佐々木力 『科学技術と現代政治』

2016-03-16 13:11:11 | 現代社会

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私はこの本を非常に興味深く読ませてもらいました。

90年に社会主義体制が世界的に崩壊し、どの国も資本主義を選択するようになりましたが、だからと言ってそのまま資本主義が無批判でいいということは絶対にないのですね。

資本主義は完璧なシステムではないのですね。

この本が書かれた90年代の後半に、この著者がいろんな国を歴訪した際に、ヨーロッパ、南米、アジア、北米などにおいて、マルクスや社会主義の思想が復権していた、ということを書いておられます。

また95年フランスで社会党のジョスパン氏が首相に就任しました。

なぜこのようなことが起こるのかといいますと、社会主義の思想が今の資本主義の中でも取り入れられる部分や規範となる部分を持っているからですね。

どういうところがそうなるのか、といいますと、環境政策、エネルギー政策といった部門でですね。

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日本は、官僚主導のトップダウン的な手法なのです。

その手法でもっていまだに日本は原発を稼働しておりますが、1999年の9月30日において東海村の臨界事故は、その弊害でもって起きてしまったのです。

また、水俣病もその弊害の1つといえるでしょう。

驚くことに現代のヨーロッパ諸国のほとんどは社会民主主義的政策を採用しているというのです。

そういう国での政策は、官僚主導のトップダウン的な手法とは反対のボトムアップ的民主主義であるということです。

この本の著者の佐々木力氏は、「プロレタリア民主主義の手続きを介した社会主義的政体を目指すべし」と書いております。

この本の中で、内橋克人氏『共生の大地』(岩波書店)という本を紹介していますが、その本によれば、デンマークにおいては、エネルギー成長を伴わないで経済成長を可能にしてきたディカップリングを紹介しています。

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また、デンマークは比例代表が基本になっているようです。

2%獲得で議席を獲得できるようです。

それで、社会民主主義政党が、単独か連立で政権誕生するというのです。

現代の北欧のエネルギー政策は、こういったこれまでの資本主義国の起こしてきた失敗を半面教師にして、その失敗を歴史的な経験を活かしてなされているのです。

その失敗の歴史的記録があるからこそ、社会民主主義政策が可能なのです。

それがあるからこそ、環境汚染や食料汚染は、事後的に罰するのではなく、事前に回避するということが可能になったのです。

かつて私が、 『北欧のエネルギーデモクラシー』という本の紹介をしたときに、

「デンマーク工科大学のニールスマイヤーと8名の研究者によって、地域熱供給を導入することで社会全体のエネルギーを合理的に効率的に利用し、それによって、18%のエネルギー需要は伸びを見せましたが、経済成長は70%もの伸びを見せた」

という例を紹介しました。

これは官僚主導のトップダウン方式の政策では到底不可能ですね。

佐々木力氏の規範とする社会民主主義国は、その反対のボトムアップ的民主主義なのです。

エネルギー政策においてもやはり原発は問題にならざるを得ません。

原発は、放射能の危険性があります。

放射能はがん発症の原因になります。

また原発は、供給電力を需要によって調節できない、というマイナスの面があるのです。

であるならば、日本は脱原発の方向へいかなくてはいけませんが、3.11の東日本大震災以後の原発事故以降においても、いまだその方向へいってません。

佐々木力氏は、「テクノロジーは明確なグローバルビジョンとそれを支える社会システムによって裏打ちされていなくては抜本的解決にならない」といいます。

建築都市計画や福祉の充実においてデンマークは先をいっています。

そして、廃棄物の法制化もドイツでなされました。

その他、環境関連グッズの新規雇用やワークシェアリングなどを採用し、これから資本主義国が対面するであろう問題にこういった北欧を中心としたヨーロッパ諸国は取りくんでいます。

しかし日本では、こういった動きが見れません。

環境資源問題の根本的解決の方向を探っていくとどうしても現在の資本主義経済の枠組みでは不十分であることは明白です。

であるからこそ、北欧諸国の研究が多くなされ、新評論という出版社においては、こういうこと研究した本が多く出されているのがわかります。

しかし、こういった北欧のいい面だけを見ていると、どうしてもこういった国がユートピアに様に見えてきてしまいます。

全く欠点のないパラダイスのような観がしてきます。

やはり何事も、いい面と悪い面の両方が存在するのだから、ことさら北欧諸国のいい面だけを取り上げて称賛だけするのはやめたほうがいいでしょう。

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こういった諸国のルポ本や批判を書いた本も読んで吟味していきたいと私は思います。

