この本が書かれた1982年前後においては、子供の問題児化があたかも母親の責任という感じでマスコミに報じられていたようです。
子供の登校拒否、家庭内暴力といったことが、ほとんどすべて母親のせいである、ということですね。
これは昨今ではまずないことですから、非常に興味深いですね。
ではなぜこのようなことになってしまうのか、ここに小此木氏の精神分析が行われるわけですね。
これまで、このブログでいろんな氏の本を紹介してきましたが、精神科のお医者さんでなくても、一般人も、いや一般人こそこういった心理学を学んで精神の内容を矯正して行動に移さないといけないと思ったからですね。
日本社会においては、古来から子供は母なるもの、母親像との一体感を求める。 そして、子供が成長していくうちに、それが幻想であったということに激しい恨みを抱くようになる。
しかし、自分が更に成長していくことで、その母親の心の内情を知り、それについて同情の念を抱き大人として成長していく社会であった。
この過程が、あたかも古代インドに実在した阿闍世の成長実話に整合性があるがゆえに、この名を冠したのですね。
その成長実話の詳しい内容についてはこの本を読むといいでしょう。
しかし、急激な西欧化によって、それが叶わなくなっていったことが、小此木氏の社会分析 によって明らかになっていったということですね。
それは、急激に社会が流動的になっているがゆえに、処罰、しつけ、叱責、いずれも場合にも明確な規範を子どもに与えることができない大人社会。
自分の身の回りがあまりに巨大化しすぎてしまったがために、罪と罰の因果関係が拡散し、見失われ、価値観が多様化しすぎたために特定の規範原理を相対的なものとして人々が受け入れられなくなってしまった時代。
自己の行動の原因と結果があまりにも多種多様な要因のために、あいまいになり、仕事にも責任を回避し当事者とならない処世術を人々の身についてしまった社会生活。
こういう社会への変動が伴っているからこそ、問題が起こる、ということを小此木氏は考えるのですね。
こういう社会変動を考慮に入れながら、人々の精神の問題の対処を考えていく必要がある、ということですね。
これは非常に明晰な分析かつ、いつまでも維持したい考えですね。
それを忘れてはならないと考えるからこそ、私は小此木氏の本は中古本屋に売ったりせず、何度も読み返すことを習慣づけているのですね。
これは規範とせねばならないことでしょう。
西欧が、古来からこういった流動的な社会であったからこそ、人民を強くまとめ上げるためにキリストを殺した罪深き人たちという共通の意識を持つ必要があったのではないか、という分析をしているのです。
これは非常に説得力を持つ理論と思わざるを得なかったですね。
西欧といえばたいていの場合はキリスト教です。
しかし、こと日本では16世紀の昔からキリスト教が入ってきたにも関わらず、今でもクリスチャンは国民の1%以下だそうです。
私は、1人で聖書を読んでも意味も分からずに、ゆえにほうってしまいたくなるのが、クリスチャンにならない大きな理由ですが、やはりいきなり罪の意識を持てといわれても無理な話だからというのも大きな理由ですね(笑)
そんな視点を提供してくれた小此木氏には感服せざるを得ないですね。
しかし、小此木氏がいくら偉大とは言っても、行間の間隙に、それだけでない重要なことを見つけることもできますし、他の本を読むことで対処法を学ぶことができるのですから、無批判でいる必要はないでしょう。
これは私がものすごい感銘をうけた総合社会科学的な視覚を有している佐伯啓思氏についてもいえるので、無批判になる必要もないでしょうね。
例えば、アダルトチルドレンといって、自分がこんな精神構造になってしまったのは、母親のせいだ、ということを言う子供が出てきても当然でしょう。
心理学的な本が巷に多く出るようになれば、それを読んだ子供が、母の教育や父の教育によって子供の精神的な影響がどのようになるかといったことは、明らかになっているのですから、最初に書いた子供の問題児化には、その教育内容に起因するものということもできるでしょう、社会変動だけではないのです。
こういった多視野なものの見方で対処していくことのほうが賢明でしょう。
しかし、重要な柱は持っていなくてはなりません。
そうでなくては、自分の理論を形成するのに、右往左往してしまい、いつまでも毅然とした行動がとれなくなりますからね。
その柱を形成するのにうってつけの本として、この本をお勧めします。
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