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私はこの本を非常に興味深く読ませてもらいました。
90年に社会主義体制が世界的に崩壊し、どの国も資本主義を選択するようになりましたが、だからと言ってそのまま資本主義が無批判でいいということは絶対にないのですね。
資本主義は完璧なシステムではないのですね。
この本が書かれた90年代の後半に、この著者がいろんな国を歴訪した際に、ヨーロッパ、南米、アジア、北米などにおいて、マルクスや社会主義の思想が復権していた、ということを書いておられます。
また95年にフランスで社会党のジョスパン氏が首相に就任しました。
なぜこのようなことが起こるのかといいますと、社会主義の思想が今の資本主義の中でも取り入れられる部分や規範となる部分を持っているからですね。
どういうところがそうなるのか、といいますと、環境政策、エネルギー政策といった部門でですね。
日本は、官僚主導のトップダウン的な手法なのです。
その手法でもっていまだに日本は原発を稼働しておりますが、1999年の9月30日において東海村の臨界事故は、その弊害でもって起きてしまったのです。
また、水俣病もその弊害の1つといえるでしょう。
驚くことに現代のヨーロッパ諸国のほとんどは社会民主主義的政策を採用しているというのです。
そういう国での政策は、官僚主導のトップダウン的な手法とは反対のボトムアップ的民主主義であるということです。
この本の著者の佐々木力氏は、「プロレタリア民主主義の手続きを介した社会主義的政体を目指すべし」と書いております。
この本の中で、内橋克人氏の『共生の大地』(岩波書店)という本を紹介していますが、その本によれば、デンマークにおいては、エネルギー成長を伴わないで経済成長を可能にしてきたディカップリングを紹介しています。
また、デンマークは比例代表が基本になっているようです。
2%獲得で議席を獲得できるようです。
それで、社会民主主義政党が、単独か連立で政権誕生するというのです。
現代の北欧のエネルギー政策は、こういったこれまでの資本主義国の起こしてきた失敗を半面教師にして、その失敗を歴史的な経験を活かしてなされているのです。
その失敗の歴史的記録があるからこそ、社会民主主義政策が可能なのです。
それがあるからこそ、環境汚染や食料汚染は、事後的に罰するのではなく、事前に回避するということが可能になったのです。
かつて私が、 『北欧のエネルギーデモクラシー』という本の紹介をしたときに、
「デンマーク工科大学のニールスマイヤーと8名の研究者によって、地域熱供給を導入することで社会全体のエネルギーを合理的に効率的に利用し、それによって、18%のエネルギー需要は伸びを見せましたが、経済成長は70%もの伸びを見せた」
という例を紹介しました。
これは官僚主導のトップダウン方式の政策では到底不可能ですね。
佐々木力氏の規範とする社会民主主義国は、その反対のボトムアップ的民主主義なのです。
エネルギー政策においてもやはり原発は問題にならざるを得ません。
原発は、放射能の危険性があります。
放射能はがん発症の原因になります。
また原発は、供給電力を需要によって調節できない、というマイナスの面があるのです。
であるならば、日本は脱原発の方向へいかなくてはいけませんが、3.11の東日本大震災以後の原発事故以降においても、いまだその方向へいってません。
佐々木力氏は、「テクノロジーは明確なグローバルビジョンとそれを支える社会システムによって裏打ちされていなくては抜本的解決にならない」といいます。
建築都市計画や福祉の充実においてデンマークは先をいっています。
そして、廃棄物の法制化もドイツでなされました。
その他、環境関連グッズの新規雇用やワークシェアリングなどを採用し、これから資本主義国が対面するであろう問題にこういった北欧を中心としたヨーロッパ諸国は取りくんでいます。
しかし日本では、こういった動きが見れません。
環境資源問題の根本的解決の方向を探っていくとどうしても現在の資本主義経済の枠組みでは不十分であることは明白です。
であるからこそ、北欧諸国の研究が多くなされ、新評論という出版社においては、こういうこと研究した本が多く出されているのがわかります。
しかし、こういった北欧のいい面だけを見ていると、どうしてもこういった国がユートピアに様に見えてきてしまいます。
全く欠点のないパラダイスのような観がしてきます。
やはり何事も、いい面と悪い面の両方が存在するのだから、ことさら北欧諸国のいい面だけを取り上げて称賛だけするのはやめたほうがいいでしょう。
こういった諸国のルポ本や批判を書いた本も読んで吟味していきたいと私は思います。
しかし、この本や他の北欧について書いた本を読むと、これから日本を含む資本主義国が学び、それから行動していかなくてはいけないことが多く書かれていいることは間違いありません。
そこでいいと思われた部分については、自分の生活に取り込んでいかなくてはいけません。
北欧のエネルギー政策について、日本もこうしたほうがいいと思われたならば、「日本もこうなったらいいな。」と思っているだけではそうはなりません。
日本のような官僚主導のトップダウン方式の政策では、いつまでたっても脱原発にはなりません。
ならば、自宅の電力供給を太陽光にする、ということが必要でしょう。
そういう人が多くいれば多いほど、脱原発に向かうようになると思うのです。
原発による電力を使う人がいなくなれば商売にはなりませんから、やめざるを得なくなるのです。
自分がいいと思えるものを売っても買ってくれる人が少ない、あるいはいなければその商品を売るのをやめざるを得なくなるのと原理は一緒です。
そういう状態を目指していくことが大事だと思うのです。
そういう「よき方向へ向けた行動」をする人が多くなることを願って本は書かれている、という部分もあるのは至極当然でしょう。
やはり、その本を読んでいいと思ったことについては行動していかなくてはならないことは明白でしょう。
この本や他の本で感銘を受けた人は是非とも行動していきましょう。
電力供給に太陽光がいいと思った人は、自分の宅を太陽光に変えましょう。
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この本は、amazonのレビューで「思想的に偏向している」などと書かれていますが、そんなことは私には感じれませんでした。
社会主義が崩壊したからといって、社会主義について全く人類が学ぶものはないかといえばそんなことはないですし、その理念の部分を政治に活かしている国は今でも多くあることは先にも書いたとおりです。
社会主義が崩壊した。
だから社会主義からは全く学ぶものはない、というものの考え自体が全く誤りなのです。
例えば、資本主義国で採用されている累進課税や労働組合などは、まさに社会主義思想から出てきたものなののです。
そういったスタンスで、この著書の佐々木力氏は、社会主義思想にほれ込んで、その理念の重要性をいろんな本を書いているのです。
例えば、『マルクス主義科学論』などはその最たるもので、私は異常な好奇心が喚起され、一気に読んでしまったものです。
この本も、非常に興味深い知識が書かれていて、ついつい読み進めてしまったのです。
読んだ人が学べることが多く書いてあると断言します。
そんな事情ですので、この本は何回も読み返したい本でありますし、お勧めしたい本でもあります。
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