にエイズに感染したという痛ましい例が、この本の中で多く暴露されています。

このうわさが広まると、国の威信にかかわることであるので、党は省を隔離し、地図から消したということです。

そしてアクセスも禁止したということです。

その人たちを救済しても、中央の党員は何も得るものはないのです。

ですから、そういった人たちは放置されているのだということです。

行き過ぎた検閲が行われていて、異議申し立てをすれば、投獄されるのとだということです。 大躍進の時に2000万人が、文化大革命時には3000万人が殺害されたということです。

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が私有地と収穫物を取り上げ、そして殺されたのだそうです。

そして読むことが許されているのは、きわめて少なく、革命的な8つの歌劇しか鑑賞することは許されていなかったということですね。

また、中国において人々と物資を輸送するのに、一番いいのは鉄道であるそうです。

高速道路や空港は、ほとんどが政治家が使うものであり、ほとんどの一般庶民が使わないもので、それらは無用の長物であるということですね。

これらは欧米の金融機関が融資して作ったものです。

しかし、その建設資金の弁済は誰がするというのだろうか?と疑問を投げかけていますね。

国有銀行が、その建設資金の金源になっているのだそうです。

しかし国有銀行は、地元の党支部の要求に服従するしかないのだといいます。 こういった野放図な行政は、やはり共産主義国であるからこそ、そういう傾向に歯止めがかからないのでしょうね。

確かに資本主義国でも、そういう事もままありますが、それは共産主義国であれば、その傾向はさらに強い、ということですね。 利益の出ない分野に投資がなされているがゆえに、充分な雇用が確保できていないということですね。

道路や空港のみならず、がら空きのビル、住宅、オフィス、施設が無数にあるというのです。

経済大国にのしあがった、しかし、気になるのはその実態ですね。

私も、そのことに興味津々でした。

世界に誇れる中国のブランドはないですね。

しかも発明による生産方式もです。

ハイテクは中国の輸出の半分をしめますが、その実態は、電子部品を少しでも搭載していれば、どんなものでもハイテク製品として掲げているだけだということです。

労働力を絶え間なく吐き出すポンプの役割を党によって確保されているだけであり、それが長期にわたり経営者の利益を守り続けるのだそうです。

ゆえに技術革新は必要ないのだといいます。

莫邦富氏の本を読むと、海爾(ハイアール)という中国のメーカーが、日本の松下なみの成長を遂げていることを知りました。

その製品は、日本でもみることはできます。

しかし、それはドイツからの技術移入によってであることは確かです。

これほどまでに世界での技術の向上があっては、それから更なる技術的な向上は難しいことは確かです。

それが党の経営方針ゆえにかなわないのだとしたら、悲しむべきことですね。

技術的な向上が叶うものもかなわなくなってしまうとは。

しかも中国からの製品が売れることによって経済的にも発展することに寄与するわけですが、今だ中国は法治国家でないがゆえに、また法を犯しても儲かればいいという思いが通念化しているがゆえに、海賊版DVDやコピー薬品、精製ドラッグはかなり生産されている、ということですね。

しかもそれを生産する組織は、ギャングやマフィアの保護下にあるがゆえに、放置されたままということですね。

しかもコンピュータソフトの盗作品がコピーされて、世界中にインターネットを通じて売れらていた、ということです。

やはり、こういった日本に住んでると考えのつかない違法なことや、その他、反人道的なことが平然と行われているのが、中国の文化になってしまっているのですね。

文化にまでなってしまっているがゆえに、容易には変えられないし、教育を施せば、というような緩い考えも通用しないということがわかります。

これまで、『黒社会』『蛇頭』といった中国の裏社会のドキュメントを追った本を読んだときにもやはり、これは容易には変えられないなと思ったのですが、それは経済大国にのし上がったがゆえに解決できるというようなものではないのが、この本を読んで更に強化されました。

ことは容易でないゆえに、処方箋は書かれていませんし、だからといってただ傍観するだけでもいけないでしょう。 しかし市民として、中国が良くなる手立てがあるかどうかをかんがえつつ、見守りたい気がしました。 我々にもすることがあることが見つかったら、その行動を率先して行うことが大事だなと思いました。

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幻想の帝国―中国の声なき声

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