しかし、この本や他の北欧について書いた本を読むと、これから日本を含む資本主義国が学び、それから行動していかなくてはいけないことが多く書かれていいることは間違いありません。

そこでいいと思われた部分については、自分の生活に取り込んでいかなくてはいけません。

北欧のエネルギー政策について、日本もこうしたほうがいいと思われたならば、「日本もこうなったらいいな。」と思っているだけではそうはなりません。

日本のような官僚主導のトップダウン方式の政策では、いつまでたっても脱原発にはなりません。

ならば、自宅の電力供給を太陽光にする、ということが必要でしょう。

そういう人が多くいれば多いほど、脱原発に向かうようになると思うのです。

原発による電力を使う人がいなくなれば商売にはなりませんから、やめざるを得なくなるのです。

自分がいいと思えるものを売っても買ってくれる人が少ない、あるいはいなければその商品を売るのをやめざるを得なくなるのと原理は一緒です。

そういう状態を目指していくことが大事だと思うのです。

そういう「よき方向へ向けた行動」をする人が多くなることを願って本は書かれている、という部分もあるのは至極当然でしょう。

やはり、その本を読んでいいと思ったことについては行動していかなくてはならないことは明白でしょう。

この本や他の本で感銘を受けた人は是非とも行動していきましょう。

電力供給に太陽光がいいと思った人は、自分の宅を太陽光に変えましょう。

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この本は、amazonのレビューで「思想的に偏向している」などと書かれていますが、そんなことは私には感じれませんでした。

社会主義が崩壊したからといって、社会主義について全く人類が学ぶものはないかといえばそんなことはないですし、その理念の部分を政治に活かしている国は今でも多くあることは先にも書いたとおりです。

社会主義が崩壊した。

だから社会主義からは全く学ぶものはない、というものの考え自体が全く誤りなのです。

例えば、資本主義国で採用されている累進課税や労働組合などは、まさに社会主義思想から出てきたものなののです。

そういったスタンスで、この著書の佐々木力氏は、社会主義思想にほれ込んで、その理念の重要性をいろんな本を書いているのです。

例えば、『マルクス主義科学論』などはその最たるもので、私は異常な好奇心が喚起され、一気に読んでしまったものです。

この本も、非常に興味深い知識が書かれていて、ついつい読み進めてしまったのです。

読んだ人が学べることが多く書いてあると断言します。

そんな事情ですので、この本は何回も読み返したい本でありますし、お勧めしたい本でもあります。

●興味の出た方は以下よりどうぞ!

科学技術と現代政治 (ちくま新書)

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科学技術と現代政治 (ちくま新書)

 

その他佐々木力氏のお勧め本

マルクス主義科学論

 

その他おススメの紹介ページ

飯田哲也 『北欧のエネルギーデモクラシー』

 

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ビルエモット 『日はまた沈む』

2016-03-13 16:33:48 | 現代社会

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この本は、日本の繁栄の時代の変遷を扱ったもので、読んでいる人に非常に緊張感をもたらす本であることに違いはないと思います。

80年代に、日本は非常な繁栄を享受することができました。

85年から86年には、6大都市の地価が2年になりました。

そして、85年の為替レートの急激な変動において、輸入品が安く手に入るようになり、海外旅行も簡単に行けるようになりました。

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87年12月、JALの持ち株の34.5%を売却しました。

また国力のバロメーターの1つは、モノづくりの能力にあるはずです。

良い製品を作れるかが、国の命運を左右することになるのは当然です。

日本は世界に冠たるモノづくり大国であったことは間違いありません。

その例として、乗用車の「日産」をこの本では挙げられています。

その日産は、労務管理と品質管理が非常にレベルが高いのです。

労務管理では従業員が参加するQCサークル、品質管理では統計的アプローチカンバン方式が他国と比べて際立って優れている、ということをピーターウィケンズ『ニッサンへの道』という本で紹介されていたそうです。

特に、日本人の自社への忠誠心の強さを強調しているのです。

このような例がいくつも列挙されていて、日本の繁栄のほどがありありとよみがえってくることは間違いないでしょう。

しかし、その繁栄はいつまでも続かないだろうというのが、この本の作者であるビルエモット氏の主張です。

この氏以外にも、何冊か本を読めば、そのことはわかります。

エモット氏が曰く、日本は「慎み深い国から高慢な国」になり、「勤勉な国から快楽追及の国」になり、「若者が多くいる国から年金生活者の国」になるということです。

また、「1億総中流社会」と言われるほどの、平等な社会も揺らぐということもここで書かれています。

この本は1990年に書かれていますが、現在の日本を見ればわかるように、「1億総中流社会」などというものではなく、厳然たる格差社会です。

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そのことを当時予見できていたエモット氏は慧眼だといわざるをえないです。

野村総研「ニューリッチ」の定義は、1億円以上の資産がある人ということですが、ニューリッチの出現で貧富の差が拡大していくだろう、ということをエモット氏は言っているのです。

ニューリッチの特徴としては、

土地売って郊外で暮らしている

両親が資産家でそれを相続している

事業経営(レストラン、ビデオレンタル、インテリアデザイン、不動産業、旅行業)をしている

の3つを挙げています。

ビデオレンタルとは古めかしい事業で、今はこれをしても絶対に儲からないだろう、ということは明白ですが、こういった経済学の本に取り上げられていたということは、相当儲かっていた業種なのだなあと驚愕の思いにさせられますね。

教育費が高騰していき、実力のみでは良い職業につけなくなるだろうというのがエモット氏の見解でした。

厳然たる学歴社会の到来を予測していたのですね。

その通りですね。

教育費の高騰で、東大に行くにも1000万円以上の年収のある人でないと東大にはいけない社会になってしまったのですね。

そのことは、森永卓郎氏の本でも書かれています。

森永氏も、また私が大学時代にお世話になった東大卒の教授にしろ、普通の家庭育ちで、都立青山高校に行き、高校時代は遊びに遊んだにも関わらず東大に行ったようですが、そんな悠長なことではないようですね、今は。

そして医療費ですが、2010年には、年配者の医療費はGNPの40%にも上るだろうという見解を出しています。

この本が書かれた1990年には、「そんなすごいことに?」と疑問を出されそうですが、高齢化社会になれば当然のことでしょう。

こういった先々のことを80年代に繁栄を享受していた人たち(ほとんどの日本人がそうだったでしょうが)は考えていたでしょうか? 非常に頂門になる見解だったと思います。

エモット氏はこの本で、「年配者は収入以上の金を引き出して使う。貯蓄額が低くなると、日本は資本の輸入が必要になり、赤字経常になる。」と書いています。

この箇所を読んで驚きました。

実際の年配者は、将来を危惧してお金を貯めこむのではないかな?というのが通念になっているからです。

しかし研究者として、他の諸外国の例を挙げて、こういうふうになるという予想をしていたようですが、そうではないでしょう。

そうではなく、やはりエモット氏の反対で、昨今の日本の経済が不調なのは、高齢化による面が大きく、高齢者向けの商品が開発されることが少ないからだという面も大きいでしょう。

これからは、高齢者向けの商品開発の必要性を、堺屋太一氏『高齢化大好機』という本に書いていますね。

昨今の日本は、経常赤字の月が多いですが、それは2011年東日本大震災による影響が大なのですね。

しかし、この本を読んで驚いたのは、「シルバーコロンビア計画」というものがあって、オーストラリア、スペイン、ブラジルに日本人の退職者のための村をつくる計画があった、ということですね。

また、老人ホームの永代使用料は4000万円で、それにプラス毎月の使用料が必要ということですね。

この本が書かれた90年には、こういう相場であったようです。

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しかし、繁栄を享受していた80年代には、こういった先々のことは全く視野に入れていなかったのですが、年を経るごとに、周りの人間も高齢化してきて、そういうことを考える岐路に日本人は立たされているなと感じますね。

この本が書かれた90年には、「まだそんなこと…」みたいなニュアンスがすごく感じれたと思いますが、私は頂門にしたい書物ですね。

この本を読んでわかるように、日本やその他あらゆる国の歴史を見てみればわかるように、一国の繁栄がいつまでも続くわけではないのだから,そのためにサラリーマンとしてだけ稼いでいれば安泰などということはないのだから、それから何をすればいいのか等を考え、その方法を探し、行動していくことが重要だなと感じた次第です。

26年も前に出された本なのにも関わらず、いまだ新本で入手可能だから驚きです!

やはり、そんな昔に書かれた本でも、今読んでも学ぶことが多くあるからでしょう。

この本はこちらからどうぞ!

日はまた沈む―ジャパン・パワーの限界

 

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日はまた沈む―ジャパン・パワーの限界

 

その他おススメ図書

堺屋太一 『高齢化大好機』

 

